ゲーマー諸君、コントローラーをハンドルに持ち替え『Uber Eats』をプレイしよう――

みんなご存じ、街中でよく見かけるあの緑色のデリバリーサービス。2016年の日本サーバー開設以来、なんと今年で運営10周年を迎えました。
この長寿タイトルは、度重なるマップ拡張、新マウント(乗り物)の追加、ルールの修正など数々のアップデートを繰り返し、常に環境(メタ)を変化させながら進化を続けてきました。そして10周年の節目となる2026年、本作のゲーム性を根底から覆す2つの特大パッチが登場します。
ひとつは、プレイヤーの射幸心を煽り、駆け引きと緊張感を増幅させた「新インセンティブ」。そしてもうひとつが、国家権力による公的なペナルティ制度「自転車の交通反則通告制度(通称・青切符)」の実装です。
本レビューでは、いかに本作が絶妙なゲームバランスの上で成り立っているかを解説し、今回のアップデートがゲーム性を拡張させたのかを紐解いていきます。もちろんゲームとして評価し、採点も行います。
なお、筆者は非電動自転車を使用してプレイ(配達)しています。そして高低差と人口密度がカギを握る人気サーバー新宿・渋谷・中野・四谷周辺を拠点にしています。
配達効率の最適化がスコア稼ぎに直結する
『Uber Eats』の配達システムは実にシンプルです。まずはスマートフォンのアプリを起動し、「配達リクエスト」という通知を待ちます。リクエストの画面には「配達完了による確実な報酬額」「現在地から商品を届けるまでの推定時間」「商品の受け取り場所と引き渡し場所」の3つが表示されます。
これを受諾すると、目的地(主に飲食店)にピンが刺さったマップが表示され、配達員はそこに向かうことになります。目的地に到着し商品を受け取ったら、次はお客さんの住所が表示されます。無事に商品を届け、スマートフォンで配達完了のボタンをスライドすればミッションクリア。晴れて報酬が発生するという仕組みです。
配送料は様々な要素を加味して算出されますが、大体は推定時間(距離)によって決定するものだと捉えてよいでしょう。基本の配送料はリクエストが表示された段階で決まっており、そこに「チップ」や「インセンティブ」が追加されることもあります。

また最近では飲食店だけでなく、コンビニや薬局で商品をピックアップしたり、スーパーで配達員自ら注文された商品をレジに通して配達(代理購入)したりすることもあります。
さて、ここまでの説明で分かるように、『Uber Eats』の配達は対象の物を所定の位置から所定の位置まで運んで報酬を受け取る“おつかいゲーム”と捉えてよいでしょう。
そして、リクエストの時点で基本報酬が決まっているため、「いかにして効率的に配達するか」によって時間当たりの報酬量が変化していきます。これが『Uber Eats』の戦略性の大きなカギとなるので、しっかりと注目していただきたいところです。
ここからは、配達員がどのような戦略で効率的に配達をこなし、報酬(スコア)を伸ばしていくのかを解説し、『Uber Eats』がいかにゲームとしてレビューに値するものであるかを紐解いていきましょう。
効率的に配達をこなすための戦略、複雑なルート取りとリソース管理
先に述べたように、『Uber Eats』はいかに効率的に配達するかで最終的なスコアが変化していきます。ここで私が実践しているゲーム的なテクニックをいくつか紹介しましょう。
『Uber Eats』の配達員は、たいていの場合自宅からプレイをスタートさせます。いわゆる出社という行為を行う必要がないため時間を効率的に使えるように思えますが、帰りとなると話は別です。
何も考えずにとにかくリクエストを受諾し、がむしゃらに配達していくプレイスタイルを続けてしまうと、気づいた時には全く知らない土地まで飛ばされて途方に暮れる……なんていうこともあります。
当たり前ですが、帰るのにも時間をかけて自転車を漕ぐ必要があり、その時間は本来配達をしてスコアを稼ぐことのできる時間のはずです。遠くに行って帰り道に時間を使ってしまうということは、実質的なスコアロスに繋がります。
その上、よく分からない土地で完全に体力を使い切ってしまったら絶望です。疲れ果てて動けなくなり、泣く以外に何もできなくなる事態は最悪です。
だからこそ拠点から離れすぎないよう、そして体力を使い切らないようにリクエストを選定しなくてはいけません。この体力というリスクを管理しながら、なるべく深部に向かいスコアを獲得していく緊張感は、『Escape from Tarkov』や『Dark and Darker』などのハードコアなゲームさながらです。
体力という点に関連して、非電動自転車プレイヤーが直面する「坂道問題」についても説明しておかなければなりません。
私は冒頭で新宿・渋谷・中野・四谷周辺で配達していると言いました。少し北に行けば池袋という繁華街に出ることができ、相応の配達リクエストを期待できるのですが、絶対に行くことはありません。なぜなら、新宿エリアと池袋エリアを繋ぐ目白・高田馬場周辺にはとんでもない坂が無数に存在しているからです。

