「PS1風」はもはや懐古ではない。ローポリ表現の先駆者『Back in 1995』開発者が語る、10年で変わったゲーム文化とこれからの可能性【インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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「PS1風」はもはや懐古ではない。ローポリ表現の先駆者『Back in 1995』開発者が語る、10年で変わったゲーム文化とこれからの可能性【インタビュー】

「PS1風だから面白い」時代は終わった――。

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「PS1風」はもはや懐古ではない。ローポリ表現の先駆者『Back in 1995』開発者が語る、10年で変わったゲーム文化とこれからの可能性【インタビュー】
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ポリゴンはカクつき、テクスチャは粗く、画面にはジャギーが走る――。かつてはハードウェア性能の制約から生まれた初代PlayStation時代のレトロな3Dグラフィックが、いまやひとつの「表現」として世界中のインディーゲーム開発者から愛されています。

そんな現在の「PS1風」または「PS1-ish」と呼ばれる潮流を語るうえで、決して外すことのできない国産タイトルが『Back in 1995』です。

2016年にSteamにてリリースされた本作は、90年代中盤の3Dゲームを思わせるローポリゴン、擬似低解像度のテクスチャ、CRTモニター風の画面、固定カメラ、いわゆるラジコン操作などを意図的に取り入れた作品です。

現在では当たり前の表現になった 「PS1風」の美学を、まだそれが一般的ではなかった時代から追求していました。そして2026年、『Back in 1995』は発売から10周年を迎えました。

そしてこの10年間で、PS1風ゲームを取り巻く状況は劇的に変化しています。ホラーを中心に膨大な作品が登場し、『Paratopic』、『A Short Hike』、『Crow Country』など、それぞれ異なる方向からローファイな3D表現の可能性を押し広げるタイトルも現れました。

『Crow Country』より

では、その黎明期からPS1風表現を追い続けてきた『Back in 1995』の開発者である一條貴彰氏(Throw the warped code out)には、現在の状況はどのように見えているのでしょうか。

「PS1風ゲーム」はいかにして、ただのノスタルジーから「ひとつの表現」へと変わっていったのか。そして、この先には何が待っているのか。

今回、さまざま角度から一條貴彰氏にじっくりとお話を伺う機会を得たので、本稿ではその貴重なインタビューをお届けします。

◆営業マンからゲーム開発者へ―『Back in 1995』一條貴彰氏の原点

ーー今日はよろしくお願いします。まずは改めて、一條さんがゲーム開発者になるまでの経歴から教えてください。

一條貴彰氏(以下、一條氏):もともと僕はゲームプログラマーではなくて、ゲーム向けのツールを扱う会社の営業職だったんです。

2010年にCRI・ミドルウェアへ入社して、営業をしていました。ゲーム制作には学生時代にチャレンジしていたんですが、挫折してしまったので「ゲーム自体を作るのは難しいかも」と思っていたんですね。

それなら考え方を変えて、ゲーム向けの素晴らしいツールを作っている会社で営業として働くことで、間接的にゲーム産業を盛り上げる仕事ができないか、と考えたんです。

ーーそこから、実際にゲームを「作る側」へ移っていったきっかけは何だったのでしょう。

一條氏:2013年頃にUnityが日本でも広がってきて、CRIのインディーゲーム開発者向けサウンドミドルウェア「ADX LE」の立ち上げをしたときに、あらためてUnityに触れたんです。

そのときに、「これならもう一回、自分でもゲームを作れるかもしれない」と思いました。

在職中に小さなゲームをいろいろ作るようになって、それがありがたいことに軌道に乗り始めたので、会社を辞めて独立し、ゲームを作ってリリースする活動へ移っていったという感じですね。

◆10年前には存在しなかった「PS1風」は、いまやひとつの“ジャンル”になった

ーー『Back in 1995』が発売された2016年から10年が経ちました。当時と現在を比べて、PS1風ゲームを取り巻く環境はどのように変わったと感じますか?

