2月20日、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は国内ゲーム産業におけるデータや調査結果をまとめたレポート、「CESAゲーム産業レポート2025」の発刊を記念したセミナーを実施しました。
セミナーではコンテンツやクリエイターの支援を行う省庁の働きや、ゲーム開発スタジオによる生成AIの活用事例、グローバルな展開が当たり前となる時代での課題など、さまざまな観点から“ゲーム業界の今”を見る多彩なトピックが語られました。
本稿ではゲーム開発スタジオAI Frog Interactiveの代表取締役・新清士氏による「AI Frog InteractiveのAI利用とゲーム業界での生成AIの実情」の講演の様子をお届けします。
ゲーム開発スタジオが語る「生成AI」の今―技術の進歩により、一貫した人物描写も可能に

新清士氏はAI Frog Interactiveスタジオの代表で、デジタルハリウッド大学大学院では教授として「ゲームへのAI」応用をテーマに研究しています。
新氏はゲーム会社を経てゲームジャーナリストとして活躍、その後VR剣戟アクション『ソード・オブ・ガルガンチュア』のプロデューサーを務めたほか、2023年にはAI Frog Interactiveを設立し、AI技術を活用して開発されたサバイバルクラフト『Exelio(エグゼリオ)』を3月5日に早期アクセスとしてリリースしました。


講演では、そんな生成AIと向き合う新氏による「今の最新生成AIでできること」について、AIで作成した映像を交えながら紹介が行われました。
現状の生成AIによる動画制作はかなり実用的なレベルに至っており、人物はもちろんのこと、セリフなども自動で生成が行われます。また、シーンによってキャラクターの表現が異なってしまう“人物の一貫性”というこれまでの課題についても、克服しつつあるようです。
GoogleのNano Banana Proでは、2Dのイメージ画像や三面図、表情差分を作成することで多くのシチュエーションやバリエーションに対応できるようになりました。例えば人物の顔に似た母親を生成したり、座標の情報を入力することで特定のロケーションを風景にしたり……といったことも可能になっています。
また、Nano Banana Proでレンダリング風に起こした画像をテンセントの「Hunyuan 3D Engine」で3Dモデル化したり、ふたたびNano Banana Proでアニメ風に変換したりすることも可能です。AIは物を持ったデータを生成するのは苦手なものの、こういった手法を用いることで対処できるといいます。
新氏のAI Frog Interactiveはメンバーが4名体制のため、コストと効率性を上げるために一部作業で生成AI技術が導入されています。ChatGPTやGeminiを駆使し、アイデア出しや発注資料作成、コーディングなどに役立てられているそうです。
生成AIの大きなメリットとして、アイデアがディレクターの思い描くイメージとの乖離が小さいという点が挙げられます。そうして選ばれたものからさらにパターンを細分化することで、具体的な理想のものへデザインを近付けていけます。
デザインの類似性についてはGoogleレンズなどを使用し、チェックを行っているそうです。新氏によれば既存のIPにはプロンプトで意図的に寄せようとしない限り、そこまでデザインが寄ることはないといいます。

Steamで2026年にリリースされた作品の30%が生成AIを利用―ただし“社会的受容”には課題あり
続いて新氏は、ゲーム業界と生成AIにまつわるトピックも取り扱いました。そもそも、プラットフォームや技術の転換が起こるゲーム業界では、新技術として生成AIが取り入れられる土壌があるといいます。
実際に生成AIを導入しているデベロッパーも多く、Steamでは2025年にリリースされた作品のうち約21%が、2026年にリリースされた作品(1月末まで)では約30%が生成AIを利用していると開示されているのです。
また、Steamは、1月に生成AI利用は裏方の効率化のためのツールの場合は申請の必要がなくなり、「プレイヤーが消費する形で同梱される、AI生成コンテンツ」の場合に明示が必要であると大きな方針変更が行われました。これはグラフィックや音楽など、プレイヤーが直接見ることになるコンテンツについては、申請の必要があるとしたもので、かなり範囲を限定なものに切り替えたとも言えます。

「GDC 2026」で公開された3,000人以上のゲーム開発者に対して行われた調査では、個人では36%が、会社では52%がAIを使用。しかし多くの目的はリサーチやアイデア出し、日常業務での活用で、アセットの作成などに使用しているケースは稀だといいます。
ニンテンドーストアでも露骨に生成AIを利用しているものが多く出回っているものの、Steam同様に生成AIを利用していることでプラットフォーム側から規制をかけられるような事例は見られていません。

とはいえ、ゲーム開発と生成AIについては、生成AIが受け入れられるかどうかの“社会的受容”が欧米や日本、中国などで大きな差があるといいます。
特に欧米地域では「クリエイティブを壊す」という認識が強く、近年続いているレイオフや労働問題と生成AIについて結びついて問題視されることが多くあります。昨年、『Clair Obscur: Expedition 33』がThe Indie Game Awardsでの受賞を剥奪された件なども例として挙げられています。
日本でも生成AIに対する忌避感や抵抗はあるものの、欧米ほどではないと新氏は指摘。反対に中国では大手ゲーム会社を中心に、生成AIを利用したタイトルが多く開発されすでにリリースされているようです。現在、中国市場は、PCゲーム市場の3~4割を占めており、その影響力は大きくなっているといいます。
このような生成AIが広く受容されている背景として、新氏は中国の国家政策の影響に言及しました。国の主導のもとにAI活用が進められているため、国民に広く生成AIが普及しているといい、中国全体でみるとAIの利用率は国民の約43%にのぼるとのデータもあるそうです。
また、欧米圏でも最近の調査では、アートワークなどプレイヤーが目に触れる機会のあるものに対して生成AIが使用されていると反発は大きくなるものの、補助や効率化という部分では比較的反発が少ない傾向にあることを新氏は指摘しています。

日本国内では行政による法的な整理は完了しており、2025年にはAI推進法の成立にあわせてガイドラインなど利用する上での注意点はすでに整備が進んでいます。今後、裁判による判例等の結果によって変化する可能性はありますが、特にAIと著作権を巡る進行中の裁判は、日本国内では数例しか進められていないのが現状で、今後も大きな変化は起きない可能性が大きいです。
ゲーム業界で生成AIを利用するには、経済産業省が公開している「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」がどのような注意点を持って利用すればいいかが解説されており、非常に参考になります。的確に利用すれば生成AIは、合法的に問題なく利用可能な状態にあります。
結論として、ゲーム業界では生成AIの利用が進んでいる傾向にあり、今後は市場や業界のありかたにも影響を及ぼすと新氏は語りました。特に小規模なインディースタジオでは効率化の恩恵が大きい一方、欧米圏では反発も大きいという実情もあります。生成AIをいつどのように導入するかはそれぞれの企業の戦略と覚悟の問題となってくると語りました。















