――リスペクトしているゲーム翻訳者や、翻訳が良いと思ったゲームはありますか?
nicolith:『VA-11 Hall-A』の武藤陽生さんへのリスペクトは各所でもう語りまくっているので、他の3人を挙げさせていただきたいなと。
まずは『CoffeeTalk』で有名な小川公貴さん。小川さんが翻訳した作品では『In Other Waters』が特に好きで、宇宙海洋SFというゲームにはあまりないジャンルのアドベンチャーゲームなんですね。その用語の翻訳のセンスとかも際立っているんですが、小川さんのすごさってちょっとした言葉遣いでキャラクターがすごく立ってくるところなんですよ。


普通に小説みたいな文芸的な喋り方をしていたのに、突然なんかほっこりするような、口語的な表現がふっと入ってきたりするんですよね。それで一気に人物像を立てるのが小川さんは本当に上手くて。『In Other Waters』は主人公が1ドットみたいな点でしかない。そんな主人公が突然生きた人間のように立ち上がる瞬間があって、その辺が凄いなと思うんですね。
『CoffeeTalk』とかそうなんですけど、小川さんって訳文だけ見たら、もう上手すぎて日本語で書かれた文章にしか読めないんですよ。でも英語の原文を読んだら、直訳にしか見えない。確かにこれをこうするとそうなるな、でも自分では絶対そんなやり方ができないんですよね。
何故かというと、シンプルに言葉の引き出しの数とチョイスがすごく上手いからなんですよね。その辺に僕は今自分が狙っている方向性のかなり先にあるなと思っていて、学びがあります。
2人目は『SIGNALIS』の翻訳をされた柴田泰正さん。柴田さんは日本語の達人みたいな人で、最近だと『Keylocker | Turn Based Cyberpunk Action(以下、Keylocker)』というゲームを翻訳されていて、このゲームはあらゆるテキストがすごいんです。


『Keylocker』はオリジナルの凝ったダジャレや凝ったジョークがばかりの超難解なテキストなんです。難解というのは読みづらいとか分からないとかそういうことではなく、英語でしかできないことをいっぱいやっているんですよね。キャラクターもすごく変わっているんですが、そういうのを全部上手くやっているんです。職人芸のミケランジェロの彫刻みたいな翻訳なんですけど、そのスキルがめちゃくちゃ高いというので、柴田さんは本当に凄いなと。
3人目は『Hollow Knight』や『Hollow Knight: Silksong』の伊東龍さんですね。伊藤さんはテキストが全体的にタイトなんですよね。無駄な装飾がなくて端的なんですけど、台詞は結構生々しくて。それは『The Cosmic Wheel Sisterhood』とか、取り扱うタイトルにもよるんですが、その辺りのギャップが良いんですよね。生々しく感じられるコントラストが凄くて、その辺が巧みで学びがありますね。


――やっぱり訳し方には人が出るな、と思うんですね。
nicolith:自分の趣味を出している、ということは全然ないんですが、見ていくとその人特有の技術があるんだなと方向性が見えてきて学びがありますね。僕が翻訳っていいなと思うのが、翻訳って学びやすいと思ってるんですよ。
特にゲームって不思議で、ゲームって英語と日本語の両方入ってるんです。これってゲーマーにとっては当たり前なんですけど、小説とか漫画はそうじゃない。英語版と日本語版を買わないといけないんですが、ゲームって全部入っているんですよね。
つまりゲームで翻訳を学びたかったら、好きなゲームを1つ持ってきて、英語と日本語の対訳表を作って学べばいいんですよ。僕は今でもそういうことを割とやっています。学びがあるので。それをしていくと、今挙げた方々は特に素晴らしいなと思いますね。
――先ほども話されていたことに繋がりますが、影響を受けている小説家や好きな作品はありますか?
nicolith:やっぱり泉鏡花は凄いのと、あと翻訳者を1人上げるとしたら、「浅倉久志」ですね。浅倉久志はSF小説の翻訳で有名で、カート・ヴォネガットやアーサー・C・クラーク、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの作品を多く訳していますね。村上春樹の文体の元も、浅倉久志なんですよ。
僕も浅倉久志の翻訳にハマっていたことがあって、多分今の自分がニュートラルに書く文章はかなり浅倉久志調なことが多いですね。なんというか素朴でそっけないんですが、エモいところはエモかったりする。口語の表現も上手いので、浅倉久志からはかなり影響を受けています。
――学校で習うだけでなく、英語をしっかり勉強しようと思った理由やきっかけはありますか。
nicolith:えっと、僕はまず英語勉強してないんですよね。って言うとアレなんですが、まあ大学受験で英語が必要なので当然高校まで勉強したのと、大学でも多少は必修などで学んではいました。ただ、僕は日本文学科に進学して、日本語を勉強していたんですよ。
何故日本語を勉強したかというと、日本文学には行ったんですが、文学の話はあんまり肌に合わなくて、言語の方が面白かったんですよね。先ほども言ったように子供の頃から言葉が好きだったので、日本語のいろんな歴史とか文法とか記法とかを勉強しようと思って、そっちを勉強しました。
マニアックで恐縮なんですが、日本語の「、」とか「。」の句読点ってあるじゃないですか。あれを今みたいに使うようになったのって、時代的にはすごく最近なんですよね。要はあれって海外の英語、正確に言うとオランダ語とかからのピリオドとかカンマから来ているんですが、それまでは無かったんですよ。じゃあそれまでって日本語ってどうやって書いてたんだろう、という話なんですよね。
そういう感じで、日本語の歴史や表記法とか、文法を趣味の延長で勉強していましたね。英語は学校以外では勉強してなくて。なので、今もずっと辞書を引いてます。とはいえ大学でも講座でいくつか英語は取っていたのと、英語の詩を読むのが好きだったんですよね。英文集を読んで訳したりとか、洋楽も好きだったので、ボブ・ディランの歌詞とかも趣味で翻訳していました。
――やっぱり、翻訳のお仕事をされる前から趣味で翻訳はよくされていたんですね。
nicolith:僕は単に書くのが面白かったので、翻訳したものを誰かに見せるとかはあまりしてませんでした。なんというか、翻訳を仕事にして改めて分かったんですが、僕は書きたいものが全然ない人間なんですよ。言葉は好きなんですけど、小説を書きたいとかは全然なくて。物語は書かないけど、印象的なフレーズを思いついたら書くのは好きなんですよね。ネタツイートをひたすらする人間、みたいな感じで。
翻訳を始めて、「向いてるかもな」と思ったんです。翻訳って、何を書くかを何も考えなくていいんですよ。そこに書いてあるから。問題は、どう書くかだけなんです。
英語でどう書いているかを分析したり、日本語でどう書くかを考えるというのが、これ僕にハマってるな、と思ったんですよね。文章を書くのは好きだけど、書くものがない人間としては、そこを悩まずにひたすら文章を書けるので、無限に翻訳できるんですよね。楽しすぎて。