坂道は当たり前ですが大きく体力を削られます。そして配送料は「距離」によって算出されるため、どんな激坂であってもそれが配送料に加味されることはありません。そうなると坂のあるエリアに行くうまみは一切なく、プレイヤーはいかにして坂を回避するかを考えながら上手に立ち回らなくてはいけないのです。
とはいえ、坂道を全て避けるのは難しいものです。甘んじて受け入れるルートももちろん存在しています。例えば、東中野から初台あたりまでを繋ぐ山手通りも坂になっているのですが、ここには歩道に自転車専用の広い通路が設けられており、道がずっと真っすぐなのでよく利用しています。こうしたルート取りの工夫も、かなりゲーム性を帯びているといえるでしょう。
他にも、配送料に加味されない要素であるため、プレイヤーに敬遠されがちなのが「タワーマンション」です。ご存じの通りタワマンは物理的に高い(縦に長い)です。高いということはエレベーターに乗っている時間が長くなります。
さらに、多くのタワマンは表の住人用/来客用エレベーターを使うことはできず、搬入口にあるひとつのエレベーターをすべての業者と共用で使うため非常に混み合います。またセキュリティーが厳重なため、マンションによって受付の方法が変わり、すんなりとエレベーターまで行ける場所もあれば、そうでない場所もあるといった面倒な仕様なのです。
このように通常の配達よりも大幅に時間がかかるため、たいていの場合は避けられがちです。しかし、めちゃくちゃ疲れたとき、あるいは極端に暑い/寒い時に、一時的に避難して体力を回復するセーフハウスとして利用することも可能ではあります。すべてのタワマンリクエストをキャンセルするわけではない、というのも最終的なスコアを増やすコツになるでしょう。
なお、ネット上には「タワマンはチップをもらいやすい」という情報が蔓延っていますが、そんなことはめったにないので注意が必要です。悲しいかな、日本サーバーにチップ文化は根付いていません(ガチの土砂降りの日に可哀想な顔をしてタワマンに配達した時にチップを貰ったことはあります)。
さらに面白いのが、まいばすけっとやマルエツといったスーパーで、配達員自ら商品をレジに通して配達するリクエストの存在です。(ここで「まいばすけっとはスーパーか否か」の論争は禁止とします)
この自ら商品を代理購入するリクエストは、おそらく買い物の時間が加味されているためか通常の配達に比べて割高であることが多く、基本的にスコア稼ぎにはうってつけです。
しかし、大量の商品を注文されてスーパーの隅から隅まで歩き回らなくてはいけない場合や、大量の水を注文されて重すぎるという罠もあります。もちろん逆に、本当に品数が少ないアタリの時もあります。
このランダム性がたまりません!『Uber Eats』の配達で最も運が絡む要素であり、このランダム性と戦略性のバランスが「次も、次も」とリプレイ性を高めていく要因になっているはずです。そもそも配達リクエスト自体が、すべて運要素が絡むものだと言えるでしょう。

ルート取りと体力管理、自分がどこまで行けるかを試す緊張感、そしてランダムな運要素。これらが短いスパンで絶え間なく繰り返されます。この美しく洗練されたゲーム的サイクルをひたすら回し続けることこそが、『Uber Eats』というゲームの神髄なのです。
厳選が容易だった「配達リクエスト」、より判断力が試される仕様に変化
とはいえ、リクエスト数がどの地域よりも多い新宿・渋谷近辺のエリアであれば、ピークタイム中は効率のいい案件が来るまで“リセマラ”のように拒否をし続ければよいでしょう。こうなるとプレイヤーによる最適化が容易になりすぎ、プレイの複雑性に欠けるという「ゲームとしての欠点」を抱えることになります。
しかし、前述した3月頃のアップデートで導入された「新インセンティブ」が、その状況に大きなゲーム性を与えました。『Uber Eats』のリクエスト厳選がよりシビアかつ、緊張感のあるものへと変化したのです。
『Uber Eats』のインセンティブは、「クエスト」という明らかにゲームを意識した名称のシステムをクリアすることによって得ることができます。雨の日に配達すると配送料が増加するといった特別なクエストも存在していますが、常駐のクエストとして「◯回配達したら◯円」というシンプルなものも存在していました。
3月頃のアップデートでは、その常駐クエストに大きな変更が加えられました。変更後は「◯回配達拒否をするまでに、◯回配達したら◯円」という、“どの配達を受けどの配達を拒否するか”の駆け引き要素が明確に重要視される仕様になったのです。

