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Game*Sparkレビュー:『アウター・ワールド』

「はい/いいえ」を目の前にして何分も決定ボタンを押せなかった経験のあるゲーマーに捧ぐ。Obsidian Entertainmentの『アウター・ワールド』は、ロールプレイだからこそ感じられる選択の甘美を与えてくれる作品でした。

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Obsidian Entertainmentの『アウター・ワールド(The Outer Worlds)』が体験させてくれたのは、自由を前面に推しだしたゲーム性ではなく、いろんなことをやりくりして生き残るような生活感でもありませんでした。

発売前から『Fallout』などと比較されがちだった本作は実のところ「主人公と愉快な仲間たち」……副題に「~宇宙海賊版~」とでも付けられそうな冒険活劇を描いた、物語性の強い作品だったのです。

以前から注目されていたのは、Obsidianらしい「自由度の高さ」だったことは間違いありません。そして彼らは、そうした期待に十分耐え得るタイトルを作り上げたと言えるでしょう。それでも、比較されがちな過去のタイトル群(これはObsidian以外のものも含まれてしまうのですが)とは明確に異なる部分があるのも確かです。

本レビューでは、そうした大ジャンル(オープンワールドなど)の延長線上に想像されるものとの違いを明確にしつつ、本作が持つ要素を分析し、物語の基部に貫かれているものを紐解いていきます。

その性質から、本レビューにはストーリーに関するネタバレも含まれていますので閲覧の際にはご注意ください。これらに触れないよう、ストーリー部分についてはページを飛ばして読み進められる構成としていますが、挿入している画像などについては、少なからずゲームの仕様に触れた内容となることを予めご了承ください。

目的を見据えてコンパクトにまとめられたゲーム


ゲーム開始時は多くのスキルに悩んでしまうが、実のところは最小限にまとまっている。

レビューの前段から、過去作品との比較について言及したことには意味があります。本作をクリアしたプレイヤーならば多くの方が「思ったよりもコンパクトにまとめられていた」と感じるだろうと考えたためです。

これはネガティブな感想ではなく、システムの無駄を上手に削ぎ落していたことに対する評価と言えます。『アウター・ワールド』の自由度はそのほとんどがRPGとしてのもの、つまりプレイヤーがどのように主人公を演じていくことに凝縮されていて、これを実現するものこそ豊かな会話と選択肢による演出なのです。

その体験を実現する上で、むしろ邪魔になってしまいそうなシステムはとことん削ぎ落されているという訳です。例えば、豊富な種類のスキル群は一見すると複雑なようですが、「戦闘・探索・会話やイベントの有利不利など」に要素ごとで切り分けてみると、結局はそれぞれ数種類程度しかないことに気が付きます。

■多くのスキルはあくまでもロールプレイのためにある


判定はスキル値が足りてさえいればOK。確率ではないので素直に選ぼう。経験値も取得できる。

スキルの選択肢についてざっくり説明すると、戦闘ならば近接と射撃のどちらを取るか、イベントなら知的な会話で切り抜けるかハッキングで別の道を見つけるか……といった程度のものです。厳密には、射撃であれば「ハンドガンかライフルか」というような細かいスキルが存在しているものの、レベルアップによって上昇できる最大100ポイントのうち、50ポイントまでは大ジャンルごとにまとめて強化できてしまいます(50ポイントまではハンドガンもライフルも、同じコストで同時に上昇できる)。

会話イベントについても、そのほとんどは「説得・騙し・威圧」の三種類に集中していればまず問題ありません。中にはメディカルやエンジニアリングといった、会話テクニックではないスキルが必要な選択肢もありますが、大抵の場合はより報酬が大きくなったり、一部の仕掛けをスキップできるといったものとなっています。

そしてなにより、プレイヤー自身がロールプレイの為にどんな選択肢を取ろうとも、様々な方法で目的を達成できるようになっており、イベントに気を使ってロールプレイを制限しなくても良いように配慮されています。この自由度には特に力が入っていて、なんならラスボスにあたる戦闘をまるまる回避できてしまうほどです(筆者はその時にスキルの値が足らずに、正面から戦いましたが……)。

秀逸なのは、上記のようにクエストの達成を邪魔しないという構成をとりつつも「取り返しがつかない会話」を豊富に用意しているという点です。昔ながらのRPGに出てくるような街の名前を何度でも教えてくれる形の会話もありますが、スキルを使用しない選択肢であったとしても、一度選んだら戻ってこれないパターンのものが豊富に用意されています。プレイヤーがロールプレイを貫いたからこそ体験できる歯がゆさを味わえるのです。

