たったひとりで作り上げた国産バレットタイムFPS『LAYERED ORDEAL』が超面白いのに5件しかレビューがないので広めたい。開発者にも直撃してこだわりを訊いてみた | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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たったひとりで作り上げた国産バレットタイムFPS『LAYERED ORDEAL』が超面白いのに5件しかレビューがないので広めたい。開発者にも直撃してこだわりを訊いてみた

70日という短期間で作り上げた個人開発FPS!

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たったひとりで作り上げた国産バレットタイムFPS『LAYERED ORDEAL』が超面白いのに5件しかレビューがないので広めたい。開発者にも直撃してこだわりを訊いてみた
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Steamには短い開発期間&少人数で作り上げられたインディーゲームが数多く存在しますが、『LAYERED ORDEAL』という作品はそのなかでも群を抜いてクオリティが高い一本と言えるでしょう。

本作はBleibend(ブライベンデ)というサークルが開発したSFシューター。バレットタイムを巧みに使って全15ステージを駆け抜けるというシンプルなゲームで、その作り込みやソリッドなアートデザインは一見の価値がありますが、なんと記事執筆時点では5件しかユーザーレビューがついていないのです。本作の面白さを広めるべく、ゲーム紹介と開発者直撃インタビューをお届けします。

弾幕を避け、弱点を撃ち抜け! 階層的試練(レイヤード・オーディール)をクリアするミニマルなFPS

主人公であるあなたは、謎の存在から“チャイルド”と呼ばれ、眠りから目覚めます。なにひとつわからないまま、銃を手に取り、15体のボスを倒す試練を課されました。ストーリーはこれだけですが、なんだか妙に雰囲気があります。

ゲームプレイはオーソドックスなFPSです。ボスが半透明の球体を雨あられと投げてくるので、それらを回避しながら、たまに現れる真白く光る弱点を撃ち抜いていきましょう。

しかしながら、弱点も高速で移動しているので、まともに当てるのは無理なレベルです。

ですが、主人公が立ち止まっているあいだ、周囲の時間は遅くなります(正確には0.1倍速になる模様)。

このバレットタイムと、ダッシュを利用して、ハイスピードな戦闘を制御していくのです。

こうして聞くとFPSマニアしか遊べないようなハードコアなゲームに思われるかもしれませんが、そうではありません。バレットタイムは無限に使用できるので、弾幕の軌道をじっくり眺めてから対応することができます。

バレットタイム中はリロードも0.1倍速ですし、弾幕はプレイヤーを追尾するものも多いので、なんだかんだ言って等倍で動かなければならないタイミングは数多くあります。

戦闘の成果に応じて経験値が貰え、ステージ間ではいつでも能力を強化することができるので、いくら負けてもちょっとずつ進めていくことができます。時間が無駄になるわけではないのが良いですね。

ステージも数多く、ボスは魅力的な姿をしている者たちばかりです。遠くから巨人が弾幕をばら撒いてきたり、柱だらけの地下駐車場のようなところでお互い物陰に隠れながら撃ち合ったり、双子が同時に攻撃してきたりと、それぞれに応じた作戦を取らなければなりません。一方向に動き続けて球を避ける戦術が有効なボスが多いとも思いましたが、ゲームクリアまでにギミックに飽きるということはありませんでした。

無機質でかっこいいアートワークはかっこよく、耳をつんざくバチバチの打ち込みサウンドも素晴らしいです(スローモーションのたびにエコーがかかって遅くなるのも素敵)。

これをたったひとりで、なおかつ70日もの短期間で仕上げたBleibendとは何者なのか? インタビューをさせていただきました。

――まずは簡単に自己紹介をお願いします。

UnKnown:UnKnownと申します。昔からFPSを中心にゲームを遊んでいて、最近はプレイするよりも制作の方に軸足を置いて活動しています。

――普段はブログやSteamグループ「ゲーミングチャイルド」で活動されているとのことですが、具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

UnKnown:ブログでは、制作中のゲームの進捗状況を書いたり、遊んだゲームの感想などを書いています。Steamグループ「ゲーミングチャイルド」については、昔はサイトも運営していましたが、私が更新するのが難しくなってしまったので、今は友人たちが運営してくれています。私は幽霊部員のようなもので、たまに協力プレイのイベントに誘われたときに入るくらいです。

