パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた

個人開発の現場と、それを支えるPocketpair Publishingの役割とは?

連載・特集 インタビュー
パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた
  • パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた
  • パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた
  • パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた
  • パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた
  • パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた
  • パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた
  • パズルARPG『CASSETTE BOY』インタビュー!「見えないものは存在しない」世界は、“自分が好きなものだけを作る姿勢”から生まれた

Pocketpair PublishingがPC(Steam)向けに発売したパズルアクションRPG『CASSETTE BOY / カセットボーイ』。“見えないものは存在しない”という量子力学やシュレディンガーの猫などを思わせるユニークな仕組みを中心に据え、ユニークな冒険を届けてくれる新作インディーゲームです。

本記事では、開発者であるワンダーランドカザキリのhondakiyoshi氏(以下、honda)と、Pocketpair PublishingのBucky氏へのインタビューをお届けします。

作っているのは、徹底して「自分が好きなもの」

――自己紹介をお願いします。

honda:ワンダーランドカザキリの代表、hondaです。弊社は2人しかいない会社で、僕が1人でゲームを作っている形です。元々CGデザイナーでこれまでゲーム業界での経験もなかったのですが、CG系の講師やWebデザイナーを経て、8~10年ほど前に「Unityを使えばデザイナー出身でもゲームを作れる」と気づいて作り始めました。

honda氏

Bucky:ポケットペアのパブリッシング部門の責任者を務めているBuckyです。パブリッシングに関する業務はすべてやっているので、正直大変です(笑)。部門ができる前からもポケットペアに携わっていて、『クラフトピア』『パルワールド』の開発やリリースにも携わりました。

Bucky氏

――いきなり横道にそれるのですが、ワンダーランドカザキリさんって不思議なお名前ですよね。どういった由来があるのですか。

honda:よく言われます(笑)。元々僕がワンダーランドというデザイン会社を設立したのですが、同時期に友人がカザキリというシステム会社を立ち上げたんですよ。最初から同じ事務所で働いていたんですが、そのうち「これ一緒にしたらいいんじゃない?」と気づいて、ワンダーランドカザキリになりました。

――スクウェア・エニックスとか、バンダイナムコみたいな成り立ちだったとは……! ワンダーランドカザキリさんの過去作『ブロッククエストメーカー』や『ダンジョンに捧ぐ墓標』は“いわゆるRPG”みたいなエッセンスでしたが、今回はガラッと印象が変わりましたね。

honda:『BQM』はパズルRPGメーカー、『ダンジョンに捧ぐ墓標』はコツコツレベルアップして世界の秘密を探るようなローグライクみたいなRPGでした。見た目こそ変わっていますが、実はパズルと探索、そして発見というゲームの内側に流れるコアは一貫しているんですよ。

――なるほど。逆に、「見えないものは存在しない」というきわめてパズル向きに思えるメカニクスをメインに据えながらも、アクションやRPG要素がしっかり入っていることに驚きました。

honda:基本的に作っているのは僕が好きなもの、僕がやりたいものなんですよね。なので、自然とそういう要素が入ってくるのだと思います。

――アートやサウンドはゲームボーイや、レトロゲームの雰囲気ですよね。

honda:僕のビデオゲームの原体験は8bit時代なんです。だから、自分の中にある面白いゲーム像もあの頃のものなんですよね。ただ、レトロっぽい画面だけだとどこにでもあるじゃないですか。だから、今までにないものを作りたくて、3Dのボクセルグラフィックを採用しています。

――実際にプレイしてみて、カメラを回して謎解きするという体験が面白かったです。このメカニクスはどうやってできあがったのですか。

honda:本作は最初、絵から作り始めました。それを回転しても、いかにドット絵っぽく見えるかというところにこだわりまして、その結果回転できる角度が決まり、メカニクスも自然にできていった……という感じです。

ただ、このメカニクスはイベント出展などで皆さんに驚いていただいたのですが、「これだけで終わっていいのかな……」とはずっと悩んでて。

少し話が逸れるんですが、僕は宇宙が大好きで、宇宙の動画や本をよく読んでいるんですよ。「わからないものを知りたい」という知的好奇心を探求していった最後にあるものって、宇宙じゃないですか。そこから量子力学やシュレディンガーの猫みたいな話は大好きだったんです。