■場面転換を明確・円滑にする割り切ったマップ



ハルシオン星系(コロニー)の中でプレイヤーは自分の宇宙船に乗り込み、あっちこっちへと飛び回ることになります。実際に降り立てる惑星はそれほど多くはないにしても、同じ星には複数のマップが用意されており、そのバリエーションは豊かです。

とはいえ本作のマップ単体の面積は想像した以上に小さく(走行速度をアップさせる特性を取った上で)、数分もあれば端から端まで移動できる程度のものにまとめられています。

マップにはひとつかふたつ程度の街があるか、巨大な街そのものがひとつのマップといった形になっており、多くの場合は(自動的ではないものの)メインの目的を達成したら次のマップへ移動していく構成なのです。つまり、今やるべきことに集中できるようになっています。

ゲーム全体を通してみれば移動にかかる時間は短いわけではありませんが、マップ内に点在しているほぼ全ての建築物やロケーションには、クエストなどによる何らかのイベントが用意されており、ちょうどよく道中でサブクエストをこなせるように配慮されています。少なくとも、「長旅をしなければ……」とため息をつくようなことはありませんでした。

自分の宇宙船を手に入れた後ならばマップ間を常に行き来できるので右往左往することもあるのですが、それはあくまでも何らかのサブクエストに準じた行動の中で起こることであり、ゲームの進行が止まってしまうかのような印象を受けることはありません。


宇宙を飛び回るそのストーリーの内容と比較してしまうと、広大な世界の中にいるという感覚は薄いかもしれません。マップが効率的に作られていることやその面積が理由でもありますが、惑星間の移動がクリック一発で済んでしまうことも影響しているでしょう。

これを「上手な割り切り」と取るか「旅の感覚をスポイルした」と感じるかは、プレイヤーによって大きく分かれるでしょう。。発売前から『アウター・ワールド』と比較されがちだったタイトル達は、そのほとんどがオープンワールド・サバイバルな要素を多分に含み、無駄とさえ感じられるものに時間を掛けつつ楽しむものばかりです。本稿ではこれまでも「コンパクトさ」の理由を連ねていましたが、『アウター・ワールド』と比較されがちなゲーム達の間には、大きな違いがあると見るべきでしょう。

特に『Fallout: New Vegas』は、同じObsidianの名作として評価されているものでもあり、比較対象とされがちです。しかしながら本作は、総体としてストーリードリヴンな構成(事実上のステージクリア型)であること、最大難度設定を除いてサバイバル要素が薄いこと、装備やアイテムの種類が絞られていること、ファミリー的な存在として同行する仲間が複数いること、そしてそもそもがポストアポカリプスものではないことなど、大小様々な相違点があります。その上で本作の特筆すべきポイントは「会話の濃密さ」であり、ここにこそ『New Vegas』で感じた魅力が重なるのではないでしょうか。

オープンワールドやサバイバル、ジャンク漁りといった部分に期待を寄せていた方にとっては、思っていたものと違う印象を受けることでしょう。それほど会話に盛り込まれたエンターテインメントの比重は大きく、このレビューを書くにあたって撮りためていたスクリーンショットの大半は会話画面だったほどです。このゲームの自由度の高さは「演じ方」の中にあり、物語が(マップに応じつつ)プロットに則って進行していくのも「演じ方」へ集中させるための割り切りではないか、とすら思えます。

■戦闘ロールプレイは「頭の中」で


それっぽい場所に、イイ感じの量の敵が出現する。終盤、こちらの所持弾薬は5,000発以上。

「コンパクトさ」は戦闘にも現れています。長旅にならないよう絶妙な距離で配置された建築物の間には、等間隔で敵の集団が設置されています

道の途中に散らばった人工物があると「お?敵が集まっているな」と予見できるほど、その配置は分かりやすくなっています。いわゆるフィールド部分にはそのような形で戦闘場所が点在しており、メリハリが効いています。

出現する敵がそのように管理されているおかげで、中途半端な距離にいる敵が次々と連鎖してアクティブになり、いつまでたっても戦闘が終わらない……といったようなことにはなりません。何体か倒して、はい次……また何体か倒して、はい次……と繰り返すうちに気が付けば目的地、といった塩梅です。

大規模な戦闘を体験する場面がまずないので、その意味では戦闘に深みがないとも言えるでしょう。弾薬には重量がなく、後半になるほど実質的に無尽蔵のような状態になります。また弾薬は「軽」「重」「エネルギー」の3種類のみ。武器はそれなりの種類がありますが、弾薬の規格は統一されており、特に選ぶ必要もありません。

