Zachtronics最終作は「ミニゲームノベル」?レトロPC時代に思いを馳せる『Last Call BBS』【デジボで遊ぼ!】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Zachtronics最終作は「ミニゲームノベル」?レトロPC時代に思いを馳せる『Last Call BBS』【デジボで遊ぼ!】

今回は、架空のレトロPCでパソコン通信に繋ぎ、7つのミニゲームをダウンロードしてプレイする『Last Call BBS』をお届け。PC内に最初から付属する物を合わせて、8種のミニゲームを遊べます。

連載・特集 プレイレポート
Zachtronics最終作は「ミニゲームノベル」?レトロPC時代に思いを馳せる『Last Call BBS』【デジボで遊ぼ!】
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デジボで遊ぼ!」ではボードゲーム要素やカードゲーム要素、テーブルトークRPG(TRPG)要素のある魅力のデジタルボードゲームを特集。今回は、架空のレトロPCでパソコン通信につなぎ、7つのミニゲームをダウンロードしてプレイする『Last Call BBS』をお届けします(PC内に最初から付属する物を合わせると、ミニゲームは8つ)。

本作はZachtronicsによって、2022年7月5日に早期アクセス版がSteamで配信されました。Zachtronicsと言えば、マニアックなパズルゲームを開発する異色のインディーデベロッパーとしても有名。『SpaceChem』『EXAPUNKS』『SHENZHEN I/O』など、論理回路をモチーフとした作品をリリースしています。

『SHENZHEN I/O』のゲーム画面。電子回路を仕様書通りに組み立て、コードも描き込まなければなりません。

特に『SHENZHEN I/O』はその名の通り、中国・深セン市の電子機器メーカーに勤める新人エンジニアになって、仕様書通りに電子回路を組み立てるという、かなりガチな内容になっています。しかも組み立てだけでなく、動かすためにはコードも書き込まなくてはなりません。初プレイの時のインパクトは、かなりのモノがありましたね。「人を選びすぎるゲーム」なのか、Steamでの評価は「圧倒的に好評」。一見さんにはクソゲーかどうかすら判断できない(そもそも遊び方すらわからない)、非常に敷居の高い作品です。

『Eliza』のゲーム画面。主人公はセラピストですが、話すセリフはすべてAIが指示しています。

その一方で、『Eliza』という近未来ビジュアルノベルもリリースしています。ストーリーがかなり良くできていて、主人公はAIを使ったセラピストとして、人の悩みを解決していきます。実際の悩み解決はAIが行い、セラピストはただAIの指示を相手に伝えるだけ。言ってしまえば、「ヘッドセットに出てくる文字を読んでいるだけ」です。このAIが賢過ぎて、ぞっとするような展開になったりなど、色々考えさせられる内容になっています。興味のある方はぜひプレイしてみてください。

本作の内容ですが、プレイヤーは「サワヤマ コーポレーション」という架空の日本企業が開発したレトロPC「Z5」を、「The Barkeep」という人物から貰い受けます。対応ソフトを探すため、The Barkeepが開設したパソコン通信のBBS(電子掲示板)「Last Call BBS」にアクセスするというストーリーです。

本作でプレイできるミニゲームは8つ。これまでZachtronicsがリリースしたゲームの中でプレイ可能なミニゲームも含まれています。なお、Zachtronics設立者・Zach Barth氏がコンピュータ分野の教職業に専念するため、今作が開発スタジオの最終作になるとのこと。果たしてどんなゲームなのか、早速プレイしていきましょう!

パソコン通信にアクセス!

