ナイトシティは立ち向かうべき敵―「サイバーパンク エッジランナーズ」プロデューサーインタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ナイトシティは立ち向かうべき敵―「サイバーパンク エッジランナーズ」プロデューサーインタビュー

『2077』プレイヤーも納得の出来はどのように実現したのか、その過程について伺いました。

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ナイトシティは立ち向かうべき敵―「サイバーパンク エッジランナーズ」プロデューサーインタビュー
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9月13日の配信以来、高評価で話題沸騰中の「サイバーパンク エッジランナーズ」。ゲーム内とリンクするロケーションに注目が集まり、再びナイトシティを訪れるプレイヤーが急増しています。

編集部では配信直後にCD PROJEKT REDで本作をプロデュースする本間覚氏、エルダー爽氏にインタビューをする機会を頂きました。そこでは、同作に対する大きな反響の手応えや、ゲームとの連動についての裏話が明かされました。

インタビュイー

エルダー爽:CD PROJEKT RED 「サイバーパンク エッジランナーズ」プロデューサー

本間覚:CD PROJEKT RED ジャパン・カントリー・マネージャー/「サイバーパンク エッジランナーズ」プロデューサー


――「エッジランナーズ」の製作におけるCD PROJEKT RED(以下CDPR)の役割を教えてください。

エルダー爽「エッジランナーズ」プロデューサーを担当しているエルダー爽と申します。このプロジェクトにおいては、2社間のコミュニケーションの橋渡しが私の仕事でした。簡略化して説明すると翻訳です。英語のCDPR、日本語のTRIGGER、その間に立って橋渡しをしていました。

CDPRの大きな役割としては、アニメの原案となるストーリーを書くことです。当初は弊社で脚本を全て書く予定でしたが、TRIGGERさんにお渡ししたところ、「(その脚本は)実写向きで、面白いアニメにはならない」と言われ、そこからフィードバックを交わして脚本を書き直す期間が2年ほどありました。最終的には弊社がたたき台を作って、宇佐義大氏と大塚雅彦氏が脚本に落とし込むという流れになり、それでも10話の脚本が完成したのがプロダクションに入る直前でした。

他は権利元としてプリプロダクションまでの全行程の監修などを行っていました。

本間覚このプロジェクト自体はCDPRが起案したもので、TRIGGERさんを含め色々なアニメスタジオに声をかけ、最終的にTRIGGERと制作することになりました。Netflixとのやりとりは完全に弊社が行っていたので、制作終了後のPR、マーケティングは弊社とNetflixで担当し、TRIGGERには制作に集中していただける環境作りに気を配りながら進めていきました。その中で我々がプロデューサーとしてコミュニケーションを担っていました。

――TRIGGERの直前配信では「効果音の指定が細かくて驚いた」という話がありましたが、資料提供はどのように行われたのでしょうか。

エルダー爽複雑なことをしたと言うより、あるものを全部渡していた形ですね(笑)

本間覚各話ごとにTRIGGER側からリクエストが上がってきて、その話数で登場する車や銃の種類の一覧が出てきます。そこで必要となる音素材や3Dモデルを開発チームとコミュニケーションを取りながら集めました。世界設定、例えばサイバー空間がどのように描かれるべきかなどを文書化してレクチャーするなどもしていました。

ゲームが発売される前の2019年頃からTRIGGERにはゲームをプレイしてもらい、ナイトシティの空気感に触れて頂いていたので、素材は潤沢に提供しつつ、原作への解像度を高めてもらう作業は時間をかなりかけてやって頂きました。

――早い段階から制作していたということで、アフターライフに登場する「デイビッド・マルティネス」はイースターエッグとして仕込んだものでしょうか。

本間覚次世代機版が出たタイミングで入れていたはずなので、実は結構最近のアップデートですね。主人公の名前は結構前から決まっていたのですが、彼の運命がどうなるかは2020年12月のゲーム発売段階では決まりきっておらず、明言するのはリスクが高かったのです。その後、プロットが固まってきた段階でアフターライフに置きましょう、となりました。

