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ヴァイオリンの弓が切れるほど熱い!?『UNDERTALE』10周年コンサートのリハーサルに潜入―MUSICエンジン代表が語る楽曲への情熱と演奏の裏側

リハーサルの様子と、コンサートを開催した「MUSICエンジン」代表の河合晃太氏へ行ったインタビューの模様をお伝えします。

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ヴァイオリンの弓が切れるほど熱い!?『UNDERTALE』10周年コンサートのリハーサルに潜入―MUSICエンジン代表が語る楽曲への情熱と演奏の裏側
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2015年9月にリリースされ、今年で10周年を迎えたRPG『UNDERTALE』。プレイヤーの選択によって「倒す」か「見逃す」かを決められる、“誰も死ななくていい優しいRPG”というキャッチコピーのもと、10年が経った今でも多くのゲームファンから根強い人気を誇るタイトルです。

今年は、そんな『UNDERTALE』の10周年を記念したコンサートが、ゲーム音楽を追求する演奏団体「MUSICエンジン」により開催されました。

今回筆者は、10月12日に行われた東京公演のリハーサルに潜入取材。その様子をお伝えするとともに、「MUSICエンジン」代表であり、コンサートではヴァイオリン・ヴィオラを担当する河合晃太氏へのインタビューもお届けします。

◆ステージには、大きい「LOVE」と「うざいイヌ」

コンサート会場に入ると、すでに本公演のリハーサルが始まっていました。

まず目に飛び込んできたのは、ステージ中央に佇む「うざいイヌ」と「テミー」の姿。後述する河合氏へのインタビューによると、このコンサートでは指揮者を置かず、『UNDERTALE』のプレイヤーなら誰もが分かる「うざいイヌ」と「テミー」をシンボルとして設置しているとのことです。

さらにステージには、プレイヤーの「LOVE」を象徴するハートマークも配置。このハートはスクリーンとして機能し、演奏される音楽に合わせて実際のゲーム映像が投影される仕様になっていました。

この時点で「『UNDERTALE』のコンサートに来たんだな~」と実感。ハートマークは通常は赤色ですが、パピルス戦のスペシャル攻撃時には照明が青く変化するなど、ゲーム内演出が見事に再現されていました。

◆当時のプレイを思い出しながら、ストーリーに沿って楽しむプログラム!

筆者が最初に耳にしたのは、すべてのモンスターを倒すことで到達できる特殊ルートの楽曲群。ふじみのアンダインと戦うときに流れる「本物のヒーローとの戦い」やメタトンNEOと対峙するときの「"NEO"の力」、そしてサンズとの決戦でおなじみの「MEGALOVANIA」などが続けて演奏されました。

3曲ともにテンポの良いリズムが特徴の楽曲ですが、オーケストラで聴くと迫力がとにかく桁違い。すべてのモンスターと戦わなければいけないルートだけに、壮大さと緊張感、音のきめ細やかさが伝わってくるようで、『UNDERTALE』を初めてプレイしたときの感動が蘇りました。まさに“ケツイ”がみなぎった。

「MEGALOVANIA」のリハーサルが終わると、ゲームのオープニング曲「むかしむかし…」が演奏開始。ここからは、トリエルとの出会いを描く「いせき」や戦闘曲「ENEMY APPROACHING!」など、ストーリー順に楽曲が進行していき、プレイヤーがゲームを追体験できる構成となっていました。

「どれも名曲ばかりだな~」と感じつつ聴いていると、流れてきたのは「びっくりするほど近い距離を飛んで渡らせてくれる鳥」。ゲーム内で小さな黄色い鳥が主人公を運ぶシーンで流れる曲で、見た目のシュールさと壮大なサウンドのギャップが印象的なシーンです。

このように、ストーリーの小ネタ曲も楽しめるコンサートとなっており、ほかにもナプスタブルークが作曲したブルブルシリーズ、カタツムリレースで流れる「サンダースネイル」など『UNDERTALE』の細かい部分まで堪能できる内容となっていました。

リハーサルの締めくくりに演奏されたのは、アズリエル・ドリーマーとの最終決戦で流れる「夢と希望」。この曲の良さはファンなら語るまでもないでしょうが、オーケストラの生演奏で聴くとその魅力が何倍にも膨らみ、まさに“希望”という言葉がぴったりな感動を味わいました。