――本作『LAYERED ORDEAL』を作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

UnKnown:去年の夏ごろに『Devil Daggers』と『Luna Abyss』の体験版を遊んだのがきっかけです。『Devil Daggers』はアリーナで戦うシンプルなハードコアFPSで、『Luna Abyss』はハイペースに放たれる弾幕を避けるFPSです。アリーナで弾幕を撃ってくる敵と戦うというアイデアが本作のコンセプトとなっています。

『Devil Daggers』
『Luna Abyss』

――狭い空間で撃って避けるという体験に惹かれるんですね。

UnKnown:惹かれたというのもそうなんですが、個人で開発するとなるとそちらの方が良いと思ったんですよ。少しネガティブな話になってしまうのですが、『Luna Abyss』は探索要素もあって、それが自分にとっては少しノイズだったので、思い切ってバッサリ取り払ったものを作りました。

――本作の制作期間は70日間とのことですが、実際に70日間はどんなスケジュールで制作されましたか?

UnKnown:マップやボスについては1つにつき2、3日ぐらいで実装していく形でした。去年の夏ごろに開発を開始して、2週間ぐらいで始めの1から5ぐらいまでのレベルを作り、デモ版として公開しました。思いついたものから順に入れて、それを固めていくという作り方です。レベルが先かボスが先か、といった順番はなく、先に思いついたものから実装していきました。

――そのスケジュール感は、最初に決めていたことだったのでしょうか?

UnKnown:当初はitch.ioで5ステージだけ作ったのを公開して終わりのつもりだったのですが、長年フレンドの方がプレイして、「もっと遊んでみたい」という好意的な意見をいただいたんです。レビューや感想も書いてくれて、じゃあ1時間くらいのボリュームで作ってみようかなと決心しました。Steamへの登録なども経験として知っておきたかったんですよね。

当初は25個~30個ぐらいのステージを予定していました。ただ、開発が進むにつれて熱量が低下し、「これは要らないな」「出来が悪すぎるな」というステージをカットした結果、最終的に15個になり、70日で作り終えるということなりました。

――なるほど。計画段階から大きく変わったのですね。没にしたのはどういったものだったのでしょうか。

UnKnown:動物などキャラクター性が強いボスを作ろうとしていたんですが、どうしてもどこか安っぽく、作品の雰囲気と合わないんですよね。インディーゲームは予算や制作規模の関係でどうしてもアニメーションがしょぼく見えるという弱点があると思っていて、そこで安っぽいと思われるのが嫌だったので、敵を飛ばしてそう見えないようにしました。

――実際にFPSを作ってみて、面白かったところや難しかったところは何でしょうか?

UnKnown:難しかったのはプログラムですね。FPS……というかゲーム制作自体を今まで本格的に取り組んだことがなく、Unreal Engineで3Dモデルを作って満足しているような状況が10年以上続いていたんです。仕事は製造業で、プログラムとは全く関係ないですしね。

ただ、自分の頭の中で思い描いたアイデアをプログラムで実現できたときは、面白さとひらめき、そして謎解きのような感覚があって、非常にやりがいを感じました。

――プログラム面での苦労が大きかったのですね。本作のバレットタイムの使い方は非常にユニークだと感じましたが、本作を制作する上で最も大事にしたポイントは何でしょうか?

UnKnown:バレットタイムの仕様ですね。当初は『F.E.A.R.』のSlow-Moのように手動で発動するような形にしていたんですが、操作量が増えるとプレイ体験としてあまり良くないんですよね。そのため、移動速度と時間の流れを連動させるような、直感的なシステムに変更しました。これにより、バレットタイムは弾幕回避のためだけでなく、射撃の補助としても機能するようになり、高速で動き回る敵に対応するという遊びにつながりました。

――ボス戦では敵ごとに異なる攻略法が求められるように感じましたが、ボスを作るにおいて意識したポイントを教えてください。

UnKnown:地面を歩く動物のキャラクターも検討していたのですが、空中と地面を両方移動する敵キャラクターは、視線誘導が難しく、プレイヤーの状況判断を混乱させてしまうと考えました。

そのため、基本的には空中に浮遊する巨大なボスとの対峙という形にし、各ボスで異なる攻撃パターンや弱点を用意することで、新鮮味を維持するように努めました。また、やや複雑な攻略法を採用していたボスもあったのですが、フレンドから「あまりにも難しいし、クリアの方法がわからない」というフィードバックをいただいて、調整しました。ただ、クオリティを追求しすぎるとボリュームが不足してしまうため、1時間程度でクリアできることを目標にバランスを取らなければなりませんでした。

――無機質でクールな世界のグラフィックも魅力的だと感じました。グラフィック制作において、特にこだわった点はありますか?

