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『MGS2』発売から20年…「デジタルで何を伝えるのか」を問う作品を振り返る【年末年始企画】

21世紀初頭のデジタル社会の始まりと「何を後世に伝えるのか?」を問う『METAL GEAR SOLID 2: SONS OF LIBERT』(メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ)の発売20周年を記念し改めて本作を振り返ります。

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小島秀夫監督作品であるコナミのタクティカル・エスピオナージ・アクション『METAL GEAR SOLID 2: SONS OF LIBERTY(メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ)』(以下、『MGS2』)は、アメリカで2001年11月14日に、日本で11月29日に発売され、2021年11月に20周年を迎えました。

プロローグとなるタンカー編、スネークでなく雷電をメインに進むプラント編、プラントでのミステリアスなスネーク、気持ち良く回収しきらない伏線など、シリーズでも異色ともいえる本作。また『MGS2』は『メタルギアソリッド』シリーズの中でも国内外問わず、様々なプラットフォームへ展開され多くのバリエーションが存在するとともに、開発の公式ドキュメントも充実しています。本来ならばちょうど20周年のタイミングに……と思いましたが、タイミングを逸してしまったので、年末年始の特集として本作の豊富な資料を基に振り返ってみましょう。

『MGS2』は非常に多くのバリエーションがある。左上はコナミ殿堂セレクション版、中央上はコナミ殿堂セレクション版『MGS2 サブスタンス』、右上はPS Vita版『MGS HD Edition』、左下は『MGS2 バンドデシネ』、中央下PC版『MGS2 サブスタンス』、右下『ザ・ドキュメント・オブ・MGS2』
PC版『MGS2 サブスタンス』の見開き紹介
PC版『MGS2 サブスタンス』パッケージ裏面

初代『MGS』の発売直前から構想が生まれ、スタッフも約2倍に増えた『MGS2』

『MGS2』の構想が生まれたのは初代『MGS』の発売直前からです。コナミ公式ガイドシリーズ「メタルギア ソリッド」に収録されている巻末のインタビューによれば、1998年8月発売直近のタイミングで小島秀夫監督が「人気があればやりたい、やり残した事が多い」と言及していました。

公式メイキング本「METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY THE MAKING」によると『MGS2』の企画書草案は1998年11月に準備稿を作成。PS2向けの設定資料ソフト『ザ・ドキュメント・オブ メタルギアソリッド2』で読める1999年1月8日の改定版では本作のテーマとなる「後世(子孫)に残す(伝える)ものは?」と、軍隊/日常のデジタル化などが社会テーマとして記されています。また同年11月には『ZONE OF THE ENDERS』のデザインに新川氏が参加するなどの動きもありました(『Z.O.E』と『MGS2』のチームは距離が近く『Z.O.E』で実験した結果を『MGS2』にも入れたそう)。

今でこそ「日常生活のデジタル化」が実感出来る

PS2向けに2001年冬発売という目標を達成するために、事前準備としての研究と『MGS2』向けた実験を行っています。その成果の一部が『MGS インテグラル』で1周目クリア後に使用できる主観攻撃として現れていました(そのほか、トゥーンシェーダー/アニメ背景の実験も行われていたが、セルシェーダー的な方向性は取りやめに)。加えて、この企画書の段階でストーリーの狙いとして「何処までが現実か、虚実か?」や「デジタル社会、ゲーム文化へのアイロニー」といった内容が盛り込まれており、プラント編終盤のAI大佐の指摘と繋がる要素が元々盛り込まれていたことも分かります。

現実と虚構の対比や問いかけは20年以上前でも大きなテーマだった

そして、E3 1999への視察に合わせてニューヨーク取材を敢行し、ゲーム本編内で使われる映像などを撮影。その後『MGS2』が初発表されたのはE3 2000でした。このE3 2000で公開された9分の映像は、会場の大型ディスプレイ前で多くの人集りが形成されるなど大きな反響を呼んだことを記憶している読者も少なくないでしょう。

2000年6月9日発売の「電撃プレイステーションVol.145」における小島監督のインタビューによると、『MGS2』をE3で発表したことについては「E3 1997で初代『MGS』を発表したことで知名度を得たことによる恩返し」と語っています(加えて、海外での発売した時に「続きを作って欲しい」という要望を多く受け取ったことも続編開発のきっかけにもなったという)。なお同インタビューでは、E3 2000時点で開発規模は前作より1人増えたぐらい(初代『MGS』の開発規模は最終的に30人)であることや、開発進捗自体も2%ほどであることも言及されていました。

9分に及ぶE3 2000トレイラー

東京ゲームショウ2000秋が終わった段階でもある同年10月13日発売の「電プレVol.156」のインタビューによれば、完成度も3~5%とE3 2000の時より大きく進展していないものの、実験が終わった段階であったと述べています(また、自由度から来る没入感や、映像だけでなくゲームして進化した部分も見て欲しいと語っていた)。同年11月に『MGS2』の初体験版がマスターアップし、12月12日にはソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI。現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が開催した「PlayStation 2 Party」でもTGSの時と似たコメントをしていましたが、12月20日にはタンカー編が完成していました。

2001年3月1日には、『MGS2』初体験版が付属するロボットアニメ・シミュレータ『ZONE OF THE ENDERS』がリリース。この『MGS2』初体験版は、本編発売前にユーザーからの反応から本編において微調整を行う目的も含まれていました。加えて同時期には、海外において『MGS2』が「2002年に発売を延期するのでは?」という噂が出ていましたが正式に否定されています。他にも、5月にはE3 2001にも出展し新たなトレイラーを公開していまいた。

完成も近づき、発売の報にユーザーが胸を躍らせる中、『MGS2』が北米において日本より先に発売されることが発表されたのは2001年7月4日だった一方で、日本の発売日が発表されたのは8月31日でした(当初は同年12月13日に発売予定だった)。

しかしながら、9月11日に発生した米同時多発テロ事件によって、『MGS2』の内容に数多くの修正が加えられたことは良く知られています。この余波で発売延期もしくはキャンセルされるのではないか?という憶測が日本だけでなく海外にまで出ていましたが、テロに配慮して一部シーンを削除し日本発売日が11月29日に繰り上げとなりました。

最終的なスタッフ数が70名ほどと前作から倍増し、様々な困難を経て10月5日に北米版がマスターアップ。その後日本版マスターは10月19日に承認されました(欧州版は11月22日)。発表から発売までの間に、『MGS2』の雷電に関する存在は秘密とされており、その全貌が明らかとなったのは北米版発売前日の11月13日に開催された『MGS2』完成記念パーティーからです。

11月14日にリリースされた北米版の勢いは強く、日本発売日となる11月29日に180万本も出荷する熱狂ぶりです(同日には日本国内において発売記念イベントも開催された)。2002年1月の時点で全世界で400万本もの売り上げを記録しており、日本においては80万本ほど販売しています。同年2月では450万本に、4月には500万本に到達。『MGS HD Edition』トレイラーによれば最終的に700万本も売り上げを達成しています。

次ページ:ゲームシステム・そしてストーリーを改めて深掘りする
《G.Suzuki》

ミリタリーゲームファンです G.Suzuki

ミリタリー系ゲームが好きなフリーランスのライター。『エースコンバット』を中心にFPS/シムなどミリタリーを主軸に据えた作品が好みだが、『R-TYPE』シリーズや『トリガーハート エグゼリカ』などのSTGも好き。近年ではこれまで遊べてなかった話題作(クラシックタイトルを含む)に取り組んでいる。ゲーム以外では模型作り(ガンプラやスケモ等を問わない)を趣味の一つとしている。

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