『バイオハザード ヴィレッジ』デューク=公爵?欧州文化に欠かせない貴族の序列を知る【ゲームで英語漬け#62】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『バイオハザード ヴィレッジ』デューク=公爵?欧州文化に欠かせない貴族の序列を知る【ゲームで英語漬け#62】

商人デュークとはどういう立場なのでしょうか?

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『バイオハザード ヴィレッジ』デューク=公爵?欧州文化に欠かせない貴族の序列を知る【ゲームで英語漬け#62】
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『バイオハザード』シリーズには映画好きのスタッフが多く集まっており、様々なオマージュが込められています(諸々の件については棚上げでお願いします)。そんな中、東欧が舞台の『バイオハザード ヴィレッジ』では、東欧を代表するアニメーション作家、ユーリ・ノルシュテイン(「霧につつまれたハリネズミ」)の名前と、人気キャラクター「チェブラーシュカ」に似た人形が登場しています。

10分ほどの短編「霧の中のハリネズミ」はYouTubeで公開されており、磨りガラスを多用した霧の表現は今見ても目を見張る美しさです。

練習問題の解答

『バイオハザード ヴィレッジ』ベッドタイムストーリー じょーずによめるかな?「Village of Shadows」を朗読する【ゲームで英語漬け#61】
問:
“'Gifts we gave, but more you took,' she snarled.”
“'So more, in turn, is due.'”

解答例:
『我らは贈り物を授けた。だがお前はそれ以上を手にしたね』と、彼女は怒鳴りました。
『今度はその分の対価が要るよ』

「more」の使い方で“the more A, the more B”の用法を習います。この場合のAとBは比例あるいは同等の関係にあり、問題文にある2つの「more」はこの形式の変化になります。ですから、2行目の「more」は最初の「more」よりも多く、ではなくて「それと同じ分だけ」と取るのが妥当です。「取った分と同じだけ支払わなければならない」、つまり魔女的に言えば「対価」になるのです。

ミステリアスな商人「公爵」の立場を推察する

イーサンの行く先々に唐突に現れる神出鬼没の謎多き商人、デューク。英語ではthe Dukeと表記され、デュークは個人名ではなく「公爵」の称号であることが分かります。本人はしがない商人(Humble merchant)と言っていますが、ドミトレスク夫人と取引したり、イーサンの事情を把握していたりと、どういうポジションなのかははっきりしないままでした。

本作のボスキャラに当たるドミトレスク夫人、ドナ(アンジー)、モロー、ハイゼンベルクは「四貴族」(Four Lords)と称され、マザーミランダから与えられたそれぞれの土地で独自の活動を行っています。

ヨーロッパにおける貴族とは、王族とは別に国王から領有権・支配権を認められた地方の有力者です。中央集権が未発達だった時代において、地方の治安維持などの行政を担える人物に権力を認めたことから始まりました。それが一族の世襲制となり、いわゆる特権階級の世襲貴族(Hereditary peerage)を形成するに至りました。

貴族はそれぞれ男爵、公爵などの「爵位」(Noble ranks)を持ち、日本における官位のように、領地の大きさや君主への貢献に応じた序列が与えられます。 この序列は社交界、特に王室の行事においてはとても重要で、招待の順番や席順に関わります。

国によって差異はありますが、英語表記における主要なものは以下の5つです。

  1. 公爵:Duke/Duchess

  2. 侯爵:Marquess/Marchioness

  3. 伯爵:Earl,Count/Countess

  4. 子爵:Viscount/Viscountess

  5. 男爵:Baron/Baroness

上に行くほど領地や資産が多い有力者ということで間違いありません。ファンタジー作品で領主の称号として登場することもあり、一度は目にしたことがあると思います。細かい区分は他にもありますが、おおよそこの5つの序列を知っておけば、貴族同士のパワーバランスへの理解が深まるでしょう。

デュークはこの5つのうち最高ランクの「公爵」。そして「The」を付けて名乗れるのは正真正銘貴族の当主である証です。当主以外の貴族一門は「The」を外した「儀礼上」の爵位で呼ばれ、当主の「正式」な爵位とは区別されます。没落貴族だったとしても、出入りのあるドミトレスク家を差し置いて「The Duke」と名乗るのは相応の実力者でなければ許されません。デュークは少なくとも対等、あるいは数段上の立場から取引をしていたということです。

これらの領有権を持つ称号の下には、「騎士」(Knight)の称号があり、国に対して大きな功績を挙げた人物に対して授与されます。時々ニュースでも日本人に対してナイトの称号が与えられたと報じられますね。この称号では領有権はなく世襲もないので「準貴族」という扱いです。

