
先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
一般的に、『ガンダム』ゲームは海外ではあまり好調ではありません。というのも、歴史的に見て、原作アニメの背景や文脈が十分に知られていなかったためです。その中で唯一の例外と言えるのが『ジオニックフロント』であり、海外のファンや批評家から概ね高い評価を受けました。
2002年に『ジオニックフロント』がアメリカで発売された頃には、「機動戦士ガンダム」の原作アニメも以前より視聴しやすくなっていました。とはいえ、「新機動戦記ガンダムW」ほどの人気には至っておらず、その主な理由はアニメーションの古さにあったと思われますが、それでも徐々に知名度は高まりつつありました。
また、「ガンダムW」を通じて、「ガンダム」という作品全体における物語の構造として、モビルスーツは決して頑丈な存在ではなく、ビームライフルの一撃で撃破されることもあるという考え方が、海外でもある程度理解され受け入れられるようになっていました。
こうした一撃で撃破される可能性のある状況は、作品のドラマ性や物語上の緊張感を高める効果もあり、ひとつのミスがそのままモビルスーツの即時撃破につながりかねませんでした。
そして、ここで『ジオニックフロント』の話になります。
『ガンダム』らしくない『ガンダム』ゲーム
海外において『ガンダム』ゲームに対してしばしば向けられていた不満のひとつに、独特で扱いづらい操作系統に加えて、モビルスーツが「弾を大量に受けてもなかなか倒れない存在」として描かれていることがありました。
これは原作アニメの描写と明らかに異なっており、「ガンダム」の名を冠したゲームである以上、プレイヤーからは「モビルスーツはアニメと同じように素早く撃破されるべきだ」という意見がよく見られました。
当時、海外では、『バトルフィールド』シリーズのようなスタイルのFPS(一人称視点シューティングゲーム)が広く普及をはじめ、高い人気を集めていました。こうした作品ではプレイヤーの耐久力は非常に低く、わずかな被弾で倒されてしまうことが一般的でした。
これは、初期の人気FPSである『Doom』や『Quake』とは対照的でした。そうした作品ではプレイヤーはかなりのダメージに耐えることができました。特に『Quake II』では、プレイヤーが自分の足元にロケットランチャーを撃ち込んで跳躍する「ロケットジャンプ」が広く使われていましたが、それが可能だったのも、その衝撃に耐えられるだけの体力を持っていたからです。
そのため、『バトルフィールド』シリーズのような作品が、実質的にアーマーを持たない兵士としてプレイヤーを扱うようになると、以前からあったリアルを追求したようなタイトルの流れと合わせて軍事系FPSではプレイヤーを超人的な戦車のように描くのではなく、実際の兵士に近い存在として扱うべきだという考え方が広まっていきました。
こうした流れはすべて『ジオニックフロント』にも通じています。このゲームではモビルスーツが非常に脆い兵器として描かれ、生き残るためには戦術や戦略が極めて重要な要素となっていました。
異色の『ガンダム』ゲーム
『ジオニックフロント』がガンダムではなくジオン軍側の立場でプレイする作品だったという点はもちろんですが、そのゲームプレイ自体も、事前に計画を立てる戦略性や部隊単位での戦術運用に大きく重点が置かれていました。
各ミッションの開始前には、複数の部隊に対して巡回ルートや攻撃経路を設定します。ゲーム中には各部隊へ切り替えて直接操作することもでき、戦術的な介入を行えましたが、本作の醍醐味の多くは、各ステージをどのようなルートで攻略するか、そして成功のためにどのような作戦を立てるかを考えることにありました。
こうしたゲームデザインは、海外のゲーマーにとっても馴染み深いものでした。たとえば『レインボーシックス』のような作品も、プレイヤーキャラクターが非常に脆弱で、多くの戦略性を要求するゲームとして高い人気を集めていました。
そのため、ガンダムに搭乗したアムロと対峙し、彼が次々と味方部隊を撃破していく場面は、本当に恐ろしく感じられました。そして最終的に彼へ対抗するための戦略を見出し、それを成功させたときの達成感は非常に大きなものでした。
MSVならではの楽しみ

こうしたタイプの『ガンダム』ゲームには、たいていMSV関連の楽しい要素が盛り込まれていますが、『ジオニックフロント』も例外ではありませんでした。
本作ではガンダム6号機ことガンダム・マドロックが重要な存在として登場し、プレイヤーが指揮するミッドナイト・フェンリル隊にとって強力なライバルとして立ちはだかります。
この機体は大河原邦男氏による往年のMSVデザインをもとにしており、ゲーム用に片桐圭一朗氏がリファインを担当しました。片桐氏は後に「機動戦士ガンダムSEED」でも数多くのメカデザインを手掛けています。
そして、完成状態となった最終決戦のガンダム・マドロックを撃破したときの達成感は格別でした。というのも、プレイヤー側のモビルスーツと比較して、マドロックは圧倒的な性能差を持つ強敵として描かれていたからです。
さらに本作には、ペガサス級強襲揚陸艦ブランリヴァルも登場します。この艦の登場も個人的には嬉しい要素でした。というのも、『GUNDAM THE RIDE』の終盤にも登場していた艦だったからです。
素晴らしいオープニングムービー
普段であれば、こうしたゲームのオープニング映像について特別に触れることはあまりありません。しかし、『ジオニックフロント』には非常に優れたオープニングムービーがありました。これは私個人の好みによるというよりも、むしろ『ガンダム』ファンではない友人たちの反応によるところが大きかったです。
彼らにとって特に印象的だったのは、この作品が彼らの想像していた『ガンダム』よりもはるかに現実味のあるものに感じられたことでした。
とりわけ、夜間戦闘の場面で、モビルスーツの姿が銃火の閃光や立ち込める煙の中、断続的にしか見えない演出は、彼らの強い共感を呼んでいました。
また、このオープニングムービーの演出を担当したのは臼井伸二氏です。私は以前東京で働いていた際に、たまたま氏の向かいの席に座っていました。この映像を見てもわかるように、氏はCGアニメーションの演出において非常に優れたセンスを持っていると思います。
海外でも高く評価された作品
『ジオニックフロント』は、同時期の他の『ガンダム』ゲームとは異なり、海外メディアから高い評価を受けました。プレイヤーからの評判も良く、高評価を獲得しています。その大きな理由は、原作アニメの表現に忠実であったこと、そして当時の『レインボーシックス』のような人気作品と共通するゲームデザインを持っていたことにありました。
実際、私が寄稿している「Time Extension」の編集者も『ジオニックフロント』を高く評価しています。もっとも、彼はスーパーファミコン版の『新機動戦記ガンダムW Endless Duel』のほうが優れていると考えているようですが、その点については私にはまったく理解できません。
私にとって『ジオニックフロント』は、大好きな「ガンダム」というアニメを、非常に新鮮かつ正確にゲーム化した特別な作品でした。また、『レインボーシックス』や当時のFPS作品を楽しんでいた友人たちにも安心して勧めることができ、実際に彼らも楽しんでくれたことは大きな魅力でした。
この作品が示しているのは、『ガンダム』ゲームには海外市場との強い文化的接点が確かに存在するということです。そして、海外ファンが何を求め、どのような期待を抱いているのかを正しく理解できれば、『ガンダム』ゲームは海外でも十分に成功し得るということを証明しているのです。
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。






