PCでビデオゲームをプレイするゲーマーであったら「GOG」という名前は一度は聞いたことがあるかもしれません。しかし「実際にどんなサービスなのかはよく知らない」という方も多いことでしょう。
GOGはポーランド発のPCゲーム配信プラットフォーム。AAAからインディーまで新作も扱っていますが、大きな特徴のひとつとして挙げられるのは、古いゲームを現代のPCで遊べるように改修して販売していること。
初代『バイオハザード』『ディノクライシス』『サイレントヒル4』といったかつてのクラシックタイトルが、高解像度やゲームパッドへの対応といった改善を施されたうえで並んでいます。コピー防止の仕組み(DRM)なしで販売していることでも知られており、購入したゲームを手元で長く遊び続けられる点もGOGらしさの一つです。
2008年に「Good Old Games」として誕生したGOGは「Making Games Live Forever」という理念を掲げ、保存プログラムやMod配信、コミュニティ投票型の「Dreamlist」といった独自の取り組みを展開しています。
今回筆者はワルシャワのオフィスを訪れ、事業開発責任者のバルテク・フィエトキェヴィチ氏によるプレゼンテーションと、オフィスツアーの内容をお届けします。

CD PROJEKT発、「Good Old Games」から始まったプラットフォーム
GOGの設立は2008年。もともとはCD PROJEKTグループの一員として「買えなくなってしまったクラシックゲームを買えるようにしたい」というビジョンから生まれました。当時の名称は「Good Old Games」で、緑と黄色のロゴが目印だったそうです。
当時のCD PROJEKTはまだ『ウィッチャー』を発売したばかりの小さなスタジオでしたが、やがて『ウィッチャー3』(2015年)で大きく飛躍。GOGもそれに合わせて他の開発者やパブリッシャーを受け入れるプラットフォームへと成長し、ゲームの起動や実績の確認、フレンドとのプレイができる独自のアプリ「GOG GALAXY」も提供するようになりました。

2025年12月、CD PROJEKTの共同創業者であり、GOGの設立にも携わったミハウ・キチンスキ氏が全株式を取得し独立しました。しかしオフィスの建物は、現在もCD PROJEKT側のものを利用しているそうです。独立後に注力しているのが、クラシックゲームの保存に関する各種サービスだと同氏は話します。

GOGのミッションは「ゲームを永遠に生かすこと」
GOGが掲げるミッションは「ゲームを永遠に生かし続けること」です。『サイレントヒル4』、Ubisoftの『Heroes of Might and Magic 3』のようなタイトルを探している人が、GOGが存在する限り最高の状態で遊べるようにしたい。現在のPC環境でも将来のPC環境でも動き、ゲームパッドにも対応し、さまざまな改善が施された状態で提供することをGOGで購入したタイトルについては保証するといいます。
世界中の開発者やパブリッシャーとも協力しており、特に自慢げに語られたのがカプコンとのパートナーシップです。『バイオハザード』シリーズや『ディノクライシス』、『ブレス オブ ファイアIV』などのタイトルをGOGに迎えており、さらに日本のスタジオからも、より多くのクラシックゲームをGOGに迎える準備を進めているという報告もありました。
GOGの規模は「Steamより小さい」と率直に認めつつ、AAAスタジオからインディーまで、世界の主要なパブリッシャーの多くと協力していると説明します。毎日大量の新作がリリースされる時代だからこそ、昔のゲームを遊びたくなったときにいつでも確実に動く状態でGOGにある環境を作りたいのだそうです。
コミュニティが決める「GOG Dreamlist」
クラシックゲームユーザー向けの機能として最初に紹介されたのが「GOG Dreamlist」です。過去にリリースされたゲームと現在リリースされているゲームの「究極のウィッシュリスト」で、GOGで購入するゲーマーだけでなく、Steamで購入するゲーマーも含めて「どのゲームをGOGに持ってきてほしいか」を集める仕組みだといいます。

