
先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
今から二十年以上前、私は三重県の高校で英語を教えていました。ある日、帰宅後にテレビをつけると、目に飛び込んできたのは、80年代らしいエネルギッシュなロボットアニメでした。その作品こそが「蒼き流星SPTレイズナー」であり、今では私にとって、最もお気に入りのロボットアニメの一つとなっています。
当時の私はすでに「装甲騎兵ボトムズ」をある程度視聴しており、高橋良輔監督や大河原邦男氏の名前も知っていました。また、レイズナーに登場する、特徴的なバブルキャノピー型の頭部を持つメカのプラモデルが、インターネット上で紹介されているのを目にしたこともありました。
しかし、それ以外については、日本で初めて「レイズナー」のアニメを目にした時点では、物語の内容についてほとんど知識がなく、加えて、その作画が当時の作品としては非常に異質であることに、すぐ気づかされました。
異質と言っても否定的な意味ではなく、むしろその動きは非常にダイナミックで、描写は細かく、テンポも驚くほど速かったのです。その迫力に圧倒され、私は思わず手を止め、腰を下ろしてその回を最後まで見入ってしまいました。
物語の比較的序盤、登場人物たちがまだ火星に取り残されている頃のエピソードだったと思います。主人公がなぜ反撃しないのか、最初は戸惑いを覚えました。しかしその直後、主役メカであるレイズナーが突如として自律的に行動を開始します。
それが、あの伝説的とも言える「V-MAX」発動シーンでした。ほんの一瞬の出来事ではありましたが、私はこの作品には、当初想像していた以上に深いものがあると直感し、次にいつ視聴できるのかを必ず把握しておこうと心に決めたのです。
この運命的な初視聴をきっかけに、私は作品について調べ始めるようになり、やがて「レイズナー」が、実はロボットアニメ史において極めて大きな影響力と意義を持つ作品であることに気づきました。その点については、後ほど改めて触れたいと思います。
いずれにせよ、私は新たに深く掘り下げるべきロボットアニメと出会ってしまったのです。そしてこの作品を巡る探求は、想像以上に奥深いものとなっていきました。
リマスター版Blu-rayボックスセットの購入
今から十数年ほど前、私は日本に、より長期的に暮らすため再び来日しました。三重県での生活はとても充実したものでしたし、その後の年月では、いくつかの大規模なビデオゲーム制作にも携わってきました。そうした経験や専門知識を生かせば、東京で仕事を見つけることができるのではないかと考えていたのです。
ちょうどその頃、「蒼き流星SPTレイズナー」のリマスター版Blu-rayボックスセット発売の知らせがありました。価格は決して安くはありませんでしたが、これはどうしても手に入れなければならないと思いました。
残念ながら、発売直後に購入することはできませんでしたが、しばらくして秋葉原で完品のセットを見つけ、ついに購入することができました。

その時点ですでにアニメ本編は一通り視聴していましたが、Blu-ray化による画質の向上によって、アニメRや谷口守泰氏による仕事を、これまで以上に深く味わうことができるようになりました。
また、このボックスセットには豪華な特典も数多く収録されており、これまで目にしたことのなかった初期SPTのデザインが掲載された、美しいアートブックも含まれていました。
それから数年後、私は「Forbes」誌の取材で、大河原邦男氏と高橋良輔監督の両名にインタビューを行う機会にも恵まれました。言うまでもなく、その際には「レイズナー」について、ぜひ詳しくお話を伺いたいと考えていました。
これらのインタビューと、Blu-rayでの徹底した再視聴を通じて、私はこのシリーズには、海外のファンにこそ伝えるべき非常に重要な側面がある、という確信を持つようになりました。
幸いなことに、2018年にはワシントンD.C.で開催された「Otakon」にゲストとして招待され、その中で行った数多くの講演の一つとして、「レイズナー」、そして本作がいかに重要な作品であるかについて語る機会を得ることができました。
「蒼き流星SPTレイズナー」が日本のポップカルチャーに与えた独自の影響