一條氏:いまはもう、ひとつの文化というか、表現のひとつになったと思っています。

SteamなどでPS1-ishと呼べる作品がたくさんリリースされるようになりました。CRITICAL REFLEXのように、こうした要素を持つゲームを多数手がけるパブリッシャーも現れました。

インディーゲーム開発者が「俺はこれが好きだぜ、これを表現するぜ」と選択する、ひとつのジャンルになったんじゃないかと。

ーーでは、「PS1風である」ということ自体が作品のセールスポイントになる時代ではなくなった?

一條氏:「PS1風のノスタルジーです」というだけで面白いと言ってもらえる時期は、とっくに過ぎていると思います。

PS1風のビジュアルテイストが美しいとか、PS1風のシステム系でサバイバルホラーです、といったものが刺さっていたのは2020年代初頭ぐらいまでだったと思います。ここ数年は、それだけだとユーザーは面白がってくれないかなと。

「PS1風でサバイバルホラーをやりたいなら『Crow Country』をやればいいじゃん」となってしまう。もうすでに素晴らしい作品があるわけです。

だからこそ現在は、それとは違う切り口が求められていると思います。これはある意味で、「PS1風」という表現が成熟した証拠なのかもしれません。

一條氏:ピクセルアートのジャンルでは、かつては「美麗ドット絵であること」自体で強さがあった時代から、現在ではドット絵+ローグライク、ドット絵+パリィRPG、ドット絵+リミナルホラー……といった具合に、ビジュアルスタイルとゲームシステムが紙合わさった作品がたくさんありますよね。

ローポリ・ローレゾジャンルがドット絵と同じような進化を遂げているということ自体が、ひとつのジャンルになっている証拠だと思うんです。

とはいえ、ピクセルアートでも「超絶ドット絵です」という強み一点突破のゲームは素晴らしい作品が出続けているじゃないですか。だからPS1-ishも、こだわり抜いたことが強みである作品も出てくると思いますね。 最近GodotエンジンでPS1風の描画を再現する「godot-psxlike」が公開されたのですが、内部計算をトレースする形で表現していてすごくて…(あまりにも細かい話のため、省略)

そして現在のPS1-ishシーンを考えるうえで、非常に興味深い現象があります。それは、初代PlayStationの時代をリアルタイムで体験していない若いクリエイターまでもが、この表現を選び始めていることです。

◆PS1を知らない世代が、なぜ「PS1風」を作るのか?

ーー10代や20代など、初代PlayStationをリアルタイムでは知らない若い世代がPS1風のゲームを作ることについて、どう考えていますか?

一條氏: 「表現」を好きになるって、理屈じゃないところがあると思うんですよ。

ゲームも何十年という歴史がつながっていて、しかもインターネットでは古いものと新しいものが同列に出てくる。そういう時代の中で、「俺、これ好きだわ」となることに、正直あまり理屈はないと思います。

一條氏:たとえば音楽ではすごく顕著ですよね。昔の音楽ジャンルとの年代の壁が溶けていて、いま20代の人がかなりしっかりした80年代式ロックをやっていたりする。「生まれる時代を間違えたわ」みたいな(笑)。

一條氏がいまイチオシだというReeve Stimpson

そこに特別な理屈があって好きになっているわけではないと思うんです。つまり、若いクリエイターにとってのPS1風は、もはや「懐古」ですらないんです。

ドット絵、浮世絵、モノクロ写真、アナログシンセサイザーなどと同じように 、単純に「この見た目がカッコいいとか、可愛いくて好きだから使う」ことが理由なのかな。そう考えると、PS1-ishが10年を超えて生き残った理由も見えてくるような気がします。

ーー『Back in 1995』は現在ではPS1風ゲームの先駆的作品として知られていますが、その後のクリエイターへの影響についてはどう見ていますか?