回復薬には重量が設定されてはいるものの、所持上限を上昇させるPerkの効果がかなり大きく、やはりこちらも実質的には無限に近い状態となるので、最序盤の戦闘が最も苦しいのではないでしょうか?(もちろん、これらは難易度設定により変化する部分もあります)

ハンドガンスキルによる部位攻撃と、説得スキルによる恐怖ステータスが発動した敵。

そんな「コンパクトさ」が現れている戦闘ですが、『アウター・ワールド』の特徴的な要素として会話スキルが戦闘にも影響していくという側面があります。

説得スキルは人間、騙しスキルはロボット、威圧スキルは動物に、それぞれ強化することによってバッドステータスを与えられます。方法は単純で、攻撃するだけで確率により発動します。ただ、本作の戦闘は比較的スピーディーで、どのイベントも淡白に終了するので、会話スキルを使っているという印象は正直あまり感じられないかもしれません。

とはいえ、これまで自由度を売りにしていた他のRPGでも、完全に戦闘を回避して進められる作品はあまり見当たりません。少なくとも最低限の戦闘スキルを取得する必要があるか、かなり無理をしてスニーキングなどで切り抜けるといった形で、「いろいろロールプレイはできるけど一般人よりはどこか強い設定が必要だよ」というものだったと思います。

本作も戦闘を完全に避けることはできませんが、「ウチのキャラは会話が達者だからなんとかなっているんだ」という言い訳をプレイヤーが頭の中で組み立てられる余地があります。また、システムとしても戦闘スキルが少なかったからといって難易度が跳ね上がることもなく、装備の強さなどで十分こなせる範囲に収められているのです。

筆者はこれまでのゲーム経験を振り返ったことで深読みしすぎてしまい、序盤からある程度戦闘スキルを強化してしまいました。これほど後半の「サポート」が揃うのならば、ロールプレイに使いやすいスキルをどんどん強化しても良かったかなと感じています。


以上のように、かなり細かく並べ立てていきましたが、本作は「会話のロールプレイに比重を置き、その体験に集中させるため」のゲームデザインがハッキリしており、その結果として割り切られたシステムが採用されていると言えます。

自由に過去を想定できる舞台



RPGの定義にもよりますが、自分が定めた性格のキャラクターを演じてゲームを遊ぶ場合には、その出自にもそれなりの自由度が確保される必要があります。『Fallout4』が浴びることとなった批判の中には、「主人公の出自が固まりすぎていた」というものがありました。

本作の主人公は、ゲーム開始時点から70年ほど前に地球を出発した人物という設定です。コールドスリープで多くの人が収容された移送船「ホープ」の乗組員として、「ハルシオン星系」への移住を夢見ていたはずでしたが……目覚めたのは自分ひとりだけ。

しかもホープ号は何らかの問題により宇宙空間で座礁したまま放置されてしまっていました。謎の科学者を名乗るフィニアス・ウェルズという人物から、他の乗組員を目覚めさせる為に手を貸してほしい……と強引に依頼されてゲームがスタートします。

直接的にゲーム内で役立つ訳ではありませんが、この開始条件から「主人公が地球でどんな職業に就いていたのか」「どんな性格の人物だったのか」など、プレイヤーが自由に設定を想像できる余地があると分かります。

多くの会話選択肢が登場する本作にあたっては、この自由度が確保されることにより「何故自分はこの選択肢を選ぶのか」が明確になるのでロールプレイの純度を薄めることはありません。

個性ある仲間との関わり


6枠カッチリと用意された「仲間」の枠は古典的RPGのようでさえある。

これまで綴ってきたレビューとは逆説的なことを述べますが、本作は傾向として「一匹狼の極悪人」といったロールプレイに関しては推奨されていないように感じます。

ロールプレイを楽しむために会話のエンターテインメントが用意されているので、そこのところは当然と言えばそれまでなのですが、気に入らないNPCをひたすら殺害できる自由を選んだとしても、待っているのは「イベントが少なくなってしまった世界」だけです。

古典的RPGのように仲間となる人物はハッキリと決まっていますが、彼らを仲間に入れないか、もしくは追放してしまうこともできます。しかしながら、やはりそれは「ただイベントが減るだけ」に近い状態となってしまうのです。

仲間の「牧師」を連れていると、主要なNPCが宗教的な話題を持ちかけたりする。

仲間同士がランダムに話し始めたり、あるロケーションに立ち寄った時に反応したり、また主要な会話イベントで連れている仲間が割り込んだり、逆に特定の仲間にだけ反応して話題を変更するNPCがいたりと、全てを見る為にはかなりの時間を要するに違いありません。常に2人まで仲間を連れだすことができ、その組み合わせのパターンも存在している力の入れようですから、これを切り落としてしまうのはもったいないと言わざるを得ません。

