『Clair Obscur: Expedition 33』
総合スコア: 92/100
フランスの新鋭スタジオSandfall Interactiveが放った、2025年を代表するコマンドRPGの傑作。ベル・エポック(良き時代)期のフランス美術とシュルレアリスムを融合させた退廃的な世界観、そして「33歳を迎えた人間が消滅する」という呪いに抗う第33次遠征隊の悲壮な旅路が描かれる。
Unreal Engine 5による圧倒的な映像美と、ターン制バトルにリアルタイムのアクション(回避・パリィ)を融合させた「リアクティブ・ターンベース」システムが、世界中のゲーマーを熱狂させている。日本国内ではセガが流通を担当し、字幕対応でのリリースとなった。

“活字の番人” 文月 栞(辞書編纂者)
スコア: 90/100 「死の定義を書き換える、美しくも残酷な詩集です。」
【長所】まず、この物語の根幹を成す「ペイントレス(絵描き)」という概念に脱帽しました。毎年一つの数字を描き、その年齢の人間を世界から抹消するという設定は、神話的でありながら非常に文学的な絶望感を漂わせています。セガによる日本語ローカライズも、フランス語のニュアンスを汲み取った高尚な翻訳で、特に固有名詞の選び方にセンスを感じました。
UIデザインが画面上の空間に溶け込むダイジェティックな演出も、テキストを読む没入感を削がず、非常に好感が持てます。影山さんが後述するであろう美術と、私の愛する「言葉」がこれほど高い次元で融合したRPGは稀有です。
【短所】しかし、減点せざるを得ないのは「日本語音声の欠落」です。これほど表情豊かなキャラクターたちが、英語またはフランス語でしか喋らないというのは、翻訳劇を見せられているようで隔靴掻痒(かっかそうよう)の感があります。
また、物語後半の展開において、伏線の敷き方がいささか強引で、論理的な整合性よりも感情的なカタルシスを優先しすぎたきらいがあります。辞書を引く手を止めてしまうほどの唐突な展開には、少し眉をひそめました。

“指先の哲学者” 指宿 拳(アスリート整体師)
スコア: 95/100 「ターン制なのに乳酸が溜まる!この緊張感は『整う』ぞ!」
【長所】いやあ、驚きました!見た目は普通のコマンドRPGなのに、敵のターン中にこれほど指先が忙しいゲームがあるとは!敵の攻撃に合わせてタイミングよくボタンを押す「回避」や「パリィ」、これが決まった瞬間の神経伝達の快感は、まさに格闘ゲームの「直前ガード」そのものです。ただコマンドを選んで待つだけの「死に体」の時間がなく、常に戦闘のリズム(フロー状態)を維持できる。
このシステムは、RPGにおける「動と静」の筋肉バランスを劇的に改善していますね。特にボス戦での連撃パリィは、施術後のような爽快感があります!
【短所】ただ、フィールド移動時のジャンプアクション、あれはいけません。骨盤が歪んでいるかのような硬直を感じます。崖を飛び越える際の判定がシビアすぎて、戦闘で極限の反射神経を見せる主人公たちが、ちょっとした段差で落ちていく姿には閉口しました。戦闘のスムーズな可動域に対し、探索パートの関節が硬すぎます。次回のアップデートでストレッチ(調整)が必要です。

“錆と苔の詩人” 影山 露光(廃墟愛好家)
スコア: 92/100 「滅びゆく世界の『湿度』まで、レンダリングされています。」
【長所】文月さんは言葉に、指宿さんは指先に注目しましたが、私はこの世界の「空気」について語らねばなりません。Unreal Engine 5のLumen技術が描き出す、湿った石畳や古びた街灯の光の滲み……素晴らしいですね。特に「33」という死の数字が刻まれたモノリスの周辺に漂う、静寂と喧騒が入り混じった終末の気配。人々が消えていく瞬間のエフェクトさえも、残酷なほど美しい。
派手な魔法のエフェクトよりも、廃墟と化した都市に響く足音のリバーブ(残響音)に、開発者の美学を感じます。孤独を愛する者にとって、この旅は至高のギャラリー巡りとなるでしょう。
【短所】あえて言うなら、UIがスタイリッシュすぎて、時折、背景の「錆び」や「風化」のテクスチャを隠してしまうのが惜しい。戦闘中、カメラがダイナミックに動きすぎて、せっかくの美しい背景美術が見切れてしまう瞬間があるのも、写真家としてはシャッターチャンスを逃した気分になります。もう少し、静止した「間」を味わう時間が欲しかった。

