リズムACT『No Straight Roads: Encore Edition』―日本で『FFXV』や『ストV』に携わったメンバーがマレーシアに設立したスタジオのデビュー作【開発者インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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リズムACT『No Straight Roads: Encore Edition』―日本で『FFXV』や『ストV』に携わったメンバーがマレーシアに設立したスタジオのデビュー作【開発者インタビュー】

マレーシアでの開発におけるハプニングで一番よくことは…雷による停電でした!

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気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Metronomik開発、PC向けに10月21日にリリースされたリズムアクション『No Straight Roads: Encore Edition』開発者へのミニインタビューをお届けします。

本作は昨年6月にEpic Gamesストアで独占発売されていた、リズムアクションゲームの決定版。ノリノリの音楽に合わせリズムゲームのような感覚で敵と戦います。オリジナル版からの変更点として、追加リミックス曲や街の中で見つけられる500以上ものファンアート、ビジュアルエフェクトの強化などが行われています。日本語は吹き替え・字幕両対応で、日本の人気声優が吹き替えを担当しています。

『No Straight Roads: Encore Edition』は、2,570円で配信中


(日本語で回答いただきましたので、最低限の編集で掲載させていただきます)

――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?

ワン・ハズメー氏(以下ハズ)マレーシアを拠点とするゲームスタジオMetronomik(メトロノミック)のCEOであり、本作のゲームディレクターでもあるWan Hazmer(ワン・ハズメー)と申します。ハズと呼んで下さい。

Metronomikを2017年の12月に立ち上げるギリギリまで、10年ほど日本に住んでいました。8年ほどスクウェア・エニックスで『ファイナルファンタジー零式』のゲームデザイナー、『ファイナルファンタジーXV』のリードゲームデザイナー(街や拠点の企画などを主に行うチームのリード)とスピンオフ作品の『モンスター オブ ザ ディープ: ファイナルファンタジーXV』でもリードゲームデザイナーの仕事をやっていました。あと、Metronomikの共同経営者であり本作のクリエイティブ・ディレクター、そして僕の従兄弟でもあるDaim Dziauddin(ダイム・ゼィアウディン)は『ストリートファイター5』のコンセプトアーティストや『ファイナルファンタジーXIV:

紅蓮の解放者』のカットシーンのアニメーターなど、同じ日本のゲーム業界で仕事をしていたので、僕たち2人は日本のゲーム業界に長年お世話になっていました。

なので、日本のゲームメディアでも紹介してもらえるのは非常に光栄です。素敵な機会を頂きありがとうございます。

一番好きなゲームはありすぎて選べないので、ジャンル別で言うと…

  • <RPG>

    『ファイナルファンタジー7』:素晴らしい世界観

    『エターナルアルカディア』:冒険のロマンが溢れている

  • <カジュアル向け音ゲー>

    『リズム天国』:遊び心がいっぱい

    『スペースチャンネル5』:尖っている世界観で楽しいリズムプレイ

  • <ハードコア向け音ゲー>

    『ポップンミュージック』シリーズ:可愛さと難しさのギャップ

    『チュウニズム』:爽快感があり遊びやすいけど挑戦しがいがある

――本作の開発はなぜ始まったのですか?

ハズ僕は音ゲー(リズムゲーム)が大好きなのですが、仕事のあとや週末に同僚や友達と一緒にゲームセンターに行って音ゲーを一緒にやろうと誘うと、だいたい「いや~、見てるだけでいいよ」と断られてしまっていました。音ゲーユーザーさんなら同じような経験をしたことがある人もいるんじゃないでしょうか。

でも音ゲーが得意ではない、もしくはそんなにプレイしないという人でも、音楽自体が嫌いな人というのは滅多にいないと思います。好きな曲や、知っている曲が流れてくると、身体でリズムをとったり口ずさんだりすると思います。さらに、ゲームデザインにはルールがありますが、皆さんはそのルールを理解しなくても楽しんでいるように、音楽も同じだと感じていました。その誰もが好きな音楽を音ゲー以外のゲームプレイでつなげないかと、Daimと2012年頃から2週間に1回ぐらい、池袋のカフェでディスカッションしては本作のオリジナル版(『No Straight Roads』)や他のゲームの原型となるアイデアを練っていました。

そしてそのゲームのアイデアを使っていつ実際に開発をスタートさせようかという時期に関してですが、『FFXV』が発売される数年前に、当時ディレクターだった田畑さんに「『FFXV』の開発が終わったら、この経験をマレーシアのゲーム業界にも伝えるため、マレーシアに戻ってゲーム会社を作ります」と伝えてあったんです。

