気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Limbic Entertainment開発、PC向けに8月1日にリリースされた海賊島建設シミュレーション『コルセア・コーヴ』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、終焉を迎えようとする「海賊の黄金時代」で無人島に流れ着いた海賊達のアジト建設と海賊ハンターたちとの戦いを楽しめる都市建設シミュレーションストラテジー。絶壁だらけの島を海賊らしく縦横無尽に戦える要塞へと進化させながら、優秀な乗組員や必要な物資を頂戴するため海での略奪行為の指示といった海賊艦隊の管理も体験できます。日本語にも対応済み。
『コルセア・コーヴ』は、3,980円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
LionelドイツのLimbic Entertainmentで『コルセア・コーヴ』のクリエイティブ・ディレクターを務め、最近では当スタジオのCEOにも就任したLionel Lovisaです。
個人的に、日本にはとても深い思い入れがあります。かつて日本でゲーム開発を学び、コジマプロダクションのプログラマーとしてキャリアをスタートさせました。その後、ヨーロッパへ移ってプロデュースやクリエイティブ・ディレクションの道へと進んだと言う経緯があります。そのため、日本の読者の皆さんのため質問に答えることは、私にとって少し特別な感じがするのです。ある種、「原点回帰」のような感覚ですね。
好きなゲームを1つだけ選ぶのはほぼ不可能ですので、少しズルをさせてください。私が子どもの頃の作品で言えば、『Civilization II』と『スーパーメトロイド』です。プレイを止めた後でさえ、ゲームの世界やシステムがどれほど頭の中で生き続けられるかを教えてくれた作品たちです。
私が日本にいた頃の作品で言えば、『メタルギアソリッド3 スネークイーター』と『メタルギアソリッド ピースウォーカー』が私にとって非常に重要な存在です。単に自分が働いていた場所だからというだけでなく、ゲームというものがどれほど感情を揺さぶるエモーショナルな体験になり得るか、そして同時に、どこまで野心的な存在になれるかを示してくれたからです。
そして最近の作品であれば、『Factorio』ですね。一見シンプルですが、気づけば人生の内200時間をも飲み込んでしまうようなゲームの代表格です。開発者として、そうした作品には深い敬意を抱いています。

――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Lionel『コルセア・コーヴ』は海賊のコロニービルダーですが、大きな特徴は「平地だけに建物を建てるわけではない」という点にあります。崖の上、谷間、水上、岩場、そして島の垂直方向の作り全体を活かして建設を行っていきます。
世の中の多くのゲームは視覚的には3Dであっても、ゲームプレイ自体は実質的に平面であるものが大半です。そこで私たちは、「もし都市建設そのものが真の意味で3次元だったらどうなるだろう?」という、恐ろしい疑問を投げかけてみることにしました。
言葉で言うのは簡単ですが、実際はまったく簡単ではありませんでした。
プレイヤーに垂直方向への建設を許した途端、無数の課題が出てきます。カメラ操作はどうすべきか?建物同士をどう接続するのか?資源はどう移動するのか?何が効率的で何が壊れているのかをプレイヤーにどうわかってもらうのか?そして何より、ゲームが「ロープと橋と怒った海賊たちで埋め尽くされる悪夢」になるのをどう防ぐか?と言った点です。
しかし、それこそがポイントでもありました。私たちは立体であることを単なる視覚的なトリックで終わらせたくはなく、それをゲームプレイそのものにしたかったのです。テキトーに作れば街は苦境に立たされ、上手く設計すればまるで「天才海賊建築家」になったかのような快感を味わえます…そんな職業が実在するかは怪しいところですが、あっても良さそうですよね。
海賊というテーマもそこから自然と生まれました。海賊って雑ですよね。手に入るものは何でも使って家を建て、自由と混沌の狭間で生きています。木板、橋、ジップライン、略奪品、そして「愚かな決断」で出来上がった海賊都市は、この立体的なゲームプレイにまさにぴったりでした。