――とはいえ書いていることを別の言語で伝えるのは難しいことだと思うので、すごいと思います。
nicolith:ゼロから書くのとは違う工程で、自分の中では翻訳ってほとんどパズルなんですよね。いろんな条件を満たす、ぴったりの鍵を探すみたいな。それが面白いので、翻訳はいくらでもやれますね。
――英語を翻訳していって気づいたことや、日本語との違いなど、印象に残ったことはありますか?
nicolith:当然言語としては全然違うんですが、僕は日本語を元々勉強していたので、自分の中に日本語という幹があると思っていて。そもそも文法が違って、分かりやすいので言うと英語は基本的に主語を書かないといけない。絶対とはいいませんが、Iから始めないといけないとか。日本語って、我々がこうして話しているように、ほとんど主語なんか無いんですよね。
その言語のクセみたいなものは、英語を読んだりしていくと意識的に分かっていくんですよね。言語ごとの特性みたいなものがあって、それをなるべく無くすというか、移し替えていくのが翻訳の大事な仕事だなというのが分かってくる。その辺り色々工夫があったり、学びがありますね。
――日本語の文法などに興味がある人へオススメのものなどはありますか?
nicolith:日本語の文法書ってたくさんあるんですが、そもそも言語とか文法を学びたいというニーズって、自分の言語より外国語を学ぶときにあるじゃないですか。なので、日本語の勉強をする本は外国の方向けにたくさんあるんですよね。
僕も昔取ろうとしたんですが、例えば日本語教師という資格があって、日本語教師向けのハンドブックやガイドブックがあるので、そういうのが一番いいかと思います。単なる評論や歴史っぽい本よりは、実際に使われている文法のハンドブックなど学ぶための本が一番入って来やすいと思いますね。あまり奥深いところまで行くと、他説あるみたいな話になってくるので。
――では、担当したゲームについてお聞かせください。nicolithさんは「CRITICAL REFLEX」というパブリッシャーとお仕事していることもあり、ホラーやダークなゲームの翻訳が多い印象があるのですが、それぞれトーンは違いますよね。そのトーンを掴むのに、どんなリサーチや掘り下げを行っていますか?
nicolith:当たり障りのない話になってしまうんですが、そのゲームが参考にしているもの、要は本だったり映画だったら、ひと通り目を通すというのは絶対にやっていますね。あんまり公言していないものもあるので、ここでは名前を挙げにくいのですが。
公言しているものでいうと、『UNBEATABLE』って「フリクリ」をめちゃくちゃ参考にしているんですよね。

『UNBEATABLE』を翻訳している間は「フリクリ」をずっと見ていたりとか、そういうことをあらゆる作品に対してやっています。『No, I'm not a Human』はそういうものが多すぎて、めちゃくちゃリサーチに時間がかかったんですよね。日本語でないものもあったりして、どうしても英語で読むしかなかったりとか。
直近だと、『Hell Maiden』はダンテの「神曲」が題材のヴァンサバライクなんですが、「神曲」は日本語訳が何種類かあるので、比較して勉強して、解説本とかも読みましたね。古代の詩人もたくさん出てくるので、そのキャラの詩人が書いた古典も全部目を通すようにしています。この辺りは学生の頃から好きだったので、読んだことはあったんですが。

