平成ゲームメモリアル第3回「インターネットにつながり始めた時代―PCゲームの潮流」 4ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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平成ゲームメモリアル第3回「インターネットにつながり始めた時代―PCゲームの潮流」

平成の時代で起きた、ビデオゲームの出来事についての座談会「平成ゲームメモリアル」。間もなく新元号が発表されますが、第3回は21世紀初頭の洋ゲーとPCゲームの躍進を熱く語ります!

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PCゲームとMOD文化が育まれ広がる時代


Arkblade一方で海外のPCゲームでは、フライトシミュレータ、スペースコンバットシミュレータや、ターン制のコアなストラテジーのような複雑なタイトル群が00年代後半にかけて一旦注目の勢いを落としていくこととなりました。元々ニッチだったものが更にニッチになっていったのです。

流行り廃りというものもありますが、「小さなものから大きなものへ」という舵取りに一翼を担っていたジャンルです。しかし、より遊びやすく、馴染みのあるテーマのゲーム群が同じ方向に向かったため、ゲーマーの興味もうつろっていったのかも知れません。

ところで進歩といえば、先程お話がありました『Oblivion』だけでなく、その前作『The Elder Scrolls III: Morrowind』もゲームとしての大きな変化があった作品ですね。

SHINJI-coo-K布石としても単体の作品としても『The Elder Scrolls III: Morrowind』は本当に存在が大きくて、ゲームサイズ(世界の規模)自体も巨大なんですよね。自分は『Oblivion』から遡るようにプレイしてみたんですが、出来る事の多さ・細かさに度肝を抜かれました。

Arkbladeもちろん、そういったスケールの大きさも同作の魅力でした。特筆すべきは、当時の時点でMOD対応、エディタのシステムがほぼ現代に繋がる形で完成されていたのも大きいかなと。

そこには、間違いなくその後『Fallout 4』や『The Elder Scrolls V: Skyrim』へと至る源流がありました。当時のインパクトの強さ、多くの数のMODが瞬く間に広まったことを思えば、インターネットを使った意義の大きさと、日本とは異なるゲームのあり方を明確に意識させられる作りになっていました。

公式MOD制作ツール『TES Construction Set』

SHINJI-coo-Kゲームの改造であるMODの作成や利用を、拒むどころか作成ツールを配布するというのはすごいと思いました。自分はMODを愛用するタイプなんですが、そう至るのに『The Elder Scrolls』シリーズの影響は大きかったです

葛西祝コンソールゲームメインだった自分からすると、メーカーがMODを良しとして、ユーザーコミュニティを生かす方向に動いてたことも衝撃的でしたね。リリースされたゲームに手を加える発想があんまりなかったし、ユーザー主導の文化があることがすごいと思いましたよ。

SHINJI-coo-K洋ゲーとPCゲーム、という観点で見るとMOD文化は語らざるを得なくなっちゃいますね。この話題になるまでうっかり失念していました(笑)

G.SuzukiMOD対応と言えば、『BF1942』や『メダル・オブ・オナー』を筆頭に色々なものが出ていましたね。特に『BF1942』の人気MODのひとつの『Desert Combat』では、MODの有料化の話も出ていました。(結果的に有料化されなかった)当時はあまり意識していませんでしたが「ユーザー開発コンテンツが有料になることが起こりうるのだな」という驚きがありましたね。また今思えばこうした流れが、元々MODだったものが1つの独立したタイトルとして発展する昨今に繋がっているんだなと。

『BF1942』

ArkbladeCounter-Strike』もですね。MODが前世紀以上に大きな存在として確立しだしたのも00年代前半の流れであるのかも知れません。

G.Suzukiおお!『Counter-Strike』!あれもリリース当初は無料で頒布されていた後、Valveから単独の商品化の申し入れがあったと「ダンジョンズ&ドリーマーズ(出版社:ソフトバンククリエイティブ)」にも記載されていましたね。

