3Dオープンワールドゲームを生み出し、ゲームの歴史を変えたと語り継がれる『シェンムー』(1999年)から数えて約20年。シリーズ最新作の『シェンムーIII』がPS4/PCを対象に11月19日発売されます。
先立って千葉県・幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2019」にて、シリーズの生みの親であり、同作の監督・脚本を担当した鈴木裕氏は「こんなに呑気なゲームもない」と語りました。改めて、真意を知るとともに、前作から現代に合わせてどのようにチューニングしたのか、インタビューしました。
――発売を間近に控えた今の心境は?
鈴木裕(以下、鈴木):こんなに展開がゆっくり進む『シェンムー』シリーズに類似するスタイルのゲームは他にないので、従来のファンの方は恐らく理解してくれると思うんですけど、初めて遊ぶ方に良さが分かって頂けるかどうか、少しドキドキしていますね。
――「TGS2019」に試遊出展してみての手応えは?
鈴木:一般ユーザーではなく、プレスの方中心のごく少数のプレイだったので、まだちょっと実感が持てない状態ですね。最近のゲームは割と展開も早いし、エモーショナルな部分、刺激も強い。けれど、『シェンムー3』はちょっとほっこりするところもあって、ゆったり進む毛色が違うゲームです。今後もゲーム好きな方に体験して頂いて色んな意見を頂きたいなと思いますね。
――第1作発売から20周年です。20歳の方が初めて『シェンムーIII』に触れる機会も多いと思いますが、変えたくなかった点や変わった点はありますか?
鈴木:作品のコンセプトは基本的に同じですね。愛と勇気と友情が根底にあり、拳法をベースにしていたり、ロマンチックな部分もあったりというのは変わりません。第1作から僕が監督しているので、作家性と言いますか、大事な部分は作品に通じていると思います。僕がやるとホラーにもならないし、残酷な描写もありませんよね。
――本質の部分は年月が経っても変わらない?
鈴木:そうですね。手法に関しては、第1作と第2作も中身が違うゲームだと思っています。最新作もまた全然違うスタイルなんですけど、世界観は「まさしくシェンムーでしかない」感じになっています。
――ステージ上では、プレイしづらい部分を今風にアレンジしたと仰ってましたが、具体的には?
鈴木:前作よりもストーリー展開のスピードを上げました。前作と比べると、1.5倍の速さでしょうか。例えば、淡々と進んでいくストーリー上で、カットシーンを入れるタイミングや、山場に持っていくまでの波幅を少し縮めています。
圧縮して密度を高めることで退屈させないようにとか、起伏をもうちょっと強めにして盛り上げるとか、前作までは目的地まで行くのに時間経過を待たなければいけなかったところも、ジャンプシステムによってショートカットできるようにしました。ストーリーだけを優先して楽しむこともできます。それでも、まだテンポが早いゲームとは言えないと思いますが。
――スマホゲームと比べちゃうと、やっぱりそうなりますか。
鈴木:僕が言うのもなんですけど、『シェンムー』はストーリーを追いかけるタイプのゲームではないと思うんですよ。皆さんは「ストーリーが良い」と言ってくれますけど、そこに至るまでの世界観とプロセスを楽しんでいくゲームですね。特に最新作はその傾向が強いですね。
――今回はお金を稼ぐ手段が増えたのもありますよね。寄り道が楽しい。
鈴木:ミッション形式で進むゲームじゃないですから。『シェンムーIII』はあえてチュートリアルがなくて、目的を達成するまでに手段がいっぱい転がっているから、自分好みのものを選んで進めていい。
例えば、次の目的に行くまでのお金が必要だとしたら、アルバイトだけじゃなく、釣りで稼いでもいいし、ガチャアイテムを売ってもいい。お金稼ぐにしても色々選択肢があるので、その時々の選択はプレイヤーの状況に応じて変化すると思うんですよ。ギャンブルが嫌いな人はギャンブルをやらなくていいし。
目的に行くために自分で方法を見つけて解決していく楽しさが醍醐味です。だからストーリーだけをストレートに追いかけると、『シェンムーIII』で用意されたものの8割は通り過ぎてしまう。それでも楽しめる仕上がりにはなっていますけど、勿体無いですよ。
――やっぱり、プロセスの中にあるユニークさが素晴らしいと思います。『シェンムーIII』で特にユニークだなと思うところはありますか?
鈴木:昔から変わらない部分としては NPC が単なるコピーキャラではなく、全て個性があり、セリフや声もキャラクターごとに用意してあることです。その上で、選択肢が前作以上に多くなっているので、より自由度が上がっています。50人プレイしたら50人とも違うプレイ方法が見られると思います。
経済面では、ジリ貧の人もいるだろうし、ちゃんとお金を貯めながら進んで行く人もいる。バトルでは、鍛錬しないでお金で回復薬を大量購入して、片付けていく人も出てくるだろうし、ちゃんと鍛錬を重ねて『シェンムー』のテーマである拳法を楽しむ人もいるでしょう。プレイヤー自身の性格が結構反映されちゃうゲームだと思うんですよ。
――最後に初めてプレイする人や20年来のファンに向けて一言ずつお願いします。
鈴木:初めての方には、類似するゲームが全くないということと、こんなに呑気なゲームもないので、合う合わないあるでしょうけど是非一度体験してみて欲しいです。前作をプレイしていなくても楽しめるようになっているから安心してください。従来のファンの方には、僕なりにファンのことをずっと想いながら作ったゲームなので、きっと気持ちが伝わるんじゃないかなって思います。発売まであと2ヶ月あまりですので、もうちょっとお待ちくださいね。
最新作においても、決して完結したわけではない同シリーズ。最後に、今後も第4作、第5作と続けていく構想はあるのかを訊ねると、「僕はファンの方が望む限り諦めずに続編を作っていく」と力強い回答がありました。
(C)SEGA
編集部おすすめの記事
特集
連載・特集 アクセスランキング
-
自分の作ったキャラたちでハクスラ&ハードコアなファンタジー学園生活の日々『ととモノ。』再び!さらなる新機能でより快適になったDRPG『剣と魔法と学園モノ。』1AE/2Gリマスター【プレイレポ】
-
自分だけの集落と軍隊を作って王権に立ち向かう最大4人協力プレイ対応オープンワールドサバイバル登場―採れたて!本日のSteam注目ゲーム10選【2024年4月24日】
-
圧倒的にリアルな中世シミュレーション『Manor Lords』を先行プレイ。“新米領主”となって資源確保、生産管理、農耕など都市建設を体験【プレイレポ】
-
【吉田輝和の絵日記】美少女がド派手にスタイリッシュアクション!『Stellar Blade』体験版をプレイ
-
『ゼンレスゾーンゼロ』リリース前に「推しキャラ」を探せ!刺さるキャラがきっといる、癖が強めな『ZZZ』人物・陣営をご紹介【増幅テスト】
-
「パンツ・たくさん・ありがとう」だけじゃない!?紳士ゲー『バニーガーデン』で注目集めた「PTAシステム」の歴史
-
コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】
-
海外レビューハイスコア『FF16』DLC第二弾「The Rising Tide《海の慟哭》」―クライヴとその仲間にふさわしい立派な送別会だ
-
見ごたえのある廃墟、緊張感とかっこよさを両立したバトル…『Stellar Blade』の見どころはイヴ以外にも盛りだくさん!【先行プレイレポ】
-
【特集】『Incursion Red River』はなぜヒットした?完全PvEの『タルコフ』ライク、リアルだけど少しカジュアルに