2026年8月26日(水)~30日(日)にかけて、ドイツ・ケルンで世界最大のゲームイベント「gamescom」が開催されました。
会場では、最近映画が公開されて話題となった名作SF小説「プロジェクト・ヘイル・メアリー」のVRゲーム『Project Hail Mary: Journey Among the Stars』のプレイアブルデモを体験できました。
開発を手がけるMaze Theoryは、『Doctor Who: The Edge of Time』『Peaky Blinders: The King's Ransom』『Thief VR』など、著名IPをMR/VR体験に落とし込んできたスタジオ。
本作は、原作者であるアンディ・ウィアー本人が新たに書き下ろした、書籍・映画いずれにも存在しない「知られざる章」が描かれるのが大きな特徴。プレイヤーは主人公ライランド・グレースとなり、相棒の異星知性体ロッキーとともに、ヘイル・メアリー号の危機を乗り越えていくことになります。
そんな注目のVRゲーム『Project Hail Mary: Journey Among the Stars』のプレイレポートとインタビューをお届けします。
『Project Hail Mary: Journey Among the Stars』は自室がヘイル・メアリー号のコックピットへと姿を変える、MR(プレイヤーの実空間を活用する形式)ならではの没入体験が特徴のゲームとなっています。
無重力下でのオブジェクト操作や、ジェスチャーでのロッキーとのコミュニケーションを通じて、船内システムの故障を診断・修理していく、パズル要素の強い体験が提供されるとのこと。
さて、本作は主人公であるライランド・グレースとなってコックピットに登場するところからゲームを開始。映画で観たあの光景が広がっているのはなかなかに壮観です。コックピットは無重力空間なので、空中にはキャップやペン、マグカップといったアイテムたちが漂っています。

プレイヤーはそれらに手を近づければ掴むことができ、さらにキャップであれば被ることだってできます。さらに船内になる様々なボタンや操縦桿は実態にインタラクトすることが可能。操縦桿を握ってレバーを引くとヘイル・メアリー号がぐぐぐーっと宇宙空間を進んでくれました。
さて、コックピットで動作確認をしていたら、みんな大好きなマスコット、ロッキーが登場。機械音声っぽい英語で気さくに話しかけてくれます。そして、あの感動のファーストコンタクトシーンでも行ったように、動きを真似するようなことも今後はしてくれるそうです。

そんなロッキーとわいわい談笑してたら、突然窓が損傷。これから過酷なミッションに挑むぞ!と言ったところでデモは終了。短いデモでしたが、コックピットの作り込みを近づいて凝視したり、コミカルなロッキーとコミュニケーションをとることができ非常にワクワクした体験になりました。
言語に関して、今回英語でプレイしたのですが、仮に英語がわからない人であってもプレイはようになるように、かなりナビゲーションが丁寧な印象を受けました。
さて、これからはインタビューの様子をお届けします。
──本作は原作にも映画にも存在しない「知られざる章」として、アンディ・ウィアー氏が新たに物語を書き下ろしています。開発チームとして、氏に脚本を依頼するにあたって、どのような点を最も重視しましたか?
Maze Theory:開発の最初から最後まで、私たちが最も重視したのは「プレイヤーとロッキーの関係性」です。プレイヤーは主人公であるライランド・グレースの役割を担います。そして、彼がロッキーと協力することを学び、ロッキーと共に非常に困難な問題を解決していくことがテーマです。
私たちは「シングルプレイヤーCo-op」というアイデアについてよく話し合いました。これはVR/MR(複合現実)ゲームなので、プレイヤーはひとりでヘッドセットを被りますが、ロッキーがすぐそばにいるため孤独を感じることはありません。彼は仲間であり、ともにミッションをこなす友人です。これが制作全体を通して最も重要な指針でした。
また、アンディ・ウィアー氏と一緒に仕事ができたことは本当に幸運でした。彼は「物語をどの時点に配置すべきか」「どのような語られざる物語を探索すべきか」といった方向性を私たちに示してくれました。

