平成ゲームメモリアル第5回「2010年代の大変化って?ーSteam・インディーゲーム・基本無料」 2ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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平成ゲームメモリアル第5回「2010年代の大変化って?ーSteam・インディーゲーム・基本無料」

平成のビデオゲームを振り返る連載の第5回。いよいよ現代に近づいてきた今回は、ダウンロード販売プラットフォームの登場や、インディーゲームの台頭による個人作家の活躍、そして基本無料でゲームが楽しめるようになった時代を振り返ります。

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「インディーゲーム」の台頭



葛西祝かつてのダウンロード販売は、過去タイトルや小規模な新作を買えるものって印象でした。でも「あれ?このフィールドで何かすごいことが起きているのか?」って思うようになったタイトルを2010年前後から見かけるようになったんです。

それがXboxLiveで見た『LIMBO』と、Wiiwareに登場した『LA-MULANA』でしたね。ふたつとも2Dアクションなんだけど、これまでとはアプローチが違っていたんです。たとえば『LIMBO』は単純にアクションをクリアしていく流れが、まるでアートアニメみたいに見える作り方でしたし、一方『LA-MULANA』は高難易度と探索を突き詰める作りで、少人数のチームが作りたいゲームをやりきってるな、と感じました。


G.Suzuki自分の場合は横スクロールアクションパズルゲーム『Braid』でしたね。2007年以降、ようやく主要なパブリッシャーが参入してストアが充実してきたSteamに「何か挑戦的で、面白そうなタイトルが出てきた」という印象がありました。

SHINJI-coo-Kおお、自分はいずれもSteamでプレイしました!その頃から独自色が強い作風のものが目立ち始めたんですよね。

Arkbladeもちろんそれまでにも、意欲的なフリーウェア・シェアウェアなどはありました。だけどダウンロード販売の台頭によって「主要な商業ライン」にそういったゲームが現れるようになったのは大きな変化ですよね。

葛西祝ダウンロード販売のインフラがPC、コンソールで整備されたことで、まったく新しい潮流が生まれてきた。それがインディーゲームですよね。個人や少数のチームで作ったゲームが、どんどんSteamやPS Store、XboxLIVEなどでリリースされるようになるんですよね。


G.Suzuki他にもModタイトルの商業化も次々と目立ち始めていましたよね。たとえばリアル系WW2FPS『Red Orchestra』は、もともとは『Unreal Tornament 2003』のModでした。

それが2004年にNVidia主催のModコンテスト「Make Something Unreal」のベストFPSを受賞してから大きく変わります。2006年に『Red Orchestra: Ostfront 41-45』にスタンドアロンのゲームへと生まれ変わって、Steamで販売されました。


葛西祝『Half-Life2』のMODからも革命的なタイトルがどんどんスタンドアロンになっていきましたよね。平成ゲームメモリアル第3回で触れた、『Dear Esther』と『The Stanley Parable』は、まったく戦闘のない一人称視点のゲームで、ほぼ移動のみでプレイが進行します。ゲームにおける物語表現のみを追求し、あとに「ウォーキングシミュレーター」というジャンルを生み出すまでに至りました。

Arkbladeある意味ではゲーム業界の一種の回帰が起こった形ですよね。それこそ少人数でも、情熱を燃料にゲームが作られていく原初の時代が再来したというか。今では大規模宇宙MMOシムと知られる『Elite』も1984年の初代は、ほぼ2人のプロジェクトでしたしね。

SHINJI-coo-K売り上げの出る少人数制作のタイトルも続々と新たに生まれる潮流もあり、インディスピリットの熱気を感じる時代でした。


葛西祝2011年~2012年ごろって、ゲームデザインからセールス、メディアの評価に至るまで、個人や少数グループで作ったタイトルが席巻したんですよね。『Fez』や『風の旅ビト』、『ホットライン・マイアミ』などがヒットしてからインディーゲームという区分が、商業のフィールドでも定着するようになった印象があります。

SHINJI-coo-Kゲーム売り場に「インディーゲームの棚がある」みたいな枠組みが形成されましたよね。

葛西祝その過程の中で、「作りたいものを作る」という意味のインディーゲームという言葉が「小規模スタジオがヒットゲームを作り出すひとつの市場」という意味に代わり、現在に至るのかな……と思います。その変化のなかで、純粋なクリエイティブってなんなのかな?って思うことは、いまでもありますね。

Arkbladeインディーゲームという言葉は、一度認知されてしまえば浸透するのは早かった印象があります。作家性・新規性を売りにしたタイトルだけでなく、「過去に遊んだゲームを発展させた新作」にも需要がありました。そういったタイトルはインディーゲームという枠組みと相性が良かったですね。

