悪趣味、お好きですか?
以前、こちらの記事で「悪趣味ゲーム」について取り上げましたが、今回はそんな悪趣味が大好きでたまらないライターにお集まりいただき、悪趣味座談会を開きました。悪趣味が好きになったきっかけは?ゲームで悪趣味を最初に味わったのは何?どんな表現が好きなのか?特に痺れた作品や、ゲームで悪趣味を味わう意味について……と、思い思いに語り合いました!
▽参加者プロフィール
タケダだいゆう:「絶望で正義の味方の目の光がなくなる」系が好き。ヒーローは試合に勝って勝負に負けてほしい。
難波:「そこまでするか?!」という火力で倫理観を揺さぶってきたり、善悪や正義の価値観を問い直してくる悪趣味な作品が好き。 心をボコボコにされることで自分の"生”を確認しがち。
羊めり:「ありえたかもしれない幸せな未来、でもそうはならなかったんだよ」系と「解釈によって良い結末にも悪い結末にもなりうるエンディング」系が好き。ただし、幼子には幸せになってほしい派閥。
もぐ水:美しい破壊や破滅を感じられたり、あまりのひどさにもう笑うしかないような気持ちになるのが好き。ゲームでは死亡演出や、やられモーション、バッドエンドが凝っていると嬉しい。
みお:昔は嫌な気持ちになるのも、グロテスクなのも苦手だったが、いつのまにか嫌な気持ちになるのが大好きになった。好きな悪趣味のタイプは美少女ゴアと「なんでこうなっちゃったんだろう」系。
「悪趣味好き」になったきっかけ・目覚めは?
もぐ水:悪趣味大好きな皆さん、本日は集まっていただきありがとうございます。さっそくですが、悪趣味なものが好きになったきっかけや、目覚めのような瞬間はありましたか?
私はあまりはっきり覚えていなくて。気付いたらそういうものばかり見てたので、明確に「ここで変わった」という瞬間はないんです。ただ、思い返してみると、幼少期に親とドラマの「トリック」を一緒に見ていたので、そのあたりが最初なのかなと。
あとは、小学生の時に『ひぐらしのなく頃に』のコミカライズも読んでいました。かなり怖いしグロテスクなんですが、なんか惹かれて、全巻集めて読んでしまったんですよね。特に「なんか好きだな」と思ったのが『目明し編』だったりもして。なので、そこが悪趣味好きのスタート地点なのかなと。
タケダだいゆう:自分はもう、中学生くらいの頃の中二病的な感覚が最初だったんじゃないかなと思っています。「そういうものを見ている自分」に惹かれていた、というか。当時は映画も好きだったので、「SAW」や「ミスト」あたりの影響も大きかったかもしれないです。
もぐ水:わかります。私も中学生ぐらいの時にグロテスクなものに惹かれて、それが今もずっと続いているな、という感覚があります。
難波:今「SAW」って言われて、確かにって思いました。
タケダだいゆう:そうですね。入りとして一番分かりやすいかと。
難波:今回、座談会の前にトークテーマを共有していただいた時にきっかけを考えたら浮かばなかったんですが、今タケダさんから「SAW」というタイトルが出て「しまった、私もそれ言いたかった!」って思いました(笑)。
私はですね、多分これかなって感じのものなんですが、「ACジャパン」ってご存知ですかね?
もぐ水:CMでたまに見るやつですよね。
難波:それです。「ACジャパン」という民間団体が制作しているCMなんですが、その中にちょっと怖いものがあったりするんです。ぞわっとするような恐怖や不安感を演出に盛り込んで、人の心や意識に訴えかけることを趣旨にしたCMを作られていたんですね。
タケダだいゆう:そういう感じのもの、見たことあるかもしれないです。
難波:けっこう「うわっ」となるCMがあるので、ご存知でなければ調べてみると気に入っていただけるかもしれないです。子どもの頃にそのACのCMを見てすごく記憶に残っているのと、あとは「世にも奇妙な物語」でしょうか。ゲームよりもそちらの方が先に触れているので、幼い頃に一番最初に影響を受けたのはそこかなと思っています。
私も、もぐ水さんと同じで、気づいたらダークなものが好きになっていたタイプなので、今回改めて振り返ってみたら「これがきっかけだったかもしれない」と気づきました。
もぐ水:なるほど。確かに検索してみると、サムネだけでもゾクッとするものが多いですね……。
難波:そうなんですよ。社会問題を啓発するようなCMを作られているので、さらっとした内容だと人の心に留まりませんし、それでインパクトが強いものを作っているんじゃないかなと。
もぐ水:私が見てた頃のは、少し控えめになった時代のものだったんですかね。
難波:そうなんです。一度世間から反発を受けて、控えめになった時期があったらしいんですよね。
羊めり:CMというのは意外な視点でした。私の場合は読書ですね。特定のタイトルはすぐに思い至らないのですが、江戸川乱歩や筒井康隆の小説あたりかなと思っています。あとは、幼少期に「本当は怖い童話」的なものがすごく流行った時期があって、父がそういう本を買っていたので、それを読んでいたことも影響しているんじゃないかと。
あともぐ水さんと一緒で、私は『うみねこのなく頃に』のコミカライズを手に取ったんですよ。あちらもグロテスクなシーンがあるんですが、物語として純粋に好きで読んでいました。
もぐ水:なるほど。ちょうどドラマや映画、CMに、漫画や小説などいろいろなメディアに分かれましたね。
タケダだいゆう:確かにそうですね。
難波:今お二人から名前が上がったように、竜騎士07さんのシナリオはけっこうマストなんですかね。
もぐ水:いや~罪深いですね。
羊めり:(笑)。映像系と本系で分かれた感じがありますね。
もぐ水:別のメディアだと、「音楽」もあったなと思い出しました。小中学生の頃、ニコニコ動画で聞いていたボーカロイドの曲にダークなものが多かったので、その影響もあったかもしれません。米津玄師として有名なハチさんの「パンダヒーロー」や「病棟305号室」とか。
羊めり:私も、ハチさんの「病棟305号室」や「お姫様は電子音で眠る」が好きで聞いてました。ハチさんの曲ではありませんが、「人柱アリス」とかもありましたね……。あと、皆さんもうご存知かもしれませんが、倉橋ヨエコさんや平沢進師匠もおすすめです。
もぐ水:うわーー懐かし!!「人柱アリス」聞いてました。それを言われて、「悪食娘コンチータ」などの悪ノシリーズも聞いてたな……って記憶がどんどん蘇ってきました(笑)。聞き始めたのは悪趣味好きになってからですが、私も平沢進好きです。
タケダだいゆう:「結ンデ開イテ羅刹ト骸」とか、昔のボカロってわりとダークなイメージがたしかにありますよね。
もぐ水:今は当時ほどボカロ曲を聞いてないので分からないんですが、小学校高学年あたりのちょっとグロいものやエッチなものに興味を持つ頃と、ボーカロイド曲(とニコニコ動画)ってめちゃくちゃ相性が良かったんですよね。親に「パソコン触っていいよ」って言われていた時間は、ずっと色々な曲を探して聞いていた覚えがあります。
みお:意外とゲームがきっかけの方は少ないんですね。私はおそらくゲームで、子供の頃はアクションゲームばかりやっていたんですが、ある日アドベンチャーゲームを手に取ったんです。それが『街 ~運命の交差点~(以下、街)』だったんですね。90年代の渋谷を舞台に、複数の主人公それぞれの視点で描かれる群像劇的なアドベンチャーゲームなんですが、普通に遊ぶぶんにはそこまで悪趣味な感じは少ないんですよ。時代的な部分はありつつ……。