――目を通すと言っても、かなり量がある作業になりますよね。
nicolith:めちゃくちゃあります。結局世に出なかったあるゲームの翻訳をした時に、そのゲームが「カードキャプターさくら」モチーフだったんですよ。僕は「カードキャプターさくら」を見たことなかったので、全話見たんです。70話くらいあったので大変でした。ゲーム自体はそんなに長くないんですが、「作者がリスペクトしているんだから、見ないことには始まらんだろう」と思って、全話見て漫画も読みました。
僕は自分の中で「文体を作る」って呼んでいるんですが、要は日本語の文体としてどう描くかっていう話があるんですよね。そうなった時に、こういうのを参考にしようみたいなものが自分の中ではあったりして、参考になるような漫画や小説、映画をピックアップしてこういう風にやろう、って翻訳する前に組み立てたりはしていますね。あんまりその作品を言うとアレなので、直接は言わないんですが。
面白いのは、こうして参照先の作品を追っていくと、どう似せる似せないみたいな次元の話を超えて、そもそも目の前のゲームにとってどうあるべきか、どう違うのか、という点がむしろ見えてくるんですよね。書くにしても、参照先のクリエイターが今の時代、今の技術で、今のプレイヤーに対して同じように書くだろうか?もっとこうあるべきじゃないだろうか?そういうことを考えていった先にこそ、そのゲームならではの文体が生まれてきます。
――nicolithさんはストアページの翻訳も多く手がけており、そちらも作品の雰囲気を含んでいて特徴的ですよね。ゲーム翻訳とストアページ翻訳ではどのような違い、また意識がありますか?
nicolith:実は意識しないようにしている、というのが答えなんですが、一般論的に言うと、ストアページのテキストってマーケティングテキストなので、読んだ人が買いたくなるように書くべきなんですよね。魅力を惹起するように書く感じで、原文から離れた書き方をするのもよしとされる、という話もなくはないんですよね。
僕はそういうのはしないようにしていて。なるべく原文をあまり変えずに訳すスタイルはストアページでも変えないんですが、やっぱりゲーマーとしては、ストアページを見て買う時ってちゃんとゲームのことが知りたいじゃないですか。なので、ちゃんとゲームの雰囲気を伝えるようにしています。
書かれていることを足したり引いたりはしないんですが、例えばCRITICAL REFLEXのストアページは特に、そのゲームをプレイした時の雰囲気をストアページのテキストでも伝わるように書いてますね。

ゲームを買ってプレイすることが“入り口から家の中に入る”ことだとするならば、ストアページというものは“ちゃんと家の外見を説明するべきもの”だと思ってて。なんというか、不幸な出会いをしてもしょうがないじゃないですか。なので、ちゃんとこのゲームはこういう雰囲気ですよ、ということが伝わるようにしていますね。
――ストアページもそのまま訳されているんですね。私はストアページを見てもnicolithさん本人の味が出ているなと思っていたのですが、そのまま訳しても出るものなんだなと。
nicolith:これは2つの側面があって、僕はストアページヘビーユーザーなんですが、その目線で見ているとストアページのテキストがやる気が感じられないものが多いんです。例えば、「◯◯として▢▢をしていこう!」みたいな。こういうの、読むだけで萎えるんですよ。よく分かんないし。
なので雰囲気を伝えるようにしようっていうのは、それへのアンチパターンが僕の中にある。というのと、これは翻訳という仕事についてなんですけど、ストアページの翻訳って、ゲームを翻訳した人がやらないことも多いんですよ。
というのは、ゲームを作るより手前にストアページは作られているので、ストアページが出来たばかりの時は大抵の場合、その時点でゲームの中身があまり固まっていないんですね。スクショとか雰囲気はある程度あるんですが、中身が全部できているわけではないし、担当している人も「ちゃちゃっとやっといて」と言われてやることが多いので、あまりピーキーなことはできない。
例えばストアページって、固有名詞がやたら英語のままってことが多いですよね?何故かというと、下手に訳してしまうとゲームとズレる可能性があるからなんですよね。あんまり決まってないことが多いので。これは推測も含みますが、おそらくそのような事情があるんです。
一方で僕の場合は、基本的に開発者やパブリッシャーと直にやり取りしているので、僕はどうせ中身のゲームも翻訳するし、中身も見えててある程度出来上がっている。特にCRITICAL REFLEXとはズブズブなので、ある程度突っ込んだ翻訳ができるんですね。それもあって結果的にそういうものが書ける状況に僕がいる、というのが大きいかもしれないですね。
――nicolithさんの翻訳した『No, I'm not a Human』では、多くのキャラクターが登場します。会話をして「来訪者」を見分けるというシステムからそれぞれのパーソナルが大事なゲームになるのですが、その人の違いなどはどのようにして色付けしていきましたか?
nicolith:まずもう少し上段の話からさせていただきたいのですが、やっぱりゲームを訳すにあたって、ゲームが狙っている体験というものが大事だと思っていまして。
じゃあ『No, I'm not a Human』の何が大事かというと、目の前にいるそのNPCを撃っていいかどうかを悩む、ということがゲームにとって大事だと思ったんですよね。

