
今でもコアな人気を持つ初代PS時代のシューティングゲーム。HDリマスター化など現行機/PC移植が望まれるタイトルの1つがスクウェア(現、スクウェア・エニックス)より1997年11月にリリースされたシューティングゲーム『アインハンダー』です。
スクウェア大阪開発第1部によって開発された本作は、ポリゴン表現を前面に押し出すと共に、3D空間を活かしたカメラ演出や戦闘、そして敵の武器を奪うガンポッドシステム(ガン・スナッチャー)を用いるなど珍しくも新しい要素が盛り込まれていました。本記事は、そんな『アインハンダー』を振り返り、なぜ今の時代にHDリマスターなど移植が求められるのかを語ります。

1997年のスクウェア大発展の年に誕生した『アインハンダー』
本題へ入る前に状況を説明しましょう。本作がリリースされる前の1996年2月にスクウェアは流通子会社デジキューブを設立し、同年11月15日から当時存在したコンビニ4社(セブンイレブン、サークルK、サンクス、ファミリーマート)にてゲーム販売を開始。これにより販路が量販店だけでなく、大多数のコンビニへ広がりました。
加えて同11月には、当時のスクウェアがスポーツゲームやレーシングゲームなど定番ジャンルを展開するブランド「アクエス(AQUES)」を発表し野球ゲーム『スーパーライブスタジアム』や麻雀ゲーム『プロロジック麻雀 牌神』などが展開されました。
こうしたゲームのコンビニ流通が実現し、よりゲームがよりカジュアルに買える存在となった1997年はスクウェアが大発展を遂げた年でした。この年は、『ファイナルファンタジーVII』を筆頭に『ファイナルファンタジータクティクス』や『ブシドーブレード』、『トバル2』、『サガフロンティア』、『フロントミッション2nd』、『フロントミッション オルタナティヴ』、『チョコボの不思議なダンジョン』、そして『FF4』PS移植版などを含めて全体で15タイトルほどを発売する凄まじいものです。
1997年以前のスクウェアは、平年で年間3~4タイトルを発売する規模でしたが、1997年に来て新作タイトルの発売数が約3倍に増えるという前代未聞の出来事が起きたのです。つまり毎月スクウェアの注目新作タイトルが初代PS向けにリリースされているし、リリースされているタイトル群を見ても平均的に高い評価を得ている状況でした(当時の1997年の各ゲーム雑誌を見ても大体スクウェアの新作特集や続報があった)。
こうしたゲームのコンビニ流通実現だけでなく、大多数の注目タイトルがスクウェアから発売される大変革が起きた1997年にリリースされたのが『アインハンダー』だったのです。
リリース前後におけるメディアでの注目度を見てみると、1997年10月から11月までの「電撃プレイステーション」誌や「週刊ファミ通」誌を読むと、広告含めて4ページ以上紹介されていることが多く、STGとしては扱いが良い方であったと推測できます。
しかしながら、当時のシューティングゲーム事情は「週刊ファミ通1997年10月31日号」のSS版『怒首領蜂』紹介記事下部に書かれたミニコラムによると「シューティングなんていまや氷河期真っ最中」と言及されていました(コラムの内容自体は「冬の時代で人口少ないけど生き残った熱い奴らがいるぜ!」というもの)。
そのことから、新作タイトルがゲームセンターで稼働したりコンソールで発売していたとしても、STGが一般的な人気を得られておらず厳しい時代に入っていたことが想像できます。この「STGの氷河期」を感じさせる表現は本作の広告にもありました。
「1997年スクウェアがもう一度シューティングを熱くする」という広告には、広告内文章の冒頭に「格ゲーがまだゲーセンの主役じゃなかった頃」と記載されており、否が応でもSTGがゲームのメインストリームから外れてしまっていたことがわかります。
当時の電撃プレイステーション誌(Vol.60、1997年11月28日号)やファミ通誌(1997年11月20日号)のクロスレビューを読んでみると平均的な評価が80~90点以上と、グラフィックの良さやゲームシステムが全体的に上手く機能していることを含めて高く評価。一方で、ボス等の耐久値が高いことで「爽快感が薄い」と言及されているほか、自機の見た目が大きい事が難しさに繋がっていることなどが指摘されていました。
敵を破壊して武器を奪う―取捨選択の面白さが光るゲームプレイ
『アインハンダー』は横スクロールシューティングゲームですが、90年代中盤のSTGとは少し異なる特徴を持っていました。それは、パッケージ裏や広告キャッチコピーの「撃って、奪って、ぶち壊せ!」にもある通り、敵を破壊して武器を奪い、そして使用することです。
敵が持つ武器はバルカンやロケット/ミサイル、キャノン、爆導索、ブレード、スプレッダー(散弾)など。プレイヤーは敵を破壊しながら武器を奪い、その奪った武器を使って更に敵を倒すというサイクルが完成しており、プレイヤーの腕前が上がれば、特定の武器に依存せず、様々な武器を取捨選択しながら最後まで遊べる高いランダム性とリプレイ性を持ち合わせていました。