高橋良輔監督による多くのロボットアニメと同様に、「蒼き流星SPTレイズナー」に登場するメカ――SPTと呼ばれる機体群――は、非常に厳格なルールに基づいて設計・運用されています。物語の序盤では、主人公エイジが敵のSPTを無力化し、その燃料を奪わなければならない場面が登場します。しかし、その際には敵パイロットを殺してはならず、しかも自分に残されたエネルギーは、たった一度の攻撃分しかない、という状況です。
このような設定は、「レイズナー」を際立たせる大きな要因でした。SPTという存在が非常に緻密に考え抜かれており、その運用方法も一貫した論理に基づいて描かれていたからです。
同時に、複数のルールが衝突することで生まれるドラマ性も非常に高く、その結末が避けがたく悲劇的なものになる場面も少なくありませんでした。
こうした「ルール重視」のアプローチ自体は、「太陽の牙ダグラム」や「装甲騎兵ボトムズ」など、過去の作品にも見られた要素ではあります。しかし「レイズナー」は、それら以上に制約が厳格であり、それが作品としての強い引力となると同時に、ビデオゲーム制作においても非常に扱いやすい題材となったのです。

実際、「レイズナー」は長年にわたり、数多くのロボットゲームに影響を与えてきました。『オメガブースト』や『バンガイオー』をはじめ、『電脳戦機バーチャロン』、『ゾーン オブ ジ エンダーズ』などがその代表例です。特に後者の続編である『アヌビス ゾーン オブ ジ エンダーズ』では、主人公の声を、レイズナーでエイジを演じた井上和彦氏が担当している点も象徴的と言えるでしょう。
さらに、『アーマード・コア』シリーズもまた、「レイズナー」からの影響を色濃く受けています。中でも第4世代にあたる『アーマード・コア4』および『アーマード・コア フォーアンサー』では、球状のエネルギーシールドや、高速移動とクイックブーストを多用する戦闘スタイルが、SPT、特にレイズナーの挙動を強く想起させます。
もっとも、「レイズナー」がこれらのゲーム作品全体を包括的にインスパイアした、というよりは、個々の重要な要素が取り入れられたと考えるべきでしょう。例えば『オメガブースト』における「バイパー・ブースト」はその好例で、ゲームのコード内には、バイパー・ブースト発動時の名称として「VMAX」がコメントアウトされた形で残されているほどです。また、『電脳戦機バーチャロン』に登場するバイパーIIの「S.L.C.ダイブ」も、レイズナーのV-MAXと驚くほどよく似た挙動を示しています。
アニメ業界に目を向けても、「レイズナー」は数多くの著名なアニメーターに多大な影響を与えてきました。実際、私自身が話を聞いた中でも、「レイズナーを見たことが、アニメ制作を志すきっかけだった」と語る方は少なくありません。
そしてここから、「ドラゴンボール」、そして私なりの一つの仮説へと話はつながっていきます。
「蒼き流星SPTレイズナー」は「ドラゴンボールZ」に影響を与えたのか―ある大胆な仮説
これまで私は「Forbes」の取材を通じて、日本で多くの方々にインタビューを行ってきました。その中の一人が、鳥山明先生の数多くの漫画作品を担当された編集者、鳥嶋和彦氏です。彼が語ってくれた興味深い話の一つに、故・鳥山明先生は漫画を描きながら、テレビをつけていることが多かった、というものがありました。
通常、漫画家は執筆作業に完全に集中するものですが、鳥山先生はそうした「追加の視覚情報」を取り入れることを好んでいたそうです。この点は、非常に印象的でした。
さて、「蒼き流星SPTレイズナー」が放送されたのは1985年で、これは鳥山先生が「ドラゴンボール」の原作漫画を連載していた時期と重なります。また、「レイズナー」は名古屋テレビが制作に関わっており、鳥山先生は愛知県に在住していました。
さらに鳥山先生は、筋金入りのミリタリー好きとしても知られており、ファインモールドという模型メーカーのためにミリタリーデザインを手がけたこともあります。その卓越したメカデザインのセンスを見ても、少なくともロボットアニメを好んでいたことは間違いないでしょう。そして私個人の推測ではありますが、その関心は、当時の高橋良輔監督によるリアルロボット作品にも向けられていたのではないかと感じています。
残念ながら、私は鳥山先生ご本人に直接インタビューする機会を得ることはできませんでした。したがって、ここから先はあくまで私自身の推測に過ぎませんが、それでも共有する価値はあるのではないかと思っています。