単なるモブだったらガンガン撃っちゃえ、と思ったりしますし、当然そういうプレイヤーもいていいんですが、みんながそうなってしまうとあの味って出ないんですよね。緊張感というか、本当に撃っていいんだろうか、というせめぎ合いを楽しむゲームじゃないですか。
もう1つが、ゲームの冒頭で説明されると思うんですが、ぶっちゃけあの世界って家に人間入れたくないじゃないですか。主人公も入れたがってないし。なので、ちゃんと最初は仕方なく入れるような人物じゃないといけないんですよ。けど、家に入れて話していくうちに、どんどんその人の人物像が分かっていって、印象が変わっていって、結果的に撃ちたくなくなる。追い出したくなくなる愛着を持たせないといけないですよね。

そういう遷移を全キャラクターに与えないといけないと思っている、というのが最初に僕の中であったルールなんですよね。
その上で、アプデも入って今『No, I'm not a Human』には70人ぐらいいるんですけど……。
――やばいですね。
nicolith:70人のうちのひとりひとりがちゃんと個性を持った人間に見えないといけないんですよね。誰にとっても、最初はほとんどのキャラクターの印象があまり良くない。けど仕方なく入れてしまう。けど入れて話していくと裏側が分かっていって、「こういう人なんだ」と理解して、撃つには撃てない状況になっていく風に描く。というキャラごとの縦軸の話と横軸の話があって。基本的に僕がキャラクターを翻訳する時に大事にしているのは、そのゲーム体験という中において1人1人の原文や設定を読んで活かしていくことです。

若干アンチテーゼなんですが、日本語のフィクションの伝統的な技法としてキャラを作るって話があるんですよね。具体的にいうと「役割語」というもので、要はこのキャラはこういう人物だからこういう言葉遣いをするんだよ、みたいな話です。これは別に間違っていないし、僕もやるんですが、あまり浅はかにやると良くないなと思っていて。キャラクターがステレオタイプになっていくんですよね。
それが正しいこともあるんですけど、そういうキャラ付けって深みがなかなか出ないんですよ。典型的なキャラクターばかりになる。例えば年寄りの博士が「◯◯なのじゃ」と言うみたいな。でも、それを言った瞬間に、ほとんどは「そういうキャラ」にしかならないんです。
だから、なるべくそういうのを外していかないと魅力的なキャラクターって生まれなくて。僕はそういうのを極力やらないように、ちゃんとキャラクターの台詞を読んで、その背景を読んで、設定を読んで付けていく、というのはやっています。
答えが遠回りになって恐縮なんですが、『No, I'm not a Human』は70人全員にバックボーンがあって、消防士や詐欺師、マフィアみたいな人がいたりします。キャラごとに、消防士だったら消防士が普段使うような言葉を使わせる。語彙やボキャブラリーをちゃんと与えていく。

例えば猟師だったら、猟師が使うような言葉をちゃんと使っていく、それは猟師というステレオタイプだからではなくて、猟師という生活をしているから。そういうものが自ずと出てくるような言葉を使わせるようにしています。
なんだかんだ同じ言葉遣いのキャラがいたら、ちょっとモブっぽく見えてくるじゃないですか。70人もいたら。なので、僕はある程度各々の喋り方の表を作っていました。普段はそこまでキャラの数は多くないのでここまでやらないんですが、そのクセみたいなものを表にして、なるべく分散させるようにしていました。
70人いたら全く一致するキャラはいなくて、何かはどこかがずれていて、みたいなことをなるべく考えて個性を付けています。当然、原文から離れない範囲でですが。

――聞いているだけで、頭を抱えそうな作業ですね。
nicolith:本当にすごく大変でした。最初は50人くらいいて、アプデで12人追加するって聞いた時は「いやもう、使える引き出しはもう開けちゃったから、12とか言われても無いんですけど」って思いました(笑)。
ただ結果的に蓋を開けたら、基本的に元のライターの方の腕がいいので12人各々の個性があって、それをちゃんと活かしていけば問題なかったですね。そういうバランスをかなり取ったのが『No, I'm not a Human』というゲームでしたね。
後から気付いたんですが、それだけユニークなキャラがいっぱいいるというのは、多分ソシャゲとかに近いのかなと。1つのインディーゲームでこれだけバックボーンのあるキャラクターを訳すことは無いと思うので、すごく手間がかかったタイトルでしたね。
――「Thank you」と書いてあるだけでも、何通りも考えなきゃいけないということですよね。
nicolith:そうですね。いろんなことを少しずつキャラごとに変えていったりとか、口調とか、縮約とか。例えば「ている」や「てる」だったり、否定も「ない」と「ねえ」、カタカナの「ネエ」で、エを小文字にして「ネェ」みたいな。そういうので、印象の差をつけることをやっていました。

