初代『モンハン』や『ドラゴンズクラウン』に携わった業界30年超の開発者がデジタルゲームブックを作ったワケ―『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』開発者インタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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初代『モンハン』や『ドラゴンズクラウン』に携わった業界30年超の開発者がデジタルゲームブックを作ったワケ―『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』開発者インタビュー

読書が苦手だった少年がゲームブックに救われ、今度は創り手となって恩返しする。

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初代『モンハン』や『ドラゴンズクラウン』に携わった業界30年超の開発者がデジタルゲームブックを作ったワケ―『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』開発者インタビュー
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ジギタリス出版と15 Industryから、“読書型”ファンタジーアドベンチャーゲーム『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』が本日7月9日よりリリースされました。

本作のジャンルは、なんと昔懐かしの「ゲームブック」。文字と挿絵だけで構成され、自身の選択によって物語が変化する、まさに“遊べる小説”となった一作です。

選択肢を選んでページをめくったり、サイコロを振ってイチかバチかの賭けに出たり……そんな昔懐かしの「ゲームブック」体験が楽しめる本作。80年代から90年代に子供時代を過ごした人の中には、当時夢中になって遊んだな……という方も多いのではないでしょうか。

今回、Game*Sparkではそんな『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』のクリエイターである、ジギタリス出版の西村芳雄氏にインタビューを実施。

西村氏はゲーム業界30年以上の職人で、在籍時のカプコンでは初代『モンスターハンター』など、同じくかつて在籍していたヴァニラウェアでは『オーディンスフィア』『ドラゴンズクラウン』といったタイトルに携わってきました。

自身もゲームブックを遊んで育ったという西村氏。そんな彼が語る「ゲームブック」の魅力や本作の展望、そしてデジタルと合わさることによって生まれる課題など、様々なお話を伺うことが出来ました。

また、本作のSteamストアページでは、西村氏自身が手掛ける開発コラムも公開されているので、本作についてより詳しく知りたい方はそちらも併せてご覧ください。それでは、早速インタビューの内容に入っていきましょう。

アナログの“自由”をデジタルにどう落とし込むか―「逸脱が選択できること」を巡る葛藤

――まずは単刀直入に、なぜ本作『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』を作ろうと思ったのか、そのきっかけについて、改めてお伺いしたいです。ゲームブックというものへの愛や、自身とゲームブックに関する思い出、そして「ゲームブックはビデオゲームと違ってこんな面白さがある!」などの想いを、ぜひお聞かせください。

西村氏:本作を作ろうと思ったのは、2018年に株式会社アトラス様より販売された『ドラゴンズクラウン・プロ』で、『先着購入特典DLC デジタルゲームブック「悪霊島の秘宝」』を制作した際の成功体験からです。制作そのものが楽しかったので、その後趣味として1人でコツコツと制作していました。

ゲームブックへの想いは“愛”というより、“感謝”の方が大きいです。読書が苦手だった幼い頃の私は、ゲームブックを遊んで本を読めるようになり、初めて知るファンタジーの世界にハマって知識と想像力を豊かにし、挿絵の魅力に心惹かれ怪物のイラストを描く様になるなど、今の私を構成するのに必要なものを頂きました。ですのでゲームブックにとても感謝しています。

因みに、初めてゲームブックを作ったのは中学生の時です。1986年に販売されたファミコン用ソフト、エニックス(現:スクウェア・エニックス)様販売の『ドラゴンクエスト』、1984年に販売されたPC-8800シリーズ用ソフト、T&E SOFT様販売の『ハイドライド』をミックスさせたような内容でした。

ゲームブックの面白さは、誰でも遊べること、誰でも作れることだと思います。今は1人でもゲームを制作できる時代となりましたが、それでもやはりハードルがあります。そのハードルが一番低いのがゲームブックだと思います。紙と鉛筆があれば、作れちゃいますから。友達に自分が作ったゲームを遊んでもらうのも、友達が作ったゲームを遊ぶのも、思い出になって良いと思っています。

――「ゲームブック」という極めてアナログな遊びをデジタルに落とし込むうえで、制作の上では「ゲーム体験の手触り」など様々なこだわりがあるかと思います。その中でも「この要素だけは外せない」「これが無いとゲームブックにあらず!」というような、特にこだわったポイントがあれば、ぜひお聞きしたいです。