また、私たちは都市に明確な目的を持たせたいとも考えました。単に綺麗な海賊の町を作るわけではありません。船を海へと送り出し、探検し、戦い、交易を行い、資源を持ち帰って隠れ家をさらに発展させていくのです。「島が海を養い、海が島を養う」のです。
本作の根底にあるアイデアは至ってシンプルです。「今にも崩れ落ちそうな海賊の隠れ家を建てるような感覚でありながら、「プレイヤーの知恵」と「文句を言うには酔っ払いすぎている海賊たち」のおかげで、なぜか奇跡的に機能している都市を作る」というものなのです。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Lionel多くの作品から影響を受けましたが、『コルセア・コーヴ』は特定の1つのゲームや映画というよりも、「ジャンルそのもの」からインスピレーションを受けたと言う方が正確でしょう。
ゲームプレイ面で言えば、当スタジオにはストラテジーや都市建設ゲームを手掛けてきた長い歴史があります。チーム全員がそれらのゲームをプレイし、研究し、愛し、文句を言い、そこから教訓を盗み出し、そしてあたかも自分たちが一から思いついたかのような顔をする…それがゲーム開発というものです。
プレイヤーの皆さんも、本作からは様々なゲームの要素を感じ取っていただけるはずです。物流の気持ちよさ、街が発展していく様子を見る喜び、限られたスペースをやりくりするストレス、そして危険な状況へと人々を送り出し「役に立つものを持って無事に帰ってきてくれ」と祈る冒険心などです。
世界観については、本物の海賊の歴史とポップカルチャーにおける海賊像の両方を参考にしました。正直なところ、実際の海賊の歴史というのは人々が想像するほど面白いものではありません。本物の海賊たちは貧しく、残虐で、病気がちで、絶望的で、大半が若くして命を落としていました。カラフルな都市建設ゲームとしては、お世辞にも完璧な設定とは言えないでしょう。
現代において人々が大好きな海賊とは、それとはまったく別のものです。自由、絆、反逆、宝の地図、あり得ないような船、バカっぽい帽子、そして海に向かってドラマチックなセリフを叫ぶ人々です。
そのようなファンタジーは、「パイレーツ・オブ・カリビアン(カリブの海賊)」や古典的な冒険小説、『モンキー・アイランド』、そしてもちろん日本の「ONE PIECE」の中にも見ることができます。私たちはそのどれかを真似しようとしたわけではありませんが、これらはどれもすべてある同じものを描いています。創作における海賊とは、単なる歴史上の犯罪者たちではなく、「自由の象徴」だということです。
だからこそ、私たちはかなり早い段階である決断をしました。「歴史ドキュメンタリーを作るのはやめよう」と言うことです。人々が密かに望んでいる「海賊ファンタジー」を作ろうと思いました。明るく、カラフルで、おかしく、時には少しバカバカしいけれど、その下には本格的なゲームシステムがしっかりと根を張っている…そんなゲームを作りたいと思いました。
よりシンプルに言うなら、 「歴史が私たちに船を与え、ポップカルチャーが私たちに夢を与え、ゲームデザインが私たちに頭痛をもたらした」という感じですね。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Lionel私が今でも鮮明に思い出せるのは、一番最初の「垂直建設プロトタイプ」のことです。そこには本当に何もありませんでした。1つの島と、いくつもの奇妙な垂直の突起物、建物が1つ、そしてそれらを繋ぐコネクターが1つだけです。基本的にはそれがそのゲームのすべてでした。壮大なストーリーも、美しいアートも、船長も、海の冒険も、怪しい動きをする豚もいません。ただ「上に向かって建てることができるか」「カメラは耐えられるか」「それが面白いと感じられるか」と言うだけの検証用でした。
そのプロトタイプをプレイテスターたちに渡したところ、面白いことが起きました。彼らは、私たちの予想を遥かに超える長時間プレイし続けたのです。コンテンツなどほぼ無いに等しい状態だったにも関わらず、彼らはその「空いたスペース」を攻略しようとしていました。島を見つめながら、「あそこにも建てられるのか?」「ここを繋ぐことはできるのか?」「もっと高く登ったらどうなるんだろう?」と考えを巡らせていたのです。それは私たちにとって、極めて重要な瞬間でした。
まだ最初期の段階でありながら、本作の核となるアイデアがプレイヤーの中に「興味深い疑問」を生み出していることを証明してくれたからです。そこからの私たちの焦点は、「なぜその感覚が生まれたのか」を深く理解し、それを中心に据えてゲーム全体を構築していくことへとシフトしていきました。
