Game*Sparkレビュー:『オクトパストラベラー II』―魅力は“余白”。自由な育成を大胆かつ丁寧な提案で導く心地良さ抜群な良作 2ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『オクトパストラベラー II』―魅力は“余白”。自由な育成を大胆かつ丁寧な提案で導く心地良さ抜群な良作

『オクトパストラベラー II』が持つ魅力や独自性に迫るべく、じっくりと腰をすえて本作をプレイ。その体験から得た実感を、率直な言葉でお届けします。

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Game*Sparkレビュー:『オクトパストラベラー II』―魅力は“余白”。自由な育成を大胆かつ丁寧な提案で導く心地良さ抜群な良作
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■展開の早い物語に“まどろっこしさ”なし!

キャラクターや舞台こそ一新しましたが、8人の主人公がそれぞれ目的を持ち、その全ての物語をプレイヤーの任意で進められるという点は、前作と全く同様です。このシステムのおかげで、文字通りの意味で多彩な物語を楽しめます。

物語の好みは相性もあるため一概には言えませんが、台詞主体でストーリーが進むため、進行のテンポは良好。“HD-2D”による、デフォルメキャラながら大きなアクションや表情変化も、冗長な表現を省くスピーディさに貢献しています。

また、好みが分かれると前置きしましたが、8人の主人公が辿る物語は、その目的から纏う雰囲気まで異なります。野心逞しい商人、謎めく事件を追う審問官、復讐を誓う脱獄犯、夢を追い求めるダンサーなど、明暗様々な物語が展開されます。そのため、「どの物語も全部合わない」という可能性は、必然的に低くなるのではないでしょうか。

一般的なRPGであれば、大きな本筋があり、そこに緩急や起承転結が加わります。ですが本作の場合、独立した8つの物語がそれぞれ盛り上がるため、個々の展開が非常に早く、間延びを感じるような部分はありません。

主人公たちが辿るそれぞれの物語は、いずれも各キャラが主人公を務めますが、状況に応じて仲間同士で交わす「パーティチャット」があるため、仲間との接点が完全に失われることはありません。また、本作の新要素「クロスストーリー」のおかげで、仲間同士の関係性をより深く感じられるようになりました。

前作に比べると仲間同士の繋がりをより強く感じられるようになりましたが、一般的なRPGは“ひとつの目的に全員で取り組む”という形が多いので、そうした作品と比べると一体感の面で弱く感じられるかもしれません。

本作の場合は、「ひとりでもいい旅人たちが、ちょっとした縁から旅路を共にし、互いを助け合う」といった風情があります。王道のJRPGにありがちな運命の仲間たちが集う壮大な戦い――みたいなシチュエーションが好きな方には向かないかもしれませんが、「ささやかな繋がりから、人生の一瞬を交錯させる」という切り口もまた良いものだと、本作のプレイを通じて改めて実感させられました。

■「余白」に潜む自由度と冒険が、『オクトパストラベラー II』の世界へと誘う

バトルをストーリーの両面において、独自の色を放つ『オクトパストラベラー II』ですが、そのプレイ体験を通して筆者が強く実感したのは、「余白を自分で埋める楽しさ」でした。この余白は、決して「本来あるべきはずのものがなく、足りない部分をプレイヤー側で埋めるしかない」といった不足を指す意味ではありません。

最も分かりやすい例は、仲間たちの戦力増強です。まずは、自分と同等程度の敵を倒して経験値を貯めてレベルアップするというのが、RPGにおける基本的な成長要素ですし、本作でもそれは可能です。

しかし、この基本以外にも「強力な装備品がある街へ行き、優秀な武具で身を固める「高レベルダンジョンでひたすら逃げ続け、宝箱から強力なアイテムを入手して戻る――を繰り返す」「オーシェットが強い獣を捕らえ、その獣を使ってレベリング」など、ざっと思いつくだけでも複数の方法で戦力を強化できます。

一般的なRPGだとゲーム進行に応じて行ける場所が増えていきますが、本作の場合は序盤からかなり広い範囲の町やダンジョンに足を運べます。無論、道中の敵にやられなければという条件付きですが、サポートアビリティで「エンカウント半減」や「逃げる成功率アップ」といった対策を講じられるので、通常のプレイでも検討できる範疇です。

街で装備品を狙う場合、武器屋で売っているものをそのまま買うのは金銭的に難しいところがあります。そのため、各キャラが持つ「フィールドコマンド」を活用するのが一番です。中でもソローネが使える「盗む」は、強い武具ほど低確率になるものの、入手できる可能性自体はあるので、セーブ&ロードを厭わなければいつか手に入ります。

ダンジョンへの突撃もトライ&エラーになるものの、攻撃力が2桁の武器を装備している頃に、攻撃力3桁の武器を手に入れることも可能で、労力以上の成果が得られます。

また、オーシェットは捕まえた獣を自由に使えるので、ちょっと格上の獣を捕らえ、その獣を使ってもう少し格上の敵を狙う……というサイクルを繰り返すことで、獣の強さが段階的に上昇していきます。獣が強くなればなるほど、経験値の高い敵を倒せるようになるので、飛躍的なレベルアップが望めるわけです。

攻略的な説明になってしまいましたが、肝心なのは戦力の強化手段はいくつもあり、それが定められていないという点です。様々な手段を用意した上で、その過程はまず“余白”として提示し、その空きをどうやって埋めるかはプレイヤーの任意。そこには自由があり、取捨選択があり、そして冒険があります。

強くならないまま目的(=クリア)を叶えることはできませんが、その過程をどう彩るかはプレイヤーの発想や方向性次第。埋めるための要素をしっかりと用意した上での「余白」なので、そこに物足りなさはありません。むしろ、同じゲームを遊んでもその埋め方はプレイヤーごとに異なり、その違いが“自分だけの思い出”になることでしょう。

この「余白を埋める楽しさ」という視点で見ると、グラフィックや物語など、全般的に通じる要点とも思えます。ドット絵ベースの“HD-2D”は、ささやかな機微やわずかな表情変化といった微細な点までは表現できません。しかし、台詞とアクションからその表情を読み取ることは十分可能で、それもまた余白を埋める行為と言えます。

同様に、テンポを損なわない会話主体の物語進行も、説明しすぎないため、細部については想像に委ねる部分もゼロではありません。こうした部分もまた、こちらの想像力を刺激し、頭の中に「自分だけの『オクトパストラベラー II』」の構築を促します。

もちろん、そうした遊びを好まない方もいるでしょう。ですが、自分でピースを入れられる“余白”を楽しめる人には、見逃さずに遊んで欲しいとお勧めしたいほどの作品です。9人目の旅人なり彼らの冒険に加われば、そこには得難い体験が待っています。

総合評価: ★★★

良い点

・8人の主人公による8つの物語+αが楽しめるので、どれかは好みに合う確率は高め
・それぞれの物語がテンポよく進み、飽きを感じさせにくい
・戦略性の高いバトルシステムに、独自の組み合わせで挑む手応え
・強くなる手段がいくつかあり、自分の好みで選べる
・育てるほど雑魚戦は楽になるが、ボスはしっかりと手ごわく、絶妙なバランス

悪い点

・新要素はあるが、前作からの際立った進化は乏しめ
・物語の細部が気になる人には、ひっかかる箇所もあり
・仲間同士の関わりは増えたが、まだ物足りない

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Game*Sparkレビューのお約束
《臥待 弦(ふしまち ゆずる)》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦(ふしまち ゆずる)

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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