『Alpha Nomos』は、アクションゲームとリズムゲームの融合を目指すローグライト作品です。プレイヤーの入力を厳しく縛るのではなく、自由なアクションの中で“リズムに乗ること”へ意味を持たせる設計が特徴で、単に音楽に合わせるだけではない独自の手触りを目指しています。
今回はRibCage Gamesに、本作が掲げる「音楽が世界の法則である」というコンセプトや、“演奏するように戦う”感覚をどのように形にしているのか、その開発思想について訊きました。
――まずは自己紹介と、『Alpha Nomos』におけるご自身の役割について教えてください。
イタマー・バーナー:私はイタマー・バーナーです。RibCage GamesのCEOを務めており、スタジオ全体のビジョンを導きつつ運営面も担当しています。ただ、私にとって最も重要な役割は、チームの中核を担う才能あるメンバーたちを支えることです。CTOのエミル・ラーゲル、CCOのアミール・ブガノフ、そしてクリエイティブディレクターのナタリー・レプラー。彼らこそが日々『Alpha Nomos』を形にしている中心的な存在です。
このような素晴らしい機会をいただき、本当にありがとうございます。特に日本のゲーム文化は、私たちのスタジオ全体にとって非常に大きなインスピレーション源であり、今回こうしてお話しできることを大変光栄に思っています。

私たちは、居心地の良い環境から一歩踏み出し、情熱とこだわりを持った“手作りのゲーム”を生み出したいという共通の夢を抱き、このスタジオを立ち上げました。今回、チームの努力の結晶を代表してお話しできること、そしてその歩みを読者の皆さんに共有できることをとても嬉しく思っています。
――チームとして影響を受けた音楽やアーティストについて教えてください。
イタマー:個人的には、インディーやオルタナティブ系の音楽をよく聴いていて、特にJonathan Coultonのようなアーティストが大好きです。ただ、チーム全体で見ると、その影響はかなり多様です。
クリエイティブディレクターのナタリーは、日本文化との強い結びつきを持っています。彼女は絵を描く際に常に音楽を聴いていて、その趣味はメタルから80年代のヒット曲、高速テンポのトランスまで幅広いものです。特に幼い頃から日本の楽曲に親しんでおり、アニメを観て育った経験が、キャラクターデザインにおける“かわいいアニメソング的なエネルギー”や日本的な美意識に直接的に反映されています。
CCOのアミールは主にロックやメタルを好みますが、良いと感じればジャンルを問わず受け入れます。ゲーム開発においては、Totem Warriorsという音楽チームに対し、EnyaやPoisonblackといったアーティストの雰囲気を参考として提示しました。ただし最終的には、彼らに完全な創造的自由を与え、その方向性を全面的に信頼しています。
CTOのエミルは、自身の音楽的嗜好について「かなりバラバラで、正直あまり良くないかも」と冗談めかして話していますが、現代的なロックをベースにしています。彼にとって最も大きな影響はむしろゲームそのもので、『Beat Saber』の楽曲とゲームプレイが密接に結びついている点に強く刺激を受けています。
――音楽制作におけるチームのバックグラウンドについて教えてください。
イタマー:正直に言うと、私たちコアチームの音楽的バックグラウンドはとても控えめなものです。アミールが趣味でギターを弾き、ナタリーが短期間ピアノを習っていた程度で、作曲や演奏において専門的な経験を持っているわけではありません。
しかし、この“足りなさ”を自覚していたことが、結果的に私たちの強みになりました。音楽に関する深い専門知識がないからこそ、Gamescomでの出会いをきっかけに、その道のプロフェッショナルを積極的に探し求めることになったのです。現在ではTotem Warriorsが『Alpha Nomos』のサウンドディレクターを務めており、音楽に関するすべてを担っています。
私たちは彼らを単なる作曲担当ではなく、音楽面でのメンターと捉えています。ゲームのあらゆる要素に音楽的な知見が必要な場面では、必ず彼らに相談します。専門用語の正確な使い方から、楽器の物理的な仕組み、さらにはアートチーム向けのビジュアル資料に至るまで、多方面で支援を受けています。
この協力関係は単なるサウンドトラック制作に留まりません。ゲームの戦闘そのものにも影響を与えています。例えばプレイアブル武器のひとつ「Owl Claw」は、Totem Warriorsのフアンとの会話から生まれました。彼が自身の得意とする“djentギター”を演奏する際の感覚を語った内容をもとに、その武器の操作感や挙動を設計しています。音楽家としての“身体感覚”そのものを、ゲームデザインに落とし込んでいるのです。
――『Alpha Nomos』はどのようなゲームなのでしょうか?