私の仮説はこうです。「レイズナー」は、「ドラゴンボール」、そして特に「ドラゴンボールZ」におけるいくつかの重要な要素に影響を与えた可能性があるのではないか、というものです。例えば、サイヤ人という強大な異星人の設定、スカウターの使用、さらには超サイヤ人への変身といった「パワーアップ」の概念です。これらは、「レイズナー」におけるV-MAXの表現と通じる部分があるように思われます。特に、後年の劇場版などで孫悟空が青い髪の姿へと進化した際には、その印象がより強まったように感じられました。
もちろん、スカウター自体は「太陽の牙ダグラム」にもすでに登場していたことは承知しています。しかし、こうした複数の類似点が重なっていること、そして鳥嶋氏の「鳥山先生は漫画を描きながらテレビを見ていた」という発言を踏まえると、「ドラゴンボール」連載初期の、まさに適切なタイミングで、「レイズナー」が鳥山先生の目に留まっていたのではないか、という考えが頭をよぎるのです。
繰り返しになりますが、これはあくまで私個人の推測に過ぎません。ただ、そのように想像してみるだけでも、なかなか興味深い話ではないでしょうか。
海外における「蒼き流星SPTレイズナー」の厳しい現実

私が「蒼き流星SPTレイズナー」のBlu-rayボックスセットを購入したのは、この作品を応援したいという気持ちがあったこと、そして何より、当時この作品が海外で正式にリリースされていなかったからです。
2018年にOtakonで講演を行った理由の一つも、「レイズナー」が日本のポップカルチャーにおいて、いかに多くの分野に影響を与えてきたのかを広く知ってもらいたい、という思いからでした。たとえば『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』には「ケリィ・レズナー」というキャラクターが登場しますが、これは制作スタッフの共通性によるものだと理解しています。
講演そのものは好評を博し、その後、2023年にはアメリカでも「レイズナー」のBlu-rayが発売されました。しかしながら、作中に登場する強力すぎるほどの、そして明確に“異星的”なメカの存在は、海外のファンには十分に響かなかったように感じられます。
この点は、『ゾーン オブ ジ エンダーズ』や、『アーマード・コア』シリーズ第4世代作品が、海外市場で大きな成功を収められなかった理由とも重なります。これらのゲームが持つ機能的・思想的なルーツが、日本以外では十分に共有されていなかったからです。
私自身が制作に関わった『Strike Suit Zero』においても、変形するストライクスーツはレイズナーMk.IIをベースにしたものでしたが、自分が素晴らしいと感じていた要素が、必ずしも他の人々に共有されていないことを、身をもって体験しました。
もっとも、『Strike Suit Zero』については、私は完成前に制作チームを離れており、最終的にリリースされた内容は、当初私が意図していたものとは異なっていました。その点も、作品の評価に少なからず影響したのではないかと思います。

根本的な問題として、SPTは技術的にあまりにも先進的であり、特にアメリカをはじめとする海外の視聴者にとっては、共感しにくい存在なのかもしれません。海外では、メカに対してより工業的で、軍事的なリアリティを求める傾向が強いからです。
私は「Forbes」誌でも、「レイズナー」の30周年、そして近年の40周年の節目に、その影響について詳しく書いてきました。しかし現実として、このアニメは、日本での評価とは異なり、海外では同じような共感を得られていない、という事実があります。
それでもなお、私は海外において「レイズナー」を応援し続けたいと感じています。その思いの強さゆえに、2018年のOtakonでの講演では、スウェーデンの音楽家Waveshaperによる楽曲を使用した、いわゆる「アニメ・ミュージックビデオ」を制作・依頼し、本作の格好良さを視覚的に伝えようとしました。
そうした流れからも、ここでそのミュージックビデオを紹介し、私にとって特別な存在であるこのロボットアニメを締めくくるのが、最もふさわしいのではないかと思います。たとえ、多くの海外の友人たちには、その魅力が十分に伝わらなかったとしても。
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。