一條氏:確かに僕が最初ではあったけど、それだけでこの文化にものすごく寄与したかというと、そうでもないと思うんですよね。いや、意外と知られていないんですよ(笑)。

確かに僕が最初で、かなり喜んでくれたり覚えていてくれているファンや開発者さんは多くいらっしゃるんですけど、『Back in 1995』がこの文化の発展にものすごく寄与したかというと、そうでもないと思うんですよね。広く海外のインディーゲーム開発者に に衝撃を与えた作品として大きかったのは『Paratopic』だと思います。それから『A Short Hike』ですよね。

『Paratopic』

そのあたりの作品が出てきて、さらにPS1風をテーマにしたゲームジャムやホラーゲームのバンドルなどがあって、2020年頃からワッと広がっていった印象があります。

◆今最も注目すべき「PS1-ishゲーム」

ーー近年の作品で、特に印象に残っている、または期待しているPS1-ishタイトルはありますか?

一條氏:個人的にすごく嬉しかったのは『.45 Parabellum Bloodhound(パラベラム ブラッドハウンド)』ですね。人づてに聞いた話では、おそらく『Back in 1995』から影響を受けているみたいなんですよ。

『.45 パラベラム ブラッドハウンド』

かなり前にSukeban Gamesのチームが来日したとき、吉祥寺の小さいイベントで少しお話したことがあるんですよ。 そのときに「こういうゲームを作っていて」と話をしたことがあって。そうしたクリエイターとの出会いが、数年後に別の作品へつながっていく、みたいな循環がすごく良いことだと思ってます。

ーー日本の作品で注目しているものはありますか。

一條氏: 『Nightmare Operator』ですかね。荒廃した東京で妖怪を狩っていくっていうTPSホラーですけど。これは厳密にいうと「PS1風」ではないんですけど、広義のレトロポリゴンとしてめちゃくちゃグラフィックが良いんですよ。

『NIGHTMARE OPEATOR』

あとは、まだ発売してないタイトルなんですが、『Invisum Piscium 嫌魚(インヴィスム・ピシウム けんぎょ)』ですかね。とても可愛いし、カラーグレーディングも素敵ですよね。

『Invisum Piscium 嫌魚』

(編注)本記事の編集はTGS期間中に行われましたが、一條氏は「今年のTGSではこれがよかったです!」と、ベルトアクションとレースゲームが融合したような『Project Gears』を推していました。

◆「次に来る」未開拓ジャンルは何か

ーーホラー以外で、これからPS1-ishが広がりそうなジャンルはありますか?

一條氏:RPGはある程度出てくるんじゃないかなと。最近、HD-2DのRPGがたくさん出てきているじゃないですか。それがある程度増えてきたので、次に個人的に「あるだろうな」と思っているのが、『ベイグラントストーリー』的な、超こだわったPS1-ishのRPGですね。

『ベイグラントストーリー』のグラフィックは、初代PS後期を代表する最高峰のひとつだと思っているので。

一條氏:もう一つ、あったらいいなと思っているのは格ゲーですね。まだあまりないので、ある意味ブルーオーシャンだと思うんです。僕自身は格ゲーが得意ではないので(笑)。誰かがやり始めるなら技術協力したいなと思っています。

ホラージャンルから始まったPS1-ishが、RPG、格闘ゲーム、アクションなどへ拡張されていって、もしそれが実現すれば、「PS1風ゲーム」という言葉や境界線そのものが、さらに意味を失っていくのかもしれませんが。

◆「実機至上主義ではない」“本物のPS1らしさ”とは何なのか

(※筆者注)PS1-ish風のゲームが増えてくると、当然ながら「これは本当にPS1風なのか?」という議論も生まれます。ポリゴン数は正しいのか。解像度は当時の仕様に沿っているのか。テクスチャの歪みは過剰ではないのか。

しかし、一條氏はそうした“純粋主義”とは距離を置いています。PS1の実機仕様を完全再現することだけがPS1-ishなのではない。重要なのは、その時代の表現から何を受け取り、それを自分の作品にどう落とし込むかということです。


ーー「流行っているから、とりあえず低解像度にしてPS1風と名乗る」という作品が出てくることについてはどう思いますか?