──原作の魅力は「ハードSF的な問題解決」と「グレースとロッキーの関係性」の両立にありますよね。この2つの要素を、MR特有のインタラクションでどう表現しようとしましたか?
Maze Theory:
私たちにとって大きな要素の一つは、このゲームで「ハンドトラッキング」を使用していることです。これにより、プレイヤーは完全に世界に没入できます。手を伸ばして何かを掴むと、期待通りの反応が返ってきます。
ロッキーと「フィストバンプ」する時も、コントローラーやボタンではなく、自分自身の手を使います。ロッキーがあなたに触れようと手を伸ばしてくる時、これほど感情的なつながりを伝えられる方法は他にありません。
そして、「ハードSF」と「関係性の構築」の対比についてですが、それこそがアンディ・ウィアーの小説や世界観を魅力的にしている要素そのものです。だからこそ私たちは、プレイヤーがワクワクするような、地に足の着いた科学的な問題解決を用意しつつ、それを「グレースとロッキーが協力して解決する」という形で体験できるよう徹底的にこだわりました。
──自室がヘイル・メアリー号のコックピットに変わるという体験は、通常のVRヘッドセットによる没入とは異なる魅力があると思います。MRを選んだ理由を教えてください。
Maze Theory:
この体験の核となるのはロッキーの存在だからです。MRは彼の「実在感」を際立たせてくれます。彼が本当に自分の空間の一部であるかのように感じさせてくれるんです。
そして私たちは、新しくて革新的なことに挑戦したかったんです。映画が常に新しい映像表現やクリエイティビティを模索しているように、私たちもこのMR体験で同じことをしたかった。私はこれを「現代の舞台演劇」に例えています。必要な時に必要な大道具がセットに運ばれてくるような感覚です。ロッキーと特定のアイテムを修理することに集中している時は、船のその部分だけが現れ、2人で協力して問題を直す、といった具合です。
MR/VRの領域においては「アクセシビリティ」も非常に重要なポイントだと思っています。MRの性質上、周囲の現実空間が見えているため、VR酔いの問題がほぼ解消されます。そのため、誰でも簡単にゲームの世界に飛び込めるんです。
誰の頭に被せてもすぐに遊べますし、特にコントローラーではなくハンドトラッキングと組み合わせることでその効果は絶大です。今週ずっとここでデモを行っていますが、皆あっという間に操作を覚え、スムーズにゲームに入り込んでいます。
私たちが一番体験してほしい「ロッキーと協力し、物語を見つけ、空間を遊び回る」という部分に、すぐさま到達できているんです。

──実写映画版の公開直後というタイミングでの発表でしたが、映画を観た人・原作を読んだ人・どちらも未経験の人、それぞれにどう本作を届けたいと考えていますか?
Maze Theory:
私たちはコミュニティとの対話を非常に大切にしています。私たち自身もこのIPの熱狂的なファンですからね。SNSを見たり様々なグループをチェックしたりして、コミュニティとコミュニケーションを取っています。映画の公開に合わせて、『プロジェクト・ヘイルメアリー』のファングループがたくさん形成されているのを目にしました。
そういったコミュニティとの対話を続け、彼らにアピールしていきたいと思っています。私たちが「語られざるチャプター」を見つけ出したかったのは、まさにファンの皆さんに新しい何かを届けたかったからです。
私自身もずっと前からアンディ・ウィアーの大ファンです。「アンディ・ウィアーの物語」を構成する要素が何なのか、私たちは深く理解し、愛しています。それは地に足の着いた科学的根拠であり、誰にも解決できそうにない絶望的な状況であり、そして人々が協力し合い、思いやりを持ってその困難を乗り越えようとする面白いアプローチです。

そしてもう一つ、私たちが提供するのは「圧倒的な本物感」です。私たちはAmazon MGMと密接に連携し、映画で使われたアセットを入手しました。セットのスキャンデータやロッキーのモデルなどです。さらに、ロッキーの声を担当したジェームズ・オルティス氏にも協力してもらい、ゲームのために新しいセリフを収録しました。
単にセリフを録音するだけでなく、セッションの中で彼は「ロッキーならこの状況にどうアプローチするか」「こんな時どう感じるか」といったことを教えてくれました。彼のおかげで、ロッキーというキャラクターにさらなる生命が吹き込まれたんです。
これこそが、人々がこの世界に足を踏み入れた時に得られる最大の体験だと思います。映画の中にいるような、見覚えのあるセットにいるような感覚を味わいながら、ロッキーと触れ合い、この全く新しい語られざる物語を体験することができるんです。
『Project Hail Mary: Journey Among the Stars』は、Meta Quest 3/Quest Pro、Android XR、Pico向けに2026年内の発売を予定しています。
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