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ロシアのIT業界では多くの人が続々と国を出ている―一人称アクションADV『Mask of Mists』開発者に訊く国内の現状【特別連載】

『Mask of Mists』を手掛ける9 Eyes Game StudioのMaksim氏にお答えいただきました。

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No Warと落書きされているモスクワ市内の様子(Photo by Contributor/Getty Images)
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  • ロシアのIT業界では多くの人が続々と国を出ている―一人称アクションADV『Mask of Mists』開発者に訊く国内の現状【特別連載】
No Warと落書きされているモスクワ市内の様子(Photo by Contributor/Getty Images)

ロシアによるウクライナ侵攻は、ゲーム業界にも大きな影響を及ぼしています。Game*Sparkではその実情を様々な視点からお届けすべく、ウクライナやロシア、さらには直接的な影響も及ぶであろう周辺国を拠点に活動するインディーゲーム開発者に連絡を取り、その生の声を緊急連載としてお伝えしています。第六回は、過去に『Mask of Mists』(インタビュー)でお話を聞いた、インディースタジオ9 Eyes Game StudioのMaksim氏へのミニインタビューをお届けします。

インタビューは全てメールで行われており、下記の質問に対して回答を求めました。非常に機微に触れる内容であり、ロシア国内の情勢も極めて不安定なことから、企画趣旨や記事のアウトプットについては事前に説明をしたうえで、そもそも回答するかどうか、また回答できる質問にのみ回答してもらえれば構わないというルールで打診し、了解を得られたもののみ記事として公開しています。

  • ロシア国内の現状は?

  • 経済制裁も進んでいるが開発へはどのような影響があるか?

  • Steamでの売上は現状ロシア国内で受け取れるのか?

  • ゲーム開発者コミュニティの反応は?

  • ロシア国内のユーザーはどのように反応しているのか?

  • 自身が今回のロシアの侵攻に対してどのように受け止めているか。

なお、本インタビューの返事を受け取ったのは日本時間3月13日20時58分です。状況が時々刻々と変化していますが、回答には極力手を加えず、一部誤解を招きそうな部分は編集の注釈をつける形で補足するというルールで連載しています。直近の情勢に鑑み、一度回答いただいた後に再度公開範囲を確認しているため掲載まで多少時間が空いています。

各回答はインタビュイー個人の見解であることをご理解のうえご覧ください。

緊急連載「戦時下のゲームデベロッパーたち」

――ロシア国内の現状はどうなっているのでしょうか?

Maksim氏(以下、敬称略)すべての人がどうかと言うのはわかりませんが、80%ほどの人(インターネットや現代のテクノロジー、海外企業などとの関わりがない人)はまだこの制裁が深刻な問題だと感じていないように思います。ウクライナで起きていることの影響も同様です。今のところ、一番目につく影響は価格の大幅な上昇ですが、残念なことに、私たちの国では誰も驚かなくなってしまっているのです。

――ロシアへの経済制裁も進んでいますが開発へはどのような影響がありますか?

Maksim今はそれほどありません。しかし、近い将来、私たちは海賊版の使用を強制されたり、様々なサービスの利用を停止したりしなくてはならなくなると思います。また、私たちは今Steam早期アクセス中のゲームがあるので、ブロックされないことを祈るばかりですし、購入していただいた方々にしっかりと正式版をお届けしたいと思っています。
※編集注:海賊版の使用を強制されるという件は3月7日、ロシア政府が公表した民法の改正についても参考にされたい。記事公開時点でそのような法令などは施行されていないが、JETROレポートのほか、知財コンサルタント・栗原潔氏がYahoo!ニュース個人に掲載している解説記事でも関連する現状が紹介されている。

――Steamの売上は現状ロシア国内で受け取れているのでしょうか?

Maksim現在は受け取れています。しかし、ロシアの一部開発者たちはすでに受け取ることができなかったと聞きました。使っている銀行によるようです。

――ロシア国内のゲーム開発者コミュニティではどのような反応がありましたか?

MaksimIT業界全般に関してですと、この分野の多くの人がすでにロシアを出国しており、今後も時期を見て出国する予定です(今はほぼすべての国際線が飛んでいません)。特にロシア国内の海外企業で働いている人は、その動きが顕著ですね。

――ユーザーはどのように反応しているのでしょうか?

Maksimほぼすべての人が今ウクライナで起きていることにショックを受けていますし、この事態が早く終息することを祈っています。数々の制裁と多くのサービスの停止により、多くのゲーマーたちは困惑しています。どうすればウクライナを援助することができるか、わからないのですから。

――今回のウクライナ侵攻についてどのように思いますか?

