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『アサシン クリード ヴァルハラ』MCバトルは伝統芸能だった?言葉遊びが試される口論詩の日米比較【ゲームで英語漬け#91】

できるヴァイキングは文武両道。頭脳でもてっぺんとるぜ!

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『アサシン クリード ヴァルハラ』MCバトルは伝統芸能だった?言葉遊びが試される口論詩の日米比較【ゲームで英語漬け#91】
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ヴァイキングの文化をゲームという形で詳細に表現した『アサシン クリード ヴァルハラ』。中でもユニークなものとして目を引いたのが、罵り合いを遊びにした「口論詩」です。

日本語版でもきちんと韻を踏んだやりとりに訳してあり、海外向けのプロモーションイベントではラッパー2人による現代の口論詩を実演していました。テーマはもちろんヴァイキングと『アサクリ』で、字幕がなくても小気味よい言葉の応酬がなんとなく面白いですね。

練習問題の解答

政治闘争に翻弄される音楽『戦場のヴァルキュリア4』弾圧と戦争を越えて響く「The Minstrel Boy」【ゲームで英語漬け#90】



解答例:
歌唄いの少年が戻ることを願おう
知らせを聞いたらみんなきっと喜ぶだろう
歌唄いの少年はいつか戻ってくるだろう
その身体は引き裂かれても、魂までは奪えないから

いつか彼のハープが平和のうちに奏でられますように
天の思し召すような安らかな世界で
人々のあらゆる苦しみは止まねばならないから
全ての戦争は終わらなければならないから



Reading -Flyting

「ヴァイキングのラップバトル」と形容される口論詩(Flyting)。単なるディスり合戦ではなく、語彙力と切り返しの機知によって相手を感服させた方が勝ちになる知的ゲームです。ゲームではミニゲームとして扱われ、与えられた題に対して3つの選択肢から適切なものを選ぶという形式です。序盤に対戦するヨンガルフを例に見てみましょう。

・I have sparred against champions and bested each one.

1:I imagine your record’s as false as your pride.
2:Prepare to taste bitter defeat, once our battle is done.
3:O, to beat such a braggart will surely be fun.

この場合正解は3番の選択肢です。これを翻訳するとなると、まず韻を踏ませることが絶対ですが、3つの選択肢にメリハリを付けつつ、正解の選択がしっかりお題に対してカウンターを決めていると絶妙に分かるくらい、というなかなか厄介な仕様が加わります。つまり、ゲームの正解不正解を翻訳者のセンスが左右してしまうのです。プロモーションでも注目されているところなので、担当になったら大変だろうなと思いますがそれはさておき、まずは平文でそれぞれ訳してみます。

・俺は王者たちと戦ってきたが連戦連勝だ

1:その記録もどうせお前の自信と同じ虚勢だろ?
2:苦い敗北を覚悟しろ 一発で終わらせてやる
3:そんなほら吹きをぶちのめすのはさぞかし楽しいだろうな

原文の意味から見ると、相手の勝利への自信に対し、それをやり込めた上に勝つ気でいると張り合う姿勢を見せたことがポイントのようです。これをラップバトルの体裁にするため、韻を踏んだ体言止めに加工します。選択肢のうち1番は最後の「pride」が「one」にかかっていないため、明確なはずれになることも考慮が必要です。実装では以下のような文章になりました。

・俺は王者たちと戦い ここまで全勝

1:だがしかしその戦績も 自信もまやかし
2:大きく出たがこの勝負では 泣きながら敗走
3:尽きないとんだ妄言 弱さの象徴

基準となる題の文と、韻をわざと外す1番はわりと原文に近い翻訳ですね。代わりに2番、3番は「全勝」に韻を合わせるために、大まかな文意を残しつつもアレンジを加えていますね。文章の長さに違いを付けて、題と韻を合わせつつリズムが揃うのが3番のみが正解となるように調整してあります。続いて他の2ラウンドも確認しましょう。

・You're a misfit, a half-wit, a foolish old grouse!

1:You're a weakling, a milksop, a cadger, a louse.
2:You’re a snipe and a harfwit, a cretin, a clod.
3:You’re no better than a rat that I would evict from my house.

訳:
・あんたは場違いでバカな老いぼれライチョウ(文句ばかり言う人)!
1:お前こそ弱虫、腰抜け、たかりのシラミだ
2:お前はシギ野郎(口が悪い人)のバカでウスノロだ
3:お前は家からつまみ出すネズミと大して変わらんな

実装:
・貴様など のけ者ばか者うつけ者!
1:ならこうだ 軟弱貧弱愚か者!
2:口の悪い まぬけウスノロ能無しめ
3:お前こそ 家から駆除するネズミのようなもの

・I'm the greatest of flyters, a master of verse!
1:You’re the weakest of wordsmith, a terrible bore.
2:Your pride is appalling and your rhyming is worse.
3:Did you bet on yourself? Then know that I will empty your purse.

訳:
・俺は偉大な口論詩人 韻文の達人だ
1:お前は最弱の言葉使い 酷く退屈だな
2:お前のうぬぼれも見上げたものだが 韻の方はもっと酷いな
3:自分まで賭けるか? お前の懐はもう空っぽも同然だな

実装:
・俺は最強の詩人 韻文の匠
1:むしろ最弱の詩人だ 退屈な奴め
2:目を見張る大物ぶり 見事な空振り
3:感謝するぞ お前の財布は我が恵み

第2ラウンドは罵倒しかないのですが、うまく575調に整えてありました。原文では「Grouse」に対抗して生き物の例えを返す趣向で、鳥に例えた言葉に対して鳥で返す切り返しもあります。さすがにそこまでは日本語訳に移すのは難しそうですね。

選択肢でどうプレイヤーを誘導するか、これが他のメディアにはないゲーム翻訳独特の部分です。そこに違和感を感じさせないものほど、丁寧な仕事をしているローカライズであると言えるでしょう。

練習問題:次の台詞を訳しなさい。

Your flyting’s astounding, you’re worthy of praise!
You swing a fine axe, and you turn a good phrase!

エイヴォルの師匠アルヴィスより。文意を汲みつつどうラップ調に仕上げるか、難度は高いですが挑戦してみましょう。

※ UPDATE(2022/2/27 1:18):掲載時に抜けていた「練習問題の解答」の箇所を追記しました。


《Skollfang》

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