マレーシアは東南アジアの中でも唯一と言っていいほど、政府がアニメやゲーム業界を熱心に支援していて、ゲーム業界に携わる優秀な人も少しずつ増えてきていました。

ただ、基本的にはマレーシアのゲーム業界といえば、アウトソーシング会社がほとんどを占めていて、若いアーティストは増えるものの、ディレクションやプロデュースできる人材が少ないため、オリジナルIPを作る会社はほぼ無いというのが現状でした。

スクエニでのとても刺激的で学びの多い日々も非常に魅力的でしたが、母国マレーシアのゲーム業界の成長をもっと身近でサポートしたい、才能ある人達と一緒にゲームを作りたいと思い、帰国してスタジオを立ち上げることにしました。ちなみに、メンバーは8割が新卒もしくはゲーム業界未経験者だけど、ゲーム制作に熱意がある人々で、残り2割は僕やDaimのようなAAAゲーム開発経験者のメンバーで構成されています。

――本作の特徴を教えてください。

ハズ特徴は音楽とアクションを融合させたゲームプレイです。敵や環境はすべて音楽に連動するように動きがデザインされているので、敵もリズムにのって攻撃してきます。でもプレイヤーはリズムにのる必要はなく自由に動けるので、音ゲーのように「リズムに合わせるプレッシャー」はありません。最初はうまく避けながら音楽をよく聴いて敵の攻撃パターンを耳で覚えれば、あっという間に倒すことができます。ちなみにオリジナル版含む本作のスピードランナーの皆さんは、この耳で覚えるのを実践されているので、リズムよくバタバタと倒していきます。これは言葉で説明するより直接遊んで頂いたほうがいいと思うので、是非Steam版の本作で遊んでみて頂きたいですね!

ノーマルモードをクリアすると少しずつ難しいモードが開放されて、パリィできる攻撃が増えるなど、より「音ゲー感」が出てくるので、音ゲー好きな方やリズムに合わせて攻撃してスカッとした気分で楽しみたい方は、是非もっと難しいモードを開放させて楽しんで頂きたいです。

そして外せない特徴は、力を入れた日本語吹替・字幕対応です。マレーシアのインディーゲームスタジオが出すデビュー作にも関わらず、発売と同じタイミングで日本語吹替・字幕を用意したのは、最初にお伝えした通り、僕とDaimが日本のゲーム業界にとてもお世話になったのと、そもそも小さい頃からもずっと色んな日本のゲームで遊び楽しませてもらったささやかな「恩返し」として、絶対日本語吹替と字幕はリリースと同時に入れたいと思い、実現しました。

主人公のMayday(メイデイ)とZuke(ズーク)には、佐倉綾音さんと福山潤さんに声を入れて頂けた事も、とってもラッキーでした。その他、日本の声優さんの演技力の素晴らしさで、本作のキャラクターたちはより輝きを増しました。日本語吹替・字幕の全てにわたり大変お世話になったサウンドエイムスの皆さんには、心から感謝を申し上げたいです。

このアンコールエディションのみに収録されている特徴のひとつですが、オリジナル版を発売してこの1年で世界中のファンの皆さんと出会えたことに感謝の気持ちを示したいと思い、ファンアート参加型企画を事前に実施しました。短期間にも関わらず、500枚以上のファンアートが集まり、ゲームの舞台となるビニールシティのいたるところに飾らせてもらっています。そして、集めたファンアートはUIとして登場するギターケースに貼ることが出来るので、お気に入りのアーティストの作品を表示することもできます。街探索が好きな方はぜひあちこち探して、ファンアートをすべて集めてみてくださいね!

――本作はどんな人にプレイしてもらいたいですか?

ハズ音楽中心のアクションゲームなので、アクション好きな人も音楽好きな人にも遊んで頂きたいですね。音楽とアクションを融合させた新感覚のゲームプレイに最初は慣れずに苦戦する時でも、本作では「無敵ステッカー」という新アイテムを追加したので、ダメージを受けずにゲームをクリアしてストーリーを最後まで楽しむことも、何度も練習することも出来ます。

そしてノリがいい音楽やゲーム音楽好きな方にも是非プレイしてもらいたいです。本作は特に音ゲー好きな方なら耳にしたことがあるコンポーザーに多数作曲・リミックスを手掛けてもらっています。メインコンポーザーは『ファイナルファンタジーXV』『メタルギアソリッドV』『ソニックマニア』などを手掛けてきたゲーム音楽に精通したプロたちが率いるチームで構成され、ディレクターのFalk Au Yeongをはじめ、James Landino、Andy Tunstall、Funk Fictionがメインコンポーザーとして参加しています。