――「V」の視点からは「そういうこと」だと、ネタバレとして分かっていてもいいということでしょうか。

エルダー爽もはやネタバレでもないと思うのですが、核心的なことは何も言いません(笑)。この作品はサイバーパンクもので、かつCDPRものです。サイバーパンクというジャンルは、ノワールでハードボイルドなものである、と本社は考えているようですね。ナイトシティは資本主義が究極化したディストピアで、英語版の声優にも「今のアメリカの社会問題を9倍濃くしたところ」と説明しました。

幸せに、平和ボケして生きている人なんていないわけです(笑)。デイビッドには辛い思いをたくさんさせてしまいました。でもそれはナイトシティに生きる全ての人に言えることで、ただハッピーに生きている人は誰もいません。その日常のひとかけらをデイビッドを通して観る、というのがこのアニメの趣旨のひとつじゃないかな、と思います。

本間覚このイースターエッグを知っているのは100%プレイヤーで、『サイバーパンク2077』を気に入ってプレイしていないと存在には気づかないと思います。逆に言えばそのくらい『2077』に浸っている人はこのナイトシティがどれだけ残酷な街か、そこでは如何にハッピーエンドになりにくいかを熟知されていると思います。彼らにとっては「そういうメッセージ」として受け取って頂けたんじゃないかと思います。

――配信後の感想でも、世界の掘り下げという点で大きな反響がありました。

本間覚我々も視聴者の反応がとてもいいので驚いています。恐らくこのアニメに最初に関心を持ってくださったのがゲーム版のユーザーだと思うのですが、(彼らにとって)予想以上に世界が再現されていて、かつ魅力的なアクションやストーリーが繰り広げられているところで高い評価を頂いています。そこは意識してTRIGGER側にもご理解頂いた部分なのは間違いありません。

――世界を膨らませるに当たってどのようなプロセスがありましたか。また、原作TRPGの版元R. Talsorian Gamesとはやりとりをしましたか。

エルダー爽これはTRIGGERさんに伺えば面白い話が聞けると思いますが、個人的には、TRIGGERさんは世界を膨らませるのではなく、原作ファンの期待を裏切らないために、今あるナイトシティを最大限まで再現する努力をしたのではと思います。額縁の外に世界を膨らませるのではなく、額縁の中で最高にきれいに再現してくれたのだと思います。今石監督がプリプロから悩んでいたのが 「3Dのオープンワールドをどう2次元に収めるか」でした。ずっと心配されていたので、それを吹き飛ばすような作品になっているのは間違いないと思います。

本間覚ゲームに出てくるいろいろな出来事や武器、衣装などを熟知した上で、日本語版があるTRPG「2.0.2.0」は読んで頂いたようです。TRIGGER製作のトレイラーでは「鋼は肉に優る」など、「2.0.2.0」からの引用もありましたので、そこからはじまるポンスミス氏の創作した世界に浸って頂いたのかなと思います。ポンスミス氏には一度設定を確認してもらったと思いますが、本作の監修を担ったのはあくまでCDPRで、「ロアマスター」と呼ばれる世界設定の守護者のようなスタッフが社内にいて、彼に整合性を確認しながら進めていきました。

――サイバネティクスの表現がある作品と言えばまず「攻殻機動隊」が挙がりますが、Netflixで独占配信を行っており、「エッジランナーズ」とはいわばライバルになります。既存作品との差別化は意識しましたか。

本間覚これはTRIGGERさんをパートナーとして選んだ理由の根底から関わってくるのですが、前提にあったのが「二番煎じを作りたくない」という思いがありました。

どこかで観たような映画やアニメに近いものにはしたくないというのが強くあり、その中でTRIGGERさんは2018年時点でサイバーパンクものを手掛けたことがなく、どのようなものになるか想像ができなかったのは大きなアドバンテージでした。

