『R-TYPE DELTA』移植はソースコードが不完全だった…『R-Type Delta: HD Boosted』はダメ元から始まったプロジェクト。プロデューサーインタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『R-TYPE DELTA』移植はソースコードが不完全だった…『R-Type Delta: HD Boosted』はダメ元から始まったプロジェクト。プロデューサーインタビュー

『R-TYPE DELTA』の移植はこれまでさまざまな会社が挫折。シティコネクションが実現できたワケとは。

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『R-TYPE DELTA』移植はソースコードが不完全だった…『R-Type Delta: HD Boosted』はダメ元から始まったプロジェクト。プロデューサーインタビュー
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左がディレクターを務めたちゃんたけ(江田岳浩)氏、中央が吉川延宏氏、右が『R-TYPE DX: Music Encore』ディレクターの上田氏

1998年に、初代プレイステーション向けにリリースされたアイレムソフトウェアエンジニアリングによるシリーズ初のポリゴンSTG『R-TYPE DELTA』。

シリーズの中でも高い人気を誇っていたものの長年移植されてこなかったこともあり、移植が発表された時は大きな話題となっていました。2025年6月に発表された『R-Type Delta: HD Boosted』は、60fps動作だけでなく高解像度化や表示領域の拡大、当時のプロデューサーの希望でもある処理落ち無しなどHDリマスターに求められる要素をほぼ網羅した内容でした。

今回の『R-Type Delta: HD Boosted』プレイアブル出展に絡み、シティコネクションの代表であり本作のプロデューサーを務めた吉川延宏氏へインタビューを行いました。なお、本インタビューは本作のプレイレポを基に聞いたので、是非こちらもお読み下さい。


ダメ元でスタートした『R-TYPE DELTA』の移植開発

――シティコネクションの公式配信にて、ちゃんたけ(江田岳浩)氏が、本作移植のディレクターに起用された経緯について言及されていましたが、そもそも、どのようなきっかけで移植プロジェクトが立ち上がったのでしょうか?

吉川:シティコネクションで『R-TYPE』シリーズ楽曲全部入りBOX「R-TYPE ORIGINAL SOUND BOX」を出したときがありました。あれぐらいのタイミングでアイレムさんと仲良くなったことで、『R-TYPE DELTA』の移植がとても難しいという話が持ち上がりました。

『R-TYPE DELTA』は初代PlayStationのタイトルとはいえ技術的なことを含めて難易度が高く、エミュレーターの完成度を見ても使い物にならない部分もあることがありました。そのため、ソースコードを借りて解析してという道筋があったものの、ライブラリも6割から7割しか残っていないという状況でした。

そんな状況であったもののソースコードを借りて凄腕エンジニア1名に「3年とか時間がかかっても良いから」と、半ばライフワーク的に解析をお願いしました。「いつかリリース出来たら良いな…」という想いと共に一旦忘れていたのです。企画が上がったのはコロナ禍でしたが、そんな経緯もあり、世に出るまで約3年掛かったのです。

また、シティコネクションより前にも様々な会社がアイレムさんへ『R-TYPE DELTA』の移植の問い合わせをしたそうですが、現存のソースコードが完全でないことや、エミュレーター動作を拒否したことなどで、問い合わせた会社も諦めることが多かったそうです。そのため、シティコネクションはソースコードをがんばって補完しました。

そこから2年経ったタイミングで移植の目途が立ったものの、当時の3Dモデルをそのまま出すわけにはいかないことから、アイレムさんにお願いしてテクスチャを高解像度化しました

――なるほど、かなり時間がかかったのですね。本当にアイレムと協業しながら開発したのですね。

吉川:アイレム内には『R-TYPE DELTA』でグラフィックを担当していた開発スタッフがまだ残っていました。また、当時の仕様も全て知っている人だったので、とても頼りに出来たのです。版元でありながら、版元に発注するという珍しいパターンとなりました。

――アイレムソフトウェアエンジニアリングは、2013年以降に目立った活動がなかったと思いますが、現在でも何か活動しているのでしょうか?