西村氏:「ゲームブックに必要だ」と私がこだわっているポイントは、“選択ミスで直ぐに死ぬ”、“甘い言葉は大抵の場合ワナ”、“ギャンブル”の3つです。これは私がゲームブックに“冒険”を求めているからに他なりません。

実際のゲームブックにはそんな極端な選択肢は少ないのですが、間違った選択をすると直ぐに死んでしまう印象があります。生と死の選択は、正しく冒険だと思います。

また、魅力的な甘い罠に誘われるか?断るか?これも私にとって“冒険”です。大抵は期待を裏切られてしまう印象がありますが……。

最後の“ギャンブル”は元々サイコロを使うゲームですので、内容そのものに“ギャンブル”性がありますが、所持金を増やすために賭け事に興じる……というのも私にとっては“冒険”です。これら3つの要素にこだわって、本作を制作しました。

――こうしたゲームを創る場合、特に「UI」に関しては非常に繊細なバランス感覚とセンスが求められるかと思います。鉛筆、サイコロ、そして冒険帳といった道具から、紙そのものの質感まで……そういった様々な要素に関して、本作を作り終えたうえでの満足度はいかがでしょうか。これからもっとこうしてみたい、こういうこともやってみたい、などの感想もあればお聞きしたいです。

西村氏:今は満足しております。欲を言えば、「キャラクターシートのキャラクターの武器の持ち換えは表現したかったな」というちょっとした後悔があります。

作業量が凄いので、どの道できなかったですが……ですので、次に機会があれば、キャラクターの武器の持ち替えや、リアクションのアニメを増やしたり、机の上をもっと見渡せるような、多機能で遊び心のあるUIにしたいなと思います。

――また、コラムでも仰られているように、デジタルとアナログが混じるからこそ生まれる矛盾、課題などにも直面されたかと思います。例えば、プレイ快適性はデジタルにする上で当然求められる要素ですが、一方でアナログの不便さも、それ自体がある種固有の魅力でもある……。そういった問いにぶつかった際、どういった心構えで制作に臨みましたか?

西村氏:コラムを読んで頂きありがとうございます!とても興味深いご質問ですね。課題の多くはゲームのルールにありました。

本来(アナログ)のゲームブックで、“指セーブ”と呼ばれる“戻りたいページに指を挟んでおく行為”はゲームブックのルールにはない、“逸脱”した行為になると思います。この行為を“良し”とするか“悪し”とするか。これは遊ぶ方の善悪に対する考え方が反映されると思います。

同様にサイコロの出目が気に入らなかった場合、もう一度振り直したりするのか、振らずに都合の良い数で進めるのか、そもそも駆け引きなど無視して小説の様にすべてのページを読むのか。ゲームブックは“全てを遊び手に委ねている”と言っても過言ではありません。一方デジタルのゲームブックはルールに厳しく、殆どの“逸脱”を許しません。

私は“逸脱が選択できること”は良いことだと思っています。決して“逸脱”自体を良しと唱えているのではありません。遊び手が自由に物事を選択できること……言い換えれば、善悪を決めることを委ねるのは良いことだと思っています。

善悪の判断基準は“他存在に迷惑をかける”のか、“誰にも迷惑をかけない”のかで推し量って良いと私は思います。ですが、誰にも迷惑をかけない事であっても、ルールを破ることを常とすると、ルール自体を守る意味を忘れ、結果誰かに迷惑をかけるかもしれません。ルールを守り過ぎても、自分に厳しすぎたり、結果誰かを縛り付け、迷惑をかけることになるかもしれません。善悪に対する考えは人それぞれであり、判断は難しいです。

本作を制作する心構えとしてあったのは、簡単に言うと“幼い頃の私が楽しめるものを作る”でした。幼い頃の私は“指セーブ”に後ろめたさがありました。サイコロの出目をいじったこともあります。そんな私が、善悪の呵責に苦しまず、堂々と、満足に遊べるゲームブックとして、本作を制作いたしました。

子供の頃に好きだった作品全てへの恩返し。世界観・キャラクターの着想源

――世界観づくりに関して、様々なファンタジー作品やゲームブックの古典などから多くのリファレンスを受けているかと思われますが、そういったもの以外では、どういったところから着想を得ているのでしょうか? 表現したい世界、ストーリーは制作以前からありましたか?