イタマー:本作は非常に野心的な“アクション×リズム”のローグライトです。
ゲームの核には2つの柱があります。ひとつは『Devil May Cry』のようなスタイリッシュで奥深いアクション性、もうひとつは『Hades』に代表されるアクションローグライトの構造と成長システムです。そして私たちの最終的な目標は、アクションゲームとリズムゲームの“境界”を、これまで誰も試みたことのない形で探求することにあります。
――本作の独自性はどこにありますか?
イタマー:最大の特徴は、入力の自由度と音楽との完全な統合です。プレイヤーは常に自由に行動でき、入力が制限されることはありません。
他のリズムアクションでは、ビートに合わなければ行動できない、あるいは強制的に同期させられることがありますが、本作ではそうした制約はありません。代わりに、リズムに乗ることで報酬を得る設計になっています。
これにより、上級者はあえてリズムを外すことで高度なテクニックを生み出すことも可能になります。これは従来のアクションゲームにおける“テクニックの発見”と同じ構造です。

――スタジオ設立以前のキャリアについて教えてください。
イタマー:スタジオを立ち上げる前、私たちコアチームは長年にわたりモバイルゲーム業界のさまざまな大手企業で働いてきました。いわゆるカジュアルゲーム市場における“ヒット作”にも関わる機会に恵まれました。
モバイルでの経験は、私たちにとって非常に価値のあるものでした。ただその一方で、私たちの中には常に「自分たちが本当に好きだった、没入感のある複雑なPCゲームを作りたい」という強い思いがありました。キャリアのある時点で、その情熱に向き合い、リスクを取って方向転換する必要があると判断したのです。
――本作をデビュー作として制作するに至った経緯について教えてください。
イタマー:この作品にたどり着くまでには、かなりの試行錯誤がありました。『Alpha Nomos』の構想が生まれる以前から、アミールとエミルは何年にもわたってさまざまなサイドプロジェクトに取り組んできました。正直に言えば、その多く――特にエミルのアイデアは――プレイヤーに強く響くことはなく、大きな成果にはつながりませんでした。しかし、そうした試行錯誤の積み重ねが、チームとしての強い土台を築いたのも事実です。
転機となったのは、エミルがアクションゲームとリズムゲームの両方に強い情熱を持っていたことでした。その情熱を活かすために、アミールが「両ジャンルを融合させた作品を作ってみよう」と提案し、ナタリーも加わってビジュアル面からそのビジョンを支えることになりました。
私たちはまずゲームジャムでこのアイデアを試すことにし、2日間で非常に粗いプロトタイプを制作しました。しかし、その未完成な状態にもかかわらず、プレイした瞬間に特別な手応えを感じたのです。リズムとアクションを融合させたローグライトとしての可能性がはっきりと見えました。このとき初めて、チーム全員が「これはいける」と確信し、このプロジェクトに全力を注ぐ決断をしました。
――開発体制について、もう少し詳しく教えてください。
イタマー:私たちは非常に小規模で密接なチームとして運営しており、日々の業務における役割の重複はほとんどありません。それぞれが専門分野を持ち、互いへの強い信頼と献身を基盤にしています。この体制によって、各メンバーが自身の創造性を最大限に発揮できる環境が整っています。
具体的には、ナタリーがアートディレクターとして世界観のビジュアル全体を担い、コンセプトデザイン、UI、3Dモデリング、テクスチャまで幅広く手掛けています。アミールはアニメーションやテクニカルアート、VFXを中心にゲームに命を吹き込みつつ、レベルデザインやテストにも関与しています。新たに加わったイゴールは、ゲーム内の環境表現を担当しています。
私はCEOとして、開発を支えるインフラやツール、そして会社として機能するための運営面を担当しています。エミルはリードデベロッパーであり、コアとなるゲームデザインも担っています。
このように高い信頼関係のもとで運営しているため、音楽との連携も非常にスムーズです。Totem Warriorsのサウンドディレクターはエミルと直接やり取りを行っており、ゲームデザインと音響設計は日常的に密接に結びついています。一方的な指示ではなく、双方が専門的な視点から意見を出し合い、最適な形を共に模索する関係です。
――「音楽が世界の法則である」というコンセプトはどのように生まれたのでしょうか?
