【ゲームで英語漬け:Game*Spark的学習術】第2回『仁王』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【ゲームで英語漬け:Game*Spark的学習術】第2回『仁王』

第2回は続編『仁王2』発売を間近に控えた『仁王』をフィーチャー。英語版の意外な特徴や、日本と西洋の精神的なつながりをピックアップしていきます。

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「ゲームで英語漬け:Game*Spark的学習術」第2回は、間もなく次作が発売される『仁王』を取り上げます。異邦人から見た戦国時代ということもあり、日本文化がどのように翻訳されているのかが見所ですね。普段時代劇や大河ドラマの海外版を目にする機会が無いので、言語切り替えはゲームならではの機能といえるでしょう。

ちなみに、仁王の起源をたどるとギリシャのヘラクレスに行き着くという説もあります。仏教の守護神となった西洋の英雄、興味深いタイトル名ですね。『仁王』の英語プレイに触れていく前に、前回の記事でお届けした練習問題の解説からいきましょう。

練習問題の解答例:「if」の使い分けを復習しよう


  1. If I have Tranq Ammo, I will capture a monster.
  2. If I had had Dragon Ammo, I could have hunted the Rathalos.
  3. If I could have used a Heavy Bowgun, the quest would have been PURR-FECT, meow.

前回は「if」についての練習問題でした。回答は一例で文意が合えば可としますが、時制の使い分けは出来ていましたか? 2番、3番の場合だと、過去の出来事に対する「if」のため、「if I had done ~, If I would(could, should...) have done ~」を使います。

キーフレーズの場合は、「If I did ~,」ですが、これは現在・これからに対する「if」(可能性のないもの)なので、過去形でも「~だったら今ごろ~しているだろう」という「今」に対する可能性や願望が趣旨なのです。終わった過去を振り返るときは「If I had done ~, I would have done ~」の形にしましょう。

Let’s play in English:新感覚、日本語音声・英語字幕を体験しよう



『仁王』には音声切り替えがありません。猫又のおかげでウィリアムは日本語の会話を理解できるようになっているので、日本語音声に英語字幕をつければ、プレイヤーもウィリアムと同じ境遇になれます。前回の『モンスターハンター:ワールド』と同様、アイテムには全てアイコンが添えられているのでプレイしやすく、しかもほぼ日本語音声なので気が向いたときだけ読めれば大丈夫です。イングランド人ということでUK、USの2種類の英語も搭載。より雰囲気を出したいならUK英語を選択しましょう。



ただし、このプレイには一つ難点が。アイテム名が非常に読みづらい! 当然ながら漢字を使わないので固有名詞も全てアルファベット表記。見慣れていた武器名もどれがどれやら……という具合でした。視認性の点で表意文字のありがたさが身にしみます。ちなみに、メニュー画面の微妙な隙間には、こうして英語表記が入るのでした。



ローカライズを味わう:戦国時代はどのように英訳された?


西欧の価値観とは相容れない日本の信仰、解説は日本語とどのように変わっているのか。改めて見直してみるとかなり丁寧に独自の概念を説明してあり、グローバルローンチに当たってこのあたりは統一しているようですね。それでも節分を「2月に行う」と補足したり、蜻蛉切の説明で旧盆に関する記述をカットしたりと、一部では変化が見られました。



腹切りの短刀は使用効果として「腹切りを実行するとき時に使う。全てを失うが名誉は守られる」とまでしっかり記述してあるのはさすがコーエーテクモゲームス。これは日本語版にはない記述です。



面白いのは妖怪や守護霊の名前の発音をわざわざ載せているところ。日本語的に見ると合っているのかいまいち分かりませんが、これで海外のプレイヤーとも通じ合えるのかも? 技名やアイテム名に関しては大半が英語に訳され、海外の人にもイメージが伝わるようにしてありました。日本刀の銘も「Demon‘s Tears」などと表記されると途端に雰囲気が変わりますね。



ケルトと日本~響き合う信仰



史実上では、「ウィリアム・アダムス」はイングランド・ジリンガムの生まれで、アイルランドとの関わりはありません。この出自の変更は、ウィリアムが日本の妖怪や守護霊を受け入れる下地に関係しています。