――そのような細かい心がけがあったからこそ、日本でもキャラクターの人気が出たんじゃないかな、と思っています。
nicolith:幸いですよね。海外でも人気あるキャラクターが日本でも人気が出るというのは、それだけ上手くできたのかなと。元のライターの腕が良いのでキャラクターがインパクトある、っていうのもそうなんですけど、その辺りはホッとしますよね。
そういう意味では、特に「蒼白の狂人」は我ながらよくできたんだろうなと思いましたよね。ちゃんと人気が出て、ホラー大賞で賞もいただいたので。

蒼白の狂人は見てさっと訳したので、そんなに苦労した覚えはないんですが、結果的に独特なキャラになったかなと。もちろん、原文が良いからなんですけどね。
――nicolithさんの担当されたタイトルを見ると、画面に対してフォントが浮いていないと感じます。最近だと『Inkblood』とかですね。このフォント選びなども、ご自身で行っているのでしょうか。

nicolith:僕が担当したタイトルは、全部僕が何かしら関わっています。何かしらというのは、実は開発者が選んだものをそのまま採用するケースもあるからなんですよね。
例えば『Mouthwashing』とかって、実は僕はフォントを何も選んでいないんですよね。あれって途中で明朝体が出てくるんで、「分かってるな」という評価をいただくんですけど、あれは開発のWrong Organが全部選んでるんですよ。僕もそれを見て、ああ、これはもうベストだからこれで行こう、って言ったので。

そういうものもいくつかあるので、僕が結果的に全部決めているわけではないのですが、口を出せる立場にはいるので、ちゃんと関与するようにはしています。
画面に対して言うと、僕は元々DTPとかデザインがけっこう好きなんですよね。高校生の頃、DTPの本とか雑誌とかを好きで読んでいたので、フォントも割と好きだった。なので、画面全体として浮かない、ちゃんとゲームなので読みやすいフォントを意識してます。
画像にテキストが埋め込まれているゲームも少なくありませんが、一部は自分自身で直接画像を編集しています。開発に細かく調整してもらいたいときは、自分で比較画像や修正版のイメージを作ってサイズや行間などの数値まで指定して渡すこともありますね。そのほうが互いにスムーズなので。

特に『No, I'm not a Human』とかは手動でページをめくれるので、あまりすぐ読めなくても良いと思っているんです。長い文章を読むから、ある程度は読みやすいほうがいいと思うんですけど。ただゲームによっては、瞬間的にぱっと出て、ぱっと消える文章とかあるじゃないですか。そういうのはちゃんとすぐ読めるようなフォントを使わないといけないよね、とかは考えてます。

――ちゃんと考えられているんだな、と答え合わせのように今思いましたね。
nicolith:当たり前といえば当たり前なんですが、洋ゲーユーザーなら「このフォントだせえな」と思うことはみんなあると思うんですよね。けっこう台無しになるじゃないですか、物によっては本当にやめて欲しいな、っていうものが。逆にこだわりすぎて変なフォントを使われると、それはそれで冷めますし。本文フォントは目立つ必要がないですから。
とはいえ、雰囲気に合わせてけっこういろんなフォントは使っているんですけどね。僕のマイルールとして「Noto Sans」は使わないっていうのがあって。
Noto Sansって何かというと、Googleフォントが提供している汎用的なフォントがNoto Sansというフォントなんですね。Notoっていうのは「No Tofu」の略で、文字が化けて読めなくなって、豆腐のように四角くなるのが起こらないようにするコンセプトで作られたんですよね。だから、あらゆるゲームってNoto Sansがデフォルトで実装されているんですよ。楽なので。まあ、それが日本語のテキストが中華フォントになってしまう一因だったりするんですが……。

ただNoto Sansっていいフォントではあるんですが、ありふれすぎてるんですよね。なので、僕はNoto Sansはとりあえずで使わない前提にしています。見る人が見たら、使っただけでNoto Sansだなって分かりますからね。ちょっと変えるだけで、「フォント考えているんだな」って感じも出ますので。
――今まで翻訳したゲームの中で特に苦労したものや、1つの台詞や文章にとても悩んだ、印象深いものはありますか?
nicolith:これがめちゃくちゃあるのが『Mouthwashing』なんですよね。『No, I'm not a Human』は、全体でバランスを取るような苦労はしたんですが、そういう意味では実はあまり1個に苦労したとかはないんですよ。
『Mouthwashing』は、とにかくパンチラインが多いゲームなんですよね。印象的な心に残るフレーズがいっぱいあって、それをちゃんと日本語でも印象に残さないといけない。あのゲームって、それが売りじゃないですか。最初意味が分からなかったある言葉が、実はこうだったと分かってきたり、ゲームで何回も繰り返されているうちに呪いのようになっていって、プレイした後も忘れられない、みたいな。それがあの『Mouthwashing』というゲームにおける体験の重要な要素なので、それを日本語にしないといけない。
なのでパンチラインを訳すところは、本当に毎回めちゃくちゃ悩みましたね。例えば最初に出てくる「苦しみを祈る」ってフレーズがあって、これは苦労したフレーズの1つですね。原文が「I hope this hurts」という英語で、「hurt」は傷つけるという意味なんですが、この英語がどういう英語かというと、英語の慣用的な表現で「I hope this help」というのがあるんですよ。

