ロシアでゲームを作るのはほぼ不可能になった―戦術バトル『Despot's Game』開発者に訊く国内の現状【特別連載】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ロシアでゲームを作るのはほぼ不可能になった―戦術バトル『Despot's Game』開発者に訊く国内の現状【特別連載】

『Despot's Game: Dystopian Army Builder』を手掛けるKonfa GamesのNikolai Kuznetsov氏にお答えいただきました。

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ロシアによるウクライナ侵攻は、ゲーム業界にも大きな影響を及ぼしています。Game*Sparkではその実情を様々な視点からお届けすべく、ウクライナやロシア、さらには直接的な影響も及ぶであろう周辺国を拠点に活動するインディーゲーム開発者に連絡を取り、その生の声を緊急連載としてお伝えしています。第四回は、過去に『Despot's Game: Dystopian Army Builder』(インタビュー)でお話を聞いた、インディースタジオKonfa GamesのNikolai Kuznetsov氏へのミニインタビューをお届けします。

インタビューは全てメールで行われており、下記の質問に対して回答を求めました。非常に機微に触れる内容であり、ロシア国内の情勢も極めて不安定なことから、企画趣旨や記事のアウトプットについては事前に説明をしたうえで、そもそも回答するかどうか、また回答できる質問にのみ回答してもらえれば構わないというルールで打診し、了解を得られたもののみ記事として公開しています。

  • ロシア国内の現状は?

  • 経済制裁も進んでいるが開発へはどのような影響があるか?

  • Steamでの売上は現状ロシア国内で受け取れるのか?

  • ゲーム開発者コミュニティの反応は?

  • ロシア国内のユーザーはどのように反応しているのか?

  • 自身が今回のロシアの侵攻に対してどのように受け止めているか。

なお、本インタビューの返事を受け取ったのは日本時間3月13日23時23分です。状況が時々刻々と変化していますが、回答には極力手を加えず、一部誤解を招きそうな部分は編集の注釈をつける形で補足しています。

各回答はインタビュイー個人の見解であることをご理解のうえご覧ください。


――ロシア国内の現状はどうなっているのでしょうか?

Nikolai Kuznetsov氏(以下Nikolai)プーチンとプロパガンダを信じて生活している人たちにとって、まだそれほど生活の変化はないようです。プーチンが別に好きじゃない人でも、自分たちの仕事が国際関係とあまり関係がない人も同様です。あらゆるものの値段が1.5倍以上に上がってしまいました。ロシアには一度も海外に行ったことのないような貧しい生活をしている人もたくさんいます。このような人たちも、自分達の生活にどれだけの影響が出ているのかまだ理解できていません。それと同時に、独立系メディアを見たり読んだりしている人にとって、生活は一変してしまいました。多くの友人が、これからどんな未来を生きていけばいいのか、途方に暮れています。たくさんの善良な人たちが職を失ったのです。

――ロシアへの経済制裁も進んでいますが開発へはどのような影響がありますか?

Nikolai私と開発チームは今、別の国に来ていますが、今後の予定は決まっていません。大きな企業が私たちを別の国に住み続けられるようサポートしてくれるかもしれませんし、自分達でなんとかしなくてはいけないかもしれません。

――Steamの売上は現状ロシア国内で受け取れているのでしょうか?

Nikolai先月は受け取ることができました。しかし今月はわかりません。ロシア以外のアカウントでSteamから支払いを受けられるよう、方法を探ってみたいと思っています。プーチンに税金なんて払い続けたくありません。

――ロシア国内のゲーム開発者コミュニティではどのような反応がありましたか?

Nikolaiロシアでゲームを作るのはほぼ不可能になってしまいました。ロシアのゲーム開発者コミュニティのチャットですと、90%の話題はどうやって移民するかについてです。ロシアに留まる人もいるでしょうが、どうやってビジネスを続けていくつもりなのかわかりません。ゲーム産業の残り物でやっていくつもりなのかもしれません。ロシア語話者をメインターゲットにビジネスをしていた企業は、何とかしなければならないでしょう。もしかしたらロシア語話者の開発者たちはWargamingやmail.ruに集結することになるのかもしれません。確かではありませんが。

――ユーザーはどのように反応しているのでしょうか?

Nikolaiとても様々です。基本的に、ゲームコミュニティはロシアの一般人よりも先進的ですので、この戦争にも反対しています。しかしまだ、この事態の深刻さがわかっていない一般プレイヤーの方々も多いように感じます。彼らはまだ若いですし、真剣に物事を判断できるわけではないので。現状は、「困惑」と言う言葉がまさにぴったりかもしれないですね。

――今回のウクライナ侵攻についてどのように思いますか?