イタマー:実はこのコンセプトの出発点は、音楽そのものではなく、ビジュアル的なインスピレーションでした。
最初のきっかけはアミールです。彼がある日、DeviantArtでレーザーソードを振るキャラクターのアニメーションGIFを見つけました。その動きは非常に高速で滑らかで、『ロックマンゼロ』のようなスタイリッシュなアクションを思わせるものでした。そのループする動きの中に、戦闘そのものが持つ“リズム”や“ビート”を感じ取ったのです。
プロトタイプ制作時には、その着想をもとに実際の音楽と組み合わせようとしました。しかし、開発を進める中で考え方は大きく変化していきました。アクションとリズムを本当に融合させるには、音楽は単なる背景やUIでは不十分であり、世界そのものを支配する根本原理である必要があると気づいたのです。
こうして、音楽が現実を形作り、あらゆる存在に生命を与える世界という設定が生まれました。最初は「リズムに乗った戦闘」という単純な発想でしたが、最終的にはゲーム全体のロアへと発展していきました。ただし、その原点にあるスタイリッシュなアクションの感覚は、現在のゲームにも確かに息づいています。
――アクションとリズムという異なるジャンルをどのように融合させていますか?
イタマー:どちらか一方がもう一方を支える関係ではなく、両者が対等に成立することを目指しました。そのためには、いくつかの設計思想が重要になります。
まず私たちは、プレイヤーに単にボタン入力を覚えさせるのではなく、「演奏している感覚」を持たせたいと考えました。武器の扱いを習得する過程は、現実の楽器を練習する感覚に近いものです。最初はリズムを掴むだけでも難しいですが、やがてそれが身体の一部のように自然に扱えるようになります。
また、多くのゲームではタイミングを外してもダメージが減る程度で済みますが、本作ではフィードバックをより統合的に設計しています。リズムを外した攻撃は威力が下がるだけでなく、武器の音自体も“不協和音”として再生されます。プレイヤーの操作ミスが、聴覚とゲームシステムの両方で明確に示される仕組みです。
私たちは常に「音として心地よいものは、ゲームとしても気持ちよくあるべき」という原則で設計しています。そのため、場合によってはゲームプレイ側を音楽に合わせて変更することもあります。このバランスは一度で完成するものではなく、何度も調整を繰り返すことで、ようやく自然な形に近づいていきます。
――プレイヤーがリズムに“乗る”感覚はどのように設計していますか?
イタマー:私たちはこの状態を「フロー状態」と定義しています。プレイヤーがボタン入力のタイミングを意識的に考えるのではなく、直感的に操作できるようになる瞬間です。この概念は非常に重要で、ゲーム内の敵の怒り状態の名称にも採用しています。
この状態を実現するために、UIに頼るのではなく、ゲームの細部――いわゆる“ゲームフィール”に徹底的にこだわりました。
例えば敵の攻撃は、視覚的な動きに従って回避するだけで、自然とリズムに合うよう設計されています。つまり、プレイヤーが音を意識しなくても、視覚情報だけで正しいタイミングに導かれるようになっています。またプレイヤーの攻撃モーションもテンポと一致するよう調整されており、次の入力を自然に促す構造になっています。

さらに、すべての効果音はビートやその中間に強く結びつくよう設計されており、無意識のうちにテンポを感じ取れるようになっています。
この設計が正しく機能している証拠として、テストプレイヤーからは「単発攻撃よりも、長いコンボのほうがむしろタイミングを維持しやすい」という声が寄せられています。視覚・音・操作が一体となることで、自然とフロー状態へと導かれるのです。
――リズムとアクションを同時に成立させる難易度設計はどのように行っていますか?