西村氏:着想は私が幼い頃に好きだった作品全てから得ています。制作以前には表現したい世界、ストーリーというのは特には無かったのですが、前々から「いつか幼い頃に自分が好きだった作品に恩返しがしたい」と考えておりましたので、今回の機会を得た際に「正に今だ!」と思ったのです。ですので制作開始後は表現したいもので溢れ返るほどでした。

――本作の世界観やキャラクターは硬派なファンタジーモチーフですが、一方でテキスト自体は非常に平易で、ときにはパロディーなども交えた非常に親しみやすいものになっていると感じました。構想から実際のシナリオライティングを進めるうえで、特にこだわった部分はありますか?

西村氏:お褒め頂き、ありがとうございます! こだわったのは、私が子供の頃に好きだったものを集めて“一つの作品にする”という部分です。何故そこにこだわったかと言うと、私は、私が幼い頃に出会った作品たちに感謝をしているからです。

本作は1985年に二見書房から出版されたゲームブック、J・H・ブレナン著「暗黒城の魔術師」の影響を思いっきり受けております。「暗黒城の魔術師」はイラストがどことなく不気味で硬派な印象があり、世界観もアーサー王物語を題材としているので、やはり硬派です。ですが、その文章は皮肉とユーモアがたっぷりで、愉快なお話になっています。本作はその「暗黒城の魔術師」から着想を得て、“硬派なモチーフ”、“親しみやすい文章”を目指しました。

『暗黒城の魔術師』以外にも、私が子供の頃に好きだった数多くの作品をオマージュしています。それらをまとめて一つにするという、私にとって本作は夢の様な作品になっています。

――制作者としてというよりも個人的に、気に入っているキャラクターや怪物はいますか? あるいは、イラスト制作が非常に楽しかった、描いていて筆が乗ったイラストなどはありますか?イラスト制作の中での面白いエピソードなどもあればぜひお聞かせください!

西村氏:私が気に入っているのは、マルグリットという名のヴァンパイア少女です。初めは脇役だったのですが、物語が完成するにつれ、役目が増えて良いキャラクターになったと思います。

イラスト制作は、元ネタ(オマージュ)があるものが兎に角楽しかったです! 私が背景描きなので背景を描くのが好きなのですが、ゲーム冒頭の「Virtual Adventure Book」の文字が出てくる風景イラストは、映画の「ロード・オブ・ザ・リング」を久しぶりにビデオで見た後に、触発されて描きました。

指輪物語の世界観で描き始めたつもりが、描いている内に、「ネバーエンディング・ストーリー」の象牙の塔のイメージも入ってきたりして……何かに強く突き動かされるように描いていたのを覚えています。その絵を描いた後に『暗黒城の魔女』を作り出したので、私の中では重要な絵となっています。

――「デジタルゲームブック」というアイデアは、デジタル上でTRPGや人狼、ボードゲームを遊ぶ昨今の「アナログ回帰」的なブームとも重なる部分があると思います。ゲームブックの再興……というと少し違いますが、この「デジタルで遊ぶゲームブック」というパッケージ自体の可能性・広がりや、これからの展望について、思うところがあればお聞きしたいです。

西村氏:「ゲームブックの再興」があれば、私は嬉しいですね!ゲームブックにおけるアナログでは出来ないデジタルの強みは、圧倒的な文章量にあると私は思います。ですので、とてつもなく長い歴史長編叙事詩のゲームが作れたら凄いだろうなと考えています。

様々な方の作品への想いがあると思うので、滅多なことは言えないのですが、「銀河英〇伝説」のゲームブックあると良いだろうなと思ってしまいます。私の歴史ではヤンが銀河を統一して……ゴホン!ゴホン!失礼しました。

今までは時間を短縮することで遊びを快適にしていたと思いますが、その時間短縮もそろそろ極みに達すると思いますので、これからは時間的なゆとりを持つことが良しとされる時代が来ると私は考えています。

時間をたっぷりと使う読書や、プレイバイメール(郵便やその他の通信媒体を使って遠隔地のプレイヤーと遊ぶゲーム)で“結果を待つ”というゲームが増えれば良いなと考えています。ご質問ありがとうございました!


ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』は、PC(Steam)向けに本日7月9日より発売中。体験版も無料配信されています。

Game*Sparkでは近日中に本作のプレイレポートも掲載予定なので、お楽しみに!

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ライター:植田亮平,編集:八羽汰わちは

編集/ 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Sparkの共同編集長。特技はヒトカラ12時間。

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