今回はデベロッパーのTeam Reptileが、2023年8月18日にWindows PC(Steam/ GOG.com)およびニンテンドースイッチ向けにリリースした近未来パルクールACT『Bomb Rush Cyberfunk』をご紹介したいと思います。
『Bomb Rush Cyberfunk』とは?
本作は架空都市ニューアムステルダムを舞台に、己のルーツを求めながら街一番のクルーを目指していくパルクールアクション。ファンクスタイルのご機嫌な楽曲をバックに、トリックをキメながら街中を華麗に駆け、至るところにグラフィティを描いていきましょう。そんな『ジェット セット ラジオ』を彷彿とさせるゲームデザインに、発売前から多くの注目を集めリリース直後から人気爆発。Steamでは記事執筆時点において、すでに4,000件近くのレビューが投稿され「圧倒的に好評」です。
実際に遊んでみると、シビアなタイミングが要求されるパルクールに細かいオブジェクト判定と、細かいようで大味な操作性が合わさることで、時たま意図しない方向へ吹っ飛ぶ結果になることがしばしば。これ以外にも携帯電話が使いづらかったり、細かく挟まるロードだったりで、一部ゲームテンポが躓いていることもありました。
しかしそれらを補って余りあるほどの「街を散策する楽しさ」、「トリックをキメる楽しさ」、「グラフィティを叩きつける楽しさ」、「楽曲の素晴らしさ」が確かにありました。操作性についてはある程度慣れが必要なものの、ゲームシステムの勘所(クセ)を掴めば、みるみる上達して華麗なトリックをキメることができましょう。
ともあれ個人的な感想で大変恐縮ですが、本作に収録された楽曲全てが最高です。天に向かって声を大にして叫びたい、ヤバイ。粒揃いの名曲たちに私の脳回路はバチバチ音を立ててスパークし始め、現在床にはかつて筆者だったものが転がっています。
ちなみにそんな収録曲の中には、『ジェット セット ラジオ』の楽曲を手がけた長沼英樹氏の作品も含まれていたり。もうだめだ……数年前に初めてこのトレイラー映像を見た時にぶち上がったまま降りてこない私のテンションがヤバイ。ぎりぎりの正気を残して早速紹介してまいりましょう。
操作・設定・言語
本作はキーボード&マウスおよびコントローラーに対応。操作が忙しくなるシーンがしばしばあるので、筆者はコントローラーを接続してプレイしました。
その他グラフィックやサウンドの設定についてはオーソドックスな調整項目が並びます。言語についてはバッチリ日本語対応。メニュー画面からも分かる通り、文字自体もデザインされているのが個人的に大変好感度が高いところです。
本編開始
いきなり話は脱線するのですが、UIをはじめとする本作のデザインのあれこれには、PS2タイトル『METAL GEAR SOLID 2 SUBSTANCE』に収録されたミニゲーム「スケートボード」から感じたファンキーなノリを幻視(?)しました。
または、かつて筆者が興奮で脊髄まで焼き尽くされた傑作『スペースチャンネル5 パート2』に近い系統と言いましょうか……いや、むしろかつて筆者の魂を焼き切った名作PSタイトル『エースコンバット3 エレクトロスフィア』のUIが持つ雰囲気にも似ていると言えるのでしょうか? 同じくナムコの『R4 -RIDGE RACER TYPE 4-』も流線的なUIが特徴で、往年のスタイリッシュな名作を思い起こさせてくれます。
チュートリアルでイロハを学ぼう
閑話休題。筆者が溶けた身体をかき集めて整えているうちに、新規ゲームはムービーとともに前へ前へと進み、時は近未来、場所は留置所、物々しい警察がせわしなくする中、我らが主人公と思しき青年がガンダム立ちをしていました。
ここからはチュートリアルステージが始まり、脱走の手助けをしてくれる先導する青年Tryceと共に、基本的な操作方法を学んでいきます。しかしいまこうして執筆しながら振り返ると、物語的にも結構重要な伏線があちこちにあるような……?
走ってスライディング、ローラースケートでダッシュ、ジャンプでブースト。パルクールの動きを取り入れた主人公の動きは操作してて楽しく、その後のゲームプレイを通じて全体的に言えますが、トリックをバシッとキメた時の気持ちよさがホンットまぁ最高です。
そしてこのグラフィティ(ピース)を壁にスプレーする際の爽やかな動き。指定の場所でボタンを押すと画面が切り替わり、表示された点をスティック操作で順番に線で結んでいけば、自動的に痺れるアートが描かれます。
グラフィティの種類は、プレイヤーが発見して取得することでどんどん増えていきます。ゲームを進行させると街のアクセスできる場所が増えるので、あちこち探索しては回収すると良いでしょう。
このグラフィティを描く際の操作感について、個人的には、ボタン一つでぽんと描かれるシステムのほうが、ゲームプレイの勢いを削がないような気もしました。
もちろんスティックを弾くように入力して線を結ぶ今の操作感でも十分楽しいのですが……例えばそれまで飛んで跳ねて滑走してと続いてきたパルクールアクションの勢いが、グラフィティ画面への切り替わりとスティック操作の2つで立ち止まってしまいがちなのが、やや勿体ないかなと。
あとこれはただの希望なのですが、もしできたらロックオン機能もあれば良いかなと感じます。特にボス戦など、1つの対象に向かってこちらが攻撃等を仕掛ける際、カメラワークもあいまって空振ることがしばしばありました。
何度か練習すれば狙い通りに攻撃を通せましたが、これも「狙いをつける」ために、「パルクールアクションの勢いを数段落とす」必要が出てくるため、せっかくの爽快感が……!とちょっぴり思ってしまったり。
街の探索とトリックと踊り狂う楽しさでどうにかなってしまいそう!