Nikolai私はNikolai Kuznetsovとしての意見を述べるのであり、弊社の意見ではないことをご理解ください。今、ロシアでは政府の行動に賛成しないものは容易く刑務所送りにされてしまうので、誰かを危険に晒すようなことはしたくありません。

私は戦争に反対です。プーチンは犯罪者であり、ウクライナへの侵略は犯罪です。

同僚も私に賛同してくれるとは思いますが、私が彼らの代わりに話をする権利はありません。

どうかこの真実を広めてください。お願いいたします。


直近のインタビューでは、かなり踏み込んだ内容も多く、編集部では万全を期すため改めてインタビュイーに同意を得た上で公開しています。Nikolai氏は「I don't want be silent. If some people from japan will read some true information - it's good, you can publish everything without hiding.」(私は黙っていたくありません。日本の人たちが本当の情報を読んでくれるなら、それはいいことであり、あなたたちは隠すことなく全てを掲載してかまいません。)と話してくれました。

今後もロシア・ウクライナ両国や周辺国のデベロッパーから返信があり次第、生の声をお届けします。

過去の連載一覧はこちら

編集部より

連載の趣旨について

かつてGame*Sparkでもインタビューしたデベロッパーが現在の状況をどう思っているか、そのままの状態で記すことには意味があるものと判断し、1デベロッパー1記事という形で掲載しています。過去のインタビュー対象がロシアのデベロッパーが多かったこと、被害の状況から勘案してもインタビュイーの比率は同数にならないかもしれませんが、今は数多くの生の声を聞くことにフォーカスしてお伝えしていくつもりです。

なるべく偏りが少なくなるよう努力はしますが、そうならない可能性もあること、それが即ちロシア側の声を意図的に多く拾うといった、特定の政治的な意図を込めているわけではないことはご理解いただけると幸いです。あくまで本企画は、突然の戦火に巻き込まれてしまったデベロッパーがどのような状況に置かれてしまったかを、彼・彼女らの視座から語ってもらいそのまま伝えることを目的としており、ゲームとも関係の深い両国あるいはその周辺国で作られた海外ゲームを嗜む読者の皆様が現状を把握する一助になればと思っています。

掲載内容について

冒頭にも記載しましたが、あらかじめ企画の趣旨や記事のアプトプットについては全てインタビュイーに伝えた上で掲載しています。同意が得られなかったものや自身の身の安全を懸念し断られるケースも多数ありますが、いずれの質問についても本企画においては必要なものと編集部では判断しており、趣旨の通りまとめています。

基本的にインタビューの内容についてはほぼ逐語訳であり、こちらから発言にないことを加筆したり、何かしらの発言を誘導したりすることはありません。一方で、そうしたスタンスが故に今後過度に政治的な内容になる、逆にプロパガンダ的な内容になるという可能性を秘めていることは編集部内でも事前に認識しており、掲載にあたっては編集部で慎重に議論したうえで公開しています。また、デベロッパーに対しては必ずしも政治的なスタンスを明かすことは求めておらず、無理矢理に態度を鮮明にすることを求めたり、回答の有無やその内容について善悪の判断をしたりしないということも伝えています。あくまで本連載の趣旨は前掲のとおり「当事者それぞれの視座から現状及び認識を語ってもらうこと」であり、回答の如何を含めてそれを残しておくことには意義があるものと考えています。

なお、ウクライナのデベロッパーについても複数のデベロッパーに連絡をしておりますが、未だ返事がもらえない状況が続いています。とにかく無事であることを心から願っています。

編集方針について

本連載のように毎回デベロッパーにインタビューで政治的な事柄についてスタンスを明示させるようなことは望んでいませんし、話の流れで可能性はあれ、通常のインタビューのスタンスを変えるということはないことも改めてお伝えします。ただし、本連載に関してはうやむやにするよりも突っ込んだ質問が必要であると判断した上でインタビューをしています。

初回からお伝えしているとおり、楽しいゲームニュースがかき消されるような、この最悪な状況が一日でも早く終わることを編集部一同願っています。同時に、突然戦火に見舞われ、日常を奪われた多くのウクライナの市井の人々やゲーム業界関係者を思うとかける言葉もなく、一日も早く平穏が取り戻せることを祈るばかりです。そうした被害に遭われた人々を支援するゲーム業界の動きについても随時お伝えしていきますが、これまで通り日常の記事のボリュームを減らすことなく、ゲーム業界に関連する話題については記事の本数を増やしながら対応してまいります。


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