10月2日に発売するバンダイナムコエンターテインメントによる、人気フライトシューティング最新作『エースコンバット8 ウイングス・オブ・シーヴ(以下、ACE8)』のGame*Sparkレビューをお届けします。本作の内容に踏み込んでいくため、ネタバレに注意してください。
なお、本稿はバンダイナムコエンターテインメントからPC版ゲームキーの提供を受け、キャンペーンをPS5コントローラーを使い、エキスパート操作かつ難易度パイロット(ノーマル)で1周クリア後に執筆したものです。
『ACE8』は、2025年末のThe Game Awardsにて発表されました。ゲームエンジンにUE5を採用しただけでなく、ボリュメトリックな雲を描画できる独自エンジン「Cloudly」も活用。周囲に目を向けて様々な情報を得られるシネマシーンや、シリーズ最大級のオンラインモードなどを実装したタイトルです。2019年発売の『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン(以下、ACE7)』から、約7年ぶりの新作となります。

そんな本作の内容が前代未聞の巨大なゆえに、レビューも長くなりました。本題に入る前に、これまでの動向を整理しておきましょう。
前作『ACE7』が発売されたのは2019年1月のこと。『ACE7』は、舞台が現実世界からストレンジリアル世界へと戻り、プレイヤーはオーシア空軍のパイロット“トリガー”となって、ユージア大陸の西端にあるエルジア王国を相手に戦う物語です。
発売当初は久々のナンバリングタイトルであることや、美麗なグラフィックから、各ミッションに難しさはあるものの、好意的に受け入れられていました。
しかし、ファンによる『ACE7』の研究が進んでいくと、忙しないドッグファイトや演出優先によるボスの無敵時間、一部シナリオの不可解さ、リスクが小さい故に強すぎるハイGターンなど、バトルバランスやシナリオ面の歪さが指摘されるようになっていきます。
そして2019年内には機体とミッションのDLCが配信され、2021年には『エースコンバット』の新プロジェクトが発表。2024年にはニンテンドースイッチ版『ACE7』が発売されるなど、『ACE8』発売までの間、何もシリーズに展開がなかったというわけではありませんでした。
シリーズ史上最大級に長く濃密で全てを語り切ったストーリー
本作の物語は、ソトア共和国が海を隔てたユージア大陸へ、陸上戦艦や衛星兵器を用いて侵略を開始するところから始まります。
凄惨な侵略戦争が始まったなかで、プレイヤーは斃されてしまったジャン・コープ中佐こと「シーヴの翼」に取って代わり、この戦争を終結に導く象徴として戦い抜くのです。


本作のストーリーは、ブランドディレクター・河野一聡氏より、シリーズ最大規模の内容となることが語られていました。本作の収録ミッション数は20以上存在し、過去作『エースコンバット5』に匹敵するほどです。1周クリアするまでに、ミッションとシネマシーンを含めて20時間以上は必要でした。
さらに、1ミッションのプレイ時間は短くて10分ぐらいのものもある一方で、最大で35分以上かかったミッションもあり、これまでにない大ボリュームになっています。
加えて、登場人物達の心の内面を描くシネマシーン挿入数も多く、物語体験として1プレイの密度は過去作のどれとも比較にならないほどです。これだけシネマシーンが多いにもかかわらず、その全てが本筋に関係しており、無駄なものは一つもありません。
物語では、空母エンデュランスと共に、陸上戦艦から逃げつつ孤軍奮闘しながら物資をかき集め、生き残った部隊をまとめながら首都シーヴ奪還を目指します。一度目の奪還作戦は失敗に終わってしまうものの、状況を改めた二度目の上陸作戦では成功。首都を奪還すると共に、後の作戦で陸上戦艦も1隻無力化します。しかし、ソトア軍によるユージア大陸の支配地域が広がっているために、戦争はまだ続きます。
もちろん、七転八倒しながら“シーヴの翼”が人々の希望となるように立ち回る物語が同時進行する一方で、これまでの『エースコンバット』とは異なるのが、首都奪還は確かに大きな転換点であるものの、全ての状況が好転しているわけでないということです。
過去作『エースコンバットZERO』では、状況が好転しベルカ本国への逆侵攻が始まることや、『エースコンバット6』ではグレースメリア奪還後に終戦ムードが漂うなどどこか楽観的でした。しかし、本作では“シーヴの翼”への懐疑もさることながら、この後もソトア軍による再侵攻を防ぐ作戦が繰り広げられるために、危険で厳しい任務が次々とやってきます。


そして本作が最終的に焦点を当てるのが、「侵略戦争を終わらせるには?」という問いです。数々の作戦を成功させてソトア軍の野望を挫くも、ソトア軍が戦意を喪失する様子が見られず、さらに戦いを広げるしかない……という諦めにも似た心境が描かれます。
危険な任務の連続からその道中で仲間を失い、その損失感は登場人物たちにも表れ、ミッションが進むごとに心身の疲労が伝わってくるほどです。