例えば、本作の登場する最強/最優秀ガンポッドであるジュノーやフラッシュも、状況によっては有効に機能せず、他の装備に持ち替えた方が難なく突破できるバランスとなっています。多種多様なガンポッドのほとんどが使えないなんてことはなく、状況に応じて持ち替えることが攻略の鍵になるのは見事です(それでも、一部ガンポッドは威力等の面から使いこなすのが難しいものも多い)。
今回改めてプレイしてみたところ、1997年のシューティングゲームとしては、敵の出現パターンや敵弾の理不尽さが全体的に抑えられている印象を受けました。敵の大多数は出現前に画面の奥や手前から姿を見せて登場を予告し、プレイヤーに対処する時間を与えるだけでなく、ワスプなど自機のラインを無視して攻撃出来るガンポッドなら画面奥に映る敵を即座に倒せるなど、2Dシューティングでありながらもポリゴンの3D空間を活かした設計となっていることが秀でています。『R-TYPE DELTA』や『グラディウスIV』など本作以降にポリゴン表現となったSTGでもあまり見られない仕様です。
また、敵を破壊した時のSEやガンポッドを奪った時の音、60fps動作で綺麗に見える自機や背景など、その感触の良さは今プレイしてもより良いものでした。


しかしながらステージ3以降から初見殺しの攻撃やギミック攻略が強くなり、『R-TYPE』的なパターン構築を求められます。特に敵の雑魚ラッシュもステージ4序盤や、ステージ5の中ボスのゲシュテル戦以降の雑魚ラッシュが特に難しく、初見殺し的な理不尽さもステージ4以降から頻度が高くなるために、最終ステージまでたどり着くのが至難です。
それでも、パターン構築はガチガチに突き詰める必要がないため、難しくとも自由度は比較的高めである印象を受けました(今回は難易度ノーマルでプレイ)。
加えて、難易度はハードからフリーの4段階存在し、難易度フリーなら無限コンティニューで挑めるために、ひたすら根気よくプレイしてエンディングまでたどり着く事も出来ます。

難しいことは間違いないですが、1997年のゲームとしては、敵の出現パターンやボスの多彩な部位破壊を含めて細部まで手が入っており、高い品質で完成されていることがわかります。これを、STGの開発やパブリッシュをほとんどしてこなかったスクウェアからリリースされたという事実は、2025年末の現在から見ても驚くべきものです。

ポリゴン表現STGとしての完成形を見せた『アインハンダー』
『アインハンダー』のグラフィックも忘れてはなりません。初代PS向けのシューティングゲームとして処理落ちが極力発生せず、60fpsで安定動作するだけでなく、3D描画を活かし進行方向などにカメラ向けてプレイヤーに印象を付ける演出を含め、表現自体がジャンルとしても当時のゲーム全般をみても先端を走っていたと思えます。
本作のグラフィックの特徴として挙げたいのがライティングのクオリティがとても高いこと。ステージ1の街を抜ける時には赤や青のネオンサインであろう光が機体に当たって赤青と描写されているだけでなく、武器を発射したときにはマズルフラッシュが機体を照らすほどです。

また、ステージが進行する毎に背景も夜から朝焼け、そして満天の青空から宇宙を感じられるダークブルーへ推移する表現のリアリティも高く、現実に起こりえる表現を上手く取り入れて、プレイヤーがゲームのクライマックスへ到達しつつあることを上手く描写していると言えます。
また、宣伝の「ノンブレイクシューティング」とあるように、ステージ間の推移は暗転などが行われず全てがシームレスに移行するところも特徴の一つでもあるでしょう。


