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改めて紐解く「Riot Games」と『リーグ・オブ・レジェンド』―MOBAの金字塔の歴史と未来は(後編)

前回に引き続き、後編では『リーグ・オブ・レジェンド』がこれまで歩んできた道のりから、国内外の配信者カルチャー、ファンコミュニティーの盛り上がりについて紹介します。

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改めて紐解く「Riot Games」と『リーグ・オブ・レジェンド』―MOBAの金字塔の歴史と未来は(後編)
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改めて紐解く「Riot Games」と『リーグ・オブ・レジェンド』前編に引き続き、後編では『リーグ・オブ・レジェンド』がこれまで歩んできた道のりから、国内外の配信者カルチャー、ファンコミュニティーの盛り上がりについて紹介します。『LoL』やMOBAの概要、競技シーン、学生リーグについては前編をご参照ください。

『LoL』が歩んだ2017年~2018年


ここで、一旦2017年夏と2018年夏のメタを比較してみたいと思います。まず、2017年夏は従来の『LoL』の基本的な形であった、EUスタイルと呼ばれる「トップ、ミッド、ジャングルに1人ずつ、ボットにマークスマンとサポートを置く」というスタイルが引き続き確立していました。タンクやオフタンクと呼ばれる壁となるチャンピオンに、ダメージを出しやすいジャングラー、そして魔法ダメージを出すミッドに、マークスマンとメイジ系のサポートが通常の構成でした。

当時、リワークされて非常に強かったガリオや、チャンピオンのデザイン上、とてつもないシナジーを生み、修正が入っても強かったザヤ・ラカンのボットコンビなどが非常によく使用されていました。

一方で、2018年夏は激動とも言える調整が施され、攻撃速度とクリティカルを中心としたビルドをするAS Crit型マークスマンが大幅に弱体化、さらにタワーをはじめとするオブジェクトのHPの低下もあり、本来であればマークスマンがいるはずの場所に、トップで活躍するファイターだけでなく、通常であればトロールピックと呼ばれ、推奨されないようなチャンピオンまでがピックされ活躍し、もはやなんでもありの状態になっていました。

さらに問題となっていたのが、ミッドにサポート系のチャンピオンを置き、ジャングラーにミッドが稼ぐことのできるゴールドを渡す「ファンネリング」という全く新しい戦法も発見され、プロシーンも今までに見たことのないようなメタに翻弄され、メンバーの大半を入れ替えたチームまで出てくることになってしまいました。

それを受け、Riot Gamesは修正を行い、現在ではEUスタイルが機能するように戻っていますが、『LoL』はメタが常に移り変わるように調整が行われ続けているため、時にこのような予想だにしなかった現象が発生することもあります。2018年は非常に稀と言えますが。

また、年末は「プレシーズン」とされ、来たる新シーズンに向けて、シーズン中には行えなかった大幅な変更がテストされることになります。2017年末には、ルーンとマスタリーで成り立っていたものが、1つのルーンとして全く新しいものに再構築。アイテムや経験値にも多くの変更が施され、ジャングル内のモンスターの経験値も変更されました。

さらに大きな変更として、サモナーレベルLv30が上限であったものが撤廃され、ゲーム内通貨のIPは刷新されブルーエッセンス(BE)となり、ゲーム内のUIやシステムも多数変更され、より洗練されたものとなりました。特に、ルーンは従来であればIPを消費してそれぞれ別のものを購入する必要があったものがなくなったため、チャンピオンをより早く購入することができるようになり、初心者とLv30のプレイヤーとでは大きく差があったものが、現在はシステム面では対等に戦えるようになったのは、今から始めるプレイヤーにとっては非常に嬉しい変更とも言えます。

今後のアップデートの予定として、チュートリアルの改善を含む、初心者により優しい仕様が多数実装される予定となっています。来シーズンにはロール別のランクシステムも導入予定で、それぞれのロールにおいて自分がどの程度まで極めることができるのか、といったことも一目でわかるようになります。

米・中・韓・欧州の『LoL』シーン


世界各国の有名プレイヤーによる見逃せないシーンをご紹介します。

◆Bjergsen


殻にこもった少年時代を過ごしたBjergsen(ビャーグセン)は、ひょんなことから『LoL』プロ選手を相手に“タイマン”で勝利。それをきっかけに、北米プロシーンで大活躍を見せる