イタマー:一見すると非常に複雑に思えるかもしれませんが、私たちのアプローチは古典的なアクションゲームの設計思想に根ざしています。それを“音楽の言語”に翻訳しているに過ぎません。
従来のアクションゲームでは、「強力な攻撃ほど発動に時間がかかる」というテレグラフ設計によって公平性が保たれています。本作ではそれをそのままリズムに置き換えています。強力な攻撃ほど、実行までにより多くのビートを必要とするのです。これにより、プレイヤーはリズム的な“予兆”を読み取り、防御や回避の準備を行うことができます。
また、リズムと戦闘の両方に注意を払う必要があるため、敵の役割は非常に明確に設計しています。例えば回復能力を持つ敵は、その代わりに攻撃力や防御力を抑えることで、プレイヤーが瞬時に優先度を判断できるようにしています。これにより、思考を止めずに戦況を把握しつつ、リズムを維持できるようになります。
もちろん、理論だけでは不十分です。私たちは仮説を立てた上で、徹底した反復検証を行います。そのために内部ツールの開発にも多くのリソースを投入しており、各種パラメータを即座に調整できる環境を整えています。違和感があればすぐに修正し、再テストする――その繰り返しによって、常に納得のいく難易度を探っています。
――リズム入力の成功・失敗は、どのようなリスクとリターンに結びついていますか?
イタマー:私たちは「ビートに合わせること」をゴールではなく、“前提条件”と捉えています。これは、通常のアクションゲームにおける「攻撃や回避ができること」と同じレベルの基礎です。
現実のセッションでも、まず拍に合わせることが最低条件になります。本作でもそれをそのままシステムに落とし込んでいます。
ビートに正確に合わせればダメージが最大化され、スタイル評価も素早く上昇します。一方でリズムを外した場合はダメージが大きく低下し、場合によっては敵の反撃に対して無防備な状態になります。
ただし、すべてのプレイヤーにこの体験を提供するため、「Rhythmic」入力モードという補助機能も用意しています。リズムゲームに不慣れなプレイヤーでも、基礎となるテンポを維持できるようサポートする仕組みです。
基礎を習得した後は、プレイヤーの意識は生存から“発見”へと移行していきます。本作のコンボシステムは非常に有機的で、例えば回避行動はコンボの中における“休符”として機能します。敵の攻撃に合わせて回避することで、新たなコンボ分岐が自然と生まれるのです。
最終的に私たちが目指しているのは「自己表現」です。プレイヤーが自分なりのスタイルを見つけ、音としても気持ち良いプレイを追求すること。上級者になると、あえてビートを外すことで高度なテクニックを成立させるケースも見られます。それはまさに、ルールを理解した上で意図的に崩す“熟練者の演奏”に近いものです。

――プレイヤー自身が音楽を“演奏している感覚”はどのように実現していますか?
イタマー:従来のリズムゲームでは、あらかじめ用意された楽曲をなぞる形になりますが、本作ではプレイヤー自身が演奏者となることを目指しています。
そのために、楽曲はあえて“余白”を残して作曲されています。その空白部分を埋めるのが、プレイヤーの行動です。攻撃は単なる効果音ではなく、装備している武器に対応した“楽器の音”として再生されます。
さらに、この音は単純な繰り返しではありません。Totem Warriorsによって構築されたシステムにより、楽曲の進行に応じて音色が動的に変化します。現在のキーやピッチに合わせて音が調整されるため、常に楽曲と調和した音が生成されます。
例えば最初の武器「SaXword」の基本コンボだけでも、500種類以上の音のバリエーションが用意されています。これは、実際の演奏者が演奏中にキーを変化させるのと同じような挙動です。
さらに、この“演奏”はビジュアルにも影響を与えます。ゲーム内の環境や演出は、すべて音響データによってリアルタイムに駆動されています。プレイヤーの攻撃によって世界が脈動するのです。音をミュートすると、背景演出の多くが停止してしまうほど、両者は密接に結びついています。
――ローグライト要素はどのように設計されていますか?
イタマー:本作の成長システムは、音楽理論から直接着想を得ています。単なる数値強化ではなく、実在する音響エフェクトをベースに設計しています。
例えば「Delay」というパワーアップは、一定時間後に攻撃を再生するという音響効果を、そのままゲームプレイに置き換えたものです。一定時間後に追加の爆発が発生し、その威力はその間に与えたダメージ量に応じて増加します。音楽的な仕組みとゲーム的な仕組みが一致している設計です。
これを実現するために、音響エンジンとしてFMODを活用し、プレイヤーの行動に応じてリアルタイムにエフェクトを適用しています。ビルドの違いはプレイ感だけでなく、“音そのもの”にも直接影響を与えます。
つまりプレイヤーは、プレイスタイルだけでなく、音の構成そのものも変化させていくことになります。毎回異なる“サウンドスケープ”を生み出すことができる点も、本作の特徴のひとつです。
――ゲームプレイと音楽、どちらが主導しているのでしょうか?