葛西祝ショベルナイト』など、過去のビデオゲームの名作をリスペクトしたアクションも出てきていましたしね。


G.Suzuki過去のビデオゲームやハードを模範したタイトルと言えば『VVVVVV』も該当しますね。『VVVVVV』は、8bitパソコンのCommodore 64風グラフィックで、フリーのインディーゲームとしてリリースされた2Dプラットフォーマー『I Wanna be the Guy』などで当時流行っていた死にゲー要素を取り込んだ構成でした。「クラシックなグラフィックで、シンプルなゲームシステムで遊びやすいな」と感銘を受けましたね。


SHINJI-coo-Kこういったインディーゲームの流れが盛んになるのが、2015年にリリースされ、凄まじい話題作となった『Undertale』だと思うんですよ。

名作をリスペクトしてその要素を取り入れつつ「誰も死ななくていい優しいRPG」をうたって、物語やゲームデザインにも独自のひねりを加えています。

制作者のtoby foxさんが一個人のプレイヤーとしてゲームを体験しているのがうかがえますし、作り手自身の私的な世界観を強く押し出している、作家性が強くてあまり商業的ではないタイトルが評価されたのは新しい時代を示唆していますよね。

『マインクラフト』の光と影



Arkblade熱気を感じるタイトルはもちろん多々ありますが、やはりインディーゲームを語る上で『マインクラフト』の存在はやっぱり外せないですね。

SHINJI-coo-Kああー『マインクラフト』!当時自分も買いました!若い方なら生まれて初めて買ったダウンロード販売ソフトが『マインクラフト』である方も多いんじゃないでしょうか。

葛西祝本当に少人数で作ったゲームが、その後のビデオゲーム全体のトレンドまで変えちゃいましたよね。クラフト要素、サバイバル要素、その他にもどれだけの影響を与えたことか……。


スウェーデンから生まれたインディーゲームが、カジュアルにも受け入れられていったのはびっくりしましたね。HIKAKINさんやコロコロコミックにまで波及するとは、正式リリースされた当時は思ってませんでした。

Arkbladeまさしく一種のドリームですね。その『マインクラフト』自体も今ではマイクロソフト肝入りのプロジェクトに……

葛西祝『マインクラフト』のヒットはインディーゲームの光と影が凝縮されていますね。Mojang ABが設立されるも、 マイクロソフトに買収されてしまう。じゃあ作者のNotchさんはその後、どうなったか?って、会社から離れるんですよね。生みの親なのに。

インディーゲームが、クリエイターが「作りたいものを作って売るんだ」って姿勢から、商業的なコンテンツとして大企業も介入するようになった象徴的な出来事ですよね。『マインクラフト』はインディーゲームの枠内で言えば、未だに比較できるものがない特殊なケースですけども。

SHINJI-coo-Kインディーゲームの新規性、もしくは作家性みたいなものが存在感を強める時代の始まりだったのかもしれませんね。

「ゲーム制作の民主化」が訪れた


葛西祝さっきSHINJI-coo-Kさんが言ったように、「インディーゲームの作家性についても評価できるようになった」のは、個人や少人数でゲーム制作ができる環境の変化もありますね。個人で、プログラミング技術があまりなくてもゲーム制作ができる「GameMaker」などのツールや、ゲームエンジンの広まりも大きかったと思います。


G.Suzukiゲームエンジンの進歩で、インディータイトルでもリッチなグラフィックを持つタイトルが出始めていたのは大きいですよね。インディータイトルであるTripwire Interactiveの『Killing Floor』も、もともと『Unreal Tornament 2004』のModでした。製品版ではオーバーホールが加えられてモデルやテクスチャの質などが向上していました。

葛西祝無料で利用できたUnityに続いて、Unreal Engine 4が無料化するなど、本格的にゲーム制作が民主化された時代になりました。

SHINJI-coo-Kゲーム制作って企業に属さないとできないものでしたが、漫画や小説を書くように、最小単位で個人1人でも作れるくらいゲーム制作のハードルが下がりましたよね。もちろんスケールなどは限られますが。

ArkbladeMODでは、それをプレイするのに特定のゲームやその拡張パックを購入する必要がありましたが、一から制作されたタイトルだとその必要がないのでプレイするハードルが低いですよね。オリジナルのゲームであればSteamなどで販売できる環境が成り立ってきた事も、ゲーム制作のハードルが下がった要因なのではないでしょうか。

SHINJI-coo-Kインディーゲーム=2Dのドット絵っていう印象も一時はあったと思うんですが、3Dのリッチなグラフィックを持っているタイトルも少なくないですし、ゲーム制作の環境はすごく変化しているなと感じます。

G.Suzuki加えて、日本でもUnreal EngineとUnityの国内代理店が展開されることになったのも大きいですよね。CEDECだけでなく、Unreal FestやUnity勉強会など、企業や個人を問わず、ゲーム開発などに関連した発表会が目立ち始めたのも10年以降のムーブメントに感じます。

Arkblade各種アセットの流通も大きいですね。ただ利用に気をつけないと、アセットを多用して見た目をゲームっぽく整えただけの、いわゆる「アセットフリップ」という低品質なタイトルと同じにみなされて、ユーザーに避けられてしまいますが……。

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《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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