ただ、クリア後に解放されるおまけシナリオが予想だにしないオチで、めちゃくちゃ後味が悪くて。「言われてみればそうかもしれないな」って納得感はあるんだけど、「でもなんでこんなオチにしちゃったんだろう」って当時ヘコみました。でも、それが自分の中でずっと心に残ってて……プレイしたのが中学に上がりたての頃で、本をあまり読まない子どもだったこともあって、当時はまだ物語が強く印象に残るという経験があまりなかったんです。でも、そこで自分の趣味に気付いた気がします。ちょっと後味が悪いというか、展開に納得感はあるんだけど、なんでこうなってしまったんだろう……と悲しくなってしまうシナリオが好きだなと。
タケダだいゆう:そっちの方が印象に残るイメージありますもんね。
ゲームで最初に悪趣味を味わった作品とは。“あの会社”のタイトルが強い?
もぐ水:目覚めやきっかけについて振り返ったところで、ゲームで最初に悪趣味を味わった作品について話しますか。私は、『ダンガンロンパ』で最初に味わいました。
羊めり:あの……私もです(笑)。
もぐ水:一緒だ!嬉しい(笑)。
みお:私は『街』のすぐあとに『ダンガンロンパ』でした。
タケダだいゆう:俺もみおさんと同じ感じです。

