Game*Sparkレビュー:『牧場物語 オリーブタウンと希望の大地』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『牧場物語 オリーブタウンと希望の大地』

多くのフォロワーを生み出してきた人気シリーズの最新作『牧場物語 オリーブタウンと希望の大地』をレビュー。本作の評価と数々の騒動を総括します。

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本作のレビューはVer.1.0.2で執筆しています。

牧場生活シミュレーションゲーム」として多くのフォロワーを生み出してきた人気シリーズの最新作『牧場物語 オリーブタウンと希望の大地』が、2月25日に発売されました。コラボレーション作品であった『ドラえもん のび太の牧場物語』、リメイクである『牧場物語 再会のミネラルタウン』に続いて登場した待望の「正道完全新作」である本作ですが、発売早々ちょっとした炎上騒動なども起こるなど色々な意味で話題を集めていました。

さて、レビュー本編に入る前にまずは筆者の個人的なシリーズに対するスタンスや思い入れについて説明ておきます。筆者は初代であるスーパーファミコン版『牧場物語』発売時に小学生であり、当時は大変興奮して遊んだことを覚えていまし、その後もゲームボーイ版やPlayStation版などもよく遊んだ記憶があります。しかし、近年発売されたシリーズ作は触ってきていません。本作も発売前~発売後にかけてつぶさに情報を追っていたということはなく、炎上騒動になっていたこともプレイ開始してからしばらく経ってから知ったという程度です。なので本レビュー前半部は「色眼鏡無しの率直なゲームの感想」、レビューの後半で「ゲームの不満点」や「騒動についての私感」を総括していくという構成でお送りしていきます。


ある程度面白いことが担保されている『牧場物語』型のゲーム

最初に言えるのは、本作は『牧場物語』型のゲームとして大きく破綻してはいないということです。荒れ地を開拓し、自分で好きなように牧場を作っていき、ゆっくりスローライフを楽しむ……という『牧場物語』の持つ根本的な「面白さ」は本作でも生きていて、ぶっちゃけそれだけで数十時間は遊べてしまうのだからすごいことだと思います。久しぶりのシリーズ作プレイとなった筆者でも何の違和感もなくのめり込むことができました。

『牧場物語』シリーズは大きく分けて「癒やし系」のゲームです。「急かされること無くゆっくりと単純作業的なゲームプレイをしていく」ことができるのはシリーズのとても重要な点で、本作もその点には基本的に忠実です。悪役や敵などが登場しない「脅かされることがない」感じは、昨今対人ゲームなどで心がささくれがちなプレイヤーにも刺さるかと思います。筆者もどちらかといえば物騒な題材のゲームを遊ぶことが多いですから、久しぶりの『牧場物語』はある意味新鮮で面白かったです。「癒やし系」のゲームプレイはニンテンドースイッチというハードウェアとも噛み合っていて、テレビで腰を据えて遊ぶだけではなくふと気づいたときや仕事の合間などに携帯モードでちょっとだけ遊ぶというようなことができるのもゲーム性と相性が良いように感じました。

一方で、スローライフ的な外観に反して「急いで効率よく遊ぼうとすると身も蓋もないゲームプレイになっていく」というのも『牧場物語』シリーズの特徴でしょう。シリーズ作を通して重要度が高い「鉱山」もあいかわらず健在。慣れたプレイヤーであれば農具の強化や行ける場所の開放などを手早く行うために(特に序盤は)鉱山に潜る機会が長くなることだろうと思います。このあたり「鉱山物語」などとも揶揄されがちで好みの別れるところかとも思いますが、筆者としては結構好きなゲームプレイです。他にも「釣り」など牧場だけではない要素が満載で、虱潰しにすべてのコンテンツをやり込もうとすると膨大な時間がかかることうけあいです。

また、恋愛ゲーム的な要素があるのも『牧場物語』シリーズ人気の一因でしょう。本作ではついに恋愛対象がDLCで販売されるという境地にまで達しました。ただ、会話やイベントはかなり淡白で味気ないもの。よく言えば「プレイヤーの想像力が刺激される」という言い方もできるでしょうが、もうちょっと愛着の湧くような作りのほうが個人的には嬉しかったですね。コミュニケーション要素はおまけ程度に捉えておくほうが良さそうです。

また余談ですがDLCで恋愛対象が増える都合上なのか、本作では結婚相手との家族関係をリセットすることができます。その際子供がいる場合は子供の存在がなかったことになる、という仕様が一部で話題を集めていました(個人的に試したわけではないので又聞きの情報ですが)。前述のとおり恋愛イベントは極めて薄味なので「そのために周回プレイする」ことはほぼ考えられず、必要不可欠なシステムかとも思います。が、倫理的な良し悪しは一旦棚に上げておくとしてもプレイヤーに本来不要な良心の呵責を生じやすくするシステムである、ということは言えるでしょう。

クラフトなどの新要素

本作からの新要素として最も大きいものが「クラフト」です。素材を集めそれを加工することで施設などを作れるようになるという、(『Stardew Valley』や『きみのまち ポルティア』などの)『牧場物語』フォロワー作で見られた形質が逆輸入的に採用されています。最初がテントから始まるということもあって、どこか『あつまれ どうぶつの森』を彷彿とさせられるような部分もあるなと思いました。

クラフト要素は最初こそ新鮮ですが、現状あまりうまくいっていないような気がする、というのが正直なところです。設置に必要な面積がそこそこ大きい「メーカー」が大量に必要になるという都合上、ある程度の効率を求めようとすると牧場がほとんど工場のような外観になっていきます。素材が大量に必要になるためか雑草や樹木、石などの復活ペースも早まっており、結果として牧場は大変荒れやすいです(もちろん舗装するなど対策もありますが)。クラフト画面が非常に煩雑で見づらかったりと、ぎこちなさが大変目立つ出来となっています。