「I hope this help」は典型的なビジネスメールでも使うもので、「お役に立てば幸いです」って訳されるんですね。相手にとってこれが役に立つといいね、というような文章です。
ただ「I hope this hurts」がその「I hope this help」をもじったものかどうかは一旦この場では置いておくとして、自分はそれを見た瞬間に「I hope this help」をもじったすごく変な英文に見えたんですよ。そんな苦しみを……苦しんで欲しいなんて言うなよ、みたいな(笑)。
それで、あれはゲーム冒頭にいきなりドカンと来るじゃないですか。あの言葉はゲーム内で何回も繰り返されて、最終的にプレイヤーの忘れられない1個のフレーズになると思うんですが、じゃあ「お役に立てば幸いです」をひねって「苦しみになれば幸いです」にしても長いし、くどいし。
よく英語って、翻訳して日本語にしたら短くなるって言うんですけど、『Mouthwashing』って英語がタイトすぎて、何故か日本語のほうが長くなることが多かったんですよ。これがまさにその典型ですね。原文はたった4語なので。
そのタイトさを演出しなければいけないし、「苦しみを祈る」って最終的に誰の言葉かもよく分からないじゃないですか。そういう風にも訳さないといけないと思っていまして。誰かの台詞みたいになった瞬間にもうダメだと思ってたんですね。
それで色々悩んだ挙句、「幸運を祈る」みたいなフレーズをもじって、「苦しみを祈る」ってちょっと変なフレーズを思いついたんですよね。で、これを思いつくのはそこそこで行けたんですが、問題はこれがゲーム冒頭に来ることなんですよ。
何かというと、これはけっこう大事なゲーム翻訳テクなんですが、ゲームの頭の方で「このゲーム翻訳ちゃんとしてるな」と思わせたら割と勝てるんですよ。

要はプレイヤーって、「あ、このゲームダメかも」って思ったら、いっぱいダメなところを探しちゃうんですよね。ちょっと読みづらいフレーズがあったら「これって変じゃないの?」って思っちゃうじゃないですか。それは僕もそうだから、分かるんですよ。だから冒頭こそ、これは信頼できるなと思わせるようにしたほうが絶対良くて。
――確かに、重箱の隅をつつきまくる体勢に入ってしまいますよね。
nicolith:そんな中で、最初に「苦しみを祈る」とか出たら「おい、やばいぞこれ」ってなると思うんですよ。実際、当時リリースされた頃にプレイ動画とかを見たらそうなっているプレイヤーがいて、それは別に間違ってないと思うんですよ。普通に変な言葉なので。
けど、もうあれはそこでパンチをかけるしかないし、幸い『Mouthwashing』はある程度いろんな人がプレイしたおかげで、そういうものだと思ってプレイしてくれてあんまりなかったんですが。やっぱり、これで本当に行くのか、っていうのには悩みましたね。最終的には、もともと英文も変なので、その味わいを尖らせていくのが仕事だろうということで「苦しみを祈る」が入りまして。
その後は、最初のクルーの掛け合いのところでまあなんとか信頼を取り戻せるんじゃないかな、スウォンジーとかダイスケの言葉遣いとかで。と祈りながら翻訳しました。『Mouthwashing』は、こういうフレーズが山程あるゲームですね。

――仰ったように、たまに原文が難しいのか、日本語訳が変なのか分からないゲームもあったりしますもんね。
nicolith:ありますね。翻訳者としては、翻訳と思わせない、要は最初から最後まで日本語で書いた文だと思わせるのが理想というのが1つあって、それは分かるんですが、現実問題だいたい分かっちゃってるじゃないですか。これは元々海外のゲームで、って分かったうえでプレイヤーは遊びますし。なので理想を前提として、自分にとってできるベストを尽くそう、というのでいつも考えていますね。
――私が『Mouthwashing』をプレイした時は、その前に『Arctic Eggs』をプレイしてnicolithさんのことを存じ上げていたので、「苦しみを祈る」には何の疑問も抱かなかったのですが、言われてみると最初に来て驚いてしまう人はいそうですね。
nicolith:それはいると思うし、当然だと思います。僕はCRITICAL REFLEXという会社と2年くらいずっと仕事をして、なんだかんだ今みたいに『Arctic Eggs』とか、会社のゲームを続けてプレイしてくださっている方がいて、ある程度こういうことはやりやすくなったと思うんですよね。プレイヤーの方に受け入れていただいているので、そこに関してはありがたいなと思っています。
――『Mouthwashing』も、例えばダイスケの言葉使いが若い男の子っぽくてキャラ付けがしっかりしていますし、スウォンジーとジミーのシーンの言葉遣いも詩的で印象に残りましたね。

nicolith:スウォンジーはとにかく翻訳が難しいキャラクターだったんですよね。原文からして詩的だし、難解な比喩もいっぱいあったんですよ。それをそのまま採用しているところも何箇所かあるんですが。英語でもすごく難しい比喩なんですよね。
あとはさっきも言った通り、日本語で開くと文字が入らないんですよね。『Mouthwashing』って縦2行で意外と文字数が少ないんですよ。その中でスウォンジーの台詞をそのまま出そうとすると、入らないことが多かったんです。