◆アンダインの「正義の槍」でヴァイオリンの弓を切るところ見てほしい

――まず始めに、『UNDERTALE』10周年記念コンサートが開催された経緯についてお聞かせください。

河合晃太氏(以下、河合氏):2020年に『UNDERTALE』5周年記念動画を配信しましたが、この動画はコロナ禍で世の中のコンサートが中止になるなか、以前に録音していた2019年の演奏を動画化したものなんです。そしてこの動画を公式で流してもらい、1000万回から2000万回近く再生されるほどの大きな反響を呼んだことで今回の10周年のコンサートにつながりました。

コロナ禍も収束し、コンサートが再開される中で、ファンの皆さんの熱意と私たちが生演奏を届けたいという強い思いから、自然な流れで今回の10周年記念コンサートが開催されることになったという経緯です。

――9月13日から15日に行われた大阪公演の現場の雰囲気はいかがでしたか?

河合氏:まずビックリしたのは、若い方が多かったことです。発売から10年が経っていることもあって、年齢層があがるというイメージを抱いていましたが、下手したら10代、20代の若い世代の方が多くて驚きました。2019年のコンサートのときも多くいましたが、それよりも若い観客の方が新しく増えている印象を受けましたね。

もしかすると、時代が進みYouTubeの動画などを通して別の形で『UNDERTALE』が認知されるようになったのかもしれません。また、5周年記念動画をみてコンサートの存在自体を知ってくださった方も多くいるのではないでしょうか。

――若年層の観客が増えたことで、コンサートの雰囲気に違いはありましたか?

河合氏:コンサート冒頭の曲では、若い方が多く拍手のタイミングに不慣れだったためか、一瞬「シーン」と静まり返る場面がありました(笑)。「これは自分でなんとかしなきゃだめかな…」と思っていたら、1人拍手を叩いてくださった方がいて、それからはタイミングを掴んでくださり、一曲ごとに熱のある拍手をいただきました。

途中で曲間に切り替わるときも別にざわざわすることもなく待ってくださっていて、お客さんと一つの空間を作っていると強く感じて、緊張感をいい意味で与えられたのではないかと思います。

いつも本気ではありますが、いつも以上に本気を出さなくてはその熱量に負けてしまうと演奏している側も全力で迎えて、自分で言うのも変ですが、お客さんとお互いに相乗効果が生まれたことで「いい演奏が届けられたのかな」と思ってます。

――リハーサルの様子を見たときは、全モンスターを倒すことで到達できるルートの楽曲から始まりましたが、コンサートのどの部分を演奏されていたのでしょうか?

河合氏:あれは、18時から(夜公演)行われるプログラムBの冒頭の部分です。14時から行われる昼公演は全モンスターを倒すルートの曲で終わるので、ゲーム内と同じくそのデータを消せない状態を継続して夜公演につながります。

なので夜公演は、すべてのモンスターを倒した状態の感情でストーリーを追い、また新しくエンディングを迎えるという流れになっているんです。

――河合さんが『UNDERTALE』のなかで一番好きな曲はなんでしょうか?

河合氏:私はメガネをかけているんですけど、実は脳筋でして…アンダインの「正義の槍」を毎回テンション“爆アガリ”で弾きます。私は必ずそこを弾くとヴァイオリンの弓を何本か切ってしまうんです。

――その切るっていうのは……大丈夫なんですか?

河合氏:弓って馬の尻尾の毛でできているのでブチッと切れてしまうんですが、全然大丈夫です。切りすぎると弾くところの面積が減っちゃうんですけどね。他にももちろん好きな曲はあるんですけど、ハイテンションな曲なのでその流れに持っていかれてしまいます。やっぱり大好きな曲ですね。

――続いて、観客にここはぜひ注目してほしいというポイントはどこになりますか?

