初期『ペーパーマリオ』を懐かしんで生まれた“未完成”作品『Untitled Paper RPG』を元ネタと比較しながら遊んでみた―待っていたのは優しいユーモア【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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初期『ペーパーマリオ』を懐かしんで生まれた“未完成”作品『Untitled Paper RPG』を元ネタと比較しながら遊んでみた―待っていたのは優しいユーモア【特集】

ノスタルジーが時に創作の潤滑油となることが伝わる一作。

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初期『ペーパーマリオ』を懐かしんで生まれた“未完成”作品『Untitled Paper RPG』を元ネタと比較しながら遊んでみた―待っていたのは優しいユーモア【特集】
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大ヒットとなったインディーゲーム『A Short Hike』の作者・adamgryu氏が、約10年開発しつつも頓挫してしまったPRG『Untitled Paper RPG』のプロトタイプ版itch.ioにて無料公開されました。

タイトル通り、初期の『ペーパーマリオ』シリーズからの影響が色濃い作品です。実際に、adamgryu氏のブログでは『ペーパーマリオ カラースプラッシュ』の発表後に『マリオストーリー』を懐かしんで制作を始めたタイトルであることが明かされています。


筆者は『ペーパーマリオ』好きではあるものの、このプロトタイプ版には日本語がなく、英語力に乏しいためスルーしようと思っていたのですが、今回は編集部に記事化を依頼されました。そのため、あえて『ペーパーマリオ』との比較を中心に、本作のプレイレポートをお届けしようと思います。

素直に『マリオストーリー』をベースにしつつも、オリジナリティの光る作品

物語は、いたって平和な田舎町「Rocky Point」から始まります。町の住人の多くはトカゲのような種族で、主人公は気弱な性格。お姉ちゃんに後ろから脅かされるなどイタズラをされつつも、みんなと仲良く暮らしている様子です。

友達の「Ava」が誕生日ということでバースデーカードを書いていた主人公は、お姉ちゃんの助言により村のみんなにサインを入れてもらうことにしました。個性豊かなRocky Pointの住人たちと話して回ることになります。

『ペーパーマリオ』シリーズが好きな方なら既にお分かりでしょうが、本シリーズの魅力は“テキスト”にありますよね。可愛らしいキャラクターたちとは裏腹に、シュールギャグやメタネタ、ブラックなユーモアなどが散りばめられた世界なので、NPCに話して回っているだけでも楽しいゲームです。

そんなシリーズから影響を受けた『Untitled Paper RPG』についても、やはりテキストが重要なゲームになっていそうです。

村のみんなにサインをしてもらう中で、「今夜はピザだ!!」「ウワーーーー!!!」とハチャメチャに喜んでいる少年に出会ったと思ったら、別の場所で姉に話しかけると「今夜はピザだよってティムを騙してやった」「私には女優になる才能があるかも」と、なんともひどいイタズラがあったことが判明します。

バースデーカードにサインをする代わりに、二酸化炭素排出量削減の活動に署名を求められたり、携帯電話をなくしてしまって「“Snack Smasher(TM)”のログインボーナスが受け取れない!」と焦っている住人に出会ったりと、Rocky Pointの人々はとても個性豊か。

しかし、『ペーパーマリオ』シリーズのようなブラックなユーモアとは異なり、こちらでは『A Short Hike』で見られたような優しいユーモアが多くみられるように思います。

バースデーカードのサインを一通り集め、Avaを探して町を出ると、本格的に冒険がスタート。町では携帯電話やノートなど、いくつかの住人が物をなくしている様子が見られたのですが、どうやら盗みを働く者がいた様子です。たいくつな町の様子にうんざりしていたAvaは、ウキウキで事件の解決を目指します。

Avaに連れられてノートを盗んだ犯人を追い詰めると、初戦闘が開幕。バトルシステムはそのまま『マリオストーリー』や『ペーパーマリオRPG』といった風で、タイミングよくボタンを押してダメージを増やしたり、ダメージを減らしたりするアクションコマンドをベースに、いろいろな種類の技を駆使して敵を撃破しましょう。お互いのダメージが1や2といった少ない数字によるやり取りとなるのも、『ペーパーマリオ』シリーズの特徴と同じです。

冒険が進むと新たな装備が手に入ります。これらは『マリオストーリー』の「BP(バッジポイント)」と同様で、装備できる上限がポイントで定まっているというものです。装備によっては、新たな技が使えるようになるといったシステムも基本は同じ。

しかし、「BEFRIEND BADGE」をつけると開放される技は本作独自の要素と言えるもので、その技を使うとなんと敵を仲間にすることができます

仲間にした敵はそれぞれ異なる技を使うことができるほか、戦闘ではレベルアップもするなど、こだわりを感じる作り。もしこのシステムをベースに今後も冒険が続けられたならば、『ペーパーマリオ』とはまた違った魅力を持ったRPGになったかもしれません。

