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【キャッチコピーでみるゲーム史】第3回『俺より強い奴に会いに行く』

キャッチコピーでみるゲーム史、 第3回は「俺より強い奴に会いに行く」です。おなじみカプコンの格闘ゲーム『ストリートファイターII』で使われ、後にシリーズを象徴する言葉ともなっていったフレーズです。

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キャッチコピーでみるゲーム史、 第3回は「俺より強い奴に会いに行く」です。

ゲームにおけるキャッチコピーには、大きく分けて3つあると思います。

【1】ゲーム性を示すもの
【2】世界観(物語)を示すもの
【3】ゲーム性と世界観の両方を示すもの


【1】のゲーム性を示すものは、ジャンルを問わず様々な作品で使われていますが、どちらかと言えばインパクト重視かと思います。【2】の世界観や物語を表したものは、RPGで比較的多く見られます。これは、RPGが「物語を伝える」ことに重きを置いていることもありますが、ゲーム性において大きな差異がないということでもあります。逆に言えば、【1】のキャッチコピーを使っているRPGは、ゲーム性に特徴があるRPGだということです。

そして【3】は、ゲーム性(ゲームのシステム)と世界観の合致がある作品であるという前提のもと、両者を同時に表す言葉。それがピタッとハマったとき、それは“良い”キャッチフレーズといえるのではないでしょうか。


さて、今回とりあげる「俺より強い奴に会いに行く」は、おなじみカプコンの格闘ゲーム『ストリートファイターII』で使われ、後にシリーズを象徴する言葉ともなっていったフレーズ。世界を巡りながら“強い奴”と戦っていく、というゲームの世界観を表しており、とりわけ主人公のリュウの生き様を示すものとして、シリーズの歴史を通じ強い印象を残しています。

また「対戦格闘」というゲーム性の特徴のとおり、他のプレイヤーと戦うことができる本作では、ゲーセン(ゲームセンター)文化のもと、遠征を行ったり大会を開いたりといった、まさに「俺より強い奴に会いに行く」をプレイヤーが行うという側面もありました。

これはゲーセンのみならず、「昇竜拳を自在に繰り出せるようになった」ことをやたらと自慢する“俺より強い奴”かもしれない友達の家に乗り込み、ソニックブームでクールに粉砕するーーといったような、格闘ゲームの黎明期であったコンシューマーでも同様でした。

「俺より強い奴に会いに行く」は、ゲーム性と世界観の両方を示すものとしてこれ以上ないものとして強い印象を残しています。しかしそれだけでなく、しだいに作品やシリーズといった枠組みを超え、格闘ゲーム文化全体を表象するものとなっていったのです。

ゲーム性と世界観の両方を示すだけでなく、ゲーム文化をも表象する。こうしたキャッチコピーはあまり例がありません。

このコピーが再び注目を集めるようになったのが、近年の“(プロ)格闘ゲーマー”たちの活躍でした。「EVO(アメリカ最大級の格闘ゲーム大会)」などで海外へ飛び出し、世界中の“強い奴”と戦うーー。ネットの普及もあいまって、こうした状況を私たちも多く目にするようになっていったとき、このコピーは彼らの生き様を表すものとして、さらなる強度を獲得したのです。

ゲーム画面で相対するキャラクターのように存在する、それを操作しているプレイヤーたち。ゲーム内の世界と、その上部の現実世界が「俺より強い奴に会いに行く」という言葉を媒介として同調していくとき、私たちは、名のあるプレイヤーたちを、あたかもゲーム内のキャラクターのように見ているのです。


プロ格闘ゲーマーたちのなかでも、特に名前を知られているのがウメハラ選手です。彼がリュウを使ったときの「ウメリュウ」という言葉には「ウメハラが使うリュウ」という単純な意味を超えた、「ウメハラというプレイヤーと、リュウというキャラの同調」がある、と個人的には思っています。そして、そう思わせるのは、両者に「俺より強い奴に会いに行く」という共通の生き様を見るからです。

余談ですが、「俺より強い奴に会いに」いった彼ら格闘ゲーマーたちが戦いに敗れたとき、つい想起してしまう「くにへ かえるんだな。 おまえにも かぞくが いるだろう…」というガイルの名フレーズも、“くに”を飛び出しているからこそリアルに立ち上がってくるものだ、といえます。
《Kako》
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