日本企業が米国の頂点に立った世界…自動車産業、歌舞伎、影響を受けている文化は?原典から読み解く『サイバーパンク2077』(日本編) | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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日本企業が米国の頂点に立った世界…自動車産業、歌舞伎、影響を受けている文化は?原典から読み解く『サイバーパンク2077』(日本編)

本記事は原作の「サイバーパンク2.0.2.0」にて日本がどのような描かれ方をしているか見ていきます。『サイバーパンク2077』の土台となっている部分を知ることができるかもしれません。

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日本企業が米国の頂点に立った世界…自動車産業、歌舞伎、影響を受けている文化は?原典から読み解く『サイバーパンク2077』(日本編)
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gamescom 2019や東京ゲームショウ2019における『サイバーパンク2077』開発者インタビューでは、「日本」の文化に強い影響を受けていることについて言及されていました、Game*Spark編集部が実施したインタビューにおいても、「ラーメン」の看板や日本人キャラの存在などについて触れています。そして日本の影響は原作である「サイバーパンク2.0.2.0」にも顕著にあらわれており、多くはそこから取り入れられているようです。

本記事では原作の「サイバーパンク2.0.2.0」にて日本がどのような描かれ方をしているか、詳しく見ていきます。『サイバーパンク2077』の土台となっている部分を知ることができるかもしれません。

「サイバーパンク2.0.2.0」執筆当時の背景


サイバーパンクにおける日本の影響を考える上で、作品の執筆当時の日本について少し触れます。この世界でのアメリカと日本の関係性は、「2.0.2.0」が出版された1988年当時の情勢の延長にあります。

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズには、当時の状況を端的に知ることのできる場面があります。シリーズ第三作目での1985年を生きる主人公のマーティと1955年を生きる科学者のドクの会話。日本製の部品を馬鹿にしたように語るドクに対して、日本製品は最高だとマーティが返しています。

このことから、たったの30年でアメリカにおける日本の評価が180度変わっていることがわかります。高度経済成長後の日本がアメリカを追い落とさんとする勢いに乗っていることが垣間見える場面です(制作総指揮のスティーブン・スピルバーグが日本贔屓だということもあるかもしれませんが)。

急速に成長する日本を好意的に捉える人もいたことでしょうが、底しれぬ恐怖感を覚える人々もいたと思われます。サイバーパンクというディストピアは、その米国に渦巻いていた恐怖が現実のものになった世界として描かれます。つまり日本の大企業がアメリカの経済の頂点にたった世界というわけです。

当時の背景を確認したところで、ここから原作における日本のあり方を見てみましょう。

アラサカコーポレーションという恐るべき日本企業の象徴


公開されている『2077』の画像や映像の中に何度も登場している「ARASAKA」の文字。これはナイトシティを牛耳る日本企業「アラサカコーポレーション」のロゴです。

この企業は原作の「2.0.2.0」にも登場しています。以前の記事でも触れていますが、その本部のビルはナイトシティで最も高く、飾り気の無い黒いガラスと金属でできているということ。ただの企業ビルではなく、悪の組織的な印象を与える作りとなっているようです。

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奥に見えるアラサカのかっこいいロゴ。この街の頂点にいることをアピールしているようです。

『2077』ではもう少し洗練されたスタイリッシュなデザインのビルとなっています。それでもこの会社の持つ若干の禍々しさは少しも衰えていないように見えます。

サイバーパンクの世界でも車といえばやっぱり日本


日本が世界に誇る自動車産業。「2.0.2.0」においてもその存在は無視できないものとなっています。

公開された情報で、日本製の車と名言されたものは現在のところありません。

レンタルヴィークル(レンタカー)の会社として、ホンダ=エイヴィス・レンタカーという会社が、幅を効かせています。レンタルヴィークルの国際的チェーンであり、スローガンは「我が社は今でもナンバー・ワン」。なんとも含みのある表現ですが、この業界では最大手であることは間違い無いようです。ホンダ=エイヴィスのオフィスは、「日本流のシンプルで控え目な、実用一点張りのデザイン」と表現されています。「2.0.2.0」執筆当時の日本の企業に対するイメージの表れでしょうか。