新施設の開放やマップの開放にも大量のクラフト素材が必要になり、どうしても牧場よりもクラフト素材集めのほうに重点を置いたゲームプレイになりがちです。特に最後の施設「水耕プラント」の必要素材はなかなかに凶悪なので筆者はまだ開放できていません。まあこれはエンドコンテンツのようなものなので、無理に目指さなくてもいいわけですが、ともあれまともにゲームを進めていくならメーカーを大量設置しクラフトしまくるというプレイスタイルは半ば強制されています。このあたりをどう捉えるかは人によって異なるでしょうが、少なくとも筆者にとってはあまり楽しいものではありませんでした。

衣服をクラフトし、着飾ることができるという非常に魅力的な要素もあるのですが、メーカーの設置などの下準備があまりに面倒くさいので筆者はほぼ利用しませんでした。「面倒くさい」ということは裏を返せば「やり込みがいがある」ということですから、好きな人は好きなんじゃないかな、とも思うので一概に不満点というわけでもありません。ただ、すべてを同時にやり込もうとすると一日の時間があまりに短すぎるので「この一年は鉱山、この一年は衣服」というように分けてプレイする必要があるように思います。もちろん、要領が良いプレイヤーであればその限りではないかもしれませんが……。

また、コロポンというお助け妖精のようなものが登場し、彼らをマネジメントすることで様々なアイテムを得られる……というような要素もあります。ですが、これもあってもなくてもいいような効果なので、あまり機能しているとはいいづらいです。「いるか……?コレ……?」と首をかしげる点でした。

コロポンたちはミニゲームや救済措置である協力な追加マップ(素材集め用マップと季節固定マップ)にも関わってきます。特に追加マップは攻略上非常に便利である反面、ゲームの作業感を増す要因ともなっているので評価が分かれる点となるでしょう。

議論を呼んだ数多くの不満点

と、言うように本作の新要素は全体的にギクシャクしているように感じられます。……が、本作最大の問題点は「頻発する長めのロード時間」でしょう。ちょっとした移動のたびに長めのロードが差し込まれるので、村と牧場の往復や家の中と外の往復などが非常にめんどくさく感じられます。この点はアップデートでの解決が約束されていますが、どの程度ロード時間が短縮されるのかは執筆時点ではわかっていません。

移動の頻度はプレイスタイルによっては減らすことも可能……なのですが、本作ではちょっとしたお使いクエストである「依頼」の確認のために家からかなり離れた場所に行かねばならず、ちゃんとゲームを攻略しようとするとどうしても不要なロードを挟むことになります。かなりプレイの体験を損ねていますし、せめて掲示板は牧場からでも確認できるべきでしょう。ゲーム進行に関係のないサイド依頼も存在するのですが、ロード時間に見合わない報酬のしょっぱさなので、ほとんどのプレイヤーが遊ばなくなってしまう要素だと思います。これでは、前述したコロポン絡みの追加マップに赴くのにだってどうしても足が重くなってしまいます。

本作のビジュアルは親しみやすくかわいらしいもので筆者としても気に入っています。ですが、「見るからにリッチ」というわけではありません。たとえば何を食べていても同じものしか表示されない食事シーンなどは気になるプレイヤーも多いかと思いのではないでしょうか。にもかかわらずロード時間が長かったり、動作が重かったり、ときにはフリーズしたりするので、プレイヤーの心証が悪くなりやすいのです。もちろんロードが気にならないプレイヤーの方もいるかもしれませんが、ロードがなければ最高に楽しいかというと別にそんなこともないのが悲しいところです。

一部素材の入手性の異常な低さやコロポン追加マップの開放順のおかしさ、鉱山での時間経過などバランス的に変に感じられる点も多く存在しました。全体として真面目に遊ぼうとすれば真面目に遊ぼうとするほど「ここどうなの?」という不満点が見えやすい作りになっており、そういう意味でシリーズファンから不満が噴出したのも頷けるところです。

それでも遊べちゃう牧場物語

と、いうことで不満点も多く述べてきましたが、「それでも遊べる」のが本作かと思います。新要素はぎこちなく、恋愛要素は淡白で、バグやロード時間などの問題点も多くある本作ですが、やはり基本の『牧場物語』というのがよくできたゲームなので、それでも数十時間ぐらいは平気で遊べてしまう力を持っています。なので本作から『牧場物語』を遊んだプレイヤーにとっては「なんだ、全然普通に楽しいじゃん」という感想になってもおかしくないでしょう。

とはいえ、ニンテンドースイッチというハードには他にも多くの『牧場物語』系ゲームがあり、その中には本作よりも廉価で遊べ、なおかつ出来がよいものも多いです。そういった中からわざわざ本作を選び、フルプライスを払って最初に遊ぶべきかどうかということを考えるとかなり難しいと難しいといわざるを得ません。まとめると筆者としては「『牧場物語』として普通に遊べるが、決定版ではない」という総評になります。そして多くのシリーズファンは(ニンテンドースイッチでようやく発売される正道の新作として)決定版を求めていたでしょうから、それが炎上騒動につながったのだとも思います。もちろん、DLCが発売されアップデートなどが為されれば評価が変わることもあるでしょうが、アプデを待ってる間に『ルーンファクトリー5』だって出ちゃうしなあ……。

総評:★★

良い点
・牧場物語として普通に遊べる
・可愛らしいグラフィックス
悪い点
・会話などが淡白
・ぎこちない新要素
・ロード時間が長いなど動作が不安定
・決定版ではない

《文章書く彦》
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