――なるほど、ご自身の知的好奇心がベースだったんですね。

honda:変な話なのですが、このドット風の絵のアイデアをどうすれば面白くできるかな……としばらく考えていて、ひらめいたのはシャワーを浴びてる時だったんですよ(笑)。頭を洗っているときに突然閃いて、急いでお風呂から出て、奥さんに「めっちゃいいの思いついたよ」って伝えて、すぐに実装し始めました。宇宙や量子の話がゲームのアイディアに突然繋がった感じです。

――「見えないものは存在しない」メカニクスを利用しつつも、謎解きにバリエーションがありますよね。いろいろな発想に唸らされる部分も多くありましたが、こういった謎解きはどのように考えてたのですか。

honda:本当に苦労した……としか言えなくて(笑)。最初この「シュレディンガーシステム」を思いついて、それ自体は面白かったんですが、そこからしっかりしたパズルにするのは難しくて。単純に寝るときもご飯を食べるときもずーっと考えて、とにかくいろいろなアイデアを試しました。

――攻略に必須ではない謎解きダンジョンみたいなものもありますよね。

honda:猫を追いかけたり、なくなった月を探すという一連の本筋があるなかで、高難度なパズルを解かないと進めなくなるのはあまり良くないなと思って。ただ、シュレディンガーシステムは面白くて意外なことがたくさんできるので、それを実現するためにあの要素を入れましたね。自分のやりたいものもしっかり入れることができました。

――謎解きゲームだと思ってプレイしていたので、ボス戦があるのにも驚きました。

honda:ここも、自分の作りたいものがアクションRPGなんだという考えによるものですね。「ボス戦」や「キーアイテムを集める」みたいなお約束によるゲームの緩急は必要だと考え、入れています。ボスならではのシュレディンガーシステムのアイデアも出せそうでしたしね。

――本作は、BitSummit Driftでの受賞・ノミネートやSelected Indie 80への選出など発売前からさまざまな実績があります。さまざまなパブリッシャーさんからのお声がけもあったのではないかなと思うのですが、今回PC版をポケットペアさんがパブリッシングする経緯はどういったものなのでしょうか。

honda:僕はずっとセルフパブリッシングだったので、これまで契約経験がほぼありませんでした。これまで自分たちでできていたので、そもそもパブリッシャーっているのかな?というのは疑問だったんです。

ただ、ドイツのGamescomなどでポケットペアの方が毎日お話しにきてくれて、「あぁ、本当にこのゲームのことを気にいってくれてるんだな」ということが感じられたんです。

もうひとつの理由としては、ポケットペアさんがパブリッシング事業を始めると発表したとき……「パブリッシュしてもらいたいな」と思ったんです(笑)。「日本のインディー会社が世界で通用するゲームを作った」という事実をとても尊敬していました。

――実際に、パブリッシングでパートナーになってからの感触はいかがですか。

honda:ほぼ初めてなので他所と比べてどうか……というのはわからないのですが、僕はゲーム開発において「スピード感」を大事にしています。新しいことを何でもやって、次々と送り出していきたい。その点、ポケットペアさんはレスポンスも早いし、インディーゲーム会社さんなので、熱量も同じくらいもっているなと感じました。きっと、僕が作っているゲームを同じように、大切にパブリッシュしてくれるだろうと。

ポケットペアさんと契約をはじめてから実はそれほど経っていないのですが、この短期間にいろいろなことをやっていただいて、とても助かっています。

ポケットペアいわく、hondaさんは「真のインディーゲーム開発者」

――ありがとうございます。Buckyさんにもお訊きします。本作をポケットペアでパブリッシングすることに決めた理由は何でしょうか。本作のどこに惚れ込みましたか。

Bucky:契約した大きな理由のひとつは、その独創性にあったと思います。初めて見たのはたしか1年ほど前でしたが、「これは何だ?」と強く印象に残りました。それほどまでに、どれだけ愛情と手間をかけて作られているかが一目で伝わってきたんです。

これまで数え切れないほど多くのゲーム企画を見てきましたが、「売るためだけに作られたゲーム」と「作り手が本当に好きで、情熱を持って作っているゲーム」の違いは、意外とすぐに分かります。ゲーム作りそのものを心から楽しみ、大切にしている姿勢は、特に日本では強く人の心を打ち、応援したいと思わせるものだと思います。