ゲーム開始すると、特に何の説明も無く、Z5のデスクトップ画面に投げ出されます。そう言えば昔、カシオの「Z1」というポケコンがありましたね。作家・乙一氏のペンネームもそこから来ているそうです。

とりあえずアイコンをクリックしてみますが、何の反応もありません。しばらく試して、ダブルクリックしないと開かないことに気付きました。あくまで「PC画面を操作している」という作りになっていますね。

「ドライブ0」を開き、パソコン通信に接続するソフトを起動。「パソコン通信」と言うのはインターネットの前身のようなもので、電話回線で自分とホストのPCを繋いでやりとりします。インターネットも初期は電話回線でしたね。接続時の「ガー、ピー」といった雑音も再現されており、懐かしさを感じます。

接続先は「Last Call BBS」以外に、「World Time」「Equity First」につなぐことができます。試しに「World Time」につなぐと、世界地図と各地の時間が表示されました。プレイヤーがアクションを起こすと、「HandyMate」というタブレットに、BBSを開設した時の思い出話などが出てきます。本作は、送られてくるメッセージを読みながら、パソコン通信時代に思いを馳せるという、ノベルゲーム的なコンセプトになっていますね。

Equity First」に繋ぐと、ダウ平均や日経平均、為替相場などが出てきます。今でこそネットでの株取引は当たり前になりましたが、それ以前は電話注文による取引で、株価も新聞に掲載されたものを見るのが一般的でした。ちなみに日本で一般投資家がネットで株取引できるようになったのは、1998年の松井証券のサービスが最初と言われています。

Last Call BBS」に接続。メニューの実行は、文字をクリックではなく、対応する数字を押します。7種類のゲームがダウンロードできますので、上から順に落としていきましょう。まずは1番の「Dungeons & Diagrams」から。

ダウンロードですが、実際の時間で1分以上掛かります。妙なところでリアリティがありますね。昔は画像ひとつ落とすにも結構時間が必要でした。とにかく待つしかありません。

ダウンロード待機時間にミニゲームをプレイ!

待っている間は、デスクトップ画面にある「サワヤマ ソリティア」でもプレイしましょう。基本的なルールは、普通のソリティアと似たようなものです。思ったより1分経過するのは速く、プレイ始めてまもなくでダウンロード終了しました。

プレイする前に、ついでに別のゲームもダウンロードしようと思ったら、「15分待たないと次のゲームはダウンロードできない」とのこと。これはサーバの混雑を防ぐための仕組みですね。昔はアクセスが集中したら、すぐにサーバが落ちたりしました。しかしダウンロードごとに、実時間で15分待たされるのは結構長いですね。

待っている間に、ダウンロードした「Dungeons & Diagrams」をプレイ。「Dungeons & Dragons」的なRPGかと思ったら、縦と横に表示された数字の分だけダンジョンの壁を置いていくという「ピクロス」的なパズルゲームでした。

待機時間が終わり、次は「20th Century Food Court」のダウンロード開始。先程は1分ちょいでダウンロードが終わりましたが、今回は4分近く掛かります。ゲームの容量によって時間が違うのですね。ダウンロードしたゲームは「ドライブ0」の中に保存されます。

20th Century Food Court」のダウンロードが終了したのでプレイ開始。機械とベルトコンベアを接続し、料理作成を自動化するゲームです。プレイ感覚としては、以前プレイレポを書いた全自動料理シム『Automachef』に似ていますね。

プラモを作ろう!

筆者が一番気になっていた「STEED FORCE」のダウンロード完了。3種類のプラモを組み立てられます。架空のバックストーリーとして、「日本のロボットアニメ『STEED FORCE』が好きなブラジル育ちの同僚が、子供と一緒にプラモを作りたかったけど、日本から輸入すると相当な金額になる。これは注文したかった物をPCで手に入れられるゲームだ」とのこと。昔は物価の差もありましたし、日本製品は高価な物でしたからね。

プラモを組み立てるには、まずパーツをニッパーで切り離さなければなりません。似たゲームに、プラモ制作シム『Model Builder』がありますが、こちらは2Dでの組み立てになります。

説明書を見ながら、パーツを組み立てていきます。説明書に日本語が書かれているのは、日本語サポートがあるからでは無く、日本の説明書をそのままスキャンしたからなのでしょう。日本語を知らないと「何を書いているかわからない」となりますが、昔はファミコンゲームなど日本語のままプレイする外国の方は多かったですね。探偵ADV『端木斐 VS 小林正雪』を開発した中国の傅真氏も、日本語をまったくわからずに『ときめきメモリアル』をプレイしていたとのことです。

プラモ完成!後は塗装だけですが、これが案外難しい。塗りたくない所にはマスキングテープを貼らなければなりません。細かい部分がどうも上手くいかないので、このまま真っ赤に塗りたくって「シャ〇専用」としておきましょう。完成したプラモは、Gif画像で出力可能です。

さらなるゲームを求めて!