主にイギリスの妖精、妖怪に関する民話は「ケルト文化」と呼ばれる世界観がベースとなっています。古代の西欧各地に広がっていた「ケルト人」は万物に魂が宿り、輪廻転生するという自然信仰を持っていました。ローマ帝国に敗れて各地に散らばったケルトは長らく歴史の影に埋もれます。

近代になってアイルランド独立運動が起こると、地元に残るケルトの神話や民話の再評価が行われます。それに大きく寄与したのが詩人のウィリアム・バトラー・イェイツです。イェイツはケルトの物語を題材に取った詩を多く発表し、ノーベル文学賞も授与されています。

イェイツはケルトを調べると同時に、日本の文化芸能にも関心を持っていました。そして、ケルト文化と日本文化に共通点を見いだしたのです。輪廻転生や自然の中の精霊、欧州で異端とされた世界観が、地球の反対側で息づいていたことに彼は衝撃を受けました。



その後、イェイツは日本の「能」の様式を取り入れた戯曲「鷹の井戸」を発表しました。英雄クーフリンを主役とする短い物語の中には、「不老不死の泉を守る鷹の精霊」が登場します。人魚と鳥の特徴を持つシアーシャに通じるものがありますね。


「鷹の井戸」はなんと日本に逆輸入され、能における唯一の海外原作作品として上演されています。2017年には『ゼノブレイド2』に参加した合唱団「アヌーナ」を招き、「ケルティック能」として上演されました。公演の様子が公開されていますので、仁王の世界観を深掘りしたい方は、是非ご覧ください。

覚えておきたい単語集:日本語にとらわれず、定義を確かめて訳す


日本文化の紹介の時、やってしまいがちなのが日本語をそのまま変換してしまうこと。例えば勢力としての「織田家」を「Oda family」とすると間違いです。「family」は世帯、もしくは血縁関係にある一族を指します。なので、この場合の「家」を表すにはより広いグループを指す「clan」と訳されるのが一般的ですね。

  • clan:勢力(~家)
  • betrayal:裏切り
  • sacrifice:犠牲
  • double:偽物(影武者)
  • talisman:お札
  • lacquer:漆
  • shrine:社
  • make offering:奉納
  • Spirit Division:分霊


今週のキーフレーズ:How on earth can a man be so hated?



徳川に味方する大名が増えていく中、頑なに道理で説き伏せようとする石田三成。つくづく人望がない彼に対し、側近の大谷吉継が言う台詞です。「いかにすればここまで嫌われることができましょう」と半ば呆れかえっている様子。「you」ではなく「a man」としているあたり、より皮肉めいた言い回しですね。

今回のポイントは「on earth」の慣用句。文字通りの意味は「地球上で」ですが、その転化で「普通あり得ない」と表現したいときに使われます。ネガティブだけでなく"I wonder how on earth you can kill Oni."といった、感心などの良い意味でも使うことができるので、驚きを表したいときに便利ですね。

練習問題:W.B.イェイツの詩「Death」を翻訳、または超訳しなさい。


Death by William Butler Yeats

Nor dread nor hope attend
A dying animal;
A man awaits his end
Dreading and hoping all;
Many times he died,
Many times rose again.
A great man in his pride
Confronting murderous men
Casts derision upon
Supersession of breath;
He knows death to the bone -
Man has created death.
 
イェイツの詩集「螺旋階段とその他の詩」所収、「死」が今回の練習問題です。全体の意味を踏まえて1行だけでも、自信のある方は全訳挑戦してみてください。使われている言葉自体はそれほど難しいものではありません。上記の猫又とシアーシャの台詞がヒントになるでしょう。詩であるため、文法にとらわれずに意味をくみ取って自由にアレンジしてみてください。訳してみるとこの詩にはまさしく『仁王』の精神が込められていると分かります。次作『仁王2』とともに、死生観に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。


2020年はウィリアム・アダムス没後400年。静岡では按針祭、出身地ジリンガムでは「ウィル・アダムス・フェスティバル」が毎年開催されていますので、興味のある方は是非足を運んでみてください。

※UPDATE(2020/03/09 17:03): 「今週のキーフレーズ」の脱字を修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございました。
《Skollfang》

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