だからかなり短縮した、という。普通は英語より日本語のほうが短いんで、こういうことってないんですよ。僕がやった中では『Mouthwashing』と『UNBEATABLE』がこういうことめちゃくちゃ多くて、本当に大変でしたね。僕は基本的に文が短いタイプだとは思っているんですが、それでもなお大変でした。
なので『Mouthwashing』がリリースされるまではかなり怖かったですね。まあリリース時は毎回怖いんですが、その中でも特に怖かった。幸いプレイヤーの方に受け入れていただいて、ありがたいです。
――『UNBEATABLE』も日本語が長くなってしまったタイトルなんですね。
nicolith:『UNBEATABLE』は開発者がアメリカの方なので、アメリカのスラングだらけのゲームなんです。テキストが吹き出しの中に入っていて、一行あたり8文字、一行目は吹き出しの大きさの都合上7文字までで全部で五行しか使えないんですよね。しかも日本のマンガ調なので、きちんと改行を入れなくては話にならない。その英語がもうとにかくタイトすぎて、代名詞とかを使ってめちゃくちゃ省略しまくっているので、英語ですら難しいんですよ。

それを日本語でちゃんと書こうとすると収まりきらないことがいっぱいあって、なので、あの手この手でなんとかした感じですね。最終的には意味を削らずほとんどできたんですが。とても大変だったし、一番手間がかかったタイトルですね。
――これは個人的に気になることなんですが、『THRESHOLD』では主人公の口調が「どうして◯◯なんだろう」という感じで可愛らしい印象を受けたんですよね。あれは何故そのようにしたのでしょうか。

nicolith:『THRESHOLD』というゲームで大事なことって、あれは最初プレイヤーの名前入力から始まるんですよ。あの主人公は、プレイヤーの分身なんですよね。それでいて、無色のキャラクターじゃないですか。なので、あの主人公の口調は変なキャラが立っていないほうがいいんですよ。なるべく素朴なキャラで、ブラック労働環境にいるのに健気に働くじゃないですか。
あのゲームにはいろんなエンディングがあって、終わりは決まってないんですよね。それで、例えばブラック労働環境の典型で分かりやすいのは放り込まれて悪態をつきながら働く、みたいなのがベタじゃないですか。もちろんそういう風にしてもいいんですが、別にそういうゲームじゃないんですよね、『THRESHOLD』って。
という中で、主人公がある程度どんな展開になってもいいようなキャラクターの口調にするべきだと思ったんですよね。自分の分身でもあるので。最初はちょっとコミカルなところもあって、「働くぞ」みたいな。だって、あいつはあの環境で働きに行ってますからね。
それに、先輩の「Mo」がいるので、主人公は後輩キャラでもあるじゃないですか。というポジションでやっていくのを考えた時に、ああいうちょっとコミカルな感じもある特徴になっていきましたね。

さっきのホラーの話に戻るところもあるんですが、僕はキャラクターの台詞を実際の口語に寄せようとする傾向があるんですよ。
日本語の歴史的にいうと「言文一致」という話があって……オタクな話をするんですが、日本語ってもともと言葉の言語と書く言語って全然違う言語だったんですよね。例えば、中学高校で古典って習ったと思うんですが、じゃあ当時の人があの古典みたいに「もののあはれ」みたいな喋り方をしていたかというと、していないんですね。
日本語って要は中国の言語とかに影響を受けてああいう風な書き言葉から成立しているので、当時の人間が喋った言葉とは分離しているんですよ。
それがずっと続いていたんですが、明治時代に言文一致運動という「書く言葉も喋るように書けばいいじゃん」みたいな話があったんですよね。というところから、今どんどん私たちが書いている、喋るような文章を書くようになったんですよね。SNSとかはまさにそうだと思うんですけども。
僕もそういうのを学んでいますし、喋っているように文章を書けばいいじゃんとも思っているんですよね。キャラクターの台詞って口語じゃないですか。

で、ホラーの特徴なんですが、ホラーって実は現代が舞台のものが多いんですよ。何故かというと、プレイヤーが恐怖しないといけないので、ある程度没入できないといけないんですよね。そうなってくると、自ずと現代が舞台になっていく。ということは、現代的な言葉遣いをしないといけなくなってくる。
そうなると、口語が相性良くなってくるんですね。『THRESHOLD』も現代かはともかく、なんだかんだ現代的な舞台じゃないですか。正確にいうと、近代の話ではあるんですが。なので、口語的な口調になってくる。
口語的っていうと、普段喋っていることもあって、ある程度コミカルな部分もあると思うんですよね。コメディとホラーは表裏一体で、心を揺さぶるという点では同じなので、僕はその辺を意識して口語的な口調を使うようにしていますね。なるべく生々しい喋りの言葉っていうところもあって、『THRESHOLD』はああいう感じになりました。
――確かに、時代は違うけど扱う題材は現代的なホラーもかなりありますもんね。他のゲームの話になりますが、『Arctic Eggs』も短い中で印象に残る台詞がたくさん出てきました。こちらもそのようなことなどを意識して訳されたりしたんですか?

