サバイバルホラーはまだ進化できるのか?『The Sinking City 2』と『バイオ』『Dead Space』『SILENT HILL』を比較して見えた新たな可能性【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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サバイバルホラーはまだ進化できるのか?『The Sinking City 2』と『バイオ』『Dead Space』『SILENT HILL』を比較して見えた新たな可能性【特集】

前作から一転、ゲームシステムを根本から変えた『The Sinking City 2』は「サバイバルホラー」としてどれほどの完成度なのか、検証してみた。

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サバイバルホラーはまだ進化できるのか?『The Sinking City 2』と『バイオ』『Dead Space』『SILENT HILL』を比較して見えた新たな可能性【特集】
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近年、サバイバルホラーというジャンルが再び盛り上がりを見せています。

『バイオハザード RE:4』(2023)、『Dead Space』(2023)、『SILENT HILL 2』(2024)など、かつての名作が現代の技術によってリメイクされ、さらに『SILENT HILL f』をはじめとする新作も登場。長年培われてきたゲームシステムや恐怖演出は、現在も十分に通用することを証明しています。

『バイオハザードRE:4』

そんな中、2026年8月18日に発売されたのが、Frogwaresが手がけた『The Sinking City 2』です。

本作は、H・P・ラヴクラフトの世界観を下敷きとした三人称視点のサバイバルホラー。2019年発売の前作『The Sinking City』がオープンワールド型の探偵アドベンチャーだったのに対し、続編では探索、戦闘、資源管理を重視する方向へ大きく舵を切りました。

そのゲームデザインには、『バイオハザード 』をはじめとするジャンルの名作からの影響が色濃く表れています。しかし、本作は単に既存のサバイバルホラーを模倣した作品なのでしょうか。

実際には、前作からの調査システムや、ラヴクラフト作品ならではの異形の怪物、そして水没した都市アーカムの探索が組み合わさることで、本作独特の面白さも生まれています。

今回は、そんな『The Sinking City 2』がサバイバルホラーとして何を目指し、他作品との差別化をどのように図ったのか。その魅力と完成度を改めて考えてみたいと思います。

◆オープンワールドを捨てたことで生まれた、濃密な探索体験

本作の大きな変化のひとつは、前作の広大なオープンワールドを廃し、複数のエリアを順番に攻略する構成へ変更したことです。

舞台となる1920年代の「アーカム」は、超自然的な洪水によって大部分が水没した都市。主人公カルヴィン・ラファティは、昏睡状態に陥った恋人フェイを救うため、廃墟となった街を探索します。

序盤では小舟に乗って浸水した道路を移動し、水門を開くために周辺の建物を調べることになります。目的地に到着しても、すぐに先へ進めるわけではありません。鍵や仕掛けを探し、入り組んだ建物を探索しながら、少しずつ行動範囲を広げていきます。

この構造は『バイオハザード RE:2』の警察署などを連想させますが、面白いのは水没都市という舞台設定が探索の仕組みに直接関わっていることです。

本来は道路だった場所が水路へ変わり、通常の通行経路が使えなくなっているため、建物を経由した迂回や装置の操作が必要になります。さらに一度通った場所でも、新たな敵が現れたり、障害物によって経路が変わったりするため、帰り道まで気が抜けません。

前作のようなオープンワールド的な広さよりも、一つひとつの部屋に秘密や発見が用意され、「探索する密度」を重視していいるのが特徴。

この変更によって、探索する行為そのものがゲームの中心となり、「新しい道を見つける楽しさ」と「未知の場所へ踏み込む恐怖」が無理なく結びついているのです。

◆ヒントを繋ぎ謎を解き明かせ。個性的な「捜査」システム

本作が他のサバイバルホラー作品と差別化に成功している最大の要素が、独自の「調査」システムです。

前作『The Sinking City』では、『シャーロック・ホームズ』シリーズのように事件の証拠を集め、情報を整理し、真相を導き出すゲームシステムがゲームプレイの根幹を成していました。

『The Sinking City』

このように前作では「捜査すること」自体が物語を進めるための手段でしたが、本作の調査システムは基本的に任意となっています。

必ずしもすべての事件を解決する必要はなく、その代わり、寄り道によって有用なアイテムや新しい能力を獲得できる仕組みになっています。

例えば序盤の教会において、水門を開くという本来の目的とは別に、不審な手がかりを追うことができます。

つまり、調査を続けて成功すれば、インベントリの拡張や武器の強化、特殊能力の獲得にもつながるという感じで、任意の事件を解決しなくても、メインストーリーの進行やクリア自体には影響しないのです。

また、ゲーム中の資料から情報を集め、思考を整理する「マインドパレス」の仕組みも残されています。書類や周囲の状況から暗証番号を導き出すなど、伝統的なサバイバルホラーとは異なる謎解きが楽しめるわけです。

ここが実に面白い部分で、『バイオハザード』などではアイテムを探すこと自体が探索の目的になりますが、本作ではその過程に「事件を調べる」というもうひとつの楽しみが加わっています。

手がかりを集めれば、廃墟で何が起きたのかがわかる。そして事件を解決することで、次の探索も有利に進められる。真相を知ることが、そのまま生き残るための手段に直結するというシステム。

ラヴクラフト作品では、禁断の知識を求めた人間が破滅へ向かう物語が繰り返し描かれます。本作では、そうした「知識を求める行為」をサバイバルホラーの報酬システムと結びつけている独自の切り口があるのです。