事前に回数を自分で選択することができる。配達回数が多ければ報酬が増えるがその分完了しなくてはいけないというリスクがつきまとう。
これにより、あまり良くない条件の配達でもリクエストを受諾しなくてはいけない瞬間が来ます。「あと1回でクエスト達成だけど、もう1回も拒否できない……!」という時のヒリつき。リセマラのようにとにかくいい条件の配達が出るまで拒否し続けることができた従来の仕様では、絶対に得ることのできなかった緊張感が、このシステム変更によって生まれたのです。
効率と安全性にバランスをもたらした国のアプデ「青切符」
さて、ここまでの解説を読んで、未プレイ勢や初心者はこう思うはずです。「要するに、交通ルールを無視してめっちゃ速く自転車を漕げば、一番効率よく稼げるくね?」と。
確かに、単純なシステム上はそうです。本当に報酬の効率だけを求めるのなら、ルールを破る無法者であればあるほど得になってしまう構造があるのは否めません。
しかし、当然ながらそんなプレイスタイルは絶対にやってはいけません。シンプルに危ないからです!!!あと大前提として、配達している料理が崩れないように丁寧に運ぶ必要もあります。
『Uber Eats』における運転中のミスは「本当の死(もしくは他者の殺害)」に繋がるものであり、架空の死と違って冗談では済まされません。
また、私のように非電動自転車を使用しているプレイヤーは、必ずしも絶対的なスピードが出せるわけではないため、なおさら安全と効率のバランスを見極める必要があります。
昨今は、モペット(ペダル付きの原付)を普通の自転車のように操縦し、あらゆる交通ルールを破壊しながら都会のアスファルトと人間を同時に切り裂く無法者も少なくありません。しかし、そんなプレイスタイルは(ゲームにおいて)フェアさに欠けた行為であり、捉え方によっては「チート(不正行為)」と変わりはありません。当たり前ですがアカウントBANどころか、法によって裁かれる対象です(怒)。
そんな無法者たちを取り締まり、健全なゲーム環境を保つために4月から施行された特大アップデート。そう、それが「自転車の交通反則通告制度(通称・青切符)」という新しい制度です。

これまで自転車の違反行為は「赤切符(刑事罰)」という重い処理しかなく、よほどの悪質性がない限り見逃されがちな部分がありました。しかし、この「青切符」の導入により、信号無視や一時不停止、右側通行、携帯電話を使用しながらの運転(ながらスマホ)といった違反に対し、数千円から一万数千円という反則金がサクッと課されるようになったのです。
このアップデートは、『Uber Eats』のプレイ体験に新たな要素を加えました。ルールを破れば即座に「反則金」という形での大幅なスコア減点(ペナルティ)が与えられます。この重いペナルティを避けるために、プレイヤーには交通ルールを厳守するという新たな緊張感が生まれたのです。
実際に、(気のせいかもしれませんが)歩道ではしっかりと自転車を押して歩くする配達員が増えたように思えます。道路に立つお巡りさんの数は実際に増え、それらを見かけると背筋が伸びるのも事実です。
いかに効率を求めようとも、警察(都市のモデレーター)の目をかいくぐることはできません。都会のような人が多い地域ではなおさらです。
常に周囲の交通状況を警戒し、一時停止線では確実に足を着き、スマホの画面は安全な場所に停車して確認する。「効率の追求」と「コンプライアンスを守り抜くスリル」が同居するようになったことで、ゲームとしての奥深さと緊張感がさらに一段階引き上げられたのでした。
ゲーム化した労働に身をゆだねよう
体力とルートを管理し、ランダム性に一喜一憂しながらコンクリートジャングルを駆け抜ける美しいゲームサイクル。そこに「新インセンティブ」による安易なリセマラを許さないヒリつきと、「青切符」という絶対的なペナルティが加わりました。
これにより、本作はただの配達作業から一転。常に周囲の交通状況を警戒しながら最適な選択を迫られる、高度な“サバイバルおつかいタクティクスゲーム”へと進化をとげたのです。
そして、これほどまでに洗練されたゲーム体験を誇りながら、本作にはいい感じの「おまけ」もついています。
シンプルに配達業務に勤しむ行為は運動になり、プレイヤーの健康寿命を延ばします。この世界で『リングフィット アドベンチャー』が「ゲームをしながら運動になる」と高評価を得ているのなら、ゲーム体験と運動を両立させた上で「現実のお金まで稼ぐことができる」本作は、もはや格上のタイトルだと言わざるを得ません。
ですが、勘違いしないでほしいのです。このような実益はあくまで、このゲームサイクルを回し続けた結果ついてくる「おまけ」に過ぎません。私、そしてハードコアゲーマーであるGame*Sparkの読者の目的は、己の限界に挑み、ゲーム化した労働に身をゆだねることにあるのです。
Game*Spark レビュー 『Uber Eats』 非電動自転車 2016年9月29日
大型アプデによってリスクリターンの調整が行われ、配達中の工夫の余地がプレイヤーの想像力と知的好奇心を掻き立てる良作
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GOOD
- 配達効率がスコアに直結し、自身の成長を実感しやすい体験
- リスクリターン、リソース管理がより複雑化しリプレイ性が強化
- 運動になって健康寿命が伸びる
BAD
- 大量に水を頼めるようにするの重すぎるからやめてくれ
- 注文者にちゃんと住所書くように言ってくれ










