くたびれたイケオジというのはそれだけでも絵になるものですが、横に天真爛漫な少女がいて、更にその子に振り回されていると、より一層良いものです。
本作『OPUS: Prism Peak』の主人公は、ユージンと名乗る40歳の男性。どうやら彼の人生は順風満帆とは言い難いようです。幼少期から両親は喧嘩してばかりで、彼の幼少期の想い出に出てくるのは大好きなおじいちゃんばかり。

その祖父の影響で上京してカメラマンになるも就職した会社は倒産、しかもその少し前に離婚しています。会社倒産後に開業したカフェも経営に失敗していたところに、大好きな祖父のお葬式(急死や病死ではなく、行方不明になって10年経過しているようです。それもそれで……)が……。ユージンはお葬式に参列するために相棒のカメラを手放し、帰省するべく車を走らせているところで導入部分が終わります。この時点でもうビターもビターだ……。


ちなみに幸か不幸か友人には恵まれているようで、カフェ開業もその友人の出資があったからできたよう。また、家主なのかは不明ですが現在の家賃もこの友人が受け持ってくれているようで、「君の写真は素晴らしいんだからカメラを今すぐ買い戻せ!」と電話越しに怒っています。良い友人だ……だからこそユージンは辛くもあるんだろうな……。
そんなユージンの声を担当しているのは、イケオジといえばこの人!という方も多いのではないでしょうか、三木眞一郎さんです。

さて、ユージンは帰省の道中にあるトンネルで、何やら不思議な像とぶつかって事故を起こしてしまったようです。
ユージンの懐事情が心配な身としては、「嗚呼、カメラに続いて車まで……」と声が漏れてしまいました。


車を降りて辺りを探索してみましたが、どうやらそのトンネルはループしているようで……どうしたものかと途方に暮れていましたが、蝶に導かれるようにしてループを抜け出すことに成功。そこには、池のようなところに浮かんでいる少女がいました。慌てて少女を助けるユージンに襲い掛かる、赤く黒い影……!少女を背負い、必死に逃げます。


少女の、透明感のある澄んだ、それでいて芯の強さも感じさせる声は、市ノ瀬加那さんです。少し進むとわかるのですが、彼女は記憶を失っており、「家に帰りたい」という気持ちだけを覚えています。活発少女な見た目なのに、どこか神秘的な雰囲気を帯びているのはそのせいでしょうか。

命からがら逃げきり、幻想的で不思議な、それでいて少し懐かしさもある世界に迷い込んだユージンは、少女を家に帰すために、山の頂上、ひいては「名もなき街」を目指すのでした。

迷い込んだ世界――「ボウの地」で、ユージンはシカの「神霊」からカメラを託されたり、少女がどうやら「巫女」と呼ばれる存在であるらしいことを知ったりします。


「神霊」というのは、人の言葉を話す動物たちのこと。彼らは記憶をなくすにつれて身体が透明になり、やがて完全に消えてしまったら人の記憶からも失われてしまいます……。
しかし、ユージンが彼らを撮影することで、神霊たちは己を取り戻します。


幻想的で不思議な世界。ここはユージンの精神世界なのでしょうか。というのも、彼の想い出とあまりに結びついているのです。
また、ユージンは時々「ボウの地」とは別の世界に迷い込みます。そこはまるで深層心理とでもいうような世界。

その世界では彼が道中で撮影した写真を通し、過去と向き合う必要があります。相手と向き合うための写真を通して自分自身を見つめ直していく――そんな印象を受けました。
道中の長閑な田舎風景も、見ているだけで懐かしくあたたかい気持ちになるものの、随所には、実際の田舎でも時折問題になるような、少しお辛い要素もあります。過疎化とか立ち退きとかあったのかな……なんて思いつつ。
人によっては親しみを、人によっては忌避感を覚えるような田舎の風景。ユージンはどちらなのでしょうか。

ユージンは言ってしまえば「故郷を捨てて出てきた」側の人間で、喧嘩別れして故郷に残してきた女性がいることが作中の回想シーンでわかります。しかし、両親の喧嘩に心を痛めていたのに、本人もそういう道を進んでいたというのは、何とも皮肉な話です。

帰省とは、過去に残してきたものに目を向ける行為でもあります。
人生がうまくいくことばかりではないことを知っているユージン。もしかしたら、若さで目を逸らしてきたこともあるのかもしれません。この旅を通して彼は、残してきた女性や親友を始めとした過去の物事と対峙するのでしょうか。もしかしたら、おじいさんがどういう経緯で行方不明になったのかも、わかるかもしれません。
それはきっと辛いことでしょう。しかし、今のユージンは1人ではありません。少女――レンがいます。


ユージンは不器用ながらも常に「子ども」を大切にする人で、優しい大人なんだろうなとプレイしている側も好感を持つ素敵な主人公です。
そんなユージンとの親和性を高めているのが、本作の写真機能です。物語を進めるために必要な撮影機能ですが、これがコントローラープレイとマッチしており(ゲーム開始時にコントローラーによるプレイとヘッドホン着用を推奨されます)、途中からフィルターが増えたりシャッタースピードを気にする必要があったりと、「写真撮影」として純粋に楽しい体験でした。

謎解き要素に、またこの世界のことを知るために、あるいは「ボウ」を退けるために。楽しくパシャパシャと撮っていますが、事態は悪くなる一方。実はレンは、神霊たちと同様に透明になりつつある状況にあるのです。なのに、ユージンのカメラにはレンは写らない……。

神霊たちの助けを得ながら、2人は必死に「名もなき街」を目指し、レンを救う方法を探すのでした。

二人は無事に「名もなき街」に辿り着けるのでしょうか。レンは無事に消えずにいられるのでしょうか。王とはいったい何なのでしょうか。果たして、二人を待ち受けている運命とは――
ここから先の物語は、ぜひ自分でプレイして確かめてください。

『OPUS: Prism Peak』は、PC(Steam)/ニンテンドースイッチ2/ニンテンドースイッチ向けに、2026年4月16日発売予定です。
最後に愉快な公式Xをぜひ見てください。
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