――PC版のみパブリッシングとなった経緯を教えて下さい。(※編注:コンソール版はForever Entertainmentがパブリッシング担当)

Bucky:正直に言うと、お話をした時点ですでにForever Entertainmentがパブリッシャーになっていました。この件に関しては僕たちの動きが少し遅かったと言えるかもしれません。

ただ、それでも彼らは本当に素晴らしいパートナーですし、実際に一緒に仕事を進める体制も整っています。関係性もとても良好で、これまでのやり取りも非常にスムーズです。チーム全体として、お互いに気持ちよく協力できていて、本当に満足しています。

――hondaさんのクリエイターとしての魅力はどんなところにあると思いますか。

Bucky:彼は「自分が本当に作りたいゲームを作りたいだけなんだ」と話していて、その姿勢はポケットペアの考え方とも強く共鳴しています。我々も流行や外部の都合ではなく、自分たちが作りたいゲームを作ることで知られているスタジオですからね。そういう意味でも、hondaさんの作品やこれまでのポートフォリオを見たとき、ゲームの作り方や制作に向き合う姿勢に強い共感とつながりを感じました。

hondaさんはゲームデザインもプログラムもサウンドもすべてひとりで手掛けているというだけで尊敬しますが、ランダム生成のダンジョンを実装したり、ちょっとしたミニゲームを入れたりと、さまざまな部分で挑戦を重ねていて、「まだやるの!?」と思わされました(笑)。とにかく良いゲームを作って送り出すことが好きな、“真のインディーゲームクリエイター”のような存在だと思います。

honda:下手すると、パブリッシャーさんから止められそうですよね(笑)。もう進んでるんだから、これ以上追加するのやめてくれと……。

パブリッシャーなしでも成功するゲームが多い今、理想的な関係性とは?

――良好な関係性が伝わってきました(笑)。ゲーム外のお話も少しお訊きします。いまのインディーゲームは作品が溢れかえっていて、いかに目立つかは非常に重要な課題です。そんな中、開発者とパブリッシャーがそれぞれできること・やるべきことは何だと思いますか。

Bucky:ゲームを作って発売するというのは、実は多くの開発者が思っている以上に、まったく別の仕事だと思います。特にhondaさんのような個人開発者の場合、その大変さはなおさらです。ゲームを作る以外にも、マーケティングがあり、ビジネスの問題があり、Steamの管理やストアフロントの運営など、開発者にとっては本質的ではない雑音のような作業が山ほどあります。

でも本来あるべき理想の関係は、開発者はただゲーム作りに集中し、自分が作りたいものを楽しく作ることに専念する。そしてパブリッシャーが、そうした裏側の業務や雑多な作業をすべて引き受ける、という形だと思うんです。

今回のケースでも、hondaさんにはとにかくゲーム制作そのものに集中してほしい。面白いゲームを作ること、作る過程を楽しむことだけを考えてほしい。その他のバックエンドの業務は、すべてパブリッシャーが責任を持って対応する。それが理想的な形だと考えています。

honda:Buckyさんが言っている点は「まさに」でした。ストアの準備はやはり面倒くさくて、そんなことしてる暇があるならもうちょっとデバッグしていたいよ!と思ってしまうので、それをやってもらえるのは本当にありがたいです。そういった知見は、パブリッシャーさんが持っているでしょうしね。

――ありがとうございます。今のお話は作り手/売り出す側の観点だったと思いますが、逆にユーザーからはどういったものが求められると思いますか。また、どんな意識をもって活動していますか。

Bucky:ポケットペアのやり方は、いま多くのパブリッシャーが取っている「前に出て主導する」スタイルとは少し違うと思います。基本的には裏方に徹して、開発者をもう一度ゲーム作りの中心に戻す、という考え方ですね。メディア対応やインタビューの調整、インフルエンサー施策、マーケティング、ビジネス面の処理といった部分は引き受けますが、作品そのものの前面には出ない。

実際、ポケットペアが関わっているタイトルでも、表に出てくるのはあくまで開発者や作品そのものです。たとえばhondaさんのゲームも、プレイヤーから見れば「hondaさんのゲーム」であって、「ポケットペアのゲーム」ではありません。すべての表舞台に立つのは開発者で、僕たちはその裏側で仕事をしている、という感覚です。