TRIGGERさんは作画のパワーバランスをアクションに振るスタイルがあるので、その持ち味を前面に押し出すことで、完成したアニメはディティールにこだわったゲーム版やリアルな「ブレードランナー」のようなものとは離れ、自動的に差別化を図れることになります。皆さんからのフィードバックを見ていると、TRIGGERさんを選んで正解だったのかなと思います。

――ゲーム本編ではジョニー・シルヴァーハンドのライブやロックからの引用など、音楽が重要な要素になっています。「エッジランナーズ」におけるフランツ・フェルディナンドおよび山岡晃氏の起用、挿入歌の選曲など、音楽面でのこだわりを教えてください。

エルダー爽フランツ・フェルディナンドの起用はCDPR側からの提案でした。弊社開発代表のアダム・バドウスキー(『2077』ディレクター)も、元々バンドのファンだったんです。「This Fffire」を起用した理由は歌詞を見て頂くと分かりやすいのですが、「街に火を付ける」というデイビッドの生き様をよく表しています。デイビッドが街や敵に立ち向かって行動を起こすんですけど、最終的にぼろぼろになっていくという、アニメの全体的なあらすじを表現しているOPになっているので、それが選曲の基準だったのではないでしょうか。

本間覚ゲームのトレイラーでも「目を覚ませよ サムライ この街に火をつけるぞ(We have a city to burn.)」というジョニーの台詞があるのを覚えてらっしゃると思いますが、ナイトシティという街が、常に「サイバーパンク」の世界においては「敵」なんです。ミリテクやアラサカといったコーポであったり、資本主義の究極的な終着点だと思うのですが、人々はそれに立ち向かい敗れ去っていく。

ゲームとアニメで共通のテーマが見られるので、自ずと楽曲においてもテーマ性が似通っているのではないでしょうか。

エルダー爽山岡さんに関してもアダムが『サイレントヒル』を好きだったからなんですね。劇伴の作曲家を探しているときに「山岡さんに相談してみて」とお願いされたそうで、そこから話が広がりました。

アニメ本編にはない物語の「ひとかけら」が描かれています

本間覚EDを歌っているDawid Podsiadło氏、ゲーム内ラジオなどの楽曲素材はCDPR側から提供しているのですが、それをどの場面で使うかは今石監督やクリエイティブディレクターの若林さんに選んで頂いています。

――視聴者で話題になっているのが「ロケハン」です。ゲームそのままの風景が登場しますが、どのようなプロセスを経たのでしょうか。

本間覚それはエルダーさんが通い詰めたのが大きいと思います(笑)

エルダー爽アニメのプリプロ段階ではゲームはまだ発売されておらず、開発中のビルドに社外で触れたのはTRIGGERさんが初めてではないでしょうか。私がビルドを持ってTRIGGERさんの本社に行き、週3のペースで2ヶ月間、今石監督達とゲームをするという楽しい時間を過ごしました(笑)。その中で、このメガビルディングをデイビッドの家にしてはどうか、アラサカアカデミーがあるならこのビルじゃないか、シティセンターの鯉を出したい、という話をしていました。

――おすすめスポットはありますか?

エルダー爽よく勘違いされているのですが、デイビッドが暮らしていた家は、実は「V」と同じメガビルディングじゃないんです。なので、デイビッドが暮らしていた場所を探し出してみて欲しいなと思っています。

本間覚メガビルディングは拡大する人口をナイトシティの中に住まわせる解決策で、同じ間取りで同じ仕様のビル、いわば団地のようなものですね。「V」が住んでいるのは11号棟で、デイビッドが住んでいたのが4号棟です。実は全然違う場所にあるんですけど、特性上間取りは一緒なので、それを逆手にとって「V」の部屋の素材を使って間取りを維持しつつ、デイビッドとグロリアが住む家に改変していきました。

