松下恵、山下真司、筧利夫など豪華キャスト出演&「対話システム」が凄い!スクウェアが出したPS1の名作実写サスペンスADV『アナザーマインド』の魅力を再考【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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松下恵、山下真司、筧利夫など豪華キャスト出演&「対話システム」が凄い!スクウェアが出したPS1の名作実写サスペンスADV『アナザーマインド』の魅力を再考【特集】

90年代の雰囲気もたっぷり浴びれる異色の実写アドベンチャーの真髄に迫る!

連載・特集 特集
松下恵、山下真司、筧利夫など豪華キャスト出演&「対話システム」が凄い!スクウェアが出したPS1の名作実写サスペンスADV『アナザーマインド』の魅力を再考【特集】
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1998年11月12日、スクウェア(現スクウェア・エニックス)からPS1向けに発売された『アナザーマインド』は、実写映像とゲームシステムを高度に融合させた「インタラクティブ・アドベンチャーゲーム」です。

当時のゲーム業界は、3Dポリゴン技術の隆盛やCD-ROMの大容量化に伴い、実写映像を取り入れた作品(FMVゲーム)が多数登場した時期でした。

主人公・葉山 瞳(演:松下 恵さん)

その中で本作は、主人公である女子高生・葉山瞳の「頭の中に宿った意識(マインド)」としてプレイヤーが介入するという独自の主観構造を構築しました。受動的になりがちだった実写ゲームの枠組みを根本から変え、インタラクティブ性とサスペンス劇の没入感を両立させた名作ADVとして知られています。

ということで本稿では、「ダイアローグ・システム」によるシステム面の先見性と、実力派キャスト陣による実写ドラマとしての完成度という2つの軸を見ていきながら、発売から長年が経過した現在においても色褪せない本作の魅力を再発見したいと思います。

◆「女子高生」の意識と同化する!?「ダイアローグ・システム」の先進性

1990年代中盤における実写アドベンチャーゲームの多くは、ファンタズム(Phantasmagoria)のように、あらかじめ撮影された映像再生の合間に単純な選択肢を挟む形式が主流でした。

この手法は映像の美しさを享受できる反面、プレイヤーの操作と映像の展開が分離しやすく、テンポの悪さやゲームとしての介入感の薄さが課題として指摘されることが少なくありませんでした。しかし、『アナザーマインド』はこの課題に対し、ゲーム構造とシナリオ設計の根本的な再構築によって解決策を見出しました。

その核心をなすのが「ダイアローグ・システム」です。本作においてプレイヤーは、画面内に直接登場する人物ではなく、事故をきっかけに高校生・葉山瞳の意識内に紛れ込んだ「名前も姿もない精神体(マインド)」として存在します。このプレイヤーの設定自体が、ゲームシステムと物語のインターフェースとして機能しています。

複数の単語を組み合わせて「対話」できる

一般的なアドベンチャーゲームでは、選択肢は主人公自身の行動や発言を直接決定するものです。しかし『アナザーマインド』における選択肢は、瞳という他者の心に対する「問いかけ」や「示唆」です。画面上で展開する会話や状況を観察しながら、画面下部に提示されるキーワードやフレーズを選択して瞳に語りかけ、彼女の思考や行動を特定の方向へ導いていくのです

時には授業の答えを教えて助けてあげることも

このシステムがもたらす体験には、画期的な二つの側面があります。一つは、プレイヤーが送った言葉に対して、頭の中に宿ったもう一つの意識として瞳がリアルタイムに声や表情で返答・行動すること。

プレイヤーが適切な助言や指摘を行わなければ、瞳は動揺し、誤った判断を下したり、事件の真相から遠ざかる行動を取ってしまったりします。つまり、プレイヤーは「他人の運命を変える力」を持っており、それが緊張感を持って映像と対峙することになります。

さらに、選択肢の構築ロジックも精巧にデザインされています。レイヤーが選んだ言葉に対し、瞳は必ずしも指示通りに動くわけではありません。彼女自身の性格やその場の感情状態、相手との関係性によって、言葉の受け止め方が変化します。信頼関係が十分に築かれていない段階で突飛な指示を出せば、瞳から疑念を抱かれ、対話自体が破綻することもあります。

この「人間らしい不確実性」を会話選択システムに取り入れたことで、従来のフラグ回収型アドベンチャーとは一線を画す、生々しい人間模様の操作感を創出することに成功しているのです。

二つ目は、プレイヤーがゲーム中のセリフや状況に対してリアルタイムにツッコミを入れ、瞳のリアクションを楽しめるコミカルな要素のことです。

ゲーム本編のシリアスなサスペンスとは裏腹に、プレイヤーの言葉選び次第で漫才のような掛け合いができることも本作の魅力だと思います。

『ファイナルファンタジー』シリーズをはじめ、3Dグラフィックスの最先端を走っていた当時のスクウェアが、テキストと実写映像の融合という実験的手法を使い、これほど先進的なシステムを構築したことは、当時のチャレンジ精神の高さの表れではないでしょうか。

