「パシフィカ」はサイバーパンク世界の理想郷か、荒廃した夢の跡か。原典から読み解く『サイバーパンク2077』(パシフィカ編) | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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「パシフィカ」はサイバーパンク世界の理想郷か、荒廃した夢の跡か。原典から読み解く『サイバーパンク2077』(パシフィカ編)

様々な混乱と思惑が渦巻く「パシフィカ」。ゲーム『サイバーパンク2077』と原作「サイバーパンク2.0.2.0」とで描かれている違いに注目してみます。

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『サイバーパンク2077』壁紙
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  • 『サイバーパンク2077』パシフィカ1
  • 『サイバーパンク2077』パシフィカ2
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『サイバーパンク2077』壁紙
東京ゲームショウ2019にて実機デモが行われた『サイバーパンク2077』。その中では「パシフィカ」という地区がミッションの舞台となっていました。

現在もYouTube上でこのデモと同等のものが「サイバーパンク2077 ― 2019 ディープダイブビデオ」として視聴できます。明らかになった情報もいくつかありますが、まだまだこの街の全貌は見えていません。

この舞台は原作である「サイバーパンク2.0.2.0」から引用されています。本記事では現在明かされている情報と「2.0.2.0」の記述を照らし合わせながら、「パシフィカ」について掘り下げてみたいと思います。

※本記事では、CD Project RED公式より公開された「サイバーパンク2077 ― 2019 ディープダイブビデオ」の内容に触れています。

ナイトシティの周囲に位置する 六つの郊外居住区


「ディープダイブビデオ」では、ナイトシティは6つの地区にわかれており、その一つが「パシフィカ」であると述べられています。原作の「2.0.2.0」はこれと若干異なり、ナイトシティの外側に「パシフィカ」を含む六つの居住区が存在しているという作りになっています。

六つの地区はそれぞれ、工業地区の「南ナイトシティ」、雇用者たちの集合住宅が立ち並ぶ「ランチョ・コロナド」、小さな工業施設と住宅区のある「ヘイウッド」、北カリフォルニア軍の本拠地がある「ノースオーク市」、金持ちと権力者が住まう「ウエストブルック」、そして海沿いの上流階級居住区「パシフィカ」となっています。

『サイバーパンク2077』パシフィカ1
見切れていますが、画面右の看板には「Welcome to Pacifica」と綴られています。

これらの街は、今後『2077』の世界にも登場するかもしれません。

「上流階級居住区」と述べた通りこの「パシフィカ」の設定は、「2.0.2.0」と『2077』とで異なっています。どのような違いがあるのか比較してみます。

「娯楽都市」としてのあり方


「2.0.2.0」においては、「プレイランド・バイ・ザ・シー」と呼ばれるアミューズメントパークが存在しています。このパークは最先端の技術を駆使したアトラクションが揃っており、北カリフォルニアでも最大級の娯楽施設となっているようです。

ナイトシティで最も素晴らしい海鮮料理を食べることもでき、この地区のレストランの大半は三ツ星クラスのお墨付き。海も大変美しく(おそらくアメリカで最も汚染のレベルが低い美しい海です)、この地区のビーチは世のエッジランナー達が休息を取るのに最適の場所だということ。かのジョニー・シルヴァーハンドも個人でビーチハウスを所有しているようです。

『サイバーパンク2077』パシフィカ2
向こうには観覧車らしきものも。廃墟と化した娯楽施設の様相。

ゲーム『2077』では全く異なる実態が見えてきます。観光スポットとして開発が始まったものの世界経済の混乱と共に投資家達が手を引き、あらゆる施設が未完成のまま放置されています。「2.0.2.0」が「パシフィカ」の理想の形だとすれば、『2077』のそれは、理想を叶えることができなかった結果だと言えるでしょう。

居住者の違い 街の治安レベル


「2.0.2.0」のパシフィカは上流階級の居住区であるため、ナイトシティの一大企業である「ミリテク社」が治安維持を受け持っています。地区内でなにかトラブルが発生すれば迅速に対処されることでしょう。その警備も厳重すぎるというほどではないため、生活に息苦しさがあるわけではないようです。この地区の住民は、ナイトシティで最も安らげる場所だと自負しています。

一方の『2077』では前述の観光地化の失敗により街全体が荒廃していることもあって、治安は非常に悪いと言えます。「ディープダイブビデオ」では、ナイトシティの中でも特に物騒なエリアであると述べられています。

『サイバーパンク2077』パシフィカ4
当たり前のようにビルが爆発する環境。ちなみに手前の男性は、
ギャング「ヴードゥー・ボーイズ」のナンバー2、プラシド。

さらには動画内にもあった「ヴードゥー・ボーイズ」と「アニマルズ」の抗争の舞台になっています。およそ理想郷とは程遠い、サイバーパンク世界のダークな部分を煮詰めたような地域であると言えるでしょう。もちろんその舞台設定はゲームとしての面白さを提供してくれる要素でもあります。

表には見えていない パシフィカの抱える闇


ここまでの情報から「2.0.2.0」における「パシフィカ」はユートピア的な地区であり、『2077』のそれは夢に破れたディストピアの象徴であることがわかります。しかし「2.0.2.0」の書籍内に少し気になる記述があります。

「パシフィカ」の一区画にあるエンジニアたちの住まう「ウエストウインド」という街。ここは自由主義的で啓蒙的な雰囲気のある、見た目には恵まれた環境のような場所です。

しかしその実態は、行き過ぎた自由主義により全体主義化したディストピアでした。書籍内では「ジョージ・オーウェル流の悪夢」と表現されています。住民同士が互いに監視し合い、リーダーの意見にそぐわない者や社会主義的思想を持っている人を告発し合うという社会になっているというわけです。(小説「1984年」や「華氏451度」、漫画の「V・フォー・ヴェンデッタ」などに近い環境でしょう)。

『サイバーパンク2077』パシフィカ3
公開された画像を見ていると廃墟だらけ。
本作は廃墟探索のゲームとしても楽しめるかもしれません。

この世界で最も恵まれた場所に見える「パシフィカ」も、理想郷とは程遠い一面を内包していたということです。

『2077』では、こういった社会情勢は現在のところ見えていません。あくまで映画「ブレードランナー」のような退廃的な社会として描かれています。まだまだ公開されていない情報も多くあるので、その何処かにこういった全体主義的ディストピアの一面が出てくるかもしれません。



発売に向けてこれからも多くのロケーションが公開されることでしょう。荒廃した世界の中に、心休まる楽園のような環境が垣間見えることもあるのでしょうか。今後の情報も見逃せません。
《竜神橋わたる》
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