ちなみに『2077』の情報では、日本製のバイク「YAIBA KUSANAGI」が紹介されています。先日の東京ゲームショウでも披露されていたので、実物大のモデルに興奮した人も多いことでしょう。

色といい形といい、少なからず漫画「AKIRA」の影響を受けていることが見て取れます。

日本の芸能と裏の世界


サイバーパンク作品において、日本の芸能は非常にシンボリックに描かれています。サイバーパンクと聞いて、映画「ブレードランナー」の巨大スクリーンに映し出された日本の芸者の広告を一番に思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。日本特有の芸能文化がこのディストピアを一層魅力的に彩っています。

ナイトシティにおいても、その存在は外せません。ジャパンタウンでは中川歌舞伎一座と呼ばれる団体が日々興行を行っています。近未来の歌舞伎は一層クオリティも高く、演者たちの力の入れ方も半端なものではありません。一部のメンバーは芸により入り込むために、役柄に合うようにボディ・スカルプティング(人体彫刻)を施したものもいるほど。そのような者は、決して自分の役から抜け出すことはないのです。

この一座の舞台である演舞センターは、ヤクザ一家を率いる資産家の援助によって設立されたという話もあります。また一部メディアによると、そもそもこの中川歌舞伎一座自体がギャングの一団であるとか。歌舞伎愛好家はこれらのウワサを笑い飛ばしてきたようですが。

『2077』の公開された情報では、日本人NPCはまだほとんど登場していません。芸者や歌舞伎役者、そして主人公の敵にも味方にもなりえそうなヤクザなどが、絡んでくるのか来ないのか続報が気になるところです。

ナイトシティ8
本文と関係ありませんが食事の要素も気になるところ。「ブレードランナー」のオマージュとして日本食も出てくるかもしれません。

「カラテ」などの日本固有の戦闘技術


戦闘技能も、日本の伝統的武道や武術が盛り込まれています。「2.0.2.0」では銃を扱う技能の他に、格闘技を習得することができます。ボクシング、テコンドー、カポエラなどのたくさんの技能がありますが、日本の武道である「合気道」、「空手」、「柔道」も選択肢の中に存在します。

合気道は相手の力と勢いを利用してそれを相手に返す技術。柔道はスポーツとしての側面が強いが、実戦に於いても申し分ない力を発揮可能。空手はいくつかの流派に分かれる日本版のカンフーである……などなど、それぞれの技能が端的に紹介されています。

戦闘技能はこれから少し明らかになってくるのでしょうか。

合気道を習得すれば回避や防御に優れ、柔道ならば投げ技に特化できるなど、技能によって戦い方も大きく変わってくるようです。やるかやられるかの世界を生き抜く上で、自分に最適な武道を選べるようになっています。

現在明らかになっている『2077』の情報の中には、これらの武術武道に関するものはありません。合気道で相手の攻撃をいなすようにして修羅場をくぐり抜ける主人公というのもかっこよさそうですね。

ジョニー・シルヴァーハンド所属のバンド「SAMURAI」


忘れてはならないのが、本作でも最も重要なNPCであるジョニー・シルヴァーハンド。彼がリーダーを務めるバンドの名前が「SAMURAI」です。

SAMURAIのロゴ。すでに本作を象徴するマークとなっています。

これは原作「2.0.2.0」からそのまま引き継がれた設定です。書籍内ではこの「SAMURAI」という言葉についての解説は無く、このバンドが特に日本的な音楽を演奏しているという記述もありません。

つまりは、サムライという言葉自体がナイトシティで一般名詞化しているということを象徴しているのでしょう。日本語がこのナイトシティの大衆文化にどれほど浸透しているかがよく分かるポイントだと言えます。



原作「2.0.2.0」は、読み込めば読み込むほど各所に日本の影響が見て取れます。同様に『2077』も公開される情報の中に、多くの日本語や日本文化が垣間見えます。やはり日本人のプレイヤーとしては、これらに着目せずにはいられません。
《竜神橋わたる》
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