受動的な映像鑑賞になりがちだった実写アドベンチャーというジャンルに、明確なプレイフィールと緊張感をもたらした先見性は、ゲーム史において高く評価されるべきポイントです。

◆90年代末の熱量を封じ込めた「実写サスペンス」としてのクオリティ

鳴海 健一(演:山下真司)

本作のもう一つの大きな魅力は、実写映像作品としての完成度と、そこに漂う1990年代末の時代感覚です

本作が発売された1998年前後は、日本のテレビドラマ界において「金田一少年の事件簿」や「NIGHT HEAD」といった、サイコサスペンスやミステリー、SF的要素を掛け合わせたドラマ作品が大きなムードを形成していた時期でした。本作もまた、そうした時代の空気感を色濃く反映した映像的な美学と配役によって構成されています。

主人公の葉山瞳を演じたのは、当時フレッシュな演技で注目を集めていた松下恵さんです。記憶の混乱や周囲で起きる不可解な事件に翻弄されながらも、頭の中の「あなた(プレイヤー)」と共に真相へ立ち向かっていく等身大の高校生を、豊かな表情とリアリティのある演技で瞳役を演じていました

特に、プレイヤーの発言に対するリアクション映像のパターンは多岐にわたり、成功時の安堵した表情や、解釈の齟齬が生じた際の困惑した表情など、細やかな演技がプレイヤーとの心理的距離を縮める役割を果たしています。

松下恵さん

また、脇を固めるキャスト陣には、当時のテレビドラマや舞台で存在感を示していた実力派・個性派俳優が多数起用されているのも魅力的でした

筧利夫氏、吹越満氏、伊藤かずえ氏、山下真司氏といった俳優陣の起用により、単なるゲームの素材としての映像にとどまらない、重厚なサスペンスドラマとしての劇中劇が成立しているのが凄い。実力派キャストによる安定した演技は、実写ゲームにありがちな不自然な大げささを抑え、物語のサスペンス性を高める要因でもありました。

高知 東生さん(演:明円 輝夫)

さらに注目したいのは、作品の端々から醸し出される「90年代末期」の時代的な雰囲気です。

たとえば、当時のアナログ質感を含んだ映像表現、作中に登場するポケベルや公衆電話、当時の街並みやファッションは、現代のプレイヤーにとって、いわゆる「平成レトロ」という強力なノスタルジーとして機能しています。しかし、単なる懐古趣味にとどまらず、画角の切り替えや暗転のタイミング、カット割りなど、ゲーム画面としてプレイヤーの視界を誘導するための演出が、高い映像技術によって再現されているのです。

『アナザーマインド』は、実写というメディアが持つ「情報の密度の高さ」を、ゲームの探偵的要素や心理戦の材料として最大限に活用した作品であり、90年代後半の日本のポップカルチャーとゲーム技術が交差した地点に存在する、大変貴重な映像記録でもあると言っても良いでしょう。

◆システムとドラマの昇華—インタラクティブ表現の先駆者として

こうして『アナザーマインド』という作品を振り返る時、システム面の革新性と実写ドラマとしてのクオリティは、決して独立した二つの要素ではなく、相互に深く結びついていたことが理解できます

本作の神髄は、「実写ドラマを観る体験」と「ゲームをプレイする体験」の境界線を、シナリオとシステムの両面から消し去ろうとした点にあります。プレイヤーが画面上の実写キャストと対話しているかのような感覚を覚えるのは、単に映像が綺麗だからでも、キャストの演技が優れているからでもありません。

プレイヤー自身が「主人公の頭の中に潜む意識」というフィクション上の役割を与えられ、その役割に基づいてダイアローグというシステムを介してリアルタイムに介入するという構造が完結しているからです。

ドラマのキャストたちの真に迫った演技と緊迫したストーリー展開があるからこそ、プレイヤーは一瞬の選択に真剣になり、選択の失敗によって訪れるバッドエンドやストーリーの分岐に強い感情を揺さぶられます。
逆に、ダイアローグ・システムの緊張感のある介入が存在するからこそ、画面の中の実写ドラマは他人事の映像ではなく、「自分が介入し、救わなければならない現実」としての説得力を獲得していたんだと思われます。

発売から長い年月が経過した現在、実写をベースにしたゲーム表現や、選択肢によってリアルタイムに展開が変化するインタラクティブ・ドラマの形式は、海外のインディーゲームや大型タイトルを中心に再評価が進んでいます。テキスト選択型の対話インターフェースや、ナラティブ(物語体験)の構造設計という観点から見ても、『アナザーマインド』という作品が、1998年の時点で到達していたレベルは極めて高かったのは間違いありません

現代において本作をオリジナル環境(プレステ実機や互換機)でプレイするハードルはやや高くなっていますが、その表現手法が提示した価値は全く失われていません。

『アナザーマインド』は、当時のスクウェアが持っていた探求心と、90年代末の熱気あふれる映像文化が融合して生まれた、アドベンチャーゲーム史に刻まれるべき孤高の名作です。システムとドラマが見事に結実したそのプレイ体験は、今なおインタラクティブ表現の可能性を提示し続けています。

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ライター:DOOMKID,編集:みお


ライター/心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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