でも、それでいいと思っています。ユーザーやプレイヤーにとって大事なのは、誰が売っているかではなく、誰が作り、どんな思いで作られたゲームなのか、という部分ですから。そうした形で支えることこそが、僕たちの役割であり、もっとも意味のあるパブリッシングのあり方だと考えています。

honda:インディーゲームが多様であるように、ユーザーさんもまた多様だと思います。その中でも、僕のゲームを面白いと思ってくれる人に届いて、楽しんでいただくことが大事だなと思っています。ユーザーさんからの意見も取り入れつつ、あくまで「自分のゲーム」という軸をブレさせないようにしていくことが、開発者に重要なことではないかと思います。

――面白い姿勢ですね。メディアやユーザーなどから見ると、もちろん会社によって違うことは前提で、大手会社の開発・パブリッシャーの関係は強い主従関係があるようにも見受けられます。一方で、インディーパブリッシャーの場合、作家の創造性を尊重しながら作品を世に送り出しているように見る人も多いと思います。いま、理想的な関係性とはどういったものだと思いますか?

Bucky:理想的な関係は、あくまで「支える側」に徹することだと思っています。ポケットペアはゲームの内容や方向性をコントロールすることはありませんし、クリエイティブ面で主導権を握るつもりもありません。基本的な立場は、「hondaさんのゲームを支える存在」です。

もちろん、アドバイスを求められれば意見は伝えますし、フィードバックもします。ただし、もしhondaさんが「それには賛成できない」と言うのであれば、それで構わない。最終的な判断は常に開発者本人にあります。僕たちには、ビジョンを変えさせたり、創作上の決定に介入したりする権限はありません。ただ隣で支えるだけです。それが、パブリッシャーとしてあるべき姿だと思っています。

今後についても同じです。10年、20年前は、パブリッシャーが株を持ったり、会社やゲームそのものの主導権を握ったりするのが当たり前でしたが、今の時代ではそれはもう現実的ではありません。特にSteamのようなプラットフォームでは、毎日膨大な数のゲームがリリースされ、個人でもセルフパブリッシングが可能です。

だからこそ、これからのパブリッシャーは「支配する存在」ではなく、「支援する存在」であるべきだと思います。開発者の代わりに背後の仕事を引き受け、開発者が安心して制作に集中できる環境を作る。それが結果的に、開発者にとってもパブリッシャーにとっても、いちばん健全で、双方に利益のある関係になると考えています。

honda:開発者とパブリッシャーというのは、あくまでお互いビジネス上での関係性です。ただ、その上でもお互いに同じゴールを見据えて、このゲームが面白いものなのだと信じあって、同じ熱量で“仲間”という意識でやりとりできるのが理想ですね。ちゃんとゲームを好きでいてくれて、それを届けようという想いがあるかどうかは、やりとりでわかってくるんですよね。今回は、“一緒に作っている”という感じがして、素晴らしい関係性でした。

――素晴らしいですね。では最後に、読者に向けてコメントをお願いします。

honda:本作は、僕の好きなものがすべて詰まっています。一見古いようだけど、全く新しい、遊んだことがないゲームだと思います。新しいものを遊びたい人だけでなく、見た目で敬遠している人にも、ぜひ触ってほしいです。

Bucky:日本はもともとビデオゲーム文化の中心地ですし、今でも素晴らしい作品が数多く生まれています。まるでルネサンスのような時代だと思いますね。そうした中で、本作のような存在は、日本のすべてのゲーム開発者にとって一つの指針になると思います。

個人でも、本当にひとりでゲームを作れる時代です。プログラムを書き、音楽を作り、アートも自分で手がけて、ひとつの作品として完成させることができる。そういう可能性を、この作品ははっきりと示してくれています。

だからこそ、本作が、もっと多くの日本の開発者を後押しし、「自分にもできるかもしれない」と思えるきっかけになってくれたらいいなと、心から願っています。

――ありがとうございました。

『CASSETTE BOY(カセットボーイ)』は、PC(Steam)向けに配信中。2026年1月29日までゲームを10%オフ 1,332円で購入できるリリース記念セールも実施中です。また、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/ニンテンドースイッチ版はForever Entertainmentから配信されています。


ライター:みお


ライター/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top