その他にも、日本を含め世界中のミュージシャンにご協力頂いています。ブラジルのドラマーBruno Valverd(Angra)、インフルエンサーピアニストのTony Ann、オーケストラ指揮者の仲間将太(Video Game Orchestra)、midori(ガールズ・メタルバンドLOVEBITESのギタリスト)、黒沢ダイスケ、青木征洋(Godspeed)、EDMミュージシャンのRoborob、Tokyo Machine、Michael Staple、Ian Tsuchiura(Hyper Potions)、日本の4人組インディーズロックバンドのOne Eye Closed、ボーカリストのNikki Simmons、アメリカのミュージシャンGarrett Williamson、フランスのHIPHOPミュージシャンのClyde Rabatel、そしてマレーシアのジャズギタリストのAz Samad。BandcampやSpotify、YouTubeなどストリーミングサービスでも聴くことが出来るので、是非ノリノリの音楽と、その音楽が融合したゲームプレイを楽しんで頂きたいです。

あとは、この1年プレイしてもらった方の声でよく耳にしたのが「ストーリーとキャラが良い」というありがたい言葉です。登場するキャラクターは皆それぞれの正義感を持っており、それぞれの理由で音楽をやっています。音楽には本作でも出てくるロックやEDMのような様々なジャンルがあるように、人の価値観も様々です。この異なる価値観がぶつかり合うストーリーをリッチに表現するために、ストーリーそのものだけでなく、ゲームプレイやビジュアルを通じてストーリーを伝えられるように仕上げました。

個人的には、アーティストやエンターテイナーなど何か表現している人、もしくは表現したいなとふんわり考えているけどまだ踏みとどまっている人に特に響くストーリーかなと思っています。ぜひ心当たりある方は、本作のストーリーを最後まで体感して頂き、どう感じたか教えていただけると嬉しいです。

――本作が影響を受けた作品はありますか?

ハズいっぱいありますね。ゲームを遊んでくれた方からは「『スペースチャンネル5』っぽい」とか「『ノーモアヒーローズ』っぽい」とか「『ジェットセットラジオ』っぽい」とかもありましたが、お察しの通りこれらすべてのゲームからも影響を受けています。

僕とDaimはドリームキャストとプレイステーション1、2あたりのクセが強くオリジナリティの高いゲームが大好きなので、本作はその世代のゲームへのオマージュでもあります。

ゲーム以外だと映画の「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」やウェス・アンダーソン監督作品、アニメだと「天元突破グレンラガン」あたりに影響を受けました。

――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?

ハズもちろんありました!というか今も継続して影響が出ていますね…。マレーシアは昨年の3月からロックダウンに近い状況になったので、その時から1年半以上完全にリモートワークで仕事をしています。

去年は特に本作のオリジナル版を仕上げる一番重要な時期にリモートワークになったので、色々とハプニングがたくさんありました。一番頻繁に起こるハプニングは「落雷による停電でPCが落ちる」…でしょうか。マレーシアは1日に1度、スコールのような感じでだいたい雷雨が一瞬来るので、雨雲が近づいてくるとグループチャットで「雷来るのでしばらくPC落とします」とメッセージが飛び交うことがよくあります。あとは、オリジナル版をCEROにレーティングしてもらう際、ちょうどCEROもコロナの影響で全業務を停止していたタイミングとかぶり、顔面蒼白になったりと…色々影響はありました。

――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?

ハズもちろん大丈夫です!本作の世界観を楽しんで頂けるのであれば、配信や二次創作もウェルカムです!

――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。

ハズ先程お話したように、日本語吹替・字幕にも力を入れているので、今まで洋ゲーに挑戦されたことのない日本のゲームファンの方々にもプレイして頂きたいですし、音楽が好きな人やクリエイティブな活動をされている方は、きっと本作の音楽やストーリーにぐっとくる方もいらっしゃると思います。

限られた予算、8割はゲーム業界未経験者というメンツ、コロナ禍の最中リモートに切り替えゲームを仕上げる、という色んな初挑戦が積み重なる環境の中、マレーシア発のオリジナルゲームがどんな出来なのかを、日本の皆さんにも是非体験して頂きたいです。

日本語のTwitterアカウントもあるので、お気軽に感想を送って下さると嬉しいです!

――ありがとうございました。

◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後インディーデベロッパーメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に500を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。

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