◆Faker


1vs3を捌く『LoL』最強Midレーナー Faker。世界最強を決める国際大会に出場するチームでも捕まえられない

アメリカのリーグ NA LCSは、今確実に乗っているTeam Liquid、100 Thievesが見どころ。ヨーロッパのリーグ EU LCSは、再び常勝チームとなったFnaticが圧倒的な強さを見せつけており、他チームを寄せ付けていません。また、一方で成績はふるっていませんが、ファンの盛り上げ方が非常に上手いUnicorns of Loveは、エンターテインメント的な観点からも要注目です。

韓国リーグ LCKは、2017年世界チャンピオンのSamsung Galaxyのチーム名変更後であるGen.G、調子は崩しているもののスタープレイヤーのFakerらが在籍するSKT T1はもちろん注目株。中国リーグ LPLはほぼ無敗のInvictus Gaming、さらに有名選手が多数在籍するEdward Gamingも注目しておきたいところです。

そのほか海外で注目したいストリーマーとして、競技シーンとは離れたプレイヤーではあるものの、見ていて楽しい個性的なストリーマーをご紹介します。

◆IWillDominate



Team Liquidにて活動していた元プロ兼コーチ。現在は同チームのストリーマーとして活動しており、主にジャングラーをプレイしています。攻撃的なプレイをすることが多く、ランクマッチでもプロを引退した現在でもトップクラスであるチャレンジャー帯に所属しています。

◆BunnyFuFuu



元Cloud9のサポートで、現在は同チームのストリーマーとして活動しており、本来使われないはずのチャンピオンだけでなく、ネタビルドでプレイすることも多々。顔芸も随所に散りばめられているだけでなく、オチもついているのが面白いところです。

日本の『LoL』シーン


世界だけでなく、国内の公式リーグ「League of Legends Japan League(LJL)」も見逃せません。動画と共に、見どころや特徴をご紹介します。

◆Ceros



ファンから「皇帝」と称されるDetonatioN Focus Meのミッドレーナー。世界大会では広すぎるほどのチャンピオンプールで注目を集めることも。

◆YutoriMoyasi



PENTAGRAMのボットレーナー、フラッシュを敵へ突っ込むために使う「前フラッシュ」など、攻撃的かつ非常にアグレッシブなプレイスタイルで評価が高いです。

日本を含む世界共通で言えることですが、「韓国のプレイヤーが抜きん出て強い」といった点には目を向けざるを得ません。チームに与えられている「外国人選手枠2枠」のうち、どのロールに強い韓国人選手を入れられるかというところに、終始注目されてしまう展開となっています。他国のリーグから見るとLJLの歴史は短いものですが、ある程度年数を重ねた今では、選手もチームもノウハウや経験を積み、着実に実力をつけてきています。

LJL初期は「DetonatioN Focus Me」が、そしてここ二年は「PENTAGRAM(旧Rampage)」がトップという状態。2018年は「DetonatioN Focus Me」が再び力をつけており、この2チームは国内でも間違いなくトップを争う注目チームと言っても過言ではありません。しかし、ジャングラーにTussle選手(元PENTAGRAM)を迎え、韓国語と『LoL』を学ぶために3ヶ月韓国留学を行ったEnty選手が在籍する「Unsold Stuff Gaming」は、記事執筆時では「PENTAGRAM」を抑えリーグ内2位についており、非常に刺激的な状況となっています。

観戦するときは、もちろん自分の好きなチームを応援すれば良いとは思いますが、やはりリーグの1部で長く活躍しているチームが他チームと比べてワンランク上の実力であるのは否めません。しかし、競技シーンに触れたことがないのであれば、是非お気に入りのチームや選手を見つけて応援してほしいですし、その方がより『LoL』を楽しむことができることでしょう。また、LJLは会場であるRed Bull Gaming Sphere Tokyoで開催されており、会場で入場整理券が配布されているため、現地に足を運んでみるのも一興。ナマで観戦するプロのプレイングには、目を見張るモノがあります。

国内のストリーマーも多数いますが、その中でも見ておきたいストリーマーをご紹介します。

◆Rainbrain



TwitchでよくピックアップされているRainbrainさんはおすすめ。LJLの最初期に出場していた元プロでもあります。

◆ケイン・コスギ



忘れてはならないのがポジティブすぎるほどのアスリートでもある、ケイン・コスギさんも必見です。動画はStylishNoobとのデュオプレイ。

◆eyes



LJLのキャスターも務めており、ケイン・コスギさんにコーチングも行っているeyesさんも押さえておきたいところ。時折他国リーグの解説を個人配信で行っているのも注目ポイントです。