Maksim私は賛成しません。今起きていることを嫌悪しています。
※編集部注:回答の公開是非を再度確認したところ「Thank you very much for your concern! But I am completely satisfied with my answers, so feel free to use them」(心配してくれて本当にありがとう!でも自分の回答にはとても満足しているし、自由に掲載してもらって構わないですよ)と快諾いただいた。


現在、国内外のデベロッパーや関係者から情報提供があり、今後はロシア以外のウクライナや周辺国のデベロッパーの生の声もお伝えできる予定です。返答が得られ次第記事にしていきます。

緊急連載「戦時下のゲームデベロッパーたち」

編集部より(3月18日一部更新)

連載の趣旨について

かつてGame*Sparkでもインタビューしたデベロッパーが現在の状況をどう思っているか、そのままの状態で記すことには意味があるものと判断し、1デベロッパー1記事という形で掲載しています。過去のインタビュー対象がロシアのデベロッパーが多かったこと、被害の状況から勘案してもインタビュイーの比率は同数にならないかもしれませんが、今は数多くの生の声を聞くことにフォーカスしてお伝えしていくつもりです。また、連載が反響を呼び、複数の関係者からこれまでコンタクトがなかったデベロッパーも紹介してもらえました。今後はこれまでインタビューしてきたデベロッパー以外の声もお届けしていきます。

なるべく偏りが少なくなるよう努力はしますが、そうならない可能性もあること、それが即ちロシア側の声を意図的に多く拾うといった、特定の政治的な意図を込めているわけではないことはご理解いただけると幸いです。あくまで本企画は、突然の戦火に巻き込まれてしまったデベロッパーがどのような状況に置かれてしまったかを、彼・彼女らの視座から語ってもらいそのまま伝えることを目的としており、ゲームとも関係の深い両国あるいはその周辺国で作られた海外ゲームを嗜む読者の皆様が現状を把握する一助になればと思っています。

掲載内容について

冒頭にも記載しましたが、あらかじめ企画の趣旨や記事のアプトプットについては全てインタビュイーに伝えた上で掲載しています。同意が得られなかったものや自身の身の安全を懸念し断られるケースも多数ありますが、いずれの質問についても本企画においては必要なものと編集部では判断しており、趣旨の通りまとめていることをご理解ください。

基本的にインタビューの内容についてはほぼ逐語訳であり、こちらから発言にないことを加筆したり、何かしらの発言を誘導したりすることはありません。一方で、そうしたスタンスが故に今後過度に政治的な内容になる、逆にプロパガンダ的な内容になるという可能性を秘めていることは編集部内でも事前に認識しており、掲載にあたっては慎重に議論を重ねています。また、デベロッパーに対しては、必ずしも政治的なスタンスを明かすことは求めておらず、無理矢理に態度を鮮明にすることを求めたり、回答の有無やその内容について善悪の判断をしたりしないということも伝えています。あくまで本連載の趣旨は前掲のとおり「当事者それぞれの視座から現状及び認識を語ってもらうこと」であり、回答の如何を含めてそれを残しておくことには意義があるものと考えています。

なお、ウクライナのデベロッパーについても複数のデベロッパーに連絡をしており、ようやく関係国や未だキーウ(キエフ)で活動を続けるというデベロッパーともコンタクトが取れました。返答が得られ次第随時記事化予定です。

編集方針について

本連載のように毎回デベロッパーにインタビューで政治的な事柄についてスタンスを明示させるようなことは望んでいませんし、話の流れで可能性はあれ、通常のインタビューのスタンスを変えるということはないことも改めてお伝えします。ただし、本連載に関してはうやむやにするよりも突っ込んだ質問が必要であると判断した上でインタビューをしています。

初回からお伝えしているとおり、楽しいゲームニュースがかき消されるような、この最悪な状況が一日でも早く終わることを編集部一同願っています。同時に、突然戦火に見舞われ、日常を奪われた多くのウクライナの市井の人々やゲーム業界関係者を思うとかける言葉もなく、一日も早く平穏が取り戻せることを祈るばかりです。そうした被害に遭われた人々を支援するゲーム業界の動きについても随時お伝えしていきますが、これまで通り日常の記事のボリュームを減らすことなく、ゲーム業界に関連する話題については記事の本数を増やしながら対応してまいります。


《Chandler》
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