そんな本作のストーリーは、登場した全ての要素を余すことなく描き切るものでした。登場人物や敵勢力にしても、描写が足りないことはなく全ての物語がきちんと終わっています。
まさに、100%の力で走り抜けた内容と言えます。特に最後の語り方は、凄惨で辛く長い侵略戦争をプレイヤーが終わらせた後を語るに適切な内容であり、表現であると思えました。
現実の世界情勢を思えば、なかなか答えづらい厳しくてシリアスな問いではありますが、ミリタリージャンルを扱うゲームとして逃げずに考え、ちゃんと答えを出したことは称賛に値します。だからこそ、こうした表現がなぜ今までできなかったのか、とも思わされます。それは、2001年の『エースコンバット04 シャッタードスカイ』から『ACE8』に至るまでの約25年の歳月がかかるほどの難問であったからと言えるでしょう。

そうした重いテーマを背負った物語を支えるのが、個性豊かなキャラクターたちです。プレイヤーが所属するジョーカー隊には、チームのまとめ役であるバクスター、義勇兵として枠に縛られないターシャ、そしてチームを裏で支えるコスターという3人がいます。
バクスターやコスターは、過去の『エースコンバット』に登場したキャラクターを現代風に表現したような存在ですが、特にターシャは、これまでのキャラクターとは異なり、義勇兵として参戦している一般市民です。そのためか、戦場で起こる様々な出来事に対して的確な指摘をする役として立ち回ります。
敵味方を問わず、倫理的に破綻したり破壊的な行動を取ったりする者に対して、歯に衣着せぬ物言いをするキャラクターです。そのため、彼女がいなければ、厳しい戦いのなかで正常な感覚が失われてしまうような存在でした。20代ぐらいの勢いに乗った若者像として、声優の演技も含めて現実に存在していそうな人物として描かれています。
特にシネマシーンに登場する人物たちの演技もそれぞれ素晴らしく、迫真の域に到達しており、まさにドラマチックフライトシューティングというジャンル名に恥じないものでした。


また、これまでの幕間の映像と異なり、シネマシーンでは主人公レックスとその周辺の人物たちが描かれます。視点がソトア軍やFCU市民などに移らず、最後まで空母エンデュランスの乗組員達を映しています。こういった、主人公の周りのみに焦点を当てているという点は、『エースコンバット5』寄りの表現です。
また、シネマシーンではプレイヤー自身が周囲の景色を見渡せるため、意外なところから多くの情報を得られる場面もあります。他にも、カメラを見渡すことでインタラクトボタンが表示される瞬間も多く、プレイヤーの行動にゆだねられる場面も多々あります。
ここで特に言及しておきたいのが主人公・レックスに憑依してしまったジャン・コープ中佐の存在です。このコープ中佐は、プレイヤーに登場人物達の会話に対して的確なツッコミや状況説明をする存在であり、キャンペーンモードにおいて敵と味方の説明を行う重要なポジションです。
しかし、あくまで主人公を補佐する存在に留まっており、喋らない主人公の代わりとして機能しているわけではありません。なお、本作でもシリーズ恒例の喋らない主人公という形式が採用されています。

「プレイヤーが自機を操作する」以外にとれる主人公のコミュニケーションは、YES/NOの選択肢と、シネマシーン中に視線を向けて時折表れるボタンを押すか否かを選ぶだけです。つまり、本作のレックスは喋らないだけでなく、プレイヤーが意思を示せる場面もかなり限定されています。
そうした行動しかとれないため、厳しい戦闘のなかターシャやコスターが闘志を挫かれてしまい、心を奮い立たせることを託されるシーンでは、YES/NOの選択後、特に何の会話もないまま瞬く間に立ち直ってしまう展開には、違和感があると言わざるを得ません。

この表現は、これまでコミュニティの間で様々な形で議論されてきた、喋らない主人公に限界を感じてしまう瞬間でもありました。「ここまで個性を付けるのなら、いっそのこと喋った方が良い」というものです。『エースコンバット アサルトホライゾン』主人公のビショップ中佐のように、どこかでもう一度喋る主人公に挑む必要があると思わせられます。
しかしながら、そうした会話シーンはゲーム全体の中で1~2シーンぐらいでしかなく、全体的な完成度の高さを思えば些細な問題ですが、ここでかつての問題が再び顕在化してしまったことは見逃すことができませんでした。
こうした、かつての問題がわずかに見え隠れする一方で、本作が描いたストーリーそのものは、現代の厳しい世界情勢から逃げず逸らさず、正面から向き合った内容でした。難しいテーマに挑戦しただけでなく、それを最後まで描き切り、物語として完結させた素晴らしいものであると、素直に語れることが嬉しく思います。
ゲームプレイの手応え