◆怪物を倒しても安心できない!“死体”を利用する異形の敵たち

スリザー。死体に寄生する

戦闘においても、本作ならではの工夫と独特のメカニクスがあります。

『Dead Space』ではネクロモーフの四肢を切断する戦闘が特徴的でしたが、『The Sinking City 2』ではラヴクラフト的な怪物の生態が、敵との駆け引きに反映されています。

ゾンビに劣らずの怖さ

代表的なのが「スリザー」というワーム状の寄生生物で、アーカムの住人たちの死体に入り込み、その身体を操って襲ってきます。特徴的なのは、ヘッドショットで撃ち抜いても簡単に倒せるわけではないこと。

腫瘍を破壊しなければ完全に倒せない

寄生体が形成する腫瘍状の弱点を狙う必要があり、敵が動くたびにその位置を見極めなければなりません。さらに、宿主の身体を破壊しても寄生体が生き残り、別の死体へ移って再び襲いかかってくる場合があります。

そのため、敵を倒した後も油断できません。状況によっては踏みつけ攻撃で寄生体を処理する必要もあり、単純な銃撃だけでは安全を確保できないのです。

スティジアン

また、小型の「スティジアン・ハーヴェスター」は正面から戦うよりも奇襲を得意とし、攻撃を受けると逃げるように動きます。深追いすれば別の個体に囲まれる危険があるため、相手の動きに合わせた判断が求められます。

弾薬など資源管理は必須

弾薬を消費して確実に倒すのか、回避して先へ進むのか。回復アイテムと弾薬の作成に共通する資源を使う場面もあり、サバイバルホラーらしい、シビアな資源管理が重要になります。

もちろん、戦闘の操作感や敵の反応には粗さもあります。それでも、怪物の外見だけでなく、生態そのものを戦闘システムへ取り込んでいる点は、本作の大きな魅力でしょう。

◆水没都市、病院、魚市場――エリアごとに異なる“ラヴクラフト的恐怖”

世界観の面でも、本作は『SILENT HILL』や『バイオハザード』とは異なる方向性を持っています。

『SILENT HILL 2』が主人公の罪悪感や心理状態を街の異常な風景へ反映させていたのに対し、『The Sinking City 2』のアーカムは、人間とは異なる存在が都市を侵食している場所として描かれています。

水没した道路を小舟で進む序盤、怪奇的な医療設備が並ぶエイクリー記念病院、海の怪物が徘徊する魚市場など、訪れる場所によって恐怖の性質も変化してくのです。

不気味すぎる病院でのギミック

特に病院では、人間の顔を利用した奇妙な認証装置など、医学と怪異が混ざり合った仕掛けが登場。魚市場では、腐敗した巨大なクジラの死骸を動かすためにクレーンを操作するなど、ロケーションの特徴を利用した謎解きも用意されています。

加えて、そこにラヴクラフト作品との関連性が加わるのも魅力でしょう。

アーカムを象徴するミスカトニック大学、『インスマウスの影』に登場する「深きもの」、そして原典のさまざまな人物や地名を連想させる資料や看板など、街を調べることで作品世界への理解も深まります。

恐怖の対象が、主人公個人の内面に限られないところも特徴です。人間が築いた都市そのものが、理解不能な存在によって作り替えられている。その世界を探索する楽しさが、シリーズの調査要素とよく噛み合っています。

一方、水没した街を自由に探索できるのは主に序盤であり、後半は個別のステージを順番に攻略する構成になります。魅力的なアーカムをもっと歩き回りたかったという惜しさも残りますが、エリアごとに異なる怪奇的なアイデアを体験できる点は評価したいところです。

◆名作の模倣では終わらない“王道の”サバイバルホラー

とはいえ、『The Sinking City 2』がジャンルの名作を超える完成度に達しているかといえば、必ずしもそうではありません。

銃撃の手応えや戦闘全体の洗練度では『バイオハザード RE:4』、緻密な敵の反応や演出では『Dead Space』、物語と恐怖の結びつきでは『SILENT HILL 2』に及ばない部分が確かにあると感じます。

特に敵との強制戦闘やボス戦では、通常の探索で感じられる緊張感が薄れることもあります。調査システムも前作ほど奥深いものではなく、物語の終盤には展開の駆け足も感じられます。ここがとりわけ評価の分かれる部分かと思われます。

しかし本作の面白さというのは、個々の要素の完成度だけではなく、サバイバルホラーの基本的なゲームシステムに、自分たちの得意分野を組み込んだことだろうと思います。

廃墟を探索し、資料を読み、事件を調べ、謎を解く。その結果として物資や能力を獲得し、次の危険な場所へ進んでいく。

この一連の流れに、ラヴクラフト的な世界観と異形の怪物が組み合わさることで、『The Sinking City 2』ならではの遊びが成立しているのではないか。

もちろん、まだ改善の余地はあります。しかし、戦闘の巧みさや恐怖演出の派手さだけではなく、「未知の世界を調べ、その知識を使って生き延びる」という楽しさを重視したことには、大きな意味があるでしょう。

『The Sinking City 2』は、サバイバルホラーというジャンルの常識を根本から変えた作品ではありません。それでも、すでに確立されたゲームシステムに別のジャンルの面白さを取り込み、独自の魅力を生み出すことはできる。その可能性を示した作品として、十分に評価する価値があるのではないでしょうか。



『The Sinking City 2』は、PC(Steam, Epic Games Store, GOG.com)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中です。

《DOOMKID》



心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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