主な目的は、もうどこでも買えなくなったクラシックゲームの中から、GOGが確保に動くべきタイトルをコミュニティに教えてもらうことです。
『ポピュラス』『ダンジョンキーパー』などで知られるピーター・モリニュー氏が、Bullfrog Productionsを離れた後に設立したLionhead Studios。その代表作である『ブラック&ホワイト』が、現在の復刻希望ランキングで上位に入っているといいます。しかし、権利関係が極めて複雑で、復活は容易ではありませんが「数年ではなく、できれば数ヶ月で」と確保に向けた交渉を続けているそうです。
要望は古いタイトルに限らず、2年前に発売されたゲームが寄せられることもあります。その際は事業開発チームがパブリッシャーに連絡を取り、GOGへの導入を交渉します。GOG Dreamlistはコミュニティとの接点であると同時に、開発者に対して「どのタイトルをGOGに持ち込むべきか」を示すシグナルにもなっています。
300本以上が対象の「GOG Preservation Program」
GOGが行う復刻の中核が「GOG Preservation Program」という保存プログラムです。同氏によれば、現在300本以上のタイトルが対象で、このバッジが付いたゲームはGOGが存在する限り永遠にサポートされます。

ゲームのコードには極力手を加えず、高解像度への対応やゲームパッドのサポート追加、コミュニティが長年求めてきた各種の修正といった改善を、GOG自身が引き受けます。古いゲームをいじるのは複雑な作業になりがちなため、その手間を自社で担うという位置づけです。
このプログラムは「単なるバッジ以上のもの」と強調されました。プログラムに含まれるゲームは、まだ含まれていないゲームより売上が高い傾向にあり、パブリッシャーもその価値を認識しているといいます。
目標は、誰かがクラシックゲームを探してGOGを訪れたとき、そのタイトルがすでにプログラムに含まれていて、常に最高のバージョンが用意されている状態にすることだそうです。
ModをGOGが検証・配信する「GOG Mods」
もう一つの取り組みが「GOG Mods」です。ModはゲームのDLCのように価値のあるものが多い一方、ゲーマーにとってはインストールが難しいことも少なくありません。GOGは2年前からこの問題に取り組み、現在は20以上のModを提供しています。
クリエイターに連絡を取り、NDAや合意書を交わし、権利面も含めて安全に導入できる形に整えるのはGOG側の仕事。Mod自体は無料ですが、遊ぶには対象となる本編の所有が必要なため、本編の売上を押し上げる効果もあるそうです。
最大の成功例が『Fallout 4』の大型Mod『Fallout London』です。Modのローンチ後わずか1週間で、それまでの2年間を上回る本数の『Fallout 4』が売れたといいます。

そんなGOGの取り組みを支えているのが、月額5ドルで支援する「GOGパトロン」です。パトロンは保存すべきゲームの選定を手伝ったり、特定のゲームの権利状況に関する情報を提供したり、時には開発者への連絡を手伝ったりするほど熱心なコミュニティで、30年前のゲームがいまも価値を持つことの証明でもあるとのことです。
また、GOGは復刻したタイトルを単独で囲い込むつもりはないといいます。たとえば『バイオハザード』はGOGでの独占販売の後、カプコンによってSteamでもリリースされました。
GOGはこれまでに保存したゲームのユーザー評価が5段階で4を下回ったものはないとし、品質の証だと話しています。今後はさらに踏み込み、新しいエンジンでゲームを再構築してグラフィック機能を追加したり、クラシックゲームのリマスターに取り組んだりする計画もあり「近いうちにお知らせできる」としています。
質疑応答——オンラインゲーム、ローカライズ、AI
質疑応答ではAIの影響についての質問が出ました。GOGは生成AIを使わず、ゲームの魂は守るという姿勢を明言しました。
一方で、古いコードのリバースエンジニアリングや修復といった技術的な作業では、数週間から数ヶ月かかっていた壁をAIで1日で乗り越えられる可能性があるとして、すでに調査に着手しているそうです。
また「クラシック」の定義についても質問が出ました。社内の目安は「発売から10年」ですが、保存プログラムに追加できる条件は実際には「開発者がそのゲームのサポートを終了したとき」です。
2年前に発売されたゲームでも、開発者が次のプロジェクトに移っていれば対象になりうるとのことで、数日前にはベセスダ・ソフトワークスの『Ghostwire: Tokyo』を追加したと話していました。