プレイヤーが想定している主人公の性格をいかにして引き出せるかは、常に選択の中に存在しています。仲間となるキャラクターはそれぞれ課題を抱えており、それらに迫る専用のクエストも用意されています。プレイヤーは自身のキャラクターの性格だけではなく、仲間の背景を理解し、また別の仲間の異なる主張を聞きながら選択していくことになるので、想像よりも(メタ的に)自身と向きあう時間が生まれるでしょう。

必然的にゲームプレイのほとんどは会話中の画面を眺めることへ費やされ、単にエンディングを見るためだけに走り抜けたプレイ時間とは大きな差が生まれているはずです。筆者のプレイ時間はPC版で25時間ほど。そのうちの半分以上は会話だったように思います。それでも後半は(話が進展していくのもあって)飛ばし気味になっていたので、じっくりと構えてプレイすれば30時間以上は楽しめるのではないでしょうか。

振り返ると真後ろにいる仲間達

ストーリーとは関係ありませんが、特に筆者が面白いと感じたのは仲間の位置の処理です。テンポよくゲームを進められた理由のひとつに、どんなにプレイヤーが一人で先行しても自然な形で仲間が真後ろに立つようにできていることが挙げられます。

街中などで色々と見回していて、素早く振り向くような動作を取るとすぐ近くに仲間がいて驚くことがあったのですが、これはプレイヤーの視界の外で処理するような形になっていたためだと考えられます。

いつの間にかはぐれていたり、動きが遅くてなかなか付いてこないといったもどかしいことは起こりませんでした。明らかに遠くからワープしてきた、というのが分かってしまう程ではあるのですが、ひたすら仲間が追いつくまで待っている必要がないので助かる設計だと思います。

「究極の選択」か「諦めない心」か



『New Vegas』などのタイトルで獲得したObsidianの「ロールプレイを前提としたナラティブの評価」は、そのまま『アウター・ワールド』への期待となっていました。結果として、Obsidianは高いレベルでその期待に応えたことになります。

『Fallout』シリーズのように皮肉めいていたり、ブラックであったりといった要素は本作にも存在していますが、プレイヤーが挑むことになる問題群は極めて切実なものであり、私たちにとっての現実世界が抱える社会問題の風刺的な側面があるとさえ言えるでしょう。

「コイツは気に入らないから切り捨ててやれ」という自己中心的なプレイも許されるのがRPGの面白いところではあります。しかしながら、本作はゲームの世界の中で生きる人々の多面性をスマートに描き出し、短い時間でうまくプレイヤーに関わらせることで、どちらを選んだにせよ、納得できる面もあればまたその逆も生まれ得るという状況を作り出しています。

本作に流れているその方程式は「プレイヤーからはっきりとは見えないが、どうあがいても多くの人に影響を及ぼす選択を迫られる」というものです。そして、これらの選択をしなければならない理由として、そのまま放置していては共倒れになるだけという「時限的な課題」を、説得力ある形でしっかりと敷いていることが挙げられます。


主人公は、自分と同じような形でコールドスリープしたままとなっている多くの「同世代」を目覚めさせられるかという大きな問題を常に抱えています。物語のほとんどの場面は、彼らが眠っているホープ号とは関係のない所で展開していきますが、こうした主人公の課題があるおかげで常に「行動する目的」がプレイヤーに与えられている訳です。

プレイヤーが操作する主人公の出自を自由にしつつ、行動するための根源的な理由を与えて両立させたのは離れ業でした。『The Elder Scrolls V: Skyrim』には世界の問題を放置してしまえる余地があり、『Fallout4』は出自が固まりすぎていたからです。

『アウター・ワールド』は、大きな選択を迫られる転換点が割とハッキリした形でやってきます。その場面自体も3つか4つ程と……それほど多くはありません。何かが並行的に起こる訳でもなく、順番にこなしていくだけではありますが、そのどれもが結果的に「同世代の為となるカギを握っている」問題だからこそ、主人公が行動する理由として無理がないのです。

ホープ号の乗組員を目覚めさせるための選択は、たいてい何かを切り捨てなければならない状況となります。YesかNoかの選択肢を前にプレイヤーはしばらく画面の前で悩まざるを得ないのですが、そうした正義とも悪ともとれない究極の選択をさせてくれるゲームには貴重な価値があると筆者は考えます。




《Trasque》

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