イタマー:どちらか一方が主導する関係ではありません。私たちはこれを“循環的な対話”として捉えています。
武器の設計を例にすると、まず現実の楽器の演奏方法を分析し、それをもとにゲームプレイの基本構造を決めます。その後、アニメーションを制作し、その動きに合わせてサウンドディレクターが音を設計します。そして最終的には、その音に合わせて再びアニメーションやコンボ構造を調整するのです。
このプロセスは一方向ではなく、何度も往復します。ゲームと音楽の両方が互いに影響を与え合いながら、最終的にひとつの統合された体験へと収束していきます。
この作業は非常に手間がかかりますが、この相互調整の積み重ねこそが、プレイヤーにとって違和感のない一体感を生み出す鍵だと考えています。
――プレイヤーごとにプレイスタイルや音の体験は変わっていくのでしょうか?
イタマー:その通りで、実際にプレイテストでもすでにその傾向が見られています。プレイヤーは自然と異なるビルドを選択し、それによって音の構成も変化していきます。ステータスだけでなく、プレイスタイルそのものがサウンドミックスに影響を与えるのです。
例えば、攻撃的なプレイヤーは常に攻撃を続けるため、使用している武器の音が前面に出て、音楽全体の主役になります。一方で慎重に立ち回るプレイヤーは、より間を活かした、リズム重視の音楽体験になります。
特に興味深いのは、強敵との戦闘時です。プレイヤーが追い詰められたとき、その焦りや緊張が音として表れるのです。
Totem Warriorsのフアンが話してくれた例が印象的でした。彼は映画『Dune』の楽曲演奏に参加した際、映像が極めて混沌としている場面でも、音楽は一定のリズムを保ち続ける必要があったといいます。そのとき、音楽そのものが“踏みとどまろうとする感覚”を身体で感じたそうです。
『Alpha Nomos』でも同じことが起きます。強敵に直面したプレイヤーは、普段のリズムを維持できなくなり、その“崩れ”が音として現れます。戦闘の緊張感とプレイヤー自身の状態が、音楽として可視化されるのです。

――ローグライトとリズムアクションというジャンルの融合はどのように成立させていますか?
イタマー:この課題に対して、私たちはゲームデザイナーとしてではなく、音楽プロデューサーの視点で考えました。
実際の音楽制作では、単一の楽器ではなく、複数のエフェクトを重ねて最終的な音を作り上げます。この考え方をそのままローグライトの成長システムに応用しました。パワーアップは、それぞれが音響的・ゲーム的な“基本要素”として機能します。
プレイヤーはそれらを組み合わせることで、自分だけのプレイスタイルと音を構築していきます。いわばエフェクターボードを組み上げるような感覚です。
ローグライトのランダム性は、この試行錯誤を自然に促します。意図しない組み合わせを試す中で、新しいプレイスタイルや音の発見が生まれます。これにより、ゲームプレイそのものが“音楽的探求”として成立するのです。
――開発において最も難しかった点は何でしたか?
イタマー:最も難しかったのは、複雑な要素ではなく、基礎の完成度を高めることでした。単純な攻撃がビートに合ったとき、それが“気持ちいい”と感じられるかどうか。ここが成立しなければ、どれだけ要素を積み重ねても意味がありません。
しかし、理論的に正しいタイミングが必ずしも人間にとって気持ち良いとは限りません。その差を埋めるために、徹底的な調整を繰り返しました。
また、リズムに対する感覚はプレイヤーごとに大きく異なります。ある人はクリック音がないとプレイできず、別の人は視覚的なメトロノームが邪魔に感じることもあります。
そこで私たちは、プレイヤーごとに最適な環境を選べるよう、UIや音響のオプションを細かく調整しました。不要な要素は削りつつ、必要な補助は用意する。そのバランスを取ることが重要でした。
――本作のビジュアルコンセプトについて教えてください。
イタマー:「パペットコア」と呼んでいる現在のビジュアルは、長い試行錯誤の末にたどり着いたものです。私たちは“かわいらしさ”と“不気味さ”が同時に存在する表現を目指しました。
主人公のチェロも、最初から今の姿だったわけではありません。当初はデジモンのような非人型キャラクターであったり、ロックバンドの少女として設計された時期もありました。そこから何度も試行錯誤を重ね、最終的に“木製の人形”という現在のデザインにたどり着きました。
このコンセプトを軸に、敵やNPCもすべて人形や玩具としてデザインされています。そしてその舞台として採用したのが、廃墟となったサーカスです。サーカスは本来華やかで楽しい場所ですが、無人になると一気に不気味さが際立ちます。この二面性が、私たちの世界観と非常によく合致しました。
――ストーリーはどのように描かれますか?