4つ目のゲーム「株札ソリティア」をダウンロード完了。トランプを株札に置き換えたソリティアです。先程紹介したADV『Eliza』でも、ゲーム内のスマホからプレイできますね。これも日本人は漢数字が読めますが、海外の方は自分で意味を解読する必要があります。

5つ目のゲームは「X’BPGH: The Forbidden Path」。不死身の肉体を作るため、細胞分裂などを利用して、画面右側の完成図と同じ物を作る不気味なパズルゲームです。画面左上に並んでいるのは、細胞の動きを1コマずつ表示したものです。画面下では、細胞の増える方向や変化を指示していきます。ノーヒントなので、最初は何をしていいのかわからないとは思います。試行錯誤してプレイするのがいいでしょう。

6つ目のゲームは「HACK*MATCH」。Zachtronicsのパズルゲーム『EXAPUNKS』内でも遊べるミニゲームです。なおNES(ファミコン)でプレイ可能なロムも販売されています

ただ本作に収録されているのは、「コンソール版」ではなく「アーケード版」です。日本のアーケード基盤からロムを抜き取って、エミュレータで動くようにした海賊版ですね。そのためゲームの説明はすべて日本語。これも先程と同じように、日本語サポートがあるわけではなく、日本のロムをそのまま動かしているからです。

「HACK*MATCH」のゲーム画面。いわゆる「オチものパズル」で、同じ色のタイルを4つ揃えると消すことができます。NES版と比較するとわかりますが、本作のは原作の「アーケード版」なのでグラフィックが良くなっています。今でこそコンソール機でもアーケード並みのゲームが遊べるようになりましたが、当時はグラフィックの差が大きかったですね。

最後のゲームは「ChipWizard Professional」。『SHENZHEN I/O』のコード入力が無い簡易版ですね。画面下の出力信号の波形と同じになるよう、入力信号の配線を考えるゲームです。『SHENZHEN I/O』をプレイしたことがあれば、問題無く解けるとは思いますが、そうでないと意味がわからないかもしれません。ある意味、一番Zachtronicsらしいミニゲームです。

パソコン通信時代を懐かしむミニゲームノベル

8種類すべてのミニゲームを紹介してきましたが、気になるゲームはありましたか?筆者のお気に入りは、やはりプラモが作れる「STEED FORCE」ですね。自由に塗装できますし、「ゲームクリア」の概念が無いというのも筆者的には良い点です。

本作をプレイして思ったことですが、ミニゲーム自体がメインでは無く、プレイ開始時やクリア時に「Handy Mate」(画面右下)に出てくるテキストこそが、本作のメインなのでしょう。どういう思いで掲示板を立ち上げたのか、アップしたゲームに興味を持ったのはどういう人達か、なぜそのゲームが人気だったのかなど、当時の様子(架空ではありますが)を知人に語りかけるかのように説明してくれます。

そのため本作は、ただのミニゲーム集ではなく「ミニゲームを遊びながら、パソコン通信時代に思いを馳せるゲーム」というのが本質とは思います。そのため、本作のジャンルは「ビジュアルノベル」ならぬ「ミニゲームノベル」(と勝手に命名)。「マイコンBASICマガジン」などが好きだった人には刺さりそうな内容です。

それと本作は日本語サポートがありませんが、前述したようにミニゲームには「翻訳無しの日本語」があります。お互い様なので、英語が苦手な方も、当時を懐かしむかのように、頑張って英語でプレイしてみてください。

それと現在は早期アクセス版ですが、プレイヤーの要望次第では、さらにミニゲームを追加する可能性もあるとのこと。Zachtronics最後の作品というのは残念ですが、本作の今後の展開に期待しましょう。

製品情報

『Last Call BBS』
開発・販売:Zachtronics
対象OS:Windows
リリース日:2022年7月5日
通常価格: 2,050円
サポート言語:英語
ストアページ:https://store.steampowered.com/app/1511780/Last_Call_BBS/

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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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