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「投げ銭の仕組みを作れば有志翻訳者が増えるでしょう」SRPG『Gloomhaven』トマトジュース氏インタビュー【有志日本語化の現場から】【UPDATE】

海外のPCゲームをプレイする際にお世話になる方も多い有志日本語化。今回は人気ボードゲーム原作SRPG『Gloomhaven』の有志翻訳リーダーに話を訊きました。

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投げ銭の哲学

自分が念頭に置いているのは「報酬」ではなく「投げ銭」なんです

――例えば、インディーデベロッパーと有志翻訳者の間で報酬のやり取りを仲介するサービスが登場したらどうしますか?

トマトジュース自分が率先して日本語化したいと思ったゲームがそんなサービスの対象だったら嬉しいですね。日本語化したくて日本語化した結果、ちょっとしたお小遣いがもらえてハッピー。動画配信も同じです。ゲーム実況をしたいから配信していますが、ついでにお小遣いがもらえてハッピー。

――ボランティアという性質上、無報酬にこだわる有志翻訳者もいると思いますが?

トマトジュース自分が念頭に置いているのは「報酬」ではなく「投げ銭」なんです。あくまで主体は投げ銭を投げる側にあって、投げたくない人は投げなければ良いし、賞賛の言葉だけで満足という有志翻訳者は受け取らなくても良い。自分は欲が深いので、物質的ななにかをもらったら嬉しいです。

――投げ銭であっても金銭を支払ったユーザーは、誤訳の修正やアップデートへの対応など継続的なサポートを期待しませんか?

トマトジュース日本語化した側は自分が作業できる範囲でおかしい部分を修正するのは当然だと思います。しかし、投げ銭は日本語化したものの使用料という位置づけではないので、義務ではありません。大道芸人に投げ銭を投げるときにサポートを要求しないのと同じですね。とはいえ、捉え方は人それぞれなので、実際に投げ銭システムを作るならユーザーからの不満にどう対応するかは検討しなければならない課題です。

――投げ銭をもらって日本語化していたら品質には今より気を配りますか?

トマトジュースいいえ、日本語化のやり方は変えません。報酬としてゲームデベロッパーから金銭をもらうのと投げ銭は別だと思います。投げ銭は投げる側に投げる意志があって投げるものです。投げる側が自分の作法に納得して、日本語化したゲームを遊んで満足した上での投げ銭ですから。DeepL先生を使った日本語化に満足して投げ銭を投げてくれるなら、品質はそれで十分です。

――有志日本語化で投げ銭のやり取りを円滑に行うことは可能だと思いますか?

トマトジュースグループによる日本語化や翻訳の場合、現実的にはどう分配しても不満を持つメンバーが出てくると思います。参加者が全員リアルの友達同士で、もらった投げ銭で焼肉バーベキューをするなら別ですが。そういう意味では、ソロで活動する方が投げ銭のやり取りはスムーズですね。

――明確な分配の基準があれば、グループによる翻訳でも投げ銭が成立しますか?

トマトジュース翻訳したワード数などをもとにした分配ですね。翻訳プラットフォームと投げ銭が一体化した仕組みができたら実現できそうな気がします。

――以前のインタビューでは、『Disco Elysium』の韓国語有志翻訳チームが翻訳プラットフォームの記録をもとにデベロッパーからの報酬を公平に分配していました。各翻訳者の貢献度を計算するソフトウェアを開発した結果、翻訳者は誰も文句を言わなかったそうです。

トマトジュース日本の有志翻訳は誰でも途中参加可能という雰囲気があるので難しそうですが、事前に皆が納得していれば良い仕組みですね。

――クラウドファンディングといった既存のサービスを投げ銭に利用することは考えられますか?