色々あって首を失った我らが主人公。あんまりにもシュールすぎる。
ここからは「Bomb Rush Cyberfunk」のクルーとして、新しい仲間と共に自分の首を取り戻すことになります。そのためには街一番のクルーになること……街の5つあるエリアそれぞれを根城にする、他のチームを倒しててっぺんを目指していきましょう。
街に出るとグッと行動の自由度が広がります。本作のコアバリューのひとつは間違いなく「街の探索」です。
通行人を蹴散らして自販機を殴りつけブーストチャージのアイテムをネコババする……あれ?思ったよりチンピラムーブでござるよ?
冗談はともあれ個人的に、ガードレールなどのオブジェクトを流れの中の飛石が如く利用して加速するトリックアクションが楽しいのですが、そこからさらに奥へ突っ込むと、あえて立ち止まり、BGM似合わせてダンスをするのが最高に良かった……。
ロケーションを巡っては青空と眩しい太陽を頭上に掲げて踊り狂う……本当にどこを切り取っても音楽と合うので止め時がわかりません。
そんなこんなで街の至る所にある指定ポイントでグラフィティを描いていくと「REP」と呼ばれる評価値が上昇していき、一定値を超えるとイベントが進みます。
もちろん街中でこれだけ好き放題描き殴って暴れている訳ですから、警察というか治安部隊が鎮を静めにやってくるのは当然の理です。
殴られればこちらのHPゲージが減少してやられてしまうので、こちらもトリックにまぎれて拳や足を振り回し文字通り蹴散らしていきましょう。
スプレーでグラフィティを描きつけることも可能で、一部の敵はそれがダウンを取るための技だったり。
REP上昇に伴うイベントは、ムービーなどを挟みながら最終的には他チームとのバトルに発展します。このバトル、「相手チームよりポイントが多いこと」が勝利条件なのはわかるものの、何をどうすればそのポイントが稼げるのか、コツを掴むまでは少々苦戦するかもしれません。
コツは、どれだけ途切れずにトリックをキメられるのか。トリックを重ねるほどポイントも上昇するので、なあんだ簡単じゃーんと、長い直線距離のレールを端から橋まで往復しながら稼ごうとした筆者はそのまま敗北しました。何でですか!『MGS2』のスケボーゲームでは上手くいったのに!
ここでもう一つのコツですが、それはなるべく新しいルートを走ることにあります。同じ場所で延々トリックしても、たしかにインパクトは薄れていく……。一方でバトル指定のマップを隅々まで駆け巡り、オブジェクトもたっぷり利用しながらトリックをキメたら、加速するわブーストだわポイントはバンバン乗算されるわで賑やかになっていきました。
ところでバトルに負けると、「ゲームオーバー」などといった画面が表示されることもなく、静かにスッ……と切り替わって、バトル前のムービーが改めて再生されます。ここらへんテンポが良いことは良いのですが、その境目がわかりづらいので「あ、今のイベントバトルじゃなくて本当に失敗だったのね!?」となりがちです。
ちなみにチュートリアルステージでは、失敗するともっと容赦なく「スッ……」と最初に巻き戻されて心が折れかけました。ファンタのCMでだいぶ昔にあった3年F組DJ先生を思い出します(狂)。
そんなこんなでゲームをさらに進めると、操作可能キャラが主人公以外にも増え、それに伴いスケボーからBMX、ローラースケートと選択肢が広がります。
衣装チェンジなどのオシャレ要素もバッチリ用意されてる本作。
路地裏やちょっとした段差を越えた先にひょっこりアイテムが落ちてたりするので、基本的には、街を走り回って遊べば遊ぶほど何かを見つけることができる濃密なプレイフィールに仕上がっていますね。
人によっては意見が分かれるかもしれませんが、アーティスティックな演出もバチバチにキマってるので、筆者のようにそういう方面のデザインが大好きなプレイヤーにとっては脳が夏の日差しに溶けてラムネの瓶にカランと音を立てるビー玉のような透き通る爽やかさで皆さんも正気を失いましょう。
タイトル:『Bomb Rush Cyberfunk』
対応機種:Windows PC(Steam/ GOG.com)/ニンテンドースイッチ
記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)
発売日:2023年8月18日
著者プレイ時間:2.5時間
サブスク配信有無:記事執筆時点において、無し
価格:4,500円(Steam)
※製品情報は記事執筆時点のもの
スパくんのひとこと
BGMでテンション上がりすぎて踊りながら意識飛びそうになったスパよ