河合氏:それは、やはり私の弓を切るところでしょう!注目してもらって「あ、河合さん切らなかったんだ」となって、「ちょっと熱量足りないんじゃない?」みたいに言ってほしいですね~(笑)。

――なるほど(笑)。やっぱりアンダインの「正義の槍」が注目してほしいところなんですね。

河合氏:その他にもプログラムには盛り上がる部分や静かな部分があり、それぞれに聴きどころがあると思います。特に後半に向けて気持ちが高まっていく流れを感じてほしいです。ゲームをプレイしたことがある方も、そうでない方も、“最後のルート”にたどり着いたときのあの感情を、演奏を通して少しでも伝えられたらと思っています。

音楽の「素敵さ」だけでなく、その奥にある想いや物語を私たちの演奏で届けたい。それぞれの曲が持つ明るさや暗さを音を通して感じてもらえたら、本当に嬉しいです。

――ユニークなキャラクターが登場する『UNDERTALE』ですが、ゲームなかでも独特な曲が多いと思います。その楽曲をオーケストラで表現するにあたって意識した部分やこだわった点などはありますか?

河合氏:オーケストラアレンジに関しては、『UNDERTALE』の楽曲はゲームのストーリーに沿って曲順を組むと、どの団体が演奏してもほぼ同じ曲順になるほど、構成が完成されているんです。もちろんそういうゲームも他にありますが、これを全部一人で作られていることにビックリですね。なのでオーケストラにするという部分では、ほぼ迷いなく作れました。

――河合さんは、『UNDERTALE』のなかでどのシーンが一番お好きですか?

河合氏:昼公演でいうと、「UNDERTALE」という、ゲームタイトルそのままの曲があるんです。アズゴアと戦う前の灰色のエリアの中を敵とエンカウントしながら会話する場面があるんですが、そこが一番印象的ですね。

あの曲だけは、映像とのバランスという意味でも、私の中で“最高値”を出しているというか……。流れている映像と音楽、そして会話の内容がすべて一体になっている感覚があるんです。逆に言えば、あの原曲があるからこそストーリーが成り立っている気がしていて、まだ私たちの表現ではそこに完全に到達できていないと思っています。

それでも、いつも感動しながら演奏しているし、もちろん他の盛り上がる場面も大好きなんですが、やはり一番思い入れが深いのはあの曲ですね。

――ステージの真ん中に「うざいイヌ」と「テミー」がいたと思うんですが、あれは河合さんご自身のアイデアであの位置に置かれたんでしょうか?

河合氏:そうですね。イヌはもともと5周年のときにも登場していて、YouTubeの映像にも出ていました。今回は指揮者がいない公演なんですが、だからといって全員が自由に演奏しているわけではなく、全体としてひとつにまとまる瞬間があるんです。そのときに何が象徴的かなと考えたとき、『UNDERTALE』を知っている人なら誰もが知っている“うざいイヌ”が思い浮かびました。

あのイヌがステージにいてもまったく違和感がなく、ただ“そこにいる”という自然な存在として成り立つと思ったんです。なので、あの位置はもう固定かもしれません。

――まるで指揮者の代わり、あるいはシンボルのような存在なんですね。

河合氏:そうです。「私の代わり」というわけではなくて、会場全体やホールの空気をあの存在を通してつなぐような、そんな役割を担ってくれていると思います。

――最後に、『UNDERTALE』のファンの皆さんや、これから公演に足を運ばれる方々へメッセージをお願いします。

河合氏:まずはこうして10周年を迎えられることに、心から感謝しています。お客様の反響や動画へのコメント、「10周年おめでとう」という温かい言葉があってこその今です。その気持ちに応えられるよう、そして5周年を越えられるような音を届けたいと思っています。

常にお客様との相乗効果の中で、自分たちの熱量を高めながら演奏しています。ゲームの良さ、そしてゲームの音楽しか知らない方にも「プレイしてみたいな」と思ってもらえるような演奏をお届けしたいです。そんな思いを込めて、これからも頑張っていきます。

――1人のファンとしてリハーサルを聴いただけでも感動してしまいました。素晴らしい演奏と面白いインタビューをありがとうございました!


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¥1,500
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:まっつぁん,編集:TAKAJO

編集/いつも腹ペコです TAKAJO

Game*Spark編集部員。『Crusader Kings III』と『Mount & Blade II: Bannerlord』に生活リズムを狂わされ続けています。好きな映画は「ダイ・ハード」、好きなアメコミヒーローは「ナイトウィング」です。

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