制作中止の危機を乗り越えながら、ついに2026年10月16日(金)に全世界同時公開決定した「ストリートファイター/ザ・ムービー」。
ゲームは勿論、映画、コミックなど、様々なメディアで展開されてきた『ストリートファイター』ワールドですが、今回は“アニメ”版について紹介していきます。
『ストリートファイター』は、何度かアニメ化されており、有名なところでいうと、篠原涼子の「恋しさと せつなさと 心強さと」が主題歌として起用された「ストリートファイターII MOVIE」(1994)や日本テレビ系で放送された「ストリートファイターII V」などが知られていますが、ほかにもOVA「ストリートファイターZERO -THE ANIMATION-」(1999)やゲームの特典ムービーなどもあります。

ところが、1995~97年にかけてアメリカで放送された「ストリートファイターUSA」(原題: Street Fighter: The Animated Series)の存在はあまり知られていません。
それもそのはず。かつて日本では、幻の作品とされており、放送やソフト化もされていなかったからです。しかし今ではAmazonプライムビデオなどの配信サービスで視聴することが可能となっています。同作は、シーズン2まで制作され、全26話が放送されました。ちなみにAmazonではシーズン1全26話となっていますが、これは間違いで、シーズン2も含めたエピソード数です。
ゲーム版はeスポーツとしても世界的に盛り上がりをみせていますが、改めて『ストリートファイター』の世界観を知ってみるのに良い機会。この機会に再評価してみましょう。
ヘンテコ設定を持ち越しつつ、ゲーム寄りへ軌道修正

アニメ「ストリートファイターUSA」は、「ダイ・ハード」(1988)の脚本家として知られていたスティーヴン・E・デ・スーザが監督を務め、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演で制作された、1994年版の実写映画「ストリートファイター」の精神的続編として制作された作品で、いくつか設定を持ち越しています。
つまりエドモンド本田やM・バイソン(アメリカ名:バルログ)がテレビ局の撮影クルーであったり、ダルシムが胡散臭い科学者だったりと、ヘンテコ設定がゲームファンを困惑させた、あの実写映画です。
前年に「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」(1993)のインパクトもあったことから、追い打ちをかけるように、ハリウッドによるゲーム実写化のアウェーな空気が強まった原因ともいえます。
一部設定を持ち越しているとは言いましたが、そんななかでもゲームの設定寄りに軌道修正しようとしている試みも多数あることや、放送開始された1995年は、『ストリートファイターZERO』のリリース時期と重なっていたこともあり、とくにシーズン2は、同作のプロモーション的側面が強く、映画版には登場していなかった、ローズ、バーディ、ガイ、春日野さくら、ソドムといった『ZERO』シリーズのキャラクターが登場しており、ゲームファンが楽しめる要素は確実に多くなっているはずです。

基本設定としては、正義の特殊部隊チーム「ストリートファイター」のリーダー、ガイルが率いる、春麗、ブランカ、リュウ、ケン、キャミィが主要メンバーで、たまにサブメンバーとして、エドモンド本田とディー・ジェイ、T・ホークなどが加わることもあります。
敵は映画版と同じく、ベガ(アメリカ名:M・バイソン)が生きていた設定で、ザンギエフが手下。たまにサガット、バルログ(アメリカ名:ベガ)も登場しますが、バイソンはなぜかコンピューターのスペシャリストとしてチラっと登場する程度です。
ちなみにエドモンド本田は、戦闘に加わることもありますが、基本はサイバーとメカニック担当になっていて、裸でパソコンを操作するなど、ヘンテコ設定は、相変わらずと言っていいのか、所々に散りばめられています。
基本的なプロットは、ベガ率いるシャドルーが悪事を働き、それをチーム「ストリートファイター」が阻止する~という、「トランスフォーマー」や「ミュータント・ニンジャ・タートルズ」のような、アメリカのアニメによくあるシンプルかつ王道な構成です。
ブランカとダルシムの因縁はキーポイント

映画版でとくに設定が大きく異なっていたのがブランカでした。ゲーム版のブランカは、幼い頃に飛行機事故によってジャングルで野生児として育った設定ですが、映画版では、ガイルの親友チャーリー(ゲーム版におけるナッシュの海外名)が、シャドルーの科学者ダルシムの人体実験で野生人間にされてしまった設定になっていました。
今作でもその設定は持ち越されています。シリーズを通して、ブランカが変わり果てた自分の姿に葛藤し、薄れてしまった人間性を取り戻す物語が丁寧に描かれていて、影の主人公ともいえます。