――電脳の通話は他の作品ではよく音声だけで表現されますが、「エッジランナーズ」ではゲームのUIがそのまま全て文字まで表示されていました。挑戦的だったと思いますが、これはどのような経緯で加えられたのでしょうか。

エルダー爽素材は元々お渡ししていたのですが、あそこまで忠実に再現してくださるとはCDPRでも想定しておらず、ルーシーがブリーチプロトコルをやるシーンなどは製作完了間際に上がってきて、こういう表現にしてくださったんだ、とうれしかったですね。

本間覚ユーザーと同じ視点と言いますか、全く想像していなかったので、TRIGGERさんの演出の妙に見事にはまったと思います。フォントなどの素材はお渡ししていますが、弊社の監修は絵コンテまでとし、本制作はTRIGGERさんにお任せしていました。ゲーム版が好きな人もいらっしゃったので、その中から出た発想を取り入れてくれたのだと思います。

――ゲーム側でも「エッジランナーズ」の冒頭部分がそのまま観られるようになりましたが、これはどのように実現したのでしょうか。

本間覚これはNetflixさんにプロモーションとしてOKを頂いて、権利周りを処理しつつ実装しました。単に映像を入れるだけではCDPRの性質として嫌がるので、常にそこにストーリーを持たせたいというスタジオならではのやりかたがあります。ゲーム中で観られるアニメのBDに関しては、デイビッドの住んでいるメガビルディングのゴミ箱にヘッドセットが落ちていて、とあるキャラクターからメッセージが届きます。

当初は主人公の携帯にQRコードが送られてきてトレイラーが観られる、といったアイデアもあったのですが、商業的と言いますか、「第4の壁」を破ることになってしまうので、アニメの一部をBDとして体験していただき、翌週の本編配信への期待を高めてもらうという、あくまでもその世界の中で自然に見せることにこだわっているのはさすがだなと思います。

――本作はTV放映がなく年齢制限のあるNetflix限定の配信です。ゲムスパ読者は「表現」に敏感なので、CDPRからみてこの表現にびっくりした、というものがあれば教えてください。

エルダー爽ずっとびっくりしてましたね(笑)、ここまでやるか、と。色が付いたり、絵コンテの状態から鮮明になっていったりする過程を、他ののスタッフと一緒に大きな画面で観ていく中で、「あっ、こんな表現を出してくるんですね!」という驚きが結構ありました。もっと全年齢的に楽しめるものを出すのかと思っていたら、CDPR以上にアダルトな表現を入れてくださって、面白い仕上がりになったのではないかと思います。

本間覚レーティングに関してはゲームと映像作品では大きく異なりますし、Netflixさんは独自の設定をされていて、この作品は日本では15才未満の未成年者の視聴は非推奨と指定されました。初期の段階でTRIGGERさんから先行して、例えば第1話のセックスシーンなどに問題はないかなどの確認を受け取っていたので、あとはNetflix側がOKであれば我々としては止める必要はありません。

CDPRとしてはポルノ的な要素を入れすぎることには懸念があったのですが、TRIGGERさんからスパイスとして入れたいという強い要望がありました。結果的には本当にいい意味でのスパイスになって、違ったテイストを与えてくれたと思います。

エルダー爽予想の斜め上を出してきたなと思いました。

――トリガー側にお任せという形でしょうか。

本間覚そうですね。CDPRとしては全く想定していなかったので、そこは純粋にTRIGGERさんの描きたいもの、アニメーターのモチベーションに繋がるものが入っていると思っています。


誰もが納得の描写は、CDPRの惜しみない援助によって成り立つものでした。そして制作者の予想も超える、ナイトシティの新しい表現を提示したTRIGGERにも感服です。市民にとってナイトシティは「立ち向かうべき敵」という見解は、プレイヤーにとっても興味深いものではないでしょうか。遂に発表されたDLC『仮初めの自由』と併せて、あのネオン街を疾走する日々はまだまだ続きそうです。

《Skollfang》
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