イタマー:本作では、長いカットシーンでプレイヤーの没入を妨げることは避けています。物語は戦闘の合間の静かな時間の中で、環境やキャラクターの振る舞いを通じて描かれます。
例えばデモ版では、最初のNPCとしてテディというキャラクターが登場します。彼は常に韻を踏んで話しますが、その理由は明かされません。さらに、主人公のチェロも次第にその影響を受けていきます。
なぜ韻を踏むのか、なぜそれが伝染するのか、なぜ彼は孤独に暮らしているのか――そうした謎は明示されず、プレイヤー自身の興味に委ねられます。アクションを楽しむだけでも成立しますし、深く掘り下げたいプレイヤーには考察の余地が用意されています。

――影響を受けた作品について教えてください。
イタマー:アクション面では、『デビルメイクライ』や『ベヨネッタ』、『ニーア オートマタ』といった日本の作品から大きな影響を受けています。これらはプレイヤーの自由度とスタイリッシュな戦闘の基準となる作品です。
リズム要素については、『Crypt of the NecroDancer』や『BPM: Bullets Per Minute』、『Metal: Hellsinger』などを参考にしました。それらがFPSにリズムを取り入れたように、私たちはそれをキャラクターアクションへ応用することを考えました。
また『Hi-Fi Rush』の成功は、私たちの方向性が間違っていなかったことを示す大きな後押しになりました。同時に、自分たちのアプローチが異なるものであることも明確になりました。
――今後の展開について教えてください。
イタマー:デモは単なる体験版ではなく、ゲームの核を磨き上げるための重要なステップです。フィードバックをもとに、さらに深みのある体験へと進化させていきます。
正式リリースでは、新たな武器や環境、NPC、敵、そして成長システムの拡張を予定しています。プレイヤーごとに異なる音楽体験がより広がるよう設計しています。
――長期的なアップデートの予定はありますか?
イタマー:もちろんです。本作はリリースがゴールではなく、そこから始まるものだと考えています。新しいステージや武器、キャラクター、ストーリー、そして音楽の追加を予定しています。プレイヤーとともに成長し続けるゲームにしたいと考えています。
――日本文化からの影響や、日本語対応について教えてください。
イタマー:ナタリーは幼い頃から日本のアニメや音楽に親しんできました。その影響はビジュアルやデザインに強く現れています。また、ゲームデザインにおいても『モンスターハンター』のような作品から影響を受けています。
発売時点で完全な日本語ローカライズを実装する予定です。
――日本市場に対する考え方を教えてください。
イタマー:日本語対応はビジネス的な判断ではなく、私たちの価値観の一部です。たとえ1人でも日本語で遊ぶプレイヤーがいるなら、その人にとって最良の体験を提供したいと考えています。
――日本のプレイヤーに向けたメッセージをお願いします。
イタマー:本作は、日本が築いてきたアクションゲームとリズムゲームという2つの文化へのリスペクトでもあります。この2つを融合させた“第三のジャンル”として受け取ってもらえたら嬉しいです。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
イタマー:『Alpha Nomos』に興味を持ってくださった皆さん、本当にありがとうございます。皆さんの応援が、この作品を前に進める原動力です。2026年に、この音楽体験をお届けできることを楽しみにしています。
『Alpha Nomos』は、PC(Steam)向けに2026年第3四半期発売予定。体験版も配信中です。Game*Sparkでは、体験版プレイレポートを掲載しています。










