『Lies of P』ほど19世紀欧州の再現にこだわった韓国産ゲームはない―アートディレクター ノ・チャンギュ氏が思いを語る【G-STAR 2022】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『Lies of P』ほど19世紀欧州の再現にこだわった韓国産ゲームはない―アートディレクター ノ・チャンギュ氏が思いを語る【G-STAR 2022】

『Lies of P』のコンセプトを通じて生まれた新たなスタイル“Belle Epoque Punk”とは?

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『Lies of P』ほど19世紀欧州の再現にこだわった韓国産ゲームはない―アートディレクター ノ・チャンギュ氏が思いを語る【G-STAR 2022】
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『Lies of P』のアートディレクター ノ・チャンギュ氏

NEOWIZは11月17日、韓国・釜山で開催中のゲームショウ「G-STAR 2022」の会場にて、日本メディア向けにアクションRPG『Lies of P』のアートディレクター ノ・チャンギュ氏によるカンファレンスを実施しました。

本カンファレンスは18日開催のIDCでノ・チャンギュ氏が行う講演内容を、特別に1日早く日本メディア向けに公開したものとなっています。コンセプトアーティスト歴約19年の経歴を持ち、これまで『Kingdom Under Fire II』『Bless Unleashed』などを手掛けてきたノ・チャンギュ氏。今回は「奇妙だが、美しい」をキーワードに彼が新たに考えだしたコンセプト、“Belle Epoque Punk”がどのように生まれたのか、そして『Lies of P』の陰鬱としたヨーロッパ風アートワークの源など、ゲーム本編の開発とはまた別の視点で本作の背景を語っています。

「人間の本質を扱うようなプロジェクトに関わりたかった」

開発スタジオRound8で「ソウルライク」というジャンルだけが漠然と決まり、企画構想がスタートしたのは2019年夏のこと。19世紀末ヨーロッパを背景にしたい、錬金術師といったシナリオコンセプトが出る中、当時のノ・チャンギュ氏はSF映画「ブレードランナー」などにハマっており、できれば「人間の本質を扱うようなプロジェクトに関わりたい」という夢を抱いていたそうです。

「人間になりたい」という気持ちを描く童話、「ピノキオ」をダークバージョンに脚色したらどうだろうか。未来よりも過去を見せたいと考えていたところに、嘘みたいなタイミングで『Lies of P』総括ディレクター チェ・ジウォン氏がピノキオのプロジェクトを持ちこみ、「運命じゃないか」と感じたとのこと。

“奇妙だが、美しい”がゲームのキーワードに

童話「ピノキオ」のオリジナルは教訓や社会風刺、人間のモラルを問いかける内容を含んだ偉大な物語のため、どう解釈し現代の表現にキャラクターを合わせていくのがアーティストとしての課題であり、原作を脚色するには勇気が必要だったというノ・チャンギュ氏。

「ピノキオ」はイタリアの童話なのに、なぜモチーフが仏・パリなのかと問われると、イタリアも候補ではあったが全てを原作に従う必要はないと考え、世界観としてよりマッチするゴシックテイストに合わせたと回答されました。

Round8の才能あるアーティストたちが悩む中、心を動かしたのがのちにゲームのキーワードともなる「奇妙だが、美しい」という言葉でした。参考にしたのはロマンス要素も含む幻想・怪奇小説から生まれた「ゴシックホラー」と呼ばれるジャンルで、代表作は映画「フランケンシュタイン」や「スリーピー・ホロウ」などです。一方で『BioShock』『Dishonored』といった作品も印象に残り、ゴシック・ホラーとSFを融合したものを『Lies of P』の核に据え、プロジェクトが動き出しました。

ノ・チャンギュ氏たちはこのゴシック・ホラーとSFが融合したジャンルを「Belle Epoque Punk」と命名。2019年の『Lies of P』キーアートでは赤い複数の腕は人間そのものを、“P”の流す黒い涙は人間の感情を象徴し、手には機械の心臓を描いています。

2019年の『Lies of P』Keyアート

本作の舞台となる架空都市「Krat」。“そのモチーフになぜ「ベルエポック」を選んだか?”という点についてノ・チャンギュ氏は、ベルエポックと呼ばれた時代のパリは最も美しく豊かで華やかだったが、同時に労働の機械化による失業と民衆の怒り、フリークスを見世物小屋で楽しむような文化など、19世紀ヨーロッパには裏に回れば暗い部分があり、そういった要素を溶け込ませたかったと説明しました。

コンセプトアート

主人公“P”はまだ成長しきっていない、美の象徴である少年

プレイヤーが操作するキャラクター“P”はゲームコンセプトである「奇妙だが、美しい」の“美しさ”の部分を象徴する存在に。最初は20代半ばぐらいのデザインでしたが、まだ成長しきっていない少年であるべきと考え、現在のデザインに落とし込んだとのこと。

そのほか、ゼペットじいさんの風になびく青いマフラーや、ゲーム内一番のお金持ちであるVenigniが着用する19世紀末のファッションの再現性などがこだわりポイントに。ゼペット爺さんのモデルになったのはノ・チャンギュ氏の奥様のお父さんだそうです。

また、建物の外では湿度や風を感じられるような天候、照明と水の反射による暗く鮮やかな表現を意識。室内ではアンティーク家具の質感や、スポットライトで演出されるボス戦の没入感など、テクニカルな演出とこだわりを強調していました。

19世紀欧州の世界観をここまで再現した韓国ゲーは無い

最後にノ・チャンギュ氏は「自分が知る限り、ここまで丁寧に19世紀ヨーロッパの世界観を表現した韓国産ゲームは『Lies of P』が初めてではないかと思います。Round8のチームメンバーは開発者・アーティストとして責任をもって、最善を尽くします。世界中のユーザーの期待を超えるクオリティと内容になるよう頑張りたいです」と、最後の最後まで完成度にこだわる意気込みを述べ、カンファレンスは幕を閉じました。

ゲーム内に登場する機械・装置はデザイン先行ではなく、ゲーム内でのギミックありきでそれに沿う形にデザインされている
提供:NEOWIZ
《稲川ゆき》

プレイのお供は柿の種派 稲川ゆき

ゲームの楽しさに目覚めたのは25歳過ぎてからの超遅咲き。人やら都市やら、何でも育て上げるシミュレーション系をこよなく愛する、のんびりゲーマーです。

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