UnKnown:できる限り情報量を抑えることですね。本作は個人制作なので、リソースに限りがあります。また、私自身のデザインセンスも決して高くはないため、安っぽく見えてしまうのを避ける必要がありました。そのため、あえて情報量を減らし、プレイヤーの想像力を刺激するような表現を心がけました。

また、ライティングには特にこだわっていて、「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」といった映画に見られる、濡れた質感の地面を表現して映像的な深みを加えるという手法を意識しています。

――濡れた路面は異世界感を高める効果がありますね。本作に影響を与えたゲームやコンテンツがあれば教えてください。

UnKnown:ゲームデザインの中核となっているのは、『Devil Daggers』『Luna Abyss』『SUPERHOT』ですね。アート的な部分では、リミナルスペースやバックルーム、庄野晴彦さんの作品、Remedy Entertainmentの『CONTROL』などから影響を受けています。

――非常に興味深いですね。LAYERED ORDEALは、しっかりとしたゲームデザインだと感じましたが、これまでゲームを制作した経験はあったのでしょうか?

UnKnown:以前から『Quake』や『Half-Life』のMod制作を趣味の範囲で行っていましたが、販売する作品としてゲームを制作したのは今回が初めてです。

――古くからゲームをプレイされているんですね。

UnKnown:本格的に興味を持ち始めたのが『Quake II』からなので、1998年からということになりますね。

『Quake II』(1997)

――FPSというジャンルに対して、どのような思いを抱いていますか?

UnKnown:キーボードとマウスで操作するというFPSの操作体系は自分の感覚で20年以上やっているので、自分の身体の延長線上のように感じます(笑)。

私がFPSを遊び始めた頃は、洋ゲーを輸入して遊ぶ人や、FPSを遊ぶ人は今ほど多くなかったのですが、最近は『VALORANT』や『Apex Legends』の影響でプレイヤーが増えましたね。

――本作に関わりなく、特に好きなゲームがあれば教えて下さい。

UnKnown:そうですね… 子供のころに遊んだ『ガイア幻想紀』は思い出深いです。FPSで言うと、『No One Lives Forever』や『Quake』が好きですね。

――Steamコミュニティではレビューを行っていらっしゃると思いますが、作品を論じることと自分で作って世に送り出すことで、違いがあると思います。それぞれどういったことを感じていますか。

UnKnown:まず、自分で感想やレビューを書くときは、面白いと思ったり、可能性を感じたりしたものだけに限定しています。ただ、面白い作品でもこうした方が面白くなるのではないかという建設的な意見として伝えられたらいいなと思っています。頭ごなしにクソとかダメダメとか批判するのはあまり意味がないと思っています。

自分が作るうえでは、皆さん陥ることだと思うのですが、本当に面白いのかどうかわからなくなってきます。本作はフレンドの感想や意見は技術的に難しいもの以外は全て採用して、洗練させていきました。

――現在制作されている新しい作品『天使の10分間』も、ローポリゴンなグラフィックやキャラクターが魅力的です。期待してほしいポイントがあれば教えてください。

UnKnown:『天使の10分間』は、『20 Minutes Till Dawn』から影響を受けて制作しています。空中に浮いているキャラクターを操作し、地上とは違った戦い方ができるのが特徴です。『20 Minutes Till Dawn』は2Dゲームですが、『天使の10分間』では3D空間での戦闘を楽しめます。

また、『LAYERED ORDEAL』では、キャラクターや物語性を意識的に排除しましたが、今回は90年代の深夜アニメのような、キャラクター性やカットシーン、メッセージ性といった部分にも力を入れて、世界観を表現していきたいと考えています。

――ありがとうございました。


ゲーム制作の経験がほぼないにもかかわらず、無駄なところは捨て、フィードバックを積極的に取り入れ、デザインにもこだわるなど、非常に研ぎ澄まされた作品を作り上げたことに驚かされました。多くの人に遊んでほしい1作です。

『LAYERED ORDEAL』は、PC(Steam)向けに配信中です。


ライター:各務都心,編集:みお

ライター/ 各務都心

マーダーミステリー『探偵シド・アップダイク』シリーズを制作しているシナリオライター。思い出の一本は『風のクロノア door to phantomile』。

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編集/取材も執筆もたくさんやる、半ライター半編集 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。

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