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Game*Sparkレビュー:『リトルナイトメア2』―じっとうずくまりたくなる「鬱」の世界

幼い頃の記憶を刺激する、覚めない悪夢の世界へようこそ。

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Game*Sparkレビュー:『リトルナイトメア2』―じっとうずくまりたくなる「鬱」の世界
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バンダイナムコエンターテインメントより、2021年2月10日に『リトルナイトメア2』がリリースされました。好評だった前作の『リトルナイトメア』から4年、ホラーだけどあまり怖くない独特のビジュアルはそのままに、ジャンルに冠する「サスペンス」をより深く感じさせる作品です。眠れない真夜中に抱く不安や鬱、妄想を具現化したゲームプレイは、他のホラーとは違う怖がらせ方を確立しました。


撮影に使用したのはSteam版です。画質設定の「ブルームの質」の設定で印象が大きく変わるので、靄の立ちこめる街の雰囲気を出すためにプレイ開始前に確認することをお勧めします。

淡々とした共同作業と繰り返す悪夢のループ


『リトルナイトメア2』のプレイフィールはかの名作『ICO』に似ている、むしろほとんどそのままです。今作ではパートナー「シックス」の存在があり、呼ぶ、手をつなぐ、ものを振り回す、協力して崖を飛び越えるなど、できることがほぼ同じなのです。前作でもアクションの基盤は同じでしたから、もっと別の方向性を採ってもいいものですが、あえて『ICO』に寄せてフォロワーだと明確に示しているように思います。


パズルのギミックはオブジェクトが分かりやすく置かれており、手近にアクセスできるオブジェクトを辿れば迷わずクリアできます。主人公モノとシックスの存在は世界の住人よりも遙かに小さいので、サイズ間の違いから使えるものと使えないものの見分けがすぐついてしまいます。

この手の脱出系パズルは最初に使えるものを探して迷うのが醍醐味なのですが、「これを使いなさい」という意図が割と透けているので、そのわざとらしさは好みが分かれるところ。複雑なギミックパズルに手こずりたいプレイヤーには物足りないでしょう。逆にわかりやすい故にパズルが苦手でもクリアしやすく、そのわざとらしさが非現実的な演出になっているともとれます。


シックスが先行して動いてくれる場面もあって、見落としで引っかかることはほとんどありませんでした。残念なのはシックスと手をつなぐ動作があまり機能していないところで、ゲーム中に意味を持って使う場面はありませんでした。シックスは逃げ足が速いので、追いかけられる場面になるとモノよりも先に走って行きます。彼女を引っ張って連れて行く必要が無かったのです。

反対にシックスがいることで怖さが若干和らいだのは大きい変化です。前述の通り、見つかって逃げるときには、シックスがプレイヤーの先を行って安全な場所を示してくれます。特に、慣れない最初のステージではとても頼りになりました。案の定はぐれたときには寂しさも倍増しますが…。

鬱に溺れる深い蒼と極夜に響く電波ノイズ


奇っ怪な大人のモンスターに襲われる場面がクローズアップされるため一見ホラーのようですが、本作のジャンルは「サスペンスアドベンチャー」となっています。普段サスペンスというと犯罪事件ものなどにつけられますが、本来の意味は「緊張や不安を主眼に置いた作品」を指します。

本作では、ショックを与えて恐怖やパニックを引き出すホラーとは違うベクトルとなっており、スプラッタやジャンプスケアなどの演出がかなり抑えてあります。敵に捕まっても残虐な死に様を見せず、捕まったところで暗転するので、直接的な怖さはあまり感じません。
捕まる恐怖を最小限にしても、逃走の場面では初見殺しが多く、何度も捕まって失敗しないと突破口を見出せません。「死にゲー」と違ってコンティニューの一拍がないので、まさに悪夢のように「同じ場面を延々繰り返すループ」に囚われてしまいます。そうなると、捕まる恐怖よりもループを脱出できない不安や苛立ちの方が強く感じられるようになるのです。