吉川:部外者の私が話せる範囲では、遊技機(パチンコなど)の開発や、大手メーカーからの受託開発を行っています。現在でももちろん存続しており、大規模です。そのためパブリッシャーやライセンサーとしての活動は控えめですが、開発会社としてみると大人数で活動しています。

――なるほど、近年アイレムの名前を聞かなかったのは受託開発などに回っていたのもあったのですね。プロデューサーからの視点として今回移植は苦労しましたか?それとも順調に進んだものだったのでしょうか?

吉川:『R-TYPE DELTA』の移植はダメ元でスタートしているので、プログラマーが匙を投げたら諦めるしかありませんでした。製品化できたのは奇跡的だと思います。そのプログラマーも、初めから「どうなるかわかりませんよ」と話していましたし、ライフワーク的に任せると他のことも出来なくなってしまいます。上手くいかず失敗してしまうことも予測できたので、いつかは諦めないといけないという線引きがありました。

想定よりも2年ほど早いタイミングで「何とかなりそう」という状況になったため、とても良かったです。ただ、行き当たりばったりでスタートしたことは間違いありません。

――『HD Boosted』版はテンポがさらに良くなって遊びやすくなっていました。60fps動作と処理落ち無しについては何か言及されていたのでしょうか?

吉川:シューティングゲームにおいて処理落ちは「させるべきか、否か」の問題があります。『R-TYPE DELTA』のディレクターを務めた北浩也さんは「処理落ちをしていない状態が、本来作りたかった正しい姿です」とインタビューでおっしゃられていたこともあり、その通りに制作しました。

ただ処理落ちが無くなったことにより再びパターンを組まなければならないため、処理落ち前提でプレイした人にとってはプレイ感が変わります。これまでと全く同じ物ではなく、現行機で遊ぶ『R-TYPE DELTA』の特徴を感じ、新たなパターンの組み立てに挑戦して遊んでいただければと思います。

――プロデューサーとして今回の移植における注目ポイントは何ですか?

吉川:注目ポイントはテクスチャの解像度や画面比率、新たなサウンドの切り替え機能などです。ジャレコレのようにリアルタイムで巻き戻しする(リワインド)処理が入れられなかったので、練習モードを導入することで解決を図りました。

――今回は『R-TYPE DELTA』と『R-TYPE DX』の移植でした。人気の『R-TYPE III』や初代『R-TYPE FINAL』も後々移植の可能性があるのでしょうか?

吉川:大きな決め事や棲み分けがあるわけではありませんが、現行で新作やリメイクを開発するグランゼーラさんや、他のアイレム作品を移植するTozai Gamesさんも考えていることがあると思いますし、我々が公の場で希望も含めた新作の話をするわけにはいかないと思っています。

我々含めた三社は(『R-TYPE』やアイレム作品に対して)出来ることをやっているので、アイレムさんを通じてしっかり話を通したうえで、きちんとした形で進めたいと考えています。

――最後に『R-TYPE DELTA』移植を長らく待ち望んでいたファンに向けてメッセージをお願いします

吉川:今回の『R-TYPE DELTA』は現状残っている資産をフル活用しつつ、追加要素を入れて遊べるようにしました。操作に関しても遅延無く遊べるために、期待して発売まで待っていただければと思います!

――ありがとうございました!


古くなってしまったゲーム故にソースコードが無くなってしまったりすることは、レトロゲームの移植で頻繁に言及されることでしたが、今回はそれらを補完するための作業に取り組んでいたことが明らかとなりました。まさに、奇跡的に完成したことがわかるため、貴重なリマスター作品であることは間違いないと思えます。

『R-Type Delta: HD Boosted』は、ニンテンドースイッチ/PS5/PS4/Xbox Series X|S/PC(Steam)向けに、11月20日発売予定。価格は、通常版が4,950円(税込)、特装版が12,650円(税込)、豪華版が19,800円(税込)です。


ライター:G.Suzuki,編集:みお


ライター/ミリタリーゲームファンです G.Suzuki

ミリタリー系ゲームが好きなフリーランスのライター。『エースコンバット』を中心にFPS/シムなどミリタリーを主軸に据えた作品が好みだが、『R-TYPE』シリーズや『トリガーハート エグゼリカ』などのSTGも好き。近年ではこれまで遊べてなかった話題作(クラシックタイトルを含む)に取り組んでいる。ゲーム以外では模型作り(ガンプラやスケモ等を問わない)を趣味の一つとしている。

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編集/取材も執筆もたくさんやる、半ライター半編集 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。

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