難波:罪深いタイトル!みんなの最初を奪ってますね。ちょっと言いづらいんですが、私は『ダンガンロンパ』をやったことがなくて……ざっくりとこう、倫理観を揺さぶるような衝撃的なシーンが魅力というのだけは知ってるんですけど。やっぱり、それって「おしおき」シーンになるんでしょうか、それとも全体的に?
みお:まあ全体的にですが、フックはやっぱり「おしおき」だと思います。自分は最初の出逢いはアニメだったんですが、いとこがアニメで見ているのを横目で見てて、それがシンプルな殺しじゃない殺し方だったんですよね。「え?これ死んでるの?」みたいな。
羊めり:あ~。分かったかも。
難波:あ、もう「ああ」ってなるんですね皆さん。
タケダだいゆう:あれかな、って思い当たるものはありますね。
難波:その感覚味わいたい……!やっぱり『ダンガンロンパ』ぐらいになると、もう共通言語ですね。
もぐ水:そうですね。さっきは「気付いたらそういうものを見ていた」と言ったんですが、ハッキリとした目覚めという意味では『ダンガンロンパ』かもしれない。しかも、いつ遊んでも面白いタイトルであることは間違いないんですが、私は中学生という一番『ダンガンロンパ』が面白い時期に触れてしまって。それでこうなってしまった気がしています。
みお:わかる。
羊めり:私も多感な時期にプレイしました。おしおきが一番インパクトが強いとは思うんですけど、そもそも全体的に設定に散りばめられてるものにブラックな要素がありましたね。
みお:『ダンガンロンパ』をやると、おしおきシーン集とか見ちゃうんですよね。見返したくなるというか。ただそれを見たことでまた後々物語体験に効いてくるという仕掛けもあって。
羊めり:おしおきシーンって「クロ」っていう犯人にするものなので、シナリオ上ではクロの分だけ作れば十分なんですけど、設定としてはどのキャラクターにもあるんですよ。もし、この人がクロだった場合にどんなおしおきが行われていたか……というものが。それが全員分あると知った時の衝撃はありましたね。
もぐ水:設定資料集にたしか書いてありましたよね。
みお:内容もいやらしいですからね、本人の得意な所を逆手に取って……というのが。
難波:そう思うとすごいタイトルですね。中学生の時にやっても大人になってからやっても面白い感じなのかな、と思ってるので。いや、やらないとな……!
もぐ水:タケダさんの他の作品というのはどれですか?
タケダだいゆう:僕は『ダークソウル』です。「ソラール」っていうNPCがいるんですけど。あいつがちょっと色々ありまして。多分それが最初ですね。