一條氏:まずクリエイターを信じたいですね。

もちろん、「流行っているからPS1風にする」という人もいるかもしれない。PS1風はビジュアルリソースを少なくできる側面もあるので、 単純に低解像度にして「PS1-ishです」という作品も、なくはないと思います。

でも僕も原理主義者ではないので。僕から見て「ちょっと違うかな」と思うPS1-ishがあったとしても、それが別のプレイヤーに刺さるなら、それはそれでいいんじゃないですかね。

◆PS1-ishの今後と展望、次世代のクリエイターに伝えたいこと

ーー今後「PS1-ish」というジャンルは、どんな展開や未来になると思いますか。

一條氏:『Vampire Survivors』が「ヴァンサバ」っていう新たなジャンルを作ったじゃないですか。

で、2026年5月くらいに、Steamタグに「バレットヘブン(Bullet Haven)」が追加されたんですよ。ヴァンサバライクゲームが大量に出てきたので。

他にも「デスクトップコンパニオン」とか「ランゲージラーニング」とか色々追加されてるんですよ。

だから、近い将来PS1-ish風のタイトルをまとめた「レトロポリゴン」ていうタグが登場してもおかしくないですよね。これだけ出てるわけだから、「もういいでしょ」って。希望としては追加されて欲しいです。

Steamフェスの一例

一條氏:それと、近年Xbox、PS5、もちろんSteamでもそうですけど、各プラットフォーム上でいろんな「フェス」ができてるんですよね。

なので、これまた「レトロポリゴンフェス」っていうのが必ず開催されると思ってます。

ちなみに、Steamフェスの年間スケジュールってだいたい決まってて、2026年でいうとプログラミングフェスだったり、オートバトルRPGフェスなんかが予定されてますけど、今時点でもう2027年まで全部埋まってる状態ですね。

ーーなるほど、そうなんですね。それにしてもニッチなジャンルと言いますか…。

一條氏:じゃあこれはちょっと予言というか、賭けにしますね。

2028年のSteamフェスのリストには、「レトロポリゴンフェス」と「PS1-ishフェス」が入っています!……という予想です(笑)

ーー(笑)それはめっちゃ楽しみですね。ちなみに、何賭けますか?

一條氏:賭けに負けたらこのジャンルの盛り上げがまだまだ足りないと見て、PS1風の新作ゲームを作ります!今はまったく違うジャンルのゲームを作っていますが、戻ります!

ーーこれからの「PS1-ish」に期待していることはありますか?今後さらに進化していくのでしょうか。

一條氏:まだ、いろいろと出てくる余地は十分あると思っています。

もしかしたら『Mouthwashing』がそうだったのかもしれないですけど、「ローポリのゲームといったらこれだよね」と、ほとんど誰でも知っているような作品が、これから出てくるかもしれない。

来年、再来年にガーンと出てくる可能性もあると思います。つまり、「初代PlayStation→PS1-ish」という直接的な継承ではなく、PS1→第一世代のPS1-ish→次世代のPS1-ishという文化の連鎖が始まるわけです。

一條氏:さっきも言いましたが、ピクセルアートや音楽、映画などでは当たり前に起きてきた現象です。かつて「性能不足の象徴」だった粗いポリゴンが、30年後の若者にとっては純粋に“カッコいい映像表現”になるわけです。

そう考えると、PS1-ishがたどった10年間というのは、単純に「懐古ブームが長続きした」という話じゃないと思います。ゲーム表現の歴史そのものが、世代を超えて再発見され始めた10年間だったのかなと。

ーー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

一條氏:この記事を読んでいるゲーム開発者さんで、「俺もPS1風やりたいぜ」という人がいたら、ぜひメールください(笑)。

Unityなら多少技術的なサポートもできますし、Unreal EngineやGodotでも、ある程度やり方を紹介できると思います。

コラボリリースみたいな話だってできるかもしれない。そもそも、そういうクリエイターさんを純粋に応援したいと思っているんです。
なので、ぜひそういう人がいたら私のXの方に連絡もらえると嬉しいですね。

ーー本日は長い時間ありがとうございました!



『Back in 1995』は現在、PC(Steam)PS4/Xbox One/ニンテンドースイッチ向けに配信中。9月15日~22日の期間限定でセール中です。ぜひこの機会に手に取ってみてはいかがでしょうか。

《ライター:DOOMKID,編集:みお》


ライター/心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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