nicolith:『Arctic Eggs』なんですけど、こういう緻密なことは何も考えてないんですよね。そんなにボリュームの多いゲームではないので2日くらいで翻訳したんですが、スラスラ翻訳したら、スラスラあれが出てきたんです。
開発者のThe Water Museumがそういうテキストをそもそも書いているのと、なんかはまったというか。自分で覚えているのが、最初に部屋から出た後すぐ近くにいる人が、卵を焼いた後に「昔かたぎだね」と言ってくれるじゃないですか、あれが出た瞬間に、「このゲームってコレなんだ」と思ったんですよね。

あれは別に捻ったわけじゃなく「old school」とかだったんですけど、このゲームはこういう感じでいこうと思ったんですよね。ああいう極寒の世知辛いところでみんなが暮らしてる、そこで卵を焼いていく話なので、やっぱりそこに暮らしている登場人物には人間味がないといけないと思ったんですよ。
僕さっきから人間の話ばっかりしているので、これお前の趣味だろってなる気もするんですけど(笑)。いろんなキャラと喋っていく中で、ただわけのわからないことを言っているわけではないんですよ。みんな各々の生活があるので。
あのゲームって主人公に対して喋ってないんですよね。2人の人間が喋っていて、横で主人公はとにかくタマゴを焼いていく。なので、主人公に対して分かりやすいように喋っているわけでもないんですよね。普段の私たちの会話と同じように、普通の会話だと思って訳していました。

そういうコンセプトが最初の頃にがっと固まって。元々itch.ioでプレイしてはいたんですが、あとはもうサラッと訳して。ただ流石に意味がわからない台詞もいくつかあったので、The Water Museumに聞いたんですよ。
僕は分からないことがあったら聞けばいいと思うんですが、『Arctic Eggs』は短い割に一番質問が多かったゲームですね。その答えはここでは秘密にします。
――翻訳に携わっていない人間からすると、2日でというのは驚きでもありますね。
nicolith:プロになってくると、そのスピードじゃないと食べていけないので。とはいえ、テストプレイしたらエンジン標準の自動改行だと美しくテキストが表示されなかったので、すべて手動改行を挿れてテキストを調整してレイアウトを整えて、などなど手間はかけてるので、実際はもう数日かかってます。
あとは、海外のインタビューでThe Water Museumが言っていたのは、『Arctic Eggs』を書く時に「カウボーイビバップ」を見て参考にしてたみたいで。僕は「カウボーイビバップ」が死ぬほど好きなんですよね。普段何か流すものがなかったら、とりあえず「カウボーイビバップ」を垂れ流すくらいには。なので、相性が良かったのかなと。翻訳する時は言われなかったので、後からインタビューを見て知ったことだったんですが。
――偶然だったんですね。
nicolith:全然意識はしてなかったです。たしかに、「カウボーイビバップ」もSFでああいう世知辛いものが出てくるストーリーがけっこうあるので。本当に「カウボーイビバップ」は好きで、ビデオでVHSで録画して見て、DVD買ってブルーレイでも買って見てるんですよね、好きすぎて。なので、たまたま相性があって良かったんだろうなというのが『Arctic Eggs』です。
――最後に、ゲームをこれから翻訳したい、また言語を学びたいと思っている人に向けて、意識したほうがいいことやアドバイスなどはありますか?
nicolith:全然ないんですよね、自分も勉強してないから。日本語は違うんですが、自分の場合は言語って学ぶ対象じゃないんですよ。要は英語が好きだから勉強しているとかは一切ないし、英語を勉強して何かがしたいとかは全然なくて。どちらかというと、好きなゲームが英語しかなくて、やるために英語を読んで、他の人に遊んでもらうには翻訳しないといけなかったんですよ。
英語のゲームはけっこう遊んでいたので、それで学んだ部分はあったと思うんですが。つまり何が言いたいかというと、仕方なく英語を使う、みたいな方が身になるんじゃないかなと。ただ英語を勉強するっていうよりは。なので、言語を勉強して何かしたいことがあったら、とりあえずそれをやればいいと思うんですよね。
よくゲーム翻訳をしたいんですけど、という相談をもらうことが多かれ少なかれあるんですが、「やればいいんじゃないか」としか答えてなくて。やると分かるんですが、翻訳ってけっこう大変なんで。やりたいものがないと多分辛いと思うので、翻訳したいゲームを見つけてプレイして、面白かったらやればいいんじゃないですかね?と答えています。
――本日は色々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!