トマトジュースクラウドファンディングはこれから実現することに対して出資するのが本義なので、結果に満足したからお金を払うという用途には向かないと思います。それに、クラウドファンディングでお金を募ってしまうと、納期に追われる仕事になってしまいそうです。契約でデベロッパーとも揉めそうですしね。

――ファンがコンテンツ制作者に寄付をする形のクラウドファンディングにPatreonというサービスがあります。あくまで一例ですが、トマトジュースさんの考える投げ銭に近いかもしれません。

トマトジュースこんなサービスがあるんですね。こういうシステムへのリンクをワークショップに記載できる優しい世界が欲しいです。日本でも感謝の気持ちを上手く形で表せる仕組みを嫌らしくない程度に導入できたら良いですね。

――有志日本語化への投げ銭として利用する場合、既存のサービスに不足しているものはなんですか?

トマトジュースさっきの話に戻りますが、貢献度を可視化する仕組みがないことでしょう。見知らぬ人同士のグループで作業することが多いので、投げ銭の分配の指針をあらかじめ誰かが示してくれないと導入は難しそうです。

――第三者が介在する必要があるのですね?

トマトジュースその第三者にデベロッパーとの仲介もしてもらえるとさらに助かります。例えば、日本語フォントを追加して欲しい場合に、デベロッパーに取り次いでくれるとか。そのような仕組みが商売になれば良いですね。

――プロのゲーム翻訳者とデベロッパーの間を翻訳会社が仲介するような形ですね。どんな存在ならインディーデベロッパーと有志翻訳者の間で投げ銭のやり取りを仲介できると思いますか?

トマトジュース既存の企業が参入するのは難しそうです。ParaTranzのような翻訳プラットフォームが投げ銭を分配する機能を導入してくれるとスムーズですね。貢献度の表示だけでも構いません。

――貢献度表示だけで十分なのですか?

トマトジュース投げ銭は既存のサービスを利用するとして、その分配が翻訳プラットフォームの貢献度計算に基づいていれば揉めないと思います。第三者が表示する貢献度は恣意的に操作できませんから。現在は長文を訳しても一単語を訳しても同じカウントですが、貢献度表示がもう少し正確なら自分たちで運営できそうです。

――算出基準はわかりませんが、ParaTranzには詳細な貢献度スコアが存在します。Leaderboardの項目にあるPPという数字ですね。

トマトジュース参加者が満足できる指標になるならそれでも良いですね。もう少しスコアの計算方法が可視化されていて、それに納得できるメンバーが揃えば今でも投げ銭が導入できそうです。

(記事の公開後、ParaTranzに貢献度スコアの詳細表示機能が追加されました。翻訳プロジェクトの管理者はSettings & ManagementのMember Contributionから確認できます。)

現場からのメッセージ

本をたくさん読んで日本語能力を上げると良いでしょう

――これから有志翻訳を志す方へ一言アドバイスをお願いします。

トマトジュースプロジェクトによっては機械翻訳の使用が禁止されているところもありますが、DeepL翻訳の登場で参加の敷居はかなり下がっていると思います。今の速度で技術が進むと、数年後には「もう機械翻訳でいいんじゃない?」というレベルになるかもしれません。その際に大事なのは、機械翻訳された日本語を違和感のない日本語に直す能力ですから、本をたくさん読んで日本語能力を上げると良いでしょう。

――有志翻訳者としてゲーム開発者やゲーム業界に伝えたいことはありますか?

トマトジュース有志日本語化せずに日本語で遊べるならそれがベストだと思っているので、最近は日本語が標準で搭載されているゲームが増えて嬉しい限りです。日本語化のコストが無駄にならないようせっせと購入させてもらいますので、今後も忘れずに日本語を入れていただければ幸いです。微力ながら、自分のYouTubeチャンネルでもそのようなゲームを取り上げて行ければと思います。

――本日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。

※UPDATE:7月24日15時23分:ParaTranzに貢献度スコアの詳細表示機能が追加された情報を追記しました。

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《FUN》

遊ぶより創る時間の方が長いかも FUN

元ゲームプログラマー。得意分野はストラテジーゲーム。ゲームライターとして活動する傍ら、Modの制作や有志日本語化に携わっています。代表作は『Crusader Kings III』の戦国Mod「Shogunate」。

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