開発中、様々なアイデアをテストし、そこから学び、ゲーム体験を研ぎ澄ませていく中で、本作は進化し続けました。すぐに上手くいくものもあれば、「このゲームが目指すべきではない姿」を教えてくれるものもありました。試行錯誤のすべてが、私たちが本当に作りたかったゲーム体験へと近づく糧となったのです。
ゲーム開発の不思議なところは、まさにそこにあります。開発の真っ只中では、最終的な完成形とはまったく異なる姿をしていることがあるのです。全体像が形作られるまでは、個々の要素が未完成でバラバラに感じられることもあります。しかしそうしたプロセスこそが、システムとゲーム体験の「正解の組み合わせ」を見つけ出すための不可欠な道のりなのです。
テストと洗練を繰り返し、それぞれのパーツ同士が互いを高め合い始めるまで何度も組み合わせ続けていく…『コルセア・コーヴ』の開発中に起きたのも、まさにそれでした。本作が真の意味で自立し、あるべき姿に辿り着くまでには時間と試行錯誤が必要でしたが、その一歩一歩が、私たちが作り上げたかったゲーム体験へと着実に近づけてくれたのです。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Lionelフィードバックは非常に励みになっています。何より嬉しいのは、本作の核となるアイデアをプレイヤーの皆さんにしっかりと理解していただけたことです。垂直方向への建設、物流、そして島に奇妙で美しいものを建てていく感覚について、皆さんが語り合ってくれているのです。
これは私たちにとって本当に大きな意味を持っています。と言うのも、それこそがこのゲーム開発で最も難しく、同時に私たちが最も自問自答を繰り返した部分だったからです。何年もの間、私たちは「プレイヤーはこれを楽しんでくれるだろうか?もしかしたら、私たちは自分たちを苦しめるためだけの高価な機械を作っているだけなのではないだろうか?」と疑問を抱き続けていました。だからこそ、プレイヤーの方々が「新鮮な感覚だ」と言ってくれたり、「立体的な物流を構築するのが楽しい」と言ってくれたりすると、救われた気持ちになります。
また、本作の世界観や雰囲気についても多くのコメントをいただいています。明るいカリブ海のロケーション、海賊らしいユーモア、細部のディテール、建造物、船長たち、そして豚たちを楽しんでくれているのです。正直言って、豚は注目を浴び過ぎですね。そのうち「豚のDLCを作ってくれ」と言われるんじゃないかとヒヤヒヤしています。
特に印象深いフィードバックは、プレイヤーが自分の都市をまるで生きているかのように表現してくれるものです。自分の街のレイアウトやボトルネック、奇妙な解決策、お気に入りの船長、物流網が崩壊した場所、そしてそれをいかに直したかを語ってくれるのです。
それこそが、私たちの目指したものそのものでした。単に「都市を作った」ではなく、「俺だけの海賊の溜まり場を作ったんだけど、なんかよくわからないけど上手くいってる」みたいなものを感じてもらうことだったのです。

――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Lionel私たちはプレイヤーの皆さんの声によく耳を傾けるようにしています。寄せられた要望のひとつに「船をより直感的に操作したい」という声があり、現在その実装に取り組んでいます。また、「すべての戦闘を自分で細かく管理しなくても、クルーに戦闘を任せられる方法を増やしてほしい」というリクエストもあり、こちらも追加する予定です。
さらに、物流や自動化に関する快適性の改善リクエストも数多く届いています。船の自動修理、物資の自動売却、同じことを繰り返す作業の削減、そして巨大な海賊の隠れ家をスムーズに管理するためのわかりやすいツールなどです。
こうした要望は私たちにとって非常に嬉しいものです。なぜなら、それらはプレイヤーがゲームを十分に楽しんでおり、さらにスムーズに、奥深く、長く遊べるようにして欲しいと望んでくれている証拠だからです。
私たちはSteam、Discord、メディア、コミュニティの議論などからフィードバックを読み込み、常に以下の3つに分類するようにしています。
緊急のものは何か?
多くのプレイヤーにとって本作をより良いものにするものは何か?
ネットの声に流されて焦って実装すると、かえってゲームをダメにしてしまうものはどれか?