『リトルナイトメア2』は前作よりも、この「終わりの見えない、先の分からない不安」が強調されているように思いました。前作『リトルナイトメア』の舞台は1つの目的に沿った1つの閉鎖空間だったので、子供達が捕まって何をされるのかが早い段階で分かっていました。

しかし『リトルナイトメア2』ではステージごとに支配者が変わり、捕まった後どんな目に遭うのかがあまりはっきりしません。ステージ構成も前作よりも長く、前作経験者ほど「まだ終わらないのか」と焦ってしまうでしょう。しかも街全体を意味不明の怪異が包んでおり、「よく分からないけどとにかく捕まりたくない」という感覚が強く出ます。「捕まったら殺される」よりも嫌な感じがしませんか?学校や病院などの身近な場所で感じたこの気持ちを、本作は実に嫌らしくちくちくと刺してくるのです。


こどもの頃は夜中に聞こえてくる音から様々な妄想が浮かび、そこに恐怖を感じることがありました。本作では敵との遭遇時には見た目よりも「音」に不快感を覚えます。学校ステージの教室では机を叩く音に嫌な思い出を呼び覚まされた人もいるでしょう。本作は巧妙に「嫌な思い出のある音」が仕込まれ、プレイヤーの記憶へダイレクトアタックを仕掛けてきます。


ビジュアル面において、本作では「青」をテーマカラーにしています。青は気分を落ち着かせる効果があり、恐怖を煽るホラーとは相性が悪いもの。普通なら心拍数を上げる効果がある赤や黄色の警戒色を使います。

『リトルナイトメア2』では、屋外の雨降る町は青、敵がいる屋内は蛍光灯の白を基調とし、それ以外の色はほとんど抑えられたグレーです。そのため、切迫する本能的な恐怖よりも、落ち着いたときに漠然と感じる不気味さや不安がより際立つのです。


ゲーム中でこの「青」に出会うタイミングは、ちょうど追跡者から振り切ってステージを脱出したタイミング。普通のゲームならば篝火なりタイプライターなりの「絶対的安全圏」が用意されているものですが、本作では冷たい土砂降りの中に放り出されます。深い青は沈静だけでなく「鬱」の空気を作り、不安をより強いものにします。逃げ切れた安心と同時に、生きている気配が消えた静寂、行く当てのない孤独に苛まれるのです。

開発スタジオのTarsier Studiosはスウェーデンにありますが、北欧では2~3ヶ月間太陽が昇らない極夜があり、この間に「冬期鬱」による自殺が増えると言います。本作の色彩は北欧の明けない夜を反映しているように思えます。


画面構成も単純な横スクロールではなく、部屋ごとに区切られた「フレーム」が存在。そのフレームの一つずつに計算された構図が用意され、マグリットアーサー・トレスのようなシュールレアリズムの作品の中を歩いているようです。

特に影響が大きいのは『ICO』のキーアートのモデルになったジョルジュ・デ・キリコでしょう。有名な「無限の郷愁」「通りの神秘と憂鬱」を観ると、巨大な建物のスケールに言い知れぬ空漠を感じさせ『リトルナイトメア』シリーズ全体を覆う不気味さはこれらの絵に通じています。




『リトルナイトメア』シリーズでは、明るく開けた場所にいると見つかる危険が高まります。ですから本当に一息付ける場所というと、床板の下やダクトなどの暗くて狭い場所ではないでしょうか。「怖さ」が薄いからと言って突き進んでいると、いつの間にか「怯え」が芽生えていることに気づくと思います。

即効性のあるホラー演出に頼らず、アートと音の両面から徹頭徹尾「サスペンス」を演出する。『リトルナイトメア2』は前作よりもそれが洗練されており、タイトル通りの「悪夢」を完成させたと言えるでしょう。

総評:★★★

良い点
・静かな恐怖を感じる「サスペンス」へのこだわり
・いつ終わるのか不安になるステージ構成

悪い点
・ギミックの単調さ
・シックスとの連携が少ない


《Skollfang》
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