国内外のファンのムーブメント


地域・イベントを問わず、『LoL』のプレイや観戦だけでなく、コスプレを楽しんでいるファンが多数存在します。ANIME EXPO、Pax Eastといった、アニメ・ゲーム系の大きなイベントでも多数見られ、YouTubeにも動画が多数アップロードされています。

性別・種族(?)を問わず様々なチャンピオンのコスプレが見られる

北米Cloud 9のADC、Sneakyも何故か女性チャンピオンのコスプレをストリーミング中に行っており、度々話題になっている

そして、日本でもコミックマーケットなどのイベントで海外同様にコスプレが楽しまれているだけでなく、ファンアートや同人誌といった様々な創作活動も行われており、公式でもファンアートが掲載されることも多々。特にイベントが実施される際には、コミュニティアーティストという形でイラストレーターがファンの中から起用され、公式素材となることも珍しくありません。執筆時点での最新イベントである「日本限定イベント・プールパーティ SPLASH!」でも、コミュニティアーティストが描き下ろした絵柄のハンドタオルセットが、限定プレゼントとして用意されています。

今後の『LoL』に望めるもの


e-Sportsシーンにおいては、定期的に発生するメタの変更と予定外の戦略の発見により、2018年6~7月あたりに大きく戦略が変更され、海外チームでもトップ選手がベンチ入りするなど、ファンとしても非常に胸が痛い時期でもありました。一方、Riot Gamesもその問題を不健康とし、即座に改善に取り組んでおり、従来の体制に戻りつつあります。もちろん、変わりゆくメタを楽しむことは可能で、それに対応していくチームや選手、そして新しい戦略を発見するトップチームが出てくる様はいつ見ても面白い展開となります。

毎年開催の世界最強チームを決定するイベント「Worlds」も年々演出が豪華になっており、『LoL』初心者やe-Sportsに詳しくない方にとっても一見の価値があり、大会としてもより見応えがあるように変化しています。毎年6月頃のミッドシーズンに開催される「Mid-Season Invitational」、さらにエキシビジョンである、Worlds後に開催される「All-Star」も1vs1を含む様々なマッチが開催され、競技シーン以外の楽しみも十分にあります。国内外を問わず、お気に入りの選手がそういった大会に出場できなかったとしても、最初から最後まで見てしまうほどの熱量と面白さがあります。

Worlds 2016のZeddのOpening Act、毎年書き下ろされる楽曲が披露されるだけでなく、プロジェクションマッピングで『LoL』が表現された 

また、『LoL』の特徴として、チャンピオンそれぞれに「ロア」と呼ばれる物語があり、チャンピオンそのものに大きな変更が入る場合は、ロアが大きく変更されるということはあるのですが、世界観やキャラクター同士の繋がり、チャンピオンの出で立ちと彼らの背景までが楽しめます。それだけでなく、カッコ良さや可愛さ溢れるキャラクターを元に、自身でファンアートを描いてみたり、グッズ制作をしてみたりと、二次創作をしてみるのも良いかもしれません。もちろんそれを楽しみ、ファン同士で交流できるのも『LoL』の良さの1つです。





Game*Sparkでは、「今から始める~」のガイド記事や大会レポなどをお届けしてきましたが、『LoL』そのものは、プレイヤーとしても観戦側としても、2018年の今は非常に面白い状況となっています。国内リーグも成長しましたし、以前と比べより成熟したプロシーンが楽しめるだけでなく、ゲーム本体もUIやシステムが刷新され、より新しく『LoL』を始めやすいようになっています。

従来であれば、現在のルーンシステムは、ルーン/マスタリーシステムとそれぞれに分かれており、ゲーム内通貨を用いてチャンピオンに合わせたルーンを購入する必要もあり、揃えるだけでも非常に大変でしたが、現在はマスタリーシステムと統合され、Lv上昇で順次開放されることもなく、最初から全ての機能が開放されるようになったため「初心者にとって辛い時期」というものが大きく緩和されています。

また、競技シーンの観戦面も洗練されていて、ゲームクライアントで試合の開始通知が届くようになりプロのゲームを見逃しにくくなったということもあります。LJLも気軽に見に行けるような「日常的イベント」感が出てきましたし、より競技シーンが身近になった今、プレイを始めるにも観戦を始めるにも良いタイミングです。
《kuma》

kuma

作詞家/作編曲家/元Esports競技勢。FPS、アクションRPG、シミュレーター系が主食。ハードウェア・ソフトウェアレビュー、インタビューなどをやっています。

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