なお同年には、同じくポリゴン表現となったタイトー(2005年にスクエニが買収)の『Gダライアス』も稼働したほか、ケイブの『怒首領蜂』も稼働/コンソール移植されており、「STGの氷河期」と呼称されているものの、STG自体が表現方法だけでなくシビア/理不尽さにも手が入り始める時代でもありました。
特に『Gダライアス』は「敵をキャプチャして味方に付ける」というシステムが、『アインハンダー』における敵から「奪う」という共通点が存在し、後にタイトーがスクエニに買収されることを思うと奇妙な偶然の一致を感じてしまいます。
本作は全7ステージで構成されているSTGです。敵となるゾードム軍はドイツ語、自軍となるセレーネ軍は英語を使っており、1997年当時の他のSTGとは一線を画した設定を持っていました。ストーリーを簡単に説明しましょう。月のセレーネと地球のゾードムの間で発生した惑星間戦争の第二次月戦争においてセレーネ軍は、戦術戦闘機を地球へ送る奇襲降下作戦を発動。プレイヤーは思想教育を受けた後に地球へと降下するエンディミオン/アストライアーのパイロットとなり、セレーネ軍のAI搭載軍事衛星ヒュペリオンから極秘指令を受けて戦地へ向かうというもの。
ステージ1はゾードムの帝都、ステージ2は装甲列車、ステージ3は縦穴通路、ステージ4は地下水路と地下原子力発電所、ステージ5は空港、ステージ6はゾードムの巨大宇宙船と熱圏での戦い、ステージ7は宇宙空間とバリエーション豊かに展開されます。






ストーリー的には自軍の極秘指令を受けて着実に遂行していたものの、自軍が裏切り無人機の標的とされるもなんとか逃げ延びます。そして、レジスタンスの力を借りて、自分を裏切ったセレーネ軍へ反逆するという、『FF』的な「帝国への反抗」をしっかりとやっていることも奇妙な共通点と言えるでしょう。



意外と他作品へ出張する『アインハンダー』の登場機体
『アインハンダー』で登場するエンディミオンや敵の兵器は『FF8』を筆頭とした他のスクウェア、そして後のスクウェア・エニックス作品に多く登場しています。元々スクウェアやスクエニ作品は自社ネタが非常に多く、最初に登場したのは『FF8』からでした。
スクウェアのゲーム版『パラサイト・イヴ』に登場するミトコンドリア完全体第四形態のデザインが、『FF8』の召喚獣ケツァクウァトルとしてアレンジされたように、『アインハンダー』のシュバルツガイストをアレンジした様な機体が『FF8』のカットシーンに登場します。

他にも2016年にリリースされた『ワールドオブファイナルファンタジー』にて、アインハンダー名義でエンディミオンが新規モデリングされました。さらに2019年発売の『キングダムハーツIII』では、なんとグミシップ戦にてシュヴァルツガイストと戦うボス戦が展開されていました。スクエニ側にとって何らかの形で覚えられていることは確かなようです(名前だけで言えば『FF13』にも7章のボスの名前として、ステージ1中ボスの「グライフ」が使われている)。
HDリマスター、もしくはリメイクが望まれる『アインハンダー』
これらのことから『アインハンダー』の魅力は、スクウェアが久々にリリースしたSTGとして驚くように高いクオリティを持ったSTGという点だけでなく、ゲームメカニクス的にも武器の奪取要素が上手く機能していたことが面白さに繋がっていたことです。当時のSTGとしては、理不尽さが少なく難しすぎないことも良いポイントでしょう。
本作がHDリマスターされれば、『Gダライアス』や『レイストーム』、『R-TYPE DELTA』と90年代後半におけるポリゴン表現STGが現行機/PCに揃い、当時どのようにポリゴンをシューティングゲームに落とし込んだかが、わかるようになるためです。もちろん、「敵を倒し武器を奪う」STGが他に存在せず、今も本作の存在価値が薄れていないことも理由に挙げられます。
加えて、もしHDリマスターが実現し『R-Type Delta: HD Boosted』や『GダライアスHD』のように、画面左右の描画領域拡張が行われれば、移動範囲が増えて避けられるようになるために、理不尽さが減ることで面白くなるからです。また、ステートセーブやリワインド機能なども追加されればより遊びやすくなりますし、本作の魅力を存分に味わえます。

本作は、他機種への移植を含めてHDリマスターされておらず、今現在遊ぶには、オリジナルのディスクを入手してPS3等でプレイするか、PS3のゲームアーカイブス版を購入するしかありません。
PS3/PS Vitaのゲームアーカイブス自体も今後どこまで存続されるのか不透明ですし、このまま埋もれさせてしまうのが、発売から約28年経った現在でもとても勿体ないです。HDリマスター化など移植されるには様々なハードルがありますが、何らかの形で実現されればと思ってしまいます。