MOD文化を語るにはValveのFPS『Half-Life』の存在は大きいですよね。MOD制作によって「ゲーム開発者になるには必ずしもゲーム会社に入る必要がない」ということに繋がっていきますし。

『Half-Life』

葛西祝やっぱりValveですよね。『Counter-Strike』のように、MODからとんでもない競技FPSが登場した他にも、『Half-Life2』のMODで『Dear Esther』や『The Stanley Parable』の原型が公開され、FPSにおけるストーリーテリングの可能性を追求していました。そのクリエイティビティは、後にインディーゲームが台頭する事にも関係してきますよね。

Arkbladeゲーム史的な意味だと、Valveが本格的にその名前を記すことになる「Steam」の登場は2003年でしたね。もちろん前提としての『Half-Life』の存在は大きいですが、あくまで90年代名作の一つ、という形ではありましたので。

G.Suzukiそうでしたね。今でこそSteamは大きなマーケットに成長しましたが、2003年の時点では『Half-Life』か『Counter-Strike』ぐらいしかなったため、続編の『Half-Life 2』でSteamの導入が必須になることに一部ユーザーから疑問がもたれていました。

『Half-Life 2』

Arkblade現代につながるオンライン販売への移行の芽が出てきたのがこの年代であったと言えるところですね。

振り返って21世紀初頭のうねりは一口では話しきれないほどだった



SHINJI-coo-Kこうやって遡ってみると「強まる洋ゲーの存在感、ネットの発展とゲームの接続、小さな世界から大きな世界のゲームへ、そしてユーザーコミュニティによるMOD文化、デジタル販売全盛へ……」という多様なうねりが(00年代初頭から)ありましたね。

葛西祝僕がPS2で『北へ ~Diamond Dust~』で「恋の魔法旅行~北へ北へランランラン」とかやっている間に世界を革命する力を持った文化がこんなに動いていたとはと感心しきりですよ。

『北へ ~Diamond Dust~』

G.SuzukiPS2だけだと、どうしても他のプラットフォームで起きている変化については目が届きにくいですよね。

インターネットによって『BF1942』や『Quake 3』、『Unreal Tornament』、『Counter-Strike』、『MoH』などのタイトル群によるマルチプレイが楽しめたり、国内/海外ゲームの情報も手に入りやすくなったのも大きいですね

ArkbladeMODに限らず、個人が制作する攻略情報サイトやゲームレビュー、同好の士が集まる電子掲示板……これらも現代のSNS時代につながる大きな流れの発露であったのかなと。

G.SuzukiまたPCゲームには拡張パックの存在が大きいですよね。2000年以降のタイトルを挙げるなら『メダル・オブ・オナー』なら「メダル・オブ・オナー アライドアサルト リロード」と「メダル・オブ・オナー アライドアサルト リロード2ND」が、『BF1942』なら「BF1942 ロード・トゥ・ローマ」と「BF1942 シークレット・ウェポン」が、『Age of Empires II』なら「The Conquerors」と人気作には沢山でていました。

Arkbladeそれら拡張パックが「DLC」として姿を変えるきっかけもこの年代でしたね。もちろんこれも最初から順風満帆であったわけでなく、『Oblivion』のDLCラインナップなどを始め、多くの試行錯誤が行われていた印象があります。残念ながら「馬の鎧」なんていうのは当時のネタの一つにされていましたし。国内だと『アイドルマスター』などは美少女コンテンツとDLCの親和性が高い事もあって、その印象が強かったかも知れません。

『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ PV第2弾』より

SHINJI-coo-KDLCの潮流は2005年あたりに本格化していて、そこに至るまでの布石として拡張ディスクなどが前世紀から00年代前半の頃に見受けられましたね。

G.Suzukiそうですね。加えてPCゲームならパッチでゲーム本体のバグ取りだけでなく、UIやレスポンスの改良、そしてコンテンツの追加なども行われていましたね。

Arkbladeそういう意味ではWindows 95で爆発的に普及したネットワークの使い方が本格的に根付いたのかなと。もちろん通信速度の高速化の恩恵もありますが。