特に最後の一つは極めて重要です。しかし冗談抜きに、寄せられるフィードバックには心から感謝しています。次に何を改善すべきか判断する大きな助けになっていますので、ぜひDiscordに参加したり、Steamに書き込んだりして、皆さんの感想や意見をお寄せください。日本語で書かれた意見であっても、私たちはしっかりと目を通していますよ。
――本作の日本語対応状況について教えてください。
Lionel『コルセア・コーヴ』はローンチ時から、完全にローカライズされたUIと日本語字幕に対応しています。本作には大量のテキスト、ツールチップ、システム解説、海賊用語、ジョーク、そしてUI重視の戦術に関する説明が含まれているため、ローカライズは単に文章を訳すだけの作業ではありませんでした。
このようなゲームで特に難しかったのが「トーン」の調整です。英語における「海賊言葉」自体、すでに少し独特で奇妙なものです。歴史が半分、演劇的表現が半分、そしてナンセンスが半分で成り立っています。はい、半分が3つありましたね。海賊は数字が得意じゃないのです。
日本語へのローカライズにおける課題は、経営・管理ゲームとしてシステムを十分にわかりやすく保ちつつも、海賊らしさを感じてもらえるようにすることでした。文章がドライになりすぎると作品の個性が失われてしまいますし、逆におふざけが過ぎるとシステムが理解しづらくなってしまいます。だからこそ、バランスが重要なのです。
日本のプレイヤーの皆さんが、最初から母国語で本作を体験できることを心から嬉しく思っています。日本には経営シミュレーションやストラテジーゲーム、そしてもちろん「海賊ファンタジー」に対する深い愛がありますから、ぜひ多くのプレイヤーの方に本作が届くことを願っています。

――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Lionelもちろんです。ぜひやってください。
プレイヤーやクリエイターの皆さんが、YouTube、Twitch、その他あらゆるプラットフォームで『コルセア・コーヴ』のコンテンツを配信、録画、共有、そして収益化することを歓迎します。こうしたゲームにおいて、「他の人がどのようにプレイしているかを見る」ということ自体が楽しみの一つです。
プレイヤーごとに作り上げるものはまったく異なります。効率的な都市を作る人もいれば、美しい都市を作る人もいます。そして、ジップラインで繋がれた壊滅的な惨状を作り上げ、それを「エマージェント・ゲームプレイ(自然発生的ゲーム体験)」と呼ぶ人たちもいます。私たちはそれらすべてを全面的に支持しますよ。
そう言うことですので、どんどん配信し、動画を作り、ガイドを作成し、面白いクリップを投稿して、あなたの海賊の隠れ家を私たちにも見せてください。プレイヤーの皆さんが作り上げるものは楽しく見させていただきます。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Lionel日本の読者の皆さん、最後までお読みいただき本当にありがとうございます。
日本という国は、私の人生とキャリアの非常に早い段階において、私という人間を形作ってくれた場所です。そこでゲーム開発を学び、この業界での第一歩を踏み出し、日本のクリエイター、日本のプレイヤー、そして日本のゲームから本当に多くのことを学びました。だからこそ今、自分自身が誇りに思える作品について日本のプレイヤーの皆さんにお話しすることができるのは、非常に感慨深く、大きな意味を持っているのです。
『コルセア・コーヴ』は、本来ならあり得ないような場所に「我が家」を築き上げていくゲームです。混沌、自由、失敗、鮮やかな解決策、そして「存在し得ないはずなのに、なぜか存在しているもの」を守るために戦う…そのようなものを描いています。
それはある意味で、ゲーム開発そのものです。
奇妙な都市を築くこと、複雑な物流問題を解決すること、海賊たちを危険な冒険へと送り出すこと、そして断崖絶壁の上で小さな人々がバカバカしいことをしている姿を眺めることが好きなら、『コルセア・コーヴ』が皆さんにとって「守るに値する最高の海賊の隠れ家」となれることを心から願っています。
(訳注:ここから下は日本語で回答いただきました)
日本の皆さん、本当にありがとうございます。
ぜひ、皆さんだけの海賊の楽園を作ってみてください。
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に1,000を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。