一方、ブランカを作り出したダルシムは、自身の意思ではなく、ベガに脅迫されていたことから仕方なく実験を続けたものの、良心の呵責でブランカの人間性を完全に失わないようにしていた~という設定は映画版と同じですが、その後は、ゲーム版に近いビジュアルになっており、自分の過ちを正そうと出家しながらも、謎の研究を続けています。そして、なぜかゲーム同様に「ヨガフレイム」や手足を伸ばす技が使えるようになっています。
ブランカとダルシムは、シリーズを通して因縁の関係として描かれ、ダルシムはブランカに赦しを求め、ブランカもそれを受け入れようと努力しますが、そう簡単ではない……。そんな葛藤を描いていて、子供向けアニメとはいえ、何気に人間ドラマが蔑ろにしていないのも印象的です。
■アニメだからできた、マニアックな掘り下げ方

アニメだからこその試みがいくつかされていて、プレイアブルではない、ゲーム版のエンディングムービーやステージの背景に映るキャラクターにもスポットが当たっています。
例えばキャミィが所属していた、イギリスの特殊部隊「デルタレッド」のメンバーが複数回登場します。単なるゲストキャラかと思いきや、割りとメインのような立ち位置で、たびたび登場しています。この頃のキャミィの設定は、まだ定まっていなかったため、マインドコントロールされやすいキャラクターとして、キャミィの記憶の探求と同時に、ガイルへの恋心が描かれています。
ほかにも、ゲーム内では明かされていない、ケンの父親でマスターズ財団のダントン・マスターズが登場し、破産寸前の映画俳優フェイロンに資金提供して香港映画にキャステングさせるなど、小ネタがたくさん盛り込まれています。
なかなかおもしろい設定なのは、ケンの立ち位置です。ほかのコミックやアニメを観ても、ケンよりもリュウの方が強く描かれていることが多いですが、このシリーズでは、リュウがヒョロヒョロなキャラクターになっていて、圧倒的にケンの方が強い描写が多くなっています。

お調子者という設定はゲーム版から引き継がれていますが、リュウや剛拳が勝てなかった豪鬼(アメリカ名:アクマ)と対等に勝負できるほどの力を持っています。実際に豪鬼も「おまえは相手じゃない」と、リュウ一点狙いで現れますが、ケンの意外な強さに驚いていました。これは視聴者の感情ともリンクするシーンといえるでしょう。
■後期の迷走期も独特の味わいに

『ストリートファイター』だから~というわけではなく、アメリカのアニメによくあることというか、後期はどうしても迷走しがちになります。ネタが無くなってきて、奇抜なエピソードが多くなってくるのです。
その影響からか、ミュータント・モンスターや別次元を飛び回るウォーリアーキングが登場するようになり、次第に世界観も崩れ始めてきました。ちなみにウォーリアーキングというのは、同時期に放送されていたアニメ「Mortal Kombat: Defenders of the Realm」、「The Savage Dragon」、「Wing Commander Academy」の連動企画で、全てのアニメにウォーリアーキングが登場するというものでした。
意外にも『ストリートファイター』と『モータルコンバット』が繋がった歴史的瞬間だったのです。

それはさて置き、『ファイナルファイト』とのクロスオーバー・エピソードという実験的な試みもされています。
ソドムやガイは『ZERO』シリーズのキャラクターとして登場していましたが、ここにきて『ファイナルファイト』のキャラクターであることを主張するエピソードも後期に放送されました。
S2第10話「Final Fight」では、『ファイナルファイト』のオープニングにも登場するファーストステージのボス、ダムドやラスボスのベルガー、そしてロレントも登場しますが、主人公のコーディーは、『ZERO』シリーズよりも先に、アニメで合流していたのです。
今回は『ストリートファイター』のアメリカ版アニメを紹介しましたが、90年代には多くのゲームのアニメ化が頻繁にされていました。

カプコン系の作品だけでも『ヴァンパイア』シリーズをアニメ化した「DarkStalkers」、『ロックマン』シリーズをアニメ化した「ロックマンUSA」などが放送されています。
今回紹介した「ストリートファイターUSA」や「ロックマンUSA」のように、長年、日本では幻とされてきた作品が観られるようになったのは、非常に恵まれた環境といえるでしょう。
これを機会に、レアなアニメ化作品を探してみるのも楽しいかもしれません。