SHINJI-coo-K00年代前半の大きなインパクトってネットワークを活かしたものといえそうですね。MODの配布にしたって、コミュニティなどもネットの恩恵ですし。

Arkbladeあとは結果としてですが、10年後、15年後の大きな布石となっている現象が非常に多かったのだと思います。昨今多くの国内メーカーが、既存大手ゲームエンジンの利用や、積極的な海外進出、PCの重要プラットフォームへの再位置付けなど、様々な体制の変更を図っていますが、そういった努力の芽が本格的に出るのにも長い目で見る必要があるのかも知れませんね。もちろん、VRの流れもですね。新元号10年のゲーム業界に期待、と。

SHINJI-coo-Kそうですね、今あるモノの萌芽が00年代前半にあったということですよね。だからこそ、今現在進行形のものも長期的にみると十数年後に姿を変えて根付いているような未来が見える気がします。今回、皆さんに語って頂いて、21世紀初頭の潮流は本当に大きなものだったんだなと改めて思いました。

そしてネットワークの使い方が本格化するのが、次回第4回で語られる「携帯電話」なども含めたマルチプラットフォーム群雄割拠の00年代後半です。その時代で拡張ディスクやパッチやアップデートが本格的にネットによるものとなって、また新たな形態「DLC」も登場することとなります。というわけで、最後に皆さんからお一言ずつ何かお言葉を頂ければ幸いです!

葛西祝90年代のコンソール時代って、洋ゲーとPCゲームの文脈って遠かったんですよ。当時のイメージは「ゲームバランスも、キャラデザインも違いすぎる、異質な文化」でした。

でも00年代に入ってから、コンソールにもPCゲームの文脈が入ってから、すごく見る目が変わりましたね。「リアルな世界で何でもできる」ゲームデザインが提示されたあたりから、日本のコンソール中心で凝り固まっていた意識が、心地よくぶっ壊されていった感じです。

G.Suzuki00年代前半は自分が洋ゲーとPCゲームに触れ、個人としてゲームという概念が大きく拡大した時代でもありました。こうして振り返ってみると、PS2時代の00年代前半はゲーム体験を超大化させる方向へと動いていったようにも思えます。

またPCゲームでは、MODによるゲームプレイの拡大、掲示板などによるコミュニティの確立、PCゲームに限らないゲーム情報発信/受け取りの低ハードル化など、インターネット普及によって大きく変わったようにも思えました。

今回は00年代前半における、PS2などで展開された人気タイトルの続編群や国内ゲーム業界の合併ブームを筆頭としたゲーム業界の再編、そして洋ゲーの一大ジャンルであるFPSについて大きく触れられなかったので、次回はそれらを語れたらと思います。

Arkblade今回こういった機会を頂いて、90年代後半~00年代前半のゲームの流れや様々な思い出を整理すると、ネットワークの本格普及による変化や、新たなゲームデザインのあり方など、やはり物事は多くの事柄が繋がって構成されているのだなと感じます。

果たして、今現在から物事が繋がった先に何があるのか。平成が終わってもまだまだ変わっていくだろうゲームのかたちに注目です。

SHINJI-coo-KArkbladeさん、今回ゲストとして参加していただきありがとうございました!読者の皆様、拙い司会進行で恐縮でしたが、来週はもっとえらいことになります。なにしろ時代がどんどん近年になっていくのだから……再来週はもっともっと!それではまた次回、居酒屋で会いましょう!

葛西祝ちょっとだけ話すと、次は「もしかしたら、00年代はゲームハード戦争なんてなかったんじゃないか?本当に競い合っていた相手は……」みたいな新説が飛び出します。

※UPDATE(4/1 21:42)※
『GTA III』の各プラットフォーム発売日について一部誤りや、不明瞭な部分があったので、修正致しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。
《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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