
先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
海外で「ガンダム」ファンでいるうえで最大の問題の一つは、ごく最近までシリーズ作品の多くが広く入手できなかったことでした。アニメ、漫画、ゲームを問わず、20年以上前の作品の正式な英語版を手に入れることは、しばしば不可能だったのです。
しかし、ドリームキャストの発売によって状況は変わり始め、海外の「ガンダム」ファンも正式な英語版として発売された新たな『ガンダム』ゲームを遊べるようになりました。
その作品こそ、『ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…』であり、海外では 『Gundam: Rise from the Ashe』 というタイトルで発売されました。日本語版タイトルと同様に、英語版の名称も、ゲームの舞台であるオーストラリアが「ブリティッシュ作戦」によるコロニー落としの被害を受けた地であることを示しています。
プレイヤーは「ホワイト・ディンゴ隊」と呼ばれるオーストラリアのモビルスーツ部隊の一員として戦います。ただし、英語版では声優がアメリカ人だったため、その点はやや不思議な印象もありました。
また、このゲームの大きな特徴の一つは、モビルスーツ戦をコックピット視点で描いていたことです。そして、それは海外のゲーマーたちに非常に好評でした。
というのも、海外ではFPSやTPSが極めて人気の高いゲームジャンルだからです。さらに、メカゲームもそうしたジャンルの一部として認識されることが多く、そのため日本のメカゲームは海外で「シューティングゲーム」ではなく「アクションゲーム」として扱われ、時として感覚のズレが生じる理由にもなっています。
短くも印象深いキャンペーン
本作の中心となっていたのはシングルプレイのキャンペーンモードで、プレイヤーはホワイト・ディンゴ隊の隊長として、戦火に荒廃したオーストラリアを転戦していきます。
各ミッションは変化に富んでおり、さらに二人の僚機に指示を出すことも可能でした。この要素によって、当時としては非常に珍しく、独特な戦術性のあるゲームプレイが実現されていました。
また、M353A4ブラッドハウンド・ホバー戦車も登場し、ソナーによる索敵を行えるうえ、同様に指揮することも可能でした。ただし、メインキャンペーンではスクリプト制御される場面が多く、基本的には独自に行動することがほとんどでした。
戦闘のテンポも絶妙で、遠距離から狙撃を行うことも可能でした。さらに、自分が操縦するモビルスーツの重量感もしっかりと表現されており、それによってゲーム全体に高いリアリティが生まれていました。
唯一の欠点を挙げるとすれば、キャンペーンモードがかなり短かったこと、そして本格的なマルチプレイが用意されていなかった点でしょう。
しかしその後、日本では『プレミアムディスク』が発売され、ホワイトベース隊との戦闘が可能になりました。もちろん、アムロが搭乗するRX-78-2 ガンダムとも戦うことができます。ただし、ビームライフルでガンダムを狙撃するのはほぼ不可能で、アムロはあらゆる射撃を自動的に回避してしまいました。
そのため、最も有効だったのはマシンガンを装備し、とにかく撃ち続けることでした。また、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクをそれぞれ分断して相手にすることや、僚機に注意を引きつけてもらうことも重要な戦術でした。
「第08MS小隊」と「ガンダム0080」とのつながり
ここまでの話にどこか聞き覚えがあると感じたなら、それも当然です。本作が発売された時期は「ガンダム 第08MS小隊」の終盤と重なっており、同作は海外でも非常に人気を集めたガンダム作品でした。
そのため、海外ファンにとって「第08MS小隊」を観た後に、このドリームキャスト版ゲームを手に取るのはごく自然な流れだったのです。
興味深いのは、本作のゲーム構成には「第08MS小隊」との共通点が数多く見られる一方で、最も大きな影響を受けていたのは「ガンダム0080 ポケットの中の戦争」だったという点です。
ゲーム内にはRX-77D仕様のガンキャノンが登場するだけでなく、高度にカスタマイズされたジム・スナイパーIIも登場します。
個人的に、ジム系デザインの中でもこの機体は特にお気に入りであり、ゲームの最終ミッションやプレミアムディスクでは実際にジム・スナイパーIIを操縦することもできます。
漫画化とマスターグレードキット

それほど昔のことではありませんが、本作は非常に完成度の高い漫画版も展開されました。数年にわたって連載されており、作品への深い愛情を持った人物によって描かれていたことが伝わってくる内容でした。
残念ながら、この漫画は海外で正式に発売されることはなく、オリジナルゲーム自体には一定のファン層が存在したにもかかわらず、あまり広く知られてはいません。
とはいえ、ゲーム終盤仕様のジム・スナイパーIIのマスターグレードキットは何度か再販されており、どのバージョンも非常に出来が良いことで知られています。比較的最近ではアメリカでも発売され、概ね高い評価を受けていました。
私自身もROBOT魂版をいくつか所有していますが、やはりジム・スナイパーIIという機体が大好きなんですよね。
『ガンダム戦記』、『ガンダム サイドストーリーズ』、そして『THE BLUE DESTINY』へと続く系譜
数年後、このドリームキャスト作品に登場したジム・スナイパーIIやキャンペーンの一部要素は、『ガンダム戦記』や、後の『ガンダム サイドストーリーズ』といった別のゲーム作品にも受け継がれていきました。
ただし、これらの作品では肩越し視点のカメラが採用されていたため、オリジナル版であるドリームキャスト作品のコックピット視点が持っていた、あの閉塞感や緊張感の多くは失われていました。
ここで触れておきたいのは、私自身、『THE BLUE DESTINY』シリーズ(セガサターン版)にも非常に親しみがあり、あの作品群こそが、このドリームキャスト作品の実質的な前身にあたるという点です。
最大の違いは、『THE BLUE DESTINY』シリーズが日本国外で正式発売されなかったことでした。そのため、多くの海外プレイヤーにとっては言語の壁が高く、遊ぶこと自体が難しかったのです。
もちろん、私はセガサターンでこれらの作品を実際にプレイし、とても気に入っていました。いつか、それらについてもコラムを書いてみたいと思っています。
唯一無二の可能性
このドリームキャスト作品が果たした重要な役割の一つは、「ガンダムを題材にした本格的なFPS作品が成立し得る」ということを海外ユーザーに示した点でした。そしてそれは、彼らが思い描く“軍事メカ作品”のイメージとも見事に一致していたのです。
もし現代向けにリメイクするのであれば、ロックオンシステムは廃止し、よりマニュアル寄りの照準システムへ変更する必要があるでしょう。しかし、それ以外のゲームデザインは、少なくとも機能面においては現在でも十分通用する内容だと思います。
『GUNDAM EVOLUTION』のように、『オーバーウォッチ』路線を目指した作品もありましたが、あれは実質的に「ロボットスーツを着た人間」を操作する感覚に近く、特に海外プレイヤーにはあまり受け入れられませんでした。
一方で、『War Robots』や各種ビークル系マルチプレイヤーゲームが大きな成功を収めていることを考えると、本格的な“軍事メカFPS”を求める層が確実に存在しているのは明らかです。
そして今や、「第08MS小隊」や「ガンダム0080」は海外でも非常に高い人気を誇っています。だからこそ、再びGMの狭いコックピットへ乗り込み、一年戦争の最前線でモビルスーツ部隊を指揮する機会が与えられてもいい頃ではないでしょうか。
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。