編集後記
文月「指宿さん、貴方は『ジャンプの判定』で文句を言っていますが、あれは死地へ向かう彼らの『足取りの重さ』の表現だとは思いませんか?」
指宿「いやいや文月さん、それは深読みしすぎです!あのアクションの硬さは単純に体幹が使えていない動きですよ。施術して治せるなら治したいレベルです。」
影山「ふふ……。不自由さの中にこそ美が宿ることもありますよ。ただ、私もあそこで三回落下して、せっかくの没入感が台無しになりましたがね……。」
『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』
総合スコア: 92/100
2019年に「繋がり(ストランド)」という概念で世界を分断と再生の旅へ誘った前作から約5年。舞台をアメリカからメキシコ、そしてオーストラリア大陸へと移し、新たなテーマ「我々は繋がるべきだったのか?」を問いかける待望の続編。
Decimaエンジンによる圧倒的なグラフィックは次世代の極致に達し、リアルタイムで変化する地形や自然災害(山火事、洪水)がサムの行く手を阻む。移動基地「マゼラン号」を拠点とした新たな配送システムや、プレイスタイルに応じてサムの身体能力が変化する「熟練度」システムなど、遊びの幅も劇的に進化した。

“活字の番人” 文月 栞(辞書編纂者)
スコア: 90/100 「冗長な饒舌ささえも、神話の一部として愛せます。」
【長所】小島秀夫監督の作家性、いわゆる「小島節」が極まっていますね。前作が「接続」の物語なら、今作は「切断」と「個」の再定義。特に、エル・ファニング演じる「トゥモロー」や、ジョージ・ミラー監督をモデルにした「タールマン」など、配役の妙と彼らが織りなす会話劇は、ゲームというよりは重厚な海外ドラマのシーズン一気見に近い没入感があります。
翻訳(ローカライズ)も素晴らしい。新たに登場する専門用語「APAS(自動配送システム)」や「プレート・ゲート」といった造語が、SF的な説得力を持って日本語に定着しています。指宿さんが気にするであろう「アクション」部分も、物語の文脈と完全に同期しており、サムが背負う荷物の重みがそのまま「罪の重み」としてプレイヤーに伝わる構造は文学的ですらあります。
【短所】相変わらず、カットシーンの長さは「映画」の領域を侵食しています。特に序盤、操作可能になるまでの導入部は、私の愛用する電子辞書のバッテリーが切れるほど長い。また、敵対勢力の動機説明において、少々説明過多(エクスポジション)なきらいがあり、「行間を読む」楽しみを奪っている箇所が見受けられました。

“錆と苔の詩人” 影山 露光(廃墟愛好家)
スコア: 95/100 「山火事の赤と、洪水の泥。崩壊の美しさに息が止まる。」
【長所】前作の静寂な荒野も美しかったですが、今作の「動的な崩壊」は芸術の域です。オーストラリア特有の赤土が、リアルタイムの洪水で泥流へと変わり、あるいは山火事で黒く焼け焦げていく……その「風景が死んでいく過程」のレンダリングに見惚れてしまい、配送任務を忘れてフォトモードで数時間を溶かしました。
Woodkid氏による楽曲の使い方も卑怯なほど巧い。孤独な旅路の果て、荒れ狂う天候がふと止んだ瞬間に流れるメランコリックな旋律。それは、廃墟に咲く一輪の花のような救いです。マゼラン号内部の生活感あるディテールも、どこかノスタルジックで落ち着きますね。
【短所】新要素である「都市部」の廃墟表現において、一部テクスチャの張り込みが綺麗すぎて「作り物感」を覚える瞬間がありました。もっとこう、コンクリートの経年劣化による「湿った匂い」が画面から漂うような、汚しの美学が欲しかった。文月さんが言うような物語の饒舌さが、時としてこの「静寂な詩情」をノイズのように遮るのも惜しい点です。

“指先の哲学者” 指宿 拳(アスリート整体師)
スコア: 92/100 「『歩行』が『筋トレ』に進化した!大殿筋が悲鳴を上げている!」
【長所】これぞ「身体性の拡張」だ!今作導入された「熟練度(プロフィシェンシー)」システムには感動したよ。悪路を歩けばバランス感覚が、重い荷物を持てば体幹が、戦えばパンチ力が上がる。まるでプレイヤー自身の筋肉がサムとリンクして肥大化していくような快感がある。
特に素晴らしいのが、地震や地殻変動による「よろめき」の物理演算だ。地面が揺れた瞬間、コントローラーのハプティックフィードバックから伝わる「足元の喪失感」。あれに対してとっさに踏ん張る(L2+R2)操作は、まさに脊髄反射レベルの神経伝達を要求される。影山さんは景色に見惚れているようだが、僕はあの泥濘(ぬかるみ)の粘度調整に開発者の執念を感じるね。
【短所】戦闘のアクション性が増した分、操作が少し複雑化しすぎている。武器の切り替えやガジェットの使用で指が絡まりそうになり、純粋な「歩行のフロー状態」が阻害される場面がある。あと、相変わらずUIの文字が小さく、視神経への負荷が高い。長時間のプレイは眼精疲労からくる首の凝りを招くので、適度なストレッチが必須だ。

編集後記
文月「指宿さん、貴方はサムの背中を筋肉の標本か何かだと思っているのですか?物語の『痛み』を理解してください。」
指宿「いやいや文月さん、あの重荷を背負って重心を維持する『痛み』こそが、物語のリアリティを生んでいるんですよ!この操作感、骨盤で理解しませんか?」
影山「……お二人の議論もまた、荒野のノイズのようで心地よいですね。私は少し、マゼラン号の甲板で雨音を聴いてきます……。」











