
『蒼天の白き神の座 GREAT PEAK』や『未踏峰への挑戦 アルプス編』など、かねてからゲーム業界には名作登山ゲームが多くあります。やはり山登りという設定は、チャレンジングなゲームプレイを作るうえで相性が良いのでしょう。
そこで今回は、筆者がSteamで遊んだ登山ゲームを5つ紹介したいと思います。
皆でいっしょに山登り……オバケになっても見守ってるよ『PEAK』
まずは今大人気の協力登山ゲーム『PEAK』からご紹介します。
プレイヤーはニコニコ顔で空港にやってきた観光客の一団ですが、飛行機が謎の島に墜落してしまいました。そびえ立つ山の先に何かがあると信じ、プレイヤーたちはみんなで協力しながら山を登っていきます。

基本的にはスタミナやアイテムを管理し、一歩一歩山登りを進めていくゲームですが、マルチプレイヤーゲームとしての勘所がわかっています。

後から登ってくる味方に手を差し伸べて引き上げたり、(ゲーム内VCで遊ぶと)滑落してしまった味方の声が遠ざかっていったり、ケガをした味方に救急キットを使ってあげたり、登攀ルートをともに考えたりと、笑えたりヒヤッとしたりする瞬間が随所に盛り込まれているんです。死んでしまっても、味方の近くをおばけとして彷徨い、会話と見学だけはできるのが良いですね。

残念ながらまだ日本語はありませんが、大したテキスト量ではないので、ほとんどプレイには支障をきたさないでしょう。皆でギャーギャー言い合いながら登攀してみてください(ちなみに序盤に落ちている宝箱に『カエル探偵』のステッカーが貼ってあったのを筆者は見逃しませんでした)。
タイムループを破るには、狂気に満ちた山を登るしかない! ローグライト登山『Insurmountable』
お次はアクションから離れてみます。『Insurmountable』は、ローグライト要素のある登山RPGです。

本作はヘックス型で形成された山道をクリックして登っていくゲーム。先に進む命令を出すまで時間は止まったままなので、自分のペースで遊ぶことができます。

プレイヤーはタイムループに囚われ、何度も山登りをする羽目になります。チャレンジのたびに恒久的なアップグレードポイントが入るので、次の登山が少しだけ楽になりますが、やっぱりローグライトなので、一番大事なのは「どうしたらリソースを節約できるのか、どんなイベントが起きるのか」といった経験です。
体力、酸素、正気度、体温、スタミナという5つもあるリソースを管理しながら、幾重にも分岐するルートを取捨選択していきましょう。それにしてもこの山、変なヤツが多すぎる!

かつてこの地で何が起きたのか……DON’T NODが送る静かな登山『Jusant』
『Jusant』は「引き潮」という意味のフランス語です。
ゲーム開始直後、プレイヤーは砂漠地帯に立っており、目の前には巨大な塔が建っています。塔の内部には生活空間がありますが、もう誰も住んでいません。他に目立つのは、至るところに放置されている船の残骸……そう、ここはかつて港町だったのです。

本作は『ライフ・イズ・ストレンジ』などで知られるDON’T NODが開発したアクション・アドベンチャー。その他の登山ゲームと異なり、落下死や時間制限といったハラハラする要素はなく、横道を探索して収集物を集めたり、ロアと環境ストーリーテリングで語られるシナリオを読み解いたりするタイプのゲームです。

プレイヤーは(おケツみたいな形の)青い生物「バラスト」とともに、人が消えた塔を登っていきます。細やかに作られたアートワークとサウンドスケープに浸りながら、遠征隊の記録を読み、かつてこの地で起きた出来事をひとつずつ理解していきましょう。変わり種ではありますが、静かな感動に包まれる良作です。
特定の人に向けて、誕生した、ゲーム。特定の人を、傷つけるために。『Getting Over It with Bennett Foddy』
世界中の配信者を苦しめた「壺おじさん」も、ここに列記しておかなければなりません。そんな気がしました。

ベネット・フォディー氏の名前を一躍有名にした本作は、ただマウスをグリグリと動かすだけ。マウスを向けた方向におじさんがハンマーを動かすので、それを出っ張りに引っ掛け、遠心力を利用しておじさんを浮かし、上へ上へと昇っていきます。
本作の最大の特徴は、すべてのステージがシームレスであるため、滑落したら床があるところまで真っ逆さまに墜落するということ。何時間頑張っても、ワンミスでどこまでも戻される可能性があるわけです。

この執拗にやり直しを要求するゲームスタイルは、大量のフォロワーを生み出しました。「この世にはもっとカジュアルに褒めてくれるゲームがいっぱいあるのに、どうしておれはこんなにもキツい巻き戻しを喰らって、挙句作者にまで煽られなきゃいけないんだ……?」と頭を抱えながらも、気づいたら再トライしているという、妙な魔力のあるゲームです。
霊峰に登り、自分を見つめ直す精密プラットフォーマー『Celeste』
最後は鉄板の精密プラットフォーマー『Celeste』について語りましょう。
本作はパニック障害を抱えた少女マデリーンが、セレステ山に挑戦するというストーリーの2Dプラットフォーマーです。ダッシュとジャンプを駆使して、やたらと難しいステージに何度も挑戦していきましょう。

『スーパーマリオ3』や『ロックマン』シリーズなどのパロディがあることからわかる通り、非常にクラシカルなジャンプアクションゲームですが、意外にもストーリーパートが充実しています。
マデリーンが登山を通して自らの心の闇と和解し、成長していく姿が、プレイヤーの試行錯誤を繰り返して何とかステージを突破していくゲーム体験と重なっています。

霊峰が見せる幻に負けず、以前の自分を超えていきましょう。音楽も素晴らしいですよ!
おまけ……登攀ルートの選定からビバーク中の料理まで、本気の登山シミュレーター『Cairn』が気になる
もうひとつだけ紹介したいのですが、11月5日に発売が予定されている『Cairn』が気になっています。現在デモ版が配信中であり、筆者も遊んでみました。

主人公は登山家のアーヴァ。相棒のクライムボットとともに、マウント・カミを登頂するためにコンディションを整えています。

本作は何と言っても登山のガチっぷりが特徴です。聳える岩肌を見上げ、どのルートで登るかをイメージし、四肢をそれぞれ岩の裂け目に這わせて、着実に登っていく必要があります。登攀中も、手足がプルプル震えてきたら岩壁に杭を打ち、スタミナを回復しなければなりません。

ビバーク中は道中で拾った薬草などを調理したり、壊れた杭を修理したりと、やることは山ほど(山だけに)あり、気が抜けません。
数多ある登山ゲームのなかでもとびきりずっしりとした、リアル寄りの作りです。ホンモノの挑戦を求めている方は、ぜひともデモ版を触ってみてください。

以上、Steamで遊べる登山ゲームを紹介させていただきました。皆さんの好きな登山ゲームはなんでしょうか? ぜひコメント欄で教えてください。
※UPDATE(2025/06/22):『Cairn』の発売日を修正しました。ご指摘ありがとうございました。