本作で目を惹くのは、やはりペラペラとしたキャラクターたちが息づく独特なアートスタイルです。2Dイラストが3Dの空間に立っているという意味では『ペーパーマリオ』シリーズのような印象を受けますが、その色彩やテクスチャの描き方、キャラクタースプライトについては全く異なったアプローチをしている印象でした。

『ペーパーマリオ』シリーズは、手書きアニメーションと関節制御によるアニメーションの併用です。一方で、本作は恐らくすべて手書きによるアニメーションになっています。キャラクターの動きや表情もとても豊かで、特定のイベントシーンのためだけに用意されたようなスプライトも多く、リッチな作りです。

背景については、近年の『ペーパーマリオ』シリーズのようにペーパークラフト風になっているというよりは、初期の『マリオストーリー』に近い形。建物に入った時にドアがパタッと倒れるような演出や、エリア同士の接続部分が切り出された崖のようになっているなど、随所にその影響が見られました。それでいて、より手書きチックなテクスチャには、本作独自の絵本のような可愛らしさがあります。

風が白い線のエフェクトでふわっと表現されていたり、アウトラインがくっきり出るシェーダーが採用されていたりといった部分は、のちの『A Short Hike』にも引き継がれた面があったことを感じさせます。

『カラースプラッシュ』の発表をきっかけに作られたゲーム

本作に多分な影響を与えている、いつまでもファンに愛される『ペーパーマリオ』シリーズの中でも、3DSで発売したアドベンチャーゲーム『ペーパーマリオ スーパーシール』の評判が芳しくないことをご存じの方は多いかもしれません。純粋なRPGではないことに加え、これまでの作品から大幅なキャラクターの削減や、ブラックユーモアな雰囲気の緩和などが不評の要因です。

『マリオストーリー』や『ペーパーマリオRPG』で見られた、「RPG色の強い作風が好きだった」というファンの声はいまだ根強いのです。

そんな『スーパーシール』の次回作として発表された『カラースプラッシュ』は、『スーパーシール』のシステムをベースとしたアドベンチャー色の強い作品だったため、失望を隠せなかったファンは多くいました。まさにそのことがきっかけで、『Untitled Paper RPG』の制作が始まります。

本作以外にも『Bug Fables』や『Born of Bread』など、初期『ペーパーマリオ』のフォロワーといえるインディーゲームは多数存在しています。この『Untitled Paper RPG』も、そんなノスタルジーな気持ちからスタートしていたようです。

しかし、残念ながら開発は中止へ。adamgryu氏はRPGを作るための工数の多さ、目指していた可愛らしい世界とRPGにおける戦闘というシステムとの乖離、そして箸休めとして作った『A Short Hike』の大ヒットなどの要因もあり、本作の制作を続けるモチベーションが失われていったと語っています。

『A Short Hike』スクリーンショット

改めて『A Short Hike』を遊んでみても、『Untitled Paper RPG』に見られるキャラクターたちの優しい息遣い&ユーモアがそのまま引き継がれていることがわかります。

長大な冒険になるはずだった『Untitled Paper RPG』に対し、短くも優しい冒険として完成された『A Short Hike』が生まれた原動力には、初期『ペーパーマリオ』へのノスタルジーがあったというのは『ペーパーマリオ』シリーズファンとしては興味深い話です。

紆余曲折あったものの、最新作『ペーパーマリオ オリガミキング』では初期作品を愛するファンからの評価も取り戻し、リメイクとなる『ペーパーマリオRPG』でも期待の声にしっかりと応えている本シリーズ。旧作へのノスタルジーを感じさせるインディーゲームたちは、一旦その役割を終えたといえるのかもしれません。

現在、adamgryu氏は本作とは別に、アクションアドベンチャーゲームやオンラインのプラットフォーマーローグライクゲームなど、複数のプロジェクトを手掛けていることが明かされています。『Untitled Paper RPG』には、近い将来に戻ることは考えていないとのこと。しかし『A Short Hike』ファンならば、その足がかりとなった本作を遊びつつ、氏の新作を待っておきたいところですね。


『Untitled Paper RPG』は、プロトタイプ版がitch.ioにて無料公開中です。


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ライター:お茶缶,編集:八羽汰わちは

ライター/ミンナニ ナイショダヨ お茶缶

任天堂タイトル中心に、けど色々手を出すゲーム好きな人。ベストゲームは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。

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編集/多趣味オタク 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Spark編集部員、デスク担当。特技はヒトカラ12時間。

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