もぐ水:ああ~。いいですよね。
みお:その方はどういう方向性なんですか?
タケダだいゆう:ざっくり言うと、すごく明るいやつが闇堕ちしてしまう、という感じなんですが、それも自分の意思ではないというか。気が狂ってしまったみたいな……。
もぐ水:信じてたものが、みたいな感じですよね。
タケダだいゆう:そうです。道中すごく褒めてくれたり、励ましてくれたキャラが終盤で……というタイプなんです。
難波:うわあ、しんどいですね。
もぐ水:特に『ダークソウル』って、敵対するキャラクターとか、言葉遣いや印象が良くないキャラクターが多いので、親切にしてくれる人って嬉しいんですよね。
タケダだいゆう:そう、あんまりいないんですよ。ボスも一緒に戦ってくれたりするので、相棒感があって、印象に残る。いいキャラクターです。

もぐ水:いいですよね。難波さんは何のゲームが最初ですか?
難波:私は、先日もぐ水さんが悪趣味を集めた記事の方でも触れていた『かまいたちの夜2』です。悪趣味好きの自我が芽生えた後に「悪趣味だな、いいな」と思ってプレイしたのはヨコオタロウさんのゲームなんですけど、振り返って一番最初は何だったのかなと考えたら『かまいたちの夜』の、それも2だったんじゃないかと。

もぐ水:一番きついもの最初にやってますね。
難波:多分これは悪趣味演出ジャンルの中でもトップクラスと言われていると思うんですが、私もこれを多感な時期にやってしまって、私の性癖を作ったんだろうな、って今となっては思います。もぐ水さん以外にプレイされてる方っていますかね?
みお:私も遊んでて、2はかなり好きです。『街』プレイしたらチュンソフトすごいと思って、その流れで『かまいたち』『かまいたち2』と立て続けに遊んだ記憶があります。
難波:おお、いいですね。2のメインのシナリオはミステリーでちょっと賛否両論ある感じなんですが、メインシナリオをクリアした後に解放されるサブシナリオがすごくて。グロい話にコメディもあってエロもありで……と多彩なサブシナリオとして分岐するんですが、その中でも終盤に読める「妄想篇」というのがあって。

これがすごく良い意味で趣味が悪くて、「なに食ったらこんな話を世に出そうと思えるんだろう、しかもそう思ったとしても普通の人にはこんなの表現できないだろう」って思うくらいすごいんです。文章も巧みで、映像演出もいきなり歪んだ画角になったり不協和音が入ったりと、ビジュアル面でも徹底して趣味が悪い。今でもふと思い出して震えるような演出があって、それが原体験です。
もぐ水:やっぱり「妄想篇」は記憶に残りますよね。『かまいたちの夜2』の話になってしまうんですが、みおさんはどのシナリオが一番好きですか?
みお:私は「底蟲村篇」ですね。映像的なインパクトもあるし、なんというか欲望に負けて大変なことになるっていう話もいいなと思ったので。
あとは、最後の演出も好きです。当時はいわゆるメタ的な表現にあまり触れてこなかったんですが、シナリオの出し方を見ながらやったとはいえ、それでも衝撃的でした。

難波:あれはとってもすごいので、興味のある方はぜひプレイするか調べてみてほしいですよね。
もぐ水:私は「惨殺篇」と「サイキック篇」がけっこう好きでしたね。ほとんどのエンディングで登場人物が死んでしまうんですが、その中に「これって本当に幸せなのかな」という終わり方をするものがあって。でも、本人たちは幸せそうだし……という。
難波:メリーバッドエンド的なやつですよね。
もぐ水:そうです。話を聞いていると、ゲームの中で挙げられた作品って『ダークソウル』以外はチュンソフトなので、チュンソフト系強いですね。『ダンガンロンパ』のスパイク・チュンソフトも、流れ的にはそうですし。
ただ私の場合、そういうものが好きだとわかった後に『ダークソウル』をプレイしたので最初のきっかけにはなっていないんですが、フロムの作品も悪趣味なものが多いと思います。
タケダだいゆう:『ブラッドボーン』とか『SEKIRO』もひどいですからね。

もぐ水:『アーマード・コア』も、ひどいのいっぱいありますから。