商業で名声を上げた「ジェントリ」(イギリス)、「ブルジョア」(フランス)は、どれだけ成り上がっても領有権持ちの貴族にはなれません。そのため貴族側から「成金」等と蔑まれてしまうのです。

いわば第5の貴族とも言える商人「公爵」は、果たして今後の物語にどう絡んでくるのか、「コネクション」との関わりはあるのか、謎は深まるばかりです。

(参考:Webふらんす 新井潤美「ノブレス・オブリージュ——イギリスの上流階級」-白水社)

長文読解で学ぶ英語表現:イーサンの手記

我らが主人公イーサン・ウィンターズは、歴代主人公中最も悲惨な目に遭う不幸体質を遺憾なく発揮してきました。その反動かイベントシーンではFワード連発で口の悪さばかりが目立ってしまいました。『ヴィレッジ』ではそれだけではなく、表には出さない内心の不安を日記に綴っています。

Feb. 9th/Dawn/Some forest

It should have been a night like any other.

But then...Chris Redfield came in and destroyed our family.

2月9日/夜明け/どこかの森
それはいつもと変わらない夜のはずだった。
だが突然、クリス・レッドフィールドがやって来て家族を壊しやがったんだ。

“Should have 過去分詞”で「~するはずだった(だがそうはならなかった)」となります。やや持って回った言い方なので、小説の書き出しにありそうな一文です。

Feb. 9th/Early Morning/Village Square

I managed to survive those creatures and an old woman told me Rose is here...somewhere.

I need to find her... before those monsters get to her too.

  • Manage:管理する、なんとか完遂する

2月9日/早朝/村の広場
なんとか怪物共から生き延びると、ある老婆が「ローズはここにいる」と言ってきた―この村のどこかに。
あの子を見つけなければ…化け物が捕まえる前に。

ポイントは1行目の“here...somewhere.”の部分。「Here」で確信を持ちつつも「Somewhere」で当てがない不安も出します。同系統の単語2つで希望と絶望が混在する気持ちをうまく表現しています。

Feb. 9th/Morning/Luiza’s House

I found survivors huddled together at Luiza’s house. I think she’s the bigwig here.

生き残りはルイザの家に身を寄せているようだ。彼女はここの有力者らしい。

「Bigwig」は直訳すると「大きなカツラ」。バッハやイギリスの裁判官などが付けているあのカツラを指します。転じてそれを着用できる有力者自体を意味するようになりました。

Feb. 9th/Morning/A Mine

I was on my way to the castle when I was captured by a group of five twisted freaks.

Heisenberg, a hammer wielding asshole.

Dimitrescu is the tallest woman I’ve never seen.

Donna, has some kind of creepy doll.

Moreau is some nasty, pus-spewing thing.

And last of all, their “mother,” Miranda...

They can control those creatures. too.

Who-- What are they people?

城に向かう途中、5人の奇妙な連中に捕まってしまった。
ハイゼンベルグ、ハンマーを振り回す野郎だ。
ドミトレスクは見たことのないほど背が高い女。
ドナは気色悪い人形のようなものを手にしている。
モローは意地の悪そうな膿まみれの奴。
そして、奴らが「マザー」と呼ぶミランダ…

奴らは怪物も操れるようだ。
あいつらは一体何者―いや、「何」なんだ?

英語版になると日記でも口の悪さは絶好調です。第一印象最悪とはいえ、特にハイゼンベルグに「asshole」とは、相当気に食わなかったのでしょうか。

Feb. 9th/Morning/Castle Chambers

This castle looks like something straight out of a gothic horror movie, complete with giant noblewoman and her three witch daughters.

But they caught me while I was looking for Rose and strung me up. I had to bite the bullet in order to get loose. Hurt like hell too!

  • Chamber:部屋、寝室

2月9日/朝/城の寝室

この城はゴシックホラー映画からそのまま出てきたような見た目で、お誂え向きにデカい貴族女と魔女の三人娘ときた。

ローズを探していると、奴らは俺を捕まえて吊し上げた。脱出するのに肉他なかった他なかった。死ぬほど痛ぇ!

「苦痛に耐える」「いやいやながら行う」を“bite the bullet”と言います。文字通り、戦場で手術をする際に、舌を噛まないよう布の代わりに弾丸を噛ませたことに由来します。

日本語では割と淡泊に抑えてありますが、英語版では結構勢いがある文章に仕上がっています。読み比べてみると面白いですね。

練習問題:次の文を訳しなさい。

Will purchase oddities and rarities for a fair price.

取引画面の中に小さく書いてある文言です。拡大しないとよく見えないので、きちんと読んだ人は少ないのでは?

《Skollfang》

好奇心と探究心 Skollfang

ゲームの世界をもっと好きになる「おいしい一粒」をお届けします。

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