イスラム圏で幅広く使われているアラビア語は『アサシン クリード ミラージュ』でもバグダッドで使われる原語になっていて、アラビア語吹き替えがリージョン問わず収録されています。アラビア文字は右から左に読み、私たちが慣れている左から右の逆になり、普段見かける分には馴染みがなくて難しそうに見えますが、アラビア語を公用語とする人口は約4億人で英中西に続いて世界第4位。ムスリム（イスラム教徒）として学習しているのは約20億人とも言われています。多文化の世界を理解する上では避けて通れない言語であり、グローバルな国際関係を築くのに欠かせないものです。
劇中にもアラビア語の言い回しを訳した台詞が出てくるので、今回はそれを含めたアラビア語の初歩的な会話フレーズを見ていきましょう。
سَلَام/サラーム：こんにちは（平安を）
『ミラージュ』でもよく使っているムスリムの基本的な挨拶です。時間に関係なくいつでも使えるので、アラビア語の初手としてまずこれを覚えましょう。このフレーズを正式な形で言うと以下のものになります。
السلام عليكم/アッ＝サラーム・アライクム：あなたの上に平穏がありますように
この挨拶に対して返す決まり文句がこちらです。
وعليكم السلام/ワ アライクム アッ=サラーム：あなたにも平安がありますように
語順が入れ替わっていることに注意が必要ですが、意味はほぼ同じです。ムスリムにとって挨拶は敵意がない同胞であると示す行いであり、クルアーン（コーラン）にもその大切さが書かれています。その中で常に使われる「サラーム」（平和、平安）は重要な言葉で、本作の舞台である「マディナ・アッ=サラーム」を訳せば「平和の都」という意味です。
مع السلامة/マ アッ=サラーマ：さようなら（平安と共に）
別れの挨拶にももちろん「サラーム」があります。お互いに平穏無事な日々を祈り合うことがイスラム教の基本になるのです。
أنا باسم/アナ バシム：私はバシムです
最も簡単な自己紹介の形です。「アナ ○○」で自分の名前や国籍、職業を伝えることができます。名前以外になるとアラビア語には名詞の性別があるので、例えば「日本人」であれば「アナ ヤバーニー（男性）」「アナ ヤバニーヤ（女性）」と使い分ける必要があります。ちなみにアラビア語で「バシム」とは「笑顔」を意味する名前です。
شكرا/シュクラン：ありがとう
عفوا/アフワン：どういたしまして
コミュニケーションで最も使う「ありがとう」は「シュクラン」と言います。挨拶、自己紹介、感謝、この3つはアラビア語を専門に習わずとも国際的な常識として身につけておくべきフレーズです。
إن شاء الله/イン シャー アッラー：神がお望みなら
ムスリムが何かの約束をするとき、先の予定を決めるときに必ず付け加える言葉です。人間いつ何が起こるか分かりませんから、「絶対」や「必ず」とは言わないそうです。人間が未来のことを確定させるなどおこがましい事なので、代わりに「神がそうするべきだと望まれたなら、私はその約束を果たしているだろう」と、最終決定は全て神にあるとしているのです。
الله أكبر/アッラー アクバル：神は偉大なり
لا إله إلا الله/ラー イラーハ イッラッラー：アッラーの他に神はなし
بسم الله/ビスミラ：神の名において
よく映像で物騒な場面に出てくるイメージのフレーズですが、実際のところは嬉しいときの喜びや、衝撃的な出来事を目にしたとき、単純に景気づけのかけ声で使うごく普通のもので、日常で「Oh my god」を使う感覚と似ているとのことです。
イスラム教における「アッラー」「神」とは旧約聖書で世界を創造した「神」であり、ユダヤ教、キリスト教の「神」と同一の存在です。（ただしイスラム教はクルアーンのみが聖典であり、旧約聖書の内容が一部組み込まれている）。戦いのかけ声にもなるのは確かですが、この言葉自体に危険なイメージを持つのは、大勢の平穏なムスリムにとって非常に迷惑になります。バグダッドの街中で生活しているような一般市民が普通のムスリムなので、アサシンのような極一部